51 Bランク昇格試験ってこんな変化球なの? 前編
なんだかんだで明日から20歳になる。
神様から修行期間として猶予されている時間があと数時間で終わってしまう。
これからは本格的にターゲットを殺すための活動をしていなければターゲットの前に神様に殺されてしまう。
でもここ2年ほど神様が夢に出て来ないんだよね。
俺のことや約束のことを忘れていてくれないだろうか。
そんな寝言は通じるわけも無く、眠りについたところ夢の中に神様が出てきた。
用件は既に察しがついているが、お久しぶりですと大して代わり映えの無い挨拶をしたところで神様からターゲット討伐の進捗状況について尋ねられた。
2年前の成人を迎えたときはターゲット討伐のための準備がまだロクに整っていなかった。
しかし2年経ち、モンスターへの変化する種類の増加による戦力強化、金や宝石などの財産形成は順調であると言っていいだろう。
準備としては数値化すると50%を超えているのではないか。
残された準備は総合ランクBになって装備購入すること、その装備を用いて更なるモンスターの遺伝子取り込み、不足すれば資金調達くらいだ。
計画通りとは言わないが、かなり順調な推移と言って遜色ないだろう。
だがまだターゲット討伐に直接動いていないということに変わりは無い。
その辺りをどう評価されるかだが、俺個人としては頑張っている方だと思います。
そういった旨を伝えたところ、神様も俺の活動を一定の評価をしているようで、良い知らせがもたらされた。
「よろしい、今後ともターゲットの討伐のために励むように。あと5年の猶予を保障しよう。必ずターゲットを討伐せよ」
最低寿命保障が5年延びた!
これは非常に大きい、5年あれば計画的なターゲット討伐プランを練ることができるだろう。
ただもう少し寿命延長していただいてもよろしいのではないでしょうか。
30歳くらいまで延ばしてもらえるととても嬉しいのですが。
「それはお前がターゲット討伐のために活動していれば必ず叶うことだ」
まあそれは確かにそうなのですが、気分的にね。
今回の用件はこれだけでしょうか、これだけといっても内容の重要性がとても高かったけど。
「私はもう行くがお前に伝えておくべきことがある。近く重要な試練が来るので注意せよ。では次に会うときは朗報を期待しているぞ」
えっ、重要な試練って何?
そういうのって重要かどうかよりも内容教えてもらわないと困るんですよ。
お待ちになって神様、せめて何日後かだけでも教えて、と手を伸ばした瞬間夢から覚めた。
神様重要なことは手紙で届けてくれないかな、夢に出てくるとかアナログもいいところじゃない?
とりあえず寿命が5年延びたことを喜ぼう、ハッピーバースディ!
それにしても重要な試練って何だろうか、重大じゃなくて重要なんだよな。
考えられるのは総合Bランクに上がるための試験?
でもまだ総合Cランクになってから2年だぞ、DからCに上がるのに5年かかったのに昇格早くない?
一応歴代最速で18歳で上がった人いるらしいけど、伝説的な人物だしなぁ。
そして試験内容は人によって違うらしいので神様から注意しろと言われても注意のしようがない。
他には超レアとか超強敵モンスターに遭遇するとか?
ありえるけど何に遭遇するか分からないと対策のしようがないな。
他人が絡んでくるタイプの試練は予想ができないな、そしてこれは俺がどれだけ気をつけてもどうにもならない。
分からんな、まあ何があってもいいような心積もりだけはしておこう。
数日後、冒険者ギルドに行った際に職員が俺の元に走ってきて、ギルド長から出頭命令が下ったことを知らされた。
はて、何か悪いことをした覚えは……バレるような悪いことをした覚えは全くないのだが。
討伐Bランクの時は呼んでるから来てねという感じだったが、今回は出頭命令。
しかも副ギルド長ではなくギルド長。
神様が言っていた重要な試練とはこのことか?
とりあえずギルド長の元へ行くしかあるまい、職員にギルド長の部屋まで案内されてギルド長室に入室した。
入室して立っている俺をギルド長は何も言わずじっと見た。
ギルド長はかつてAランクの冒険者であり、国から表彰を受けた実績もある元超一流冒険者だ。
そのためギルドの職員からはもちろん、現役の冒険者からも信頼が厚い。
ちなみに副長は冒険者ではなく、ギルドの事務方として長年働いてきた室内組(温室組と裏で言っている)なので冒険者からの信用は薄い。
さて、この沈黙は何を意味するのか。
10秒ほどの沈黙の後に、ギルド長は薄く笑って応接用の椅子に座り、君も座りたまえと言われたのでギルド長と向かい合うように椅子に座った。
そしてギルド長から今回呼ばれた理由は、俺を総合Bランクに昇格させるにふさわしいかの面接を兼ねた顔合わせとのことだった。
ついに来たかっ、想像より遥かに早かったが全く問題はない。
早く総合ランクを上げるために正直かなり目立つようにしていたが、それが実を結んだのだ。
難敵の魔石を数多く納品をしていたし、依頼もジャンルが偏ってはいるが高ランクの依頼を失敗したことは無い。
時間の制約が無ければこんなに目立つ活躍をしたくはなかった。
でも神様が見ているかもしれないし、どちらにしろソロだと目立ってしまう。
ならばいっそと思い討伐Bランクに上がってから一層派手にやっていたが、それがこの早期の総合Bランクに繋がったのなら本望である。
ギルド長からの面接は意外と本格的だった。
出身地や家族の状況、学歴、趣味などの俺に関する個人情報の確認。
それが終わってからは想定質問や思想に関する質問。
もしもっと人数が必要な依頼を請け負った場合頼れる友人や仲間はいるのか(いない)。
依頼で困ったことがあれば相談できる友人や仲間、師匠などの知り合いはいるのか(いない)。
依頼が想定よりも危険だった場合どうするか(高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処する)。
などなど割とガチな面接だった、顔合わせじゃなくてこれもう立派な口述面接試験ですよ。
そして身辺調査や浮気調査などの他人の個人情報が絡む依頼を受けた場合、お前が大切だと思うことは何かという質問も出た。
この世界の情報漏洩はギルド職員含めてひどいものであるが、俺は口の堅さが重要だと思っている。
依頼結果はもちろん誰が浮気調査を出したのか、ということを含めて全て職務上知り得た秘密は漏らすべきではない。
前世では情報漏洩なんてしたら炎上しちゃうからね、口は災いの元。
だから依頼を受けて知った事項に関しては誰にも漏らさないことが大切だと思うと回答した。
その他数個の質問を無難に答えてギルド長とのタイマン面接は終了となった。
精神的にかなり疲労しているがまだ帰ることは出来ない。
昇格試験の内容について今から話があるからだ。
試験は一週間後、内容は前日に冒険者ギルドで知らされるが1日以内で終わる見込みで街の中で行われる予定だそうだ。
そして注意事項として昇格試験開始まで試験を受けることは指定されたギルド職員以外誰にも言ってはいけないとのこと。
過去に恨みを持った人物が昇格試験を妨害してきたことがあるらしく、公正に試験を行うためらしい。
身近でそういう話を聞いたことは無いが、その手の噂話などを収集していないので割りとあることなのかもしれない。
注意事項はそれだけで、ギルド長から期待しているから頑張ってくれ、と激励の言葉を頂いた。
言われなくても頑張りますとも、合成獣のパワーがあれば大抵何でも解決できますしね。
日付は過ぎて試験日前日、冒険者ギルドに赴き昇格試験を受けることを誰にも言っていないか再度確認された。
誰かに言っていても確認のしようがないだろうが、とは思うが本当に言ってないので言ってないと答えた。
職員はたまに話しちゃったって人がいるんですよね、と笑っていたが正直すぎるだろソイツ。
とりあえず昇格試験開始までは言わないでねと軽い感じで再度注意されたが、本当に過去で何があったんだろう、ちょっと気になる。
肝心の試験の内容だが明日の午前0時にクロガネ公園にてギルド職員から通知されたその場で試験開始になるとだけ知らされた。
本当に1日ってか24時間なんですね。
でもギルドに納入とかだとギルドが閉まる前に行かなきゃ行けないからもうちょっと短いかもな。
なお試験の準備の都合上時間が30分から1時間ほど通知が遅れる可能性があるらしい。
いや、超絶大事な試験なんだから時間はきっちりやってくれよ、命かかってるんだぞ、冗談抜きで。
でも文句は言えないので分かりましたと答えざるを得なかった。
それと必要な物としてナイフを1本持ってくるように告げられた、普段から持ち歩いてるけど何に使うのだろうか。
考えても分からないのでいつも使っているナイフを持っていこう。
そしてついに昇格試験を受ける時が来た。
今は午前0時少し前、クロガネ公園の指定されたベンチにぽつんと座ってギルド職員を待っている。
クロガネ公園はアズールの中でも高級住宅街の中に位置しており、日中はクロガネーゼと呼ばれるセレブが来るそうだ。
つまり俺みたいな一端の冒険者には縁の無い場所ということですね。
早く来ないかなーと思いながら待っているがこの数十分で来たのは猫が数匹だけ。
一応仮眠は取って来たが普段は寝ている時間なのでちょっとだけ眠い。
だが職員が来たときにベンチに不在だったり、寝ていたりしたら即失格と言われているので気合を入れて座っているがまだ来る気配は無い。
にしても試験の準備って何の準備しているんだろう?
時間がかなりずれるって職員が多く絡んでいる試験なのだろうか、変な試験になりそうだ。
30分経って午前0時を大きく過ぎてもギルド職員が来ない。
忍耐力の試験か何かと勘違いしていないだろうか。
はぁ、とため息をついていると公園の向こうから複数人こちらに近づいてくる音がした。
遅いよ、と思いつつ近づいてくる人物を待っていると、どうやらギルド職員ではないようだ。
月明かりに照らされて俺に近づいてくる人物は街の憲兵、おまわりさんである。
3人の憲兵が俺の前に立ち、お前そこで何をしているんだ、と俺に聞いてきた。
何って冒険者ギルドの昇格試験があるから待っているんだ、と言いそうになったが直前で踏みとどまった。
”この昇格試験は開始されるまで誰にも言ってはいけない、つまりこの憲兵にも言ってはいけない”
憲兵の一番年配の奴が、何してるんだって聞いてるんだけど、と俺の返事を催促してくる。
返事に詰まる、どうにかして誤魔化さなければいけない。
別の憲兵はこの公園に長時間不審者がいると通報があったんだよ、お前だろと俺に言う。
この公園に到着したときから他に不審者はもちろん普通の人間すらいない、つまり俺のことだ。
まずいぞ、このままだと憲兵の詰め所まで連れていかれるかもしれない。
そうなると当然この公園から離れることになり、昇格試験を受けることは出来ない。
やばい、このままだと昇格試験受ける前に憲兵に連行されてしまう。
これで試験不合格とか冗談でも笑えないぞ。
ギルド職員さえ来てくれれば問題は解決されるのだが未だに現れる気配は微塵も無い。
どれだけ準備に手間取っているんだ、もう30分以上遅れているんだから来てもおかしくない。
いや、すでに来てなきゃおかしいだろ。
……ああっ、待てよ、つまりそういうことか?
昇格試験のことを、本当のことを言わないでどうにかしてこの憲兵に囲まれているピンチを切り抜ける。
今、この状況こそが、Bランク昇格試験なんだ。




