38 リメンバー沈没船 後編
ガタシンでたまに使う少し高めの宿屋の一番広い部屋を取って本日の収穫を確認する。
まずマーマンの持っていたお金が全部で約30万イディ。
結構金持ってるんだな、海で死んだ人間の財布から盗んだのだろうか。
次にマーマンの魔石25個、1個6000イディなので15万。
1日モンスターを倒して魔石だけで15万イディ稼げるとか真面目に物を配達してるのが馬鹿らしくなるな。
普通の冒険者ならマーマンを倒すのに船を使わなければならないし、最低4人で活動しなければならないので1個6000イディでも決して高くはないのだろうが、俺は設備投資0で1人だから大儲けだな。
あと貴金属類、これも人間の死体から剥ぎ取ったものか?
マーマンのサイズでは無いんだよね、ネックレスも指輪もマーマンが装着することは出来ない。
これらはいくらになるか全く分からないな、でも売却するのに問題は無いだろう。
最後に本日の目玉、金貨らしき黄金色の硬貨状の物が377枚。
俺は専門家でもコレクターでもないから価値は分からないけど、金貨っぽいから高価に決まっている。
仮に1枚1万イディだとして377万イディとして計上しておこう。
今日1日で推定422万イディ+貴金属。
この世界の商社で働く正社員の平均年収が450万くらいだったと聞いたことがあるから、1日で一般人の年収分のお金稼いでしまったよ。
普段だったら4、5万稼いで儲かったわーと大笑いしているのだが、今回は稼ぎすぎてしまってどうリアクションしていいのか分からない。
とりあえず貴金属類は売り払って金貨の価値を調べたいところだが、比較的信用できる人物にも見てもらいたい。
知り合いの貴金属に詳しい人物……アズールの宝石加工業のココヤマに見てもらうか。
宝石取り扱ってるくらいだから貴金属類も詳しいだろう。
もちろんココヤマにすぐ売らず何件か質屋とか回って値段見てもらうけど。
金貨については詳しいかどうかは分からない。
でもココヤマの工房の従業員が詳しいかもしれないし、知らなくても何らかのツテがあるかもしれない。
何にせよ一度会ってみないと分からん、まずは今日パーッと派手に行こう。
数日後ココヤマのいる工房を訪ね、近いうちに少し時間を作れないかと聞いたところ、短時間なら今でも構わないというので貴金属類を見てもらった。
ココヤマから、これはどうして?(正規ルートのもの?)と聞かれ、いわく付きじゃないが拾った(あまり言えない事情がある)んだけどどのくらいの価値かと思ってね。
とりあえず知り合いに見てもらってから他回ろうかなと(表に出しても困らない品だよ)、などとやりとりをした。
なるほど、とココヤマは指輪やネックレスを手に取り、偽物もありますが悪くないですね、と一つ一つ調べていく。
おおよそ半分に分けてこっち側は偽物、残りは本物でまとめて買い取らせてもらうなら7万というところですかね、という評価額になった。
中古品で海水に長時間浸っていたから大した値段じゃないのかな。
といっても俺の買った物じゃないから、元の価値が全く分からないので適正価格なのか全く分からないのが難点だな。
一応他の店回ってから売るか決めていいか(信用はしてるよ)、と聞くと、どうぞどうぞ(ちゃんと査定してますから)と言うので一旦この取引は終了となった。
翌日ココヤマに会って貴金属類は7万で引き取ってもらった。
ココヤマに古物商で金貨に詳しい人を知らないかと尋ねると、私もある程度は分かりますよと言うので3枚の金貨を取り出して見て貰った。
俺はココヤマに、正規の依頼じゃない依頼を受けた(詳しく話せません)ときに拾ったんだけど、昔の金貨だよね、と尋ねるが返事は無く、ココヤマから少し待ってと言われ、専門家に見てもらったほうが良いですねと言う。
ココヤマから名刺をもらい、この骨董品屋は信頼できますから俺の名刺を見せてもらえば大丈夫です、と言うので紹介してもらった骨董品屋を訪ねた。
店主のセイノースにココヤマの名刺を出し、この金貨を鑑定してほしいと依頼したところ金貨を見て、これはいい仕事してますねぇ、などと言いながら金貨を調べた。
鑑定や如何に。
セイノース曰く、この金貨は今から500年程前、大陸を統一していたトウダ王国の時代に使われていた金貨の本物に間違いないという。
イディの普及に伴い、金貨の多くは別の用途に使うため回収されて溶かしてしまったため現存している物は少なく、今回の依頼品はその中でも最も純度の高い金貨で大変な貴重品なのだとか。
へぇ、割と古い物なんだ、もし買い取ってもらうならいくらくらいになるんだろう。
セイノースに質したところ、買取ですと1枚8万ですね、ココヤマさんからの紹介ですので教えますが、1枚10万で店舗に並べますよ、とさらっと言われた。
?
買い取り8万? 売るとき10万? 今日持ってきた3枚で30万?
377枚だといくらになるんだと混乱していると、セイノースからとても貴重な品ですから大事にしたほうが良いと思いますよ、と言われたがさすがにこれだけの枚数があると分かれば希少価値が暴落しそう。
更にセイノースから、今の時代ならこの金貨を溶かして更に純度を高めれば1枚13万ほどの金板になりますからねぇ、と更に価値を高める方法を聞いてしまった。
街や命を守る装備を作るためとはいえ、希少で歴史価値のある金貨がどんどん溶かされて私は悲しいですよ、ですからこの金貨は是非このまま大切にして下さい、と言われたが、すいません、すぐに金板にします。
金板ならばコレクターズアイテムではないので暴落することはないだろう。
装備を作るための材料ならいくらあっても足りないくらいだ。
最後に鑑定料を聞いたところ、これだけの逸品はなかなか見れないので無料で良いという。
この後金板になるからもう少し見てもいいよ?
問題は黙ってこの金板の作業を行ってくれる信用できる鍛冶屋がいるかどうかだが……鍛冶屋の友人がいたな。
激動の展開に何か見落としている気がするが、とりあえず協力依頼を取り付けねばなるまい。
俺は故郷のバンギに帰ることにした。




