48 冒険者コンサルタント 後編
翌日の夜、私は居酒屋ブラックに訪れました。
もちろんフィヨルド=ボレオでもないし、レプスキー=ダンプでもありません。
今の私の名前はナルゲッス=フォルーフ。
顔は中東で絨毯売っていそうな若い人、濃い顔立ちで私の顔の中で一番イケメンだと思っています。
何故わざわざ顔を変えて2回もアドバイスするのか。
それは彼女達がフィヨルドの話を真面目に受け取っているか怪しいからです。
わざわざフィヨルドが時間を使ってアドバイスをあげたのに、大丈夫だとか出来るよとか彼女達が望む言葉が出てこなかったのであまり本気で疑わしいと思います。
まあつまりどちらにしろ本気では考えているのか怪しいってことであり、現実を教えてあげる必要があると私は考えました。
あと他人になる練習です、最低でも知り合いにバレない位には化けれないといけませんから。
おまけで彼女達をおちょくろうかなと、これはおまけです、本当におまけです。
居酒屋に入りスポンジとムンクのいる席を聞いて挨拶をしてから座る。
まずは自己紹介から、私首都で冒険者コンサルタント業を行っていますナルゲッスと言います。
そう言い終えてから雑貨屋で買った紙を切って作った手書きの名刺を渡す。
役職は適当にエグゼクティブエバンジェリストにしておいた、意味は私にもよく分からない。
二人からボブネ(スポンジの本名)とルイス(ムンクの本名)を名乗られたので間違えないように覚えておかないといけませんね。
ボブネさんからコンサルタント業とは何かと聞かれたのでお答えしますと、冒険者の生活における問題を解決したり、相談に乗ったりする仕事をしております。
実際にこの世界にそんな仕事があるかは知らないけれど、あってもおかしくは無いと思います。
フィヨルドさんから皆さんが冒険者として悩んでいると聞きましたので、相談してもらって解決できればなと、そう考えております。
二人になるほどと納得してもらったところですでに知っている相談内容を聞くが、フィヨルドが聞いた話に比べて情報が多く出てくる。
酒のせいか私の顔のせいか分からないけど、相談するときは話して構わない内容なら話せよと思わなくはない。
でも大まかに言えば、実家出て他の街で冒険者としてやっていけますか? という内容なので答えるには問題なかったのですがね。
そうですか、確かに不安ですよね、分かりますよ、とか適当に相槌を打ちながら話を進めて本題に切り込む準備をする。
結局フィヨルドと言いたいことは変わらないのですが、大事なのは収入と支出のバランスですよね。
今4人パーティーで月平均いくら稼いでいるのか聞き、フィヨルドの半分未満の収入を聞かされて心の中で少なっと思っても顔に出したり笑ってはいけません。
実家暮らしで家の手伝い等もしていれば、これくらいなのかなぁという収入でしたけど、これはちょっと生活厳しそうですね。
叩きつけなきゃ現実を。
収入は増えるとしても支出のほうが大きく増えるんですよね、実家暮らしに比べて予想外にお金がかかります。
まず家賃、宿屋住まいになるなら4人同室で1ヶ月契約で借りた場合で最低月8万、個室なら15万は必要でしょう。
賃貸で借りるにしても4人なら最低月5万が相場になりますね(総合Cランクにならないと貸してくれない物件がほとんどですが)
そこから食費、武器防具の整備費、消耗品や雑品の購入は最低限必要です。
遊行費や怪我をした際の治療費、アイテムボックス利用料など諸々。
いざというときの貯蓄も必要ですが、まず最低限必要な額を書き出してみましょう。
どうでしょうか、4人で最低限いくら稼ぐ必要があるかが分かりますね。
依頼の報酬は参加人数に関わらず基本同一金額なので意外と大変なんですよね、同じ2万の報酬もフィヨルドは1人占めで彼女達は4分割、収入と生活の差は歴然です。
真面目に考えていただいた結果、今の収入から考えて別の街に行くのは難しそうですね。
収入を増やすために総合ランクや依頼のランクが上がるまでこの街に留まるのが良さそうに見えます。
そうなんですねー、と2人が頷いていると、ボブネさん別の悩みもあるそうですがなんでしょうか?
盗賊から襲われることが多いのですが、襲われにくくするコツはありますか?
ありますよ、割と簡単にできる方法で。
全員で似た外見の防具を着用することです、特に色は絶対に全員一緒にしてください。
思い出してください、憲兵は皆同じ服を着ていますよね?
一人や二人でいるときは何も感じないと思いますが、同じ服の集団に囲まれると威圧感が出るんですよ。
これは外から見たときも有効でしてね、統一された装備の集団はまとまりがあるように見えて、強く見えるんですよ。
とはいえ防具を統一するのは体格の問題でできないでしょうから色を揃えるんです、それだけでも似た効果が出ますよ。
私のアドバイスを聞いて二人はやってみますと素直に答えてくれました。
この世界で本当に効果があるか検証していませんけどね。
では本日のお話はこれでよろしいでしょうか?
そう聞くと二人は満足したように、今日はありがとうございましたと感謝の言葉を述べてくれた。
ではお会計をしましょうか……えっ、お二人が払ってくださる?
いえいえ、私も出しますよ……アドバイス料はすでにフィヨルドさんから頂いていますし……そうですか、ありがとうございます。
この後の予定ですか? 2軒目? 申し訳ありませんが別の案件が入っておりますので残念ですが本日はここまでで。
本日はありがとうございました、また機会がありましたらよろしくお願いします。
ふぅ、疲れたけど面白かったわ。
あいつ等微塵も気づいてなかったな、もしかして俺の演技上手すぎ?
とにかくこれで彼女達がアズールに来ることは阻止できたはずだ。
俺のアドバイスを聞くか分からないが、自称専門家の俺のアドバイスは真面目に受け止めていたようだからな。
これで俺の平穏は守られた、願わくば二度とこの街から出るなよ。
俺がアズールに戻ってしばらくして、アズールの冒険者ギルドに突如赤色の防具で統一された女の冒険者の集団が現れた。
話を聞かされたところ、スポンジの総合ランクが上がって高い報酬の依頼も受けられるようになったほか、アズールの知人に大部屋を安く紹介してもらえたことでこちらに拠点を移すことにしたらしい。
俺がアズールに来れない理由を全てクリアしてから来るんじゃない、しかも別の街に行けとも言いにくい状況を作りやがって。
とりあえずこの街に滞在するのはいいけど俺に近づかないでくれない?
赤い鎧の集団とか、返り血で染まってるように見えて怖いからさ。




