↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/77

50 絶対に見つかってはいけない象牙密猟者24時

この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。

 連日の真珠取りの最中、一瞬の油断から大きなダメージを受けてしまった。

 数日間の療養を経て体は復調したので、ここからまた活動を再開しようと思う。

 とはいってもやることは変わらないのだが、と日課の冒険者ギルドの依頼を見に行ったところ、とある駆除依頼が目に入った。

 遠方からの依頼である、報酬もそれほど高くない。

 だが依頼内容を見て俺はこの駆除依頼を受ける決意をした。

 我が友人達が危機に瀕している、俺はアズールから二ケアという街へと急行した。


 ちなみに駆除依頼と言うのは、特定の人間を駆除するという依頼である。

 無論依頼に出されるのは街の外の盗賊であったり、殺人鬼のような法を犯した人間である。

 討伐と駆除の違いであるが、討伐はモンスター、駆除は人間と分けられている。

 そして討伐依頼は相手によってはその近辺から追い払うだけでも成功な依頼があるのに対し、駆除はこの世界から駆除以外の成功は無い。

 同族に対し生死問わずではなく、死以外許さないという殺意の高さに人間って怖いなって思います。



 二ケアはアズールから遠く離れた、サバンナのような気候をした街である。

 乾季と雨季がはっきりと分かれ、低く乾燥に強い草が多いこの大地に今、ある一握りの人間が悪事を働いていた。

 その悪事とは、ゾウの虐殺。

 密猟者と呼ばれる種類の人間がゾウを虐殺し、象牙を売りさばいているのだ。


 無論俺だって動物を殺すことはあるし、そのことを否定するつもりは無い。

 しかし最低限のルールというものがある。

 絶滅の危険がある野生動植物の種の保護に関する条約である。

 この条約により、特定区域に生息しているゾウを狩猟の対象とするのは禁じられているのだ。


 だがこのルールを破る密猟者という輩は、ゾウを虐殺して象牙を売りさばき私腹を肥やしている。

 傷心の俺を慰めてくれた心優しきゾウの危機に、今俺は立ち上がらなければならない。


 ニケアの街の冒険者ギルドから密猟容疑者のグループは現在4グループいるという情報を入手している。

 容疑者というのは、密猟は現行犯でないと立証が難しいため犯行が確定できていないためである。

 というのもゾウの虐殺が禁止されているだけで、象牙の入手や所持、取引は禁止されていない。

 このため真新しい象牙を所持していても、死んでいたゾウから拾ったと主張されればそれを覆すことが困難なのだ。

 まぁ実際としては殺してしまえば死人に口無しなので、冒険者ギルドから指定された人間を殺して生首持って行けばOKなんだけど。

 指定されているんだからほぼ密猟犯なのは間違いないし、間違っていても責任はギルド持ちだしね。


 

