47 冒険者コンサルタント 前編
討伐ランクもBになり、金貨は無事に金塊になって返って来た。
現在のレートで5000万イディ相当の金塊を手に入れたが、しばらくは俺のアイテムボックスに入れておく予定だ。
今すぐ金が必要なわけではないし、もし武器防具を作ってもらうとなった時、自前で素材を用意したほうが安く製作できるからだ。
というわけでアイテムボックスで眠っていてもらおう、さらば必要になる時まで。
そして良いことがあれば悪いこともある。
金貨を受け取った際フェルノから、エリアンテがお前に相談があるから来たら教えてほしいと店を訪ねてきたと聞いてしまったのだ。
いつ来たのか聞いてみれば、3週間前と先週だというので急な話ではないのだろうが、どう考えても俺に得のある話ではない。
急ぎじゃないならいつでもいいかな、来年でも10年後でも問題ないだろう。
日時を指定されているわけじゃないし、約束したわけでもない。
ま、勝手に日時指定されても行かないけどね。
この話は聞かなかったことにして早くアズールに帰りたいのだがそうもいかない。
バンギにやってきたのは金塊の受け取りの他に、俺の兄で3男のベイコブが実家に帰省するためだ。
ベイ兄さんは軍学校に通って卒業後軍に入隊し、今はモンスターの領域、通称魔界との境界にあるソヤパンの街で領土警備の仕事を行っている。
最近はタイミングが悪く3年ほど会っていなかったので、今年はスケジュールを調整して会いに来たのだ。
エリアンテに会うと面倒だからという理由で予定をキャンセルするわけにはいかない。
実家に戻ったところ、やはりエリアンテが相談があると訪ねてきたと言われたので、行けたら行くわと返事をしてベイ兄さんが帰って来るのを待った。
母から頼まれた買い出しに出て戻るとベイ兄さんは実家に到着していた。
久しぶりの兄弟団欒の時間である、ベイ兄さんから近況を聞いていたら邪魔者が来た。
俺が今日来ることは分かっているのだから訪ねてきてもおかしくはないのだが、ため息混じりに玄関で応対をした。
エリアンテに何用だと聞けば、相談があるので時間を作ってくれと言う。
相談の中身を聞いたところ、パーティーの今後の身の振り方について俺から話を聞きたいのだとか。
他の奴じゃ駄目なんですか、俺じゃなきゃいけないんですかと答えたが、他にも何人かに同じ相談しているらしいので本当にただの相談のようだ。
今日は無理だから明後日なら良いと答えると、近くのカフェで相談を聞くことになってしまった、相談料払えよ。
明後日の指定された時間にカフェに行くとエリアンテとムンク、それと初めて会うエリアンテの所属するパーティリーダーの女、ボブネがいた。
ボブネは俺やエリアンテよりも3歳年上で、俺の頭の中でスポンジというコードネームを付けた。
一緒に馬車の護衛をしたゲルニカはもう冒険者を辞めて別の仕事をしているらしい。
代わりに新しいメンバーを1人加えたが今日は別の用事で来ていない。
大人数で来て何の相談かと思えば、彼女達は本格的に冒険者1本でやろうと考えていて、パーティー全員で依頼の多い街に移ろうかと考えているそうだ。
そこでいくつか街を知っている俺に何処が良いか話を聞きたかったらしい。
確かにバンギは依頼少な目だから本拠地を変えようかって話は分かる。
でも色々な問題が潜んでいるのを理解しているのだろうか。
まず、生活できるの?
今皆実家暮らしだよね、少なくてもエリアンテとムンクはそうでしょ、スポンジさんもですか。
どの街に行ったところで宿屋住まいなんだけど、収入は大丈夫なんですかねぇ。
4人分の部屋が1日5000イディだとして部屋代だけで月15万イディ、皆が実家にいくら入れてるか知らないけれど生活できますか?
食費や雑費も今よりかかるんじゃないかな、本当に冒険者一本で生活できるの?
うーん、と少し考えている時点で駄目だからね2人とも、あと1人は考えてるフリするの止めろ。
てか即答できなきゃ駄目でしょ、今の収入で生活できるかくらい自分達で考えて。
この件に関しては後で考えてもらうとして、そもそも皆さんの冒険者としての腕前は如何なものなんだろうか?
何処の街に行ってもいいんだけど皆さんが受けることが出来る依頼があるのか、受けた依頼を無事こなせるのか、それが問題じゃないですかね。
ちょっと皆の冒険者ランクとか、現状どんな感じなのか聞いてみたいな。
皆さんの冒険者ランクを聞いたところ皆似たり寄ったりで、一番冒険者歴の長いスポンジさんも総合ランクD、パーティーで一番自信があるという護衛のランクもDだという。
ただ話を詳しく聞いた感じでは別にこのパーティーが他の冒険者パーティーに比べて実力が格落ちというわけではない。
特に護衛依頼でだが、盗賊に襲われる率が他のパーティーに比べて高いので依頼の完遂率が悪いのだ。
襲われる率が高いのは分かる。
俺が盗賊団で軍隊と男冒険者パーティーと女冒険者パーティーのどれを狙うか聞かれればそりゃ女冒険者パーティー狙うよ。
どれが弱いのか戦わなきゃ分からないけど、勝てそうに見える方を狙うからね。
ベストは襲われた時に勝つことじゃなくて襲われないことです。
実際にはキラーマシーンが1匹混じってるし、盗賊を返り討ちにする率もまあまあ高いのだが、大事なのは依頼を無事達成できるかどうかだからね。
実力があって依頼達成率85%と実力がクソ雑魚で依頼達成率95%なら依頼主は後者のほうに頼むものだよ。
本当の実力なんて見えないし、実力があってもそれを活かせるかは別問題だし、仕方ないね。
とりあえずだけど、誰か1人でいいから総合か依頼に1つCランク付いてから本拠地変えたほうがいいと思う。
他の街行ったところで依頼があっても高い依頼受けられないと結局生活厳しいし、達成できなきゃお金出ないし。
1つの街でやったほうがランク上がりやすいし、依頼達成率が上がれば指名依頼だって入るようになるし、収入も安定するようになる。
この街で依頼を地道に受け続けて実力と依頼達成率とランクを上げて、別の街に行って指名依頼もらえるくらいになってから移動しよう。
という結論なんですけど、駄目?
割と真面目に答えたよ、決して俺がいるアズールに来させないようにするとか、そんな私情は一切入れてないよ。
スポンジさんから質問、知り合い以外から指名依頼ってたくさん入るのか?
たくさん入るよ、俺とか指名依頼多くてスケジュール調整してる、最近忙しいし指名依頼の数も多いから断ってるくらいだから。
どうして皆さんそんな暗い顔をするのですか……知り合い以外から指名依頼が来たことが無い……無い!?
あー、その、うん、依頼していればその内信用とかが積み重なって、指名依頼来る、んじゃないですかね。
多分、きっと、メイビー。
ちなみに俺は冒険者3年目、15歳の頃には指名依頼来るようになったけどね、別に自慢じゃないよ。
同じ依頼主から何度か依頼受けていると、少しお金が高くなってもいいから俺が良いって依頼者が増えてくるんだ、別に自慢じゃないよ。
で、依頼主経由でまた別の固定の依頼主が出来るんだよね、最近は指名依頼が多くて断るほうが大変だけど、別に自慢じゃないよ。
そんな大して自慢にもならない話をしていると目の前の人達がなんかプルプルして、俺の金言をあまり聞かなくなってきた。
これ以上話をしても無駄かな、じゃあ最後にここは専門家に意見を伺うべきでは、と提案するとムンクが専門家? とオウム返しをしてくる。
冒険者の生活や依頼に関する専門家の知り合い紹介してあげるから、そいつに話聞いてみればいいよ。
明日の夜にスポンジ名義で居酒屋ブラックで予約しておいて。
俺は行けないけどそいつに行くように話しておくから。
じゃあ俺は帰るわ、そいつの紹介料はここの支払いでいいよ。
心の中でまた明日、そう呟いて自宅に帰った。
夜、兄に土産のイカの丸焼きをご馳走したら大変喜ばれました、世界が変わっても海産物は人気。




