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41 討伐Bランクの試練 前編

 リヴァイアサンの怒りを買ってしまった俺は、海がないアズールに避難した。

 まさかイビルクラーケンが人間やマーマンに変化するなど考えないだろうからバレはしないだろうが、リヴァイアサンがどんな能力を持っているか分かったものではない。

 もし能力が無かったとしても、普通ならありえない話であるが、海のモンスターとの内通者がいるかもしれない。

 こんな人間が大量のマーマンの魔石をギルドに納めてましたよ、なんて情報が流された日には俺は海に出た瞬間、鯉のいる池に投げ込まれたパン屑のような状況に陥ってしまうだろう。

 ありえない話なのであるが、ありえない存在がここに1匹いるものだからちょっとだけ疑心暗鬼になってしまう。

 でも海に近づかなければ安心、アズールを拠点に依頼を受けたりして半月ほど経ったある日、冒険者ギルドの職員から偉い人が呼んでいるので来てほしいと言われた。


 はて何の話だろうか。

 人間に対してはあまり悪いことをした覚えも、依頼で揉めた覚えもないので心当たりは無い。

 最近指名依頼をあまり受けていない件だろうか?

 最近はモンスターを捜したほうが能力も増える可能性があるし、お金も稼げるのでモンスターを探す時間を多く取るため指名依頼を受ける数を減らしている。

 でもそのことに関してどうこう言われる筋合いはあまり無いんだよな。

 突き詰めれば結局日雇い労働者だからね、俺は。

 そんなことを考えてながら職員に案内された先は、アズールの冒険者ギルドの副ギルド長、通称副長の部屋だった。



 副長の部屋に入ると、まあそこにかけたまえ、と応接用の椅子に案内された。

 どうやら悪い話では無さそうで一安心である。

 副長も俺と向かい合うように座り、是非君と一度話をしたいと思っていてね、と前置きから話すが、絶対にそれだけの用件じゃないことは分かる。

 最近ずいぶんと活躍をしているようだね、と持ち上げてから、特にモンスターを多く倒しているようだが、いつも一人で倒しているのかね、と聞かれた。


 この質問の意味は何だろうか、もしかして不正を疑われているのだろうか。

 モンスターを倒すときは危険を伴うため複数人でパーティーを組むのが一般的だ。

 パーティーでモンスターを倒し、魔石を手に入れて冒険者ギルドに納入すると、お金がもらえると共に評価が上がる。


 しかしここで若干の裏技というわけではないのだが、評価を高める方法がある。

 複数人で倒したモンスターを1人で倒したとして報告する方法だ。

 例えばオーク10匹分の魔石を納入するにしても、4人パーティーで倒したのと、1人で倒したのでは当然ソロの方が評価が高い。

 4人パーティーを組むのならば1人1人が弱いという話ではないのだが、1人で倒した方が4人パーティーのメンバー1人より強いと思われるのはごく自然な話である。

 それを利用して、本当は4人で倒したのに1人で倒しましたと報告するのだ。


 もちろん報告した1人しか評価されないのだが、1人だけ評価を上げてランクを上げたいという場合この手段は非常に有効になる。

 1人だけランクを上げるメリットは、討伐依頼の多くが討伐ランクC以上がパーティーに1人以上というような条件になっているからだ。

 パーティーメンバーが入れ替わることは冒険者の間では珍しくない。

 そのためパーティー全員が同じランクではなかったり、一人だけ低いとかはよくある話だ。

 だから全員討伐ランクC以上という依頼を出しても、受けられないパーティーが多くある。

 依頼を受けられるパーティーが少なければ好条件で無いと依頼を受けてもらえる可能性は下がり、依頼主が困るのでそのような依頼は少ない。

 だからパーティーメンバーの1人だけ討伐ランクが高いことは討伐依頼を受ける時にとてもメリットがある。

 そのため4人で倒したのに1人で倒しましたと報告することで、1人の討伐ランクを早く上げようという不正に限りなく近いことが行われることがあるのだ。

 

 つまり今、俺にこのような不正の容疑をかけられているのではないだろうか。

 もちろん俺はこのような不正は行ってないし、その恩恵を受けるパーティーメンバーは誰だと言いたい。

 もしそのような話であるならば、それでも俺はやってないと硬く主張しなければならない。


 モンスターを倒すときはいつも一人ですが、と答え副長の反応を伺う。

 俺が身構えていると副長から、最近マーマンをずいぶん倒したそうだね、ガタシンのギルドから聞いたよ、と笑顔で言われたが、そっちはまずい。

 確かに心当たりがある、最近マーマンをたくさん倒したのは俺だ。

 ガタシンで魔石を納入しているしそれは紛れもない事実だ。

 そしてあの海域にはリヴァイアサン様がいる。

 もしかしたらイビルクラーケンが見つからないことに怒ったリヴァイアサン様が、ストレス解消に人間を襲っているかもしれない。

 そのことについて関連を聞かれるのは、大変よろしくない。

 本当はやったけれど、それでも俺はやってないと主張するべきだろうか、悩む所だ。


 はあ、とだけ答えておこう、痛い腹は探られたくない。

 それからどうやってマーマンをそんなに多く倒したのか聞かれたが、これについては部外秘なので答えられませんと流した。

 今となっては懐かしいメタルホーンラビット乱獲の件についても、答えられませんとしか答えられない。

 印象が悪いように思われるかもしれないが、儲ける手口など冒険者ギルドであっても明かさないのが普通だ。

 それにマーマンやメタルホーンラビットの倒し方を実際に見せてと言われても見せられない。

 合成獣の能力は俺が何に変えても絶対に隠さねばならない機密だからね。



 そんな風に受け答えしていると副長から、実は君を討伐ランクをBに上げるかという話があってね、異例の早さだがその昇格試験を受ける気はあるかね、と嬉しい話が出てきた。

 ありますあります、とてもあります、早く総合ランクをBに上げたい身としてはどの部門でもランクがBに上がるのに越したことは無い。


 もちろん受けさせてもらいますと答えると、いつも通り、パーティーメンバーは無しの、1人でいいのかね、と言葉に若干含みを持たせたような聞き方をされた。

 どういう意味だろう、何らかの意図がありそうな質問だったが。

 よく分からないけど何一つ困ることはないし、1人で問題無いよな、試験で何かあるのかな?

 そんな変わった試験なのですかと聞くと、普段やっているようにアズール近辺でモンスターを探して倒せばいいらしい。

 ただし冒険者ギルドからの同行者、つまり試験官が何人か付く事になる。

 これは試験を受けるのが1人でもパーティーでも同様だ。

 じゃあ問題ないから1人でお願いしますと伝えると、副長はそうか……と一言だけ答えた。

 なんか変な感じなんだよな、と思いながら昇格試験の日程と内容が知らされた。

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