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40 金と命の価値は 後編

 普段は大衆居酒屋のような店に行くことが多いのだが、今日の話がポロッと出てしまうかもしれないので話の漏れにくい個室のある店にしようとなった。

 最初はもちろん金の話を出さないようにしていたのだが、酒が進むにつれて徐々に話したい衝動が止められなくなる。

 フェルノからそういえば金貨(アレ)って結局何なの、という話題が出た。

 さぁ何だろうね、ただ500年前のトウダ国の時代に使ってたものらしいけど、と絶対に自分達が所持していることは口に出さないようにする。

 ふーん、よくそんなもん見つけれたなぁ、とフェルノは言うが、俺だってあの5年ほど前に助けた女の商店の主人から話を聞いていなければあんな場所行かないからね。

 あそこまで具体的な情報があれば潜れるなら見つかるわ。

 双子島の近くで金を運んでいた男達から直接沈没したって話聞いてるんだから……。


 ……? なんか変じゃね?


 おかしくないか、金を運んでいた船が沈没して商店の主人が男達を助けた、それって何時の話だ?

 あの主人が見た目より年齢高かったとしても、精々50年とか60年前の話でしょ?


 なんで500年前の金貨が見つかったんだ?


 ガドサ島は20年ほど前まで金の採掘が行われていた。

 普通に考えれば沈んだ船はガドサ島で採掘された金を輸送していたと思われる。

 その場合わざわざ現在使われていない金貨なんかにして運んだりせず、適当な金の塊とかにして運ぶだろう。

 過去に金が採掘されていたということで観光用などで展示するのに金貨が何十枚か展示館にあったとしても、300枚も400枚も展示用に保管しないだろうし、一気に移送しないだろう。


 じゃあ何故あの船は500年前の金貨を積んでいたのか?

 マーマンがどこかで拾って持ってきた可能性もあるし、過去にあの海域で金貨を積んだ船が沈んだ可能性もある。

 となるとあの商店の主人が助けた男達が乗っていた船は何処へ行った?

 ここから導き出される答えは一つ。


 金を積んだ沈没船はあの海域に2隻あったっ……!


 だからあの海域にはもう1隻金を積んだ船があるはずだ、沈没船はまだ10隻以上ある、これはまだまだお宝がザクザク出てくる予感がするぜ!

 どうした急に笑って、とフェルノに心配されたけど気にしないで、ちょっと楽しみが増えただけだから。



 半月ほどして待望の嵐がやってきたので残りの沈没船を一斉に家宅捜索した。

 マーマンの皆さんが沈没船に不法滞在していたので、家賃代わりにイディや貴金属、魔石などを強制徴収して懐にしまった。

 どちらかというとシノギに近いかもしれない。

 そして金塊を積んだ船はあったのだが、あの大量の金貨を見た後に見るとちょっと期待はずれな量。

 それでも数百万円分はあるんだろうけど、アレを見た後じゃねぇ。


 我ながら贅沢になったものだ、と一人感慨にふけりながら地上に戻る途中、貴金属が入った袋が破れて中身が海の底に落ちてしまった。

 前回の買取り価格を考えればそこまでの価値はないのかもしれないが、金目の物を拾いに行かない理由はない。

 でも今は手荷物が多いので後で回収しよう。

 一度地上に戻り海の洞窟でアイテムボックスを出したところ、魔力が心もとないことに気付く。

 この海の洞窟も空間魔法を使える精霊が少ないので1回アイテムボックスを出すのにかなり魔力を使ってしまうようだ。

 うーん、落とした貴金属はまた後日拾いに行くか。

 海中に目印が無いから探すのに時間かかりそうだし、今行っても持ち帰れないからね。


 翌日、マーマンになって落とした貴金属を探しに行った。

 マーマンなのはイビルクラーケンより海底の物を探すのが向いているからだ。

 何処で落としたか分からないなー、と思っていると恐ろしい生物を見えて体がブルッと震えた。


 全長五十メートルはあろうかという巨体。

 その巨体には強靭な鎧を連想させるような鱗がびっしりと並んでおり、どんな武器をも弾き返すと言われている。

 あまりの巨体のため海面近くを泳げば渦ができ、気性はムラがあり穏やかな時があればとても荒く凶暴な時もあり、そんな時に出会ってしまえば船はあっという間に海の藻屑と化す。

 海で出会うモンスターの中でも最強クラスのモンスター、リヴァイアサンがそこにいた。


 何故リヴァイアサンがこんな場所に、いやどこで出会ってもおかしくはないのだが、一生に一度見るかどうかという超レアモンスターだ。

 人間で出会えば、敵対している生物で出会えば死から逃れることはできなかっただろう。

 とりあえず撤収だ撤収、万が一機嫌が悪くなって見たもの全てぶっ殺すみたいな機嫌になったらたまったものではない。

 落とした貴金属なんて誤差みたいなもの、わざわざ火中に栗を拾いに行く必要はない。

 Uターンして最寄りの港町であるガタシンに戻ることにしたが、視線を感じて後ろを振り返るとリヴァイアサンがこちらを見ていた。

 思いがけず目が合ってしまう、その迫力の余りオシッコをちびりそうになった。



 命からがらガタシンへ帰還し、冒険者ギルドを覗いてみるとリヴァイアサン出現に伴いギルド内が騒然となっていた。

 情報も錯綜していて何が何やらという様相だったので一旦引き返し、しばらくしてから再度訪れたところ、リヴァイアサンが出現した理由が判明していた。

 どのような魔法か知らないが、リヴァイアサンは知能が高いため交信することが出来る技術があるらしく、それを用いて話を聞いたところ驚くべき内容であった。

 この周辺で半月ほど前、イビルクラーケンというモンスターがマーマンを襲って金品を巻き上げ、命まで奪うという残虐非道な行為を働いたそうだ。

 その後しばらく鳴りを潜めていたものの、また昨日同様の狼藉を働いたことからリヴァイアサン様が誅することになり、イビルクラーケンを捜索しているそうだ。


 そんな事情があったのか、と理解した俺は手が震えたので握り拳を作ったが今度は腕が震え出した。

 もしあの時イビルクラーケンで貴金属を拾いに行っていたら、俺は確実に殺されていた。

 マーマンとリヴァイアサンが裏で繋がってるなんて聞いてないぞ。

 沈没船探索は前世でも異世界でも命懸け、とりあえずこの海域にはしばらく近寄らないでおこう。

 リヴァイアサンか……あのモンスターはターゲットではないが、いつかあんな感じの化物と戦わなきゃいけないのか。

 神様、金塊を貢物にしますから化物(ターゲット)討伐の件、許して頂けませんかね……?

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