 というわけで、絶対に見つかってはいけない密猟者24時を開催します。

 ルールは至ってシンプル、密猟者は密猟している間俺に何があっても絶対に見つかってはならない。

 見つかってしまった場合はキツイお死置きを受けてもらう。

 ただそれだけだ。


 まずは密猟者を探すところからだが、ゾウの群れの近くにいれば密猟者から寄って来るので違和感のないようにハゲタカになって様子見。

 ゾウの群れは何箇所かあるので巡回しながらゾウを狙っている密猟者を見つけ出すのだ。

 顔と名前が分かっているなら関所や街で捕まえろよと言いたいところだが、そこで捕まえると裁判になってしまう。

 そうなると証拠の問題とかが出てくるので、それよりは街の外で始末したほうが良いという考えなのだろう。


 巡回すること数時間、明らかにゾウを狙っている4人組の男達を発見した。

 聞いていた顔の特徴と照らし合わせるが……よく分からない。

 密猟者も周辺の地元民も、俺からしたら全員同じ系統の顔に見えるので判別が付かないのだ。

 所持している武器を見ればおおよその判別は付くのだが、冤罪上等というわけにもいかない。

 ゾウを襲撃したら密猟者判定でいいだろう、俺も密猟者を襲う準備をして様子を伺った。


 ゾウが襲撃されてから密猟者を襲ってゾウの生命の危機に間に合うのか、と思うかもしれない。

 密猟者が魔法を使えば十秒足らずの詠唱でゾウに致命傷を与えることが出来る。

 いくら俺でも魔法の詠唱を見てからでは間に合わない。

 だが間に合う、密猟者は必ず弓矢や槍などの武器を使い魔法は使わないから。

 否、使えないので間に合うのだ。

 何故ならここではゾウに魔法を撃つことができない。

 絶滅の危険がある野生動植物の種の保護に関する条約は、人間はもちろんモンスターも精霊も批准している。

 そのため精霊の力を借りることが出来ないのでゾウを魔法を撃つことができないのだ。


 密猟者はゾウの隙を伺うのに夢中で、密猟者を密猟しようとしている俺にはまるで気がついていない。

 そんな中、一匹の老いたゾウが群れから離れてしまった。

 群れに追いつこうとするゾウを密猟者は狙って襲撃しようと試みた。

 この瞬間、密猟者は狩る者から狩られる獲物に変わった。

 全員アウト、厳しいお死置きを受けてもらいましょうか。


 俺は魔法を唱えた、使用した魔法は漆黒の棺(ブラックボックス)、ハンニンジャと化した俺は密猟者を闇で覆った。

 ハンニンジャは全身黒いタイツを着用したような姿、胸元に処刑という文字は書いていないがこの場にはぴったりなモンスターだ。

 密猟者は突如訪れた闇に驚き戸惑っている、何が起こったかすら分かっていない。

 か弱きゾウを襲うような連中だ、どうせモンスターともまともに戦った経験すらないのだから、こちらの正体すら知らないだろう。


 ではまず1人目から罰を執行させてもらうとしよう。

 暗闇の中から響き渡る悲鳴、リーダー格の男の胸をナイフで一突きして絶命させる。

 殺してしまうと間もなく闇が明ける、姿を草むらに隠して1人目の死体を密猟者に見せ付ける。

 何も分からないまま殺された男を見て悲鳴を上げたり、大丈夫かと身体を揺する密猟者達。

 驚いてもいいがそんな余裕はあるのかな。


 再度漆黒の棺を展開して2人目は背中を斧でバッサリと切り裂いた。

 仲間の心配よりも死の恐怖が勝った残りの密猟者達は2人で背中合わせになって謎の殺人鬼に抵抗しようとする。

 しかし何も見えない闇の中ではまともな抵抗をできるはずもなく、火魔法で明かりを点けることすらパニックで思いつかない。

 助けてくれとかお母さんとか叫んでいるが、殺され逝くゾウの悲鳴にお前は耳を貸したことがあるのか。


 1グループ目は全員アウト、この世に残す価値無し。

 駆除の証拠として生首を氷漬けにしてアイテムボックスに用意しておいた専用の箱の中に入れる。

 残った首から下は本職のハゲタカやハイエナが美味しく頂いてくれるでしょう。



 3グループ目まで同様に駆除したが残り1グループは見つからなかった。

 念のため俺もゾウになって遠くのゾウの群れに怪しい人間はいないか連絡を取ってみる。

 しかしどこの群れからも今日はいないと返事が返ってくるので、どうやら今日は活動していないようだ。

 密猟者め命拾いしたな、だがこの密猟者達の首はニケアの街で晒されるのでしばらくゾウの命は守られるだろう。

 でも1年に1回は俺は帰ってくるからな、この見つかってはいけないはこの先何年も続くぞ。


 じゃあ町に帰ろうかな、と思ったところゾウのリーダーから連絡が入った。

 来てくれというので後ろをついていくと、不自然に土や葉っぱで盛り上げられた場所があった。

 ここを掘れというからその場を掘ると、象牙とゾウの骨? らしきものが埋まっていた。

 数日前に亡くなった仲間のゾウの墓らしき場所のようだ。

 今日の謝礼にこの象牙を持っていけと伝えてくるがいいのだろうか。

 でもくれるというのだから遠慮なく貰っていきます。

 ありがとうゾウさん、厳しい世界だが強く生きてくれ。

 そういえば密猟者を駆除したのが俺だと分かるくらい高い知性を持っているんだな、ゾウはすごいと思った。



 街に戻りニケアの冒険者ギルドで駆除依頼やってきました、と新人っぽい受付に報告した。

 討伐証明物は何処に出したらいいですか、と聞いたところここで良いと言うけど本当にいいの?

 じゃあ箱から出しますね、と受付の前に生首を並べると受付が失神した。

 周囲の冒険者も並べてられた生首に引いているが、奥にいたベテランっぽいおばちゃんの受付は堂々とこちらにやってきた。

 これはあっちの部屋で出すんだよねーと何個か生首の氷漬けを掴んで一緒に別室まで運んでくれた。

 失神した新人は別の職員に介抱されていたが、おばちゃんに情けないと呆れられていた。

 でも多分、新人のほうが人間として正しいと思うよ。


  翌日ココヤマのいる工房を訪ねて象牙を見せたところ、密猟かと疑われてしまった。

 なんて失礼な、現地のゾウから密猟者討伐の謝礼として墓場にある象牙を譲り受けただけで、密猟なんかいない。

 ココヤマからは分かっていますよ、牙の断面を分かりますからと笑って返事をされたが、絶対に一瞬は密猟だと疑っていたと思う。

 象牙はなかなかの値段で買い取ってもらった、これからも年1で密猟者を駆除しに行くのでよろしくね。

 今日は部屋で良いお酒でも飲もう、この時の俺は上機嫌だった。


 しかしそれは突然訪れた。

 夢の世界で今日駆除した密猟者共の生首が俺の周りをくるくる回るのだ。

 何処に行っても追いかけてくるしこれはどうしたものか、と夢の世界で考えていると驚くべきことが起こった。

 ゾウの群れが夕陽の向こうから走ってきて、くるくる回る生首をゾウの長い鼻で弾き飛ばし、大きな足で生首を踏みつぶしていったのだ。

 こうして俺は生首の脅威から救われた。

 やっぱりゾウはすごい、俺は色々な意味でそう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。