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37 リメンバー沈没船 中編

 イビルクラーケンの俺は海底までゆっくりと沈降していく。

 10本の手足には中古の剣や斧、ノコギリのほか小回りの効く金槌やナイフなどを装備している。

 海水に浸って腐食するかもしれないので安価な量産品を用意した。

 素手でもマーマンには負けないけど刃物があったほうが早い。

 イカは手足だけで多くの物を手に入れることが出来るけれど、手足と武器があればより多くの物を手に入れることが出来るからね。


 海底に到着して沈没船を捜索して第一沈没船発見、早速調査に当たる。

 ドアから内部に侵入しようとしたが鍵がかかっているので、穴の開いている場所から長い手を伸ばして鍵を開錠。

 まずはマーマンを殲滅してゆっくり船内を漁れる態勢を作ろう。

 船内を検索した結果自室らしき部屋でマーマンが1匹ずつ合計4匹ぐっすり眠っているのを確認した。

 激しく暴れると他の部屋のマーマンに気付かれるので慎重に部屋に侵入。

 4本の足でマーマンの手足と口をガッチリホールド、寝ていたマーマンも俺の存在に気付いたがホールドされた後ではすでに手遅れだ。

 おはようございます、死ね!(小声)


 1匹目のマーマンへの永眠ドッキリは成功、魔石などの剥ぎ取りは後でまとめて行うので次のマーマンを狙おう。

 2匹目も同様に終わったのだが、3匹目のときに寝ている態勢がホールドに都合が悪く少し暴れられたので隣の部屋の4匹目が起きてしまった。

 最後のマーマンは俺の姿を見て逃げようとしたが逃がしたりはしない。

 逃げ場は封鎖してあるので壁に追い詰めたマーマンを吸盤でガッチリキャッチ。

 動きの封じられたマーマンが寝込みを襲うのは卑怯だと心の中で思っているかもしれない。

 しかし勘違いしないでほしい、今回はナワバリバトルやガチマッチをしに来たのではない、正々堂々の勝負などしないのが大人だ。

 それに卑怯も何も、俺が昔ダイオウイカで訪れた際は1対4で襲ってきたじゃないか。

 あれだって十分卑怯な分類に入れていい、そして戦いは卑怯者が勝つことが多い。

 マーマンに金塊やお宝は何処だ、と言わんばかりに壁にナイフでイディを示すΨの文字や宝石を示す形を書くが、ただ抵抗するだけ。

 仕方ないのでマーマンの魔石というお宝を奪っていくことにした。

 

 手始めに4匹分のお宝を手に入れて、目撃者がいなくなったところで金目の物を隠していそうな場所を徹底的にチェックする。

 各部屋の机の引き出しやロッカー、倉庫はもちろん、マーマンの所持品と思われる袋も一箇所ずつ例外なくチェックしていく。

 そして船特有の収納スペースも忘れてはいけない。

 例えば長椅子などが固定して設置してある場合、椅子の座る部分が取れるようになっており、ここにお宝が眠っている場合がある。

 他にも意外と数の多い床下収納、ベッド下の引き出しの奥、今回はマーマンだから無いけど靴の中や底もチェックの対象だ。

 前世の仕事で他人の船を漁っていた経験が生きるぜ。


 1隻目が終わり、金塊は見つからなかったが俺達が普段使っているイディ硬貨は6万イディほどあった、思わぬ副収入に笑いが止まらない。

 しかし想像よりも多くの時間を費やしてしまった。

 このままでは嵐が終わる前に何隻襲えるか。

 猫の手も借りたいという言葉があるが、10本の手足があっても全く足りていない。

 だが金塊がなくても魔石はもちろんイディもある可能性があるという事実はやる気が出る。

 抽選のガラガラを回してハズレだけどちょうど欲しかった箱ティッシュを貰えた気分になる。



 2隻目、3隻目、4隻目と順調に襲っていく。

 数をこなせば慣れるものでどんどんスムーズになっていき時給が上がっていく。

 お宝はまだ未発見だが何故か知らないが全ての沈没船にイディがあるのでやる気が衰えることは無い。

 マーマンのいる沈没船がどんどん宝船に見えてくる。

 やっていることは完全に押し込み強盗殺人なのだが、モンスター相手だと罪悪感は無いのでお宝探しゲームをしている感覚に陥ってしまう。

 5隻目が終わった所で戦利品が多くなったので一旦ガタシンから少し離れた海の洞窟に移動してアイテムボックスを出す。

 整理は後でやるからとりあえずアイテムボックスに奪った物を押し込んで新しい宝船に乗り込めー。


 そして7隻目のマーマンにも同様に金目の物を出せ、と刃物を突きつけて問いただしたら、コクコクと頷き、若干拘束を緩めたところ倉庫に案内された。

 倉庫の奥には人間が使用していたような、いかにも宝箱と言わんばかりに蓋が丸みを帯びた形の箱があった。

 マーマンが指差していることから、それで勘弁してくれということだろう。

 おっ、これは当たりかな、じゃあ解放してあげよう、この世からなっ!

 俺は金目の物を出せと示しただけで、出したら命を助けてあげるなんて約束していないから約束は破っていない。

 そもそもこのマーマンだって人間の命乞いに耳を傾けたことなんてないだろう。

 コイツは期待できそうだ、と思って開けたところ中身は空だった。

 あの野郎、殺してなかったら間抜け扱いされるところだった。


 ……んっ、この箱なんか違和感がある。

 そもそもなんでこの空箱をマーマンは後生大事に保管してあったんだ?

 もしマーマンがこの箱まで案内させられて箱を開けろと命令されたら、どうやって乗り切る気だったんだ?

 箱の底が少し曲がっているのか……これは二重底か?

 ノコギリやナイフを使って二重底を開けるとそこには小さな黄金色をしたコインが大量に眠っていた!


 おおっ、おおおっ。

 金じゃ! 埋蔵金じゃ! ゴールドラッシュじゃ!

 詳しくは知らないけれど、イディが普及する前は金貨を使用していたと聞いたことがあるのでその時代のお金かな。

 これはこの箱ごと持ち帰ったほうがいいな。

 一旦この箱を持ち帰りアイテムボックスに入れてまたこの船を探索しよう。


 この宝箱のあった船を入念に捜索するも2箱目の金貨の入った宝箱は存在しなかった。

 残念だけど成果は十分すぎるほどだ。

 あとさっきのマーマンにはちょっと可哀想なことしたかな、と思って遺体は海の底の砂の中に埋葬してあげた。

 来世では金持ちに転生させてやってくれ、と願いを込めて金貨を一枚握らせてやった。

 だけど金持ってても幸福になるとは限らないんだよな。

 押し入り強盗は金持ちを狙うし、俺もマイホーム持ちを狙っているわけだし。

 うーん、金貨は三途の川の渡し銭や閻魔様へのワイロでも使ってもらえばいいか。

 マーマンにあの世があるかは知らないが金貨一枚で身を滅ぼすことはあるまい。


 とりあえず今回はこんなものかな、嵐はもう過ぎ去って時化もじきに収まる頃合だ。

 埋蔵金がお幾ら万イディか気になるしお宝探しは今回は終了。

 一旦宿に戻って本日の成果を確認したくて仕方が無いのだ。

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