↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/77

36 リメンバー沈没船 前編

 モンスターを捕食し始めてから半年ほど経ち、そろそろ大きく舵を切るべきかもしれないと思うようになった。

 現在の状況としてはとても安定しているといっていい。

 指名依頼は定期的に入るため依頼が無いということはなく、モンスターも楽に狩れるようになった。

 収入は安定していて貯金もかなり出来る状況で、普通の生活をするのであればなんら問題は無いといっていいだろう。

 しかし俺の成すべき事はあくまでもターゲットの討伐であり、その期限は未定ながらも安全が保障された20歳まであと1年半くらいしか猶予が無い。

 ここで一度今後やるべきことなどを整理してみよう。


 今後ターゲットの討伐に向けてやるべきことはおおまかに4つある。

 新規モンスターの捕食、総合ランクBへの昇格、装備の充実、金稼ぎの4つだ。

 新規モンスターの捕食は当然必須、様々な状況に対応できるようになるし、戦闘において有利な状況を作り出せるので今後とも続ける必要がある。 

 そして総合ランクBへの昇格も実は必須である、なぜならこのBランク昇格が装備の充実と金稼ぎに密接に関係しているからだ。


 総合Bランクになることの何が重要かと言うと、社会的身分や信用が格段に上がりCランク以下では手に入らない情報が入手できる。

 他にも正式に外国に行けるようになるし、上級オークションに参加できるようになるなど行動範囲も広がる。

 CとBでは社会的身分がとてつもなく違う。

 大企業で例えると、Aランクは社長、Bランクは重役、Cランクは平社員くらい違う。

 大企業の重役クラスと平社員を比べれば社会的身分はもちろん、入ってくる情報やアポイントメントを取れる相手も違ってくるのは考えなくても分かるだろう。


 ちなみにターゲットの大半は外国にいるので正式に外国に行けるようになることは重要なことだと思えるかもしれないが、実はそれほど必要ではない。

 俺が今いる大陸には人間の5つの国があるが、正式な手続きを踏まなくても普通に空飛んでいけば国境なんて越えられる。

 そこで顔を変えて新たに冒険者証を作れば新たな現地の住人の出来上がり。

 なので今でも普通に外国に行ける。

 だがBランクという身分は外国でも通用するし、正式に行けるようになって不便になることはない。


 上級オークションは一定以上の身分が無いと参加できないオークションで、一般的なオークションではお目にかかれない高級品が出品されることが多い。

 そして大半の高級装備やマジックアイテムはこの上級オークションに出されるのだが、どれだけ金を所持していても一定以上の身分が無いと参加できないので今の俺では参加できない。

 今後俺も上級オークションに参加したいのだが、一番簡単な方法が総合ランクをBに上げることなので総合ランクをBに上げる必要があるのだ。



 Bランクに昇格して上級オークションに参加し高級装備やマジックアイテムを入手することで俺の装備の充実を図る。

 そのためには金稼ぎをする必要があるというわけだ。

 もちろんオークション以外でも高級装備やマジックアイテムを入手する方法はある。

 例えば高級装備はコネがあれば職人に直接依頼して作ってもらうことも出来るだろうし、誰かに売ってもらうことも出来るだろう。

 マジックアイテムだってオークションじゃなくても専門店で購入するほかにダンジョンで自力で入手するという手段もある。

 しかしオークション以外での高級装備やマジックアイテムの入手は若干どころではない問題点がある。


 まず高級装備を作ってもらえるようなコネは現在無い。

 仮にそのようなコネを構築するとなれば一定以上の身分の人とそれなりの関係を築く必要があるのだが、基本Cランク冒険者では相手にされないので結局Bランク以上に上げる必要がある。

 誰かに売ってもらうのもそもそもアテが無いし、所有している人は基本それなりの人物なので会うにしてもある程度の身分が必要で、やっぱりCランク冒険者では難しい。


 他の入手手段として、マジックアイテムは専門店で購入できる。

 だが、かなりの種類があるし人気のある物は品薄になりがち、また安定供給されないため俺が必要とするものが置いてあるかは運次第。

 そして紹介状無しでは入店不可、ちなみに総合Bランクならばギルドから紹介状を出してもらえる。

 ダンジョンで自力入手ならばお金もほぼかからないが、欲しいものを確実に手に入れる方法はほぼ無いため何百回、何千回とダンジョンに潜るしかなくやっぱり運次第。

 さすがに自力入手は時間を無駄に捨てることになりかねないので今取る選択肢には入らない。

 

 最終的に金、金、金。

 いくらランクが高かろうが、上級オークションで良い物が出品されようが、専門店に売っていようが、金が無ければ買うことはできない。

 金が無ければ強敵と戦うのに装備が貧弱では強いモンスターを倒して捕食することが今後困難になる。

 強いモンスターすら倒せないのに化物であるターゲットを倒すのは夢のまた夢だ。

 なのでまずは金を稼ぎながらランクを上げるよう頑張りつつ、良い装備の入手機会があれば装備を整える。

 そして可能な限り新しいモンスターを倒して捕食して出来る事を増やし、ターゲットの討伐プランを練って討伐する。


 つまりまずは金稼ぎだ、これをしなければ始まらない。

 金を稼ぐためにモンスターを倒したり依頼を受けたりするのだからいつかランクも上がるだろう。

 しかしちょっとやそっとの金では駄目だ。

 俺の欲しいものリストにあるものの中には数千万、数億イディの価値のあるものもあり、大きく稼ぐ必要がある。

 賭場で稼ぐ手もあるが、正規な賭場はその地域のオフシーズン限定で許可されている形態がほとんどなので、一年中やっている賭場は闇賭場くらいだ。

 正規な手段で大きく稼ぐためにはどうしたらいいか。

 もう一回挑戦してみるか、今ならば出来るに違いない。

 そう考えた俺はある島に移動した、リベンジマッチだ、あの時の無念を晴らす!



 というわけでやってきました金塊を積んだ船が近くの海の底に眠っているかもしれない島、双子島に。

 前回は沈没船を不当に占拠するマーマンの集団に撤退を余儀なくされてしまったが、今回の俺は前回の俺とは全く違う。

 見よこの巨体を、人間が戦った場合危険度はマーマンの30倍、体長はダイオウイカの5倍、黒く巨大なイカ、イビルクラーケンだ。

 見た目は今回もイカだがあの時とは凶暴さが違うぞ、あの時銛でケツを刺された恨みはまだ忘れていない。

 利子をフグくらい膨らまして返してもらうぜ。


 今回の作戦であるが、マーマンの習性を利用した奇襲作戦で行こうと思う。

 モンスターの遺伝子を取り込んでそのモンスターになることで初めて分かる事が多く、例えばマーマンの遺伝子を入手してマーマンになって生活すると、今まで知られていなかったその種族の生態や習性、独特な行動を知ることがあるのだ。


 冒険者ギルドや図書館には国の研究機関が調べたモンスターの生態や習性を記した通称モンスター図鑑という本がある。

 俺も読んだことがあるし参考にさせてもらうのだが、実際にモンスターになって生活すると間違いが多いことが分かる。

 前世でも動物の習性については近代に入ってから判明した事実が多くあるのでこの異世界の文明レベルでは仕方ないのだが、かなり勘違いや間違いが多い。


 このイビルクラーケンもそうだ。

 例えば小島や人里離れた海岸で人間の乗った船を待ち構えて、視界に捉えた船を襲う習性があるといわれているがそれは間違いだ。

 実は肌の黒色を保つため天日干し(日焼け)をしているだけで別に人間や船を待っているわけではない。

 メスのイビルクラーケンにモテるため陽当たりの良い場所で肌を焼いているところを見られたのが恥ずかしくて襲ってくるだけだ。

 陸上では海中での半分も力を発揮できないため俺でも倒せたが、海中で出会えば倒すことはおろか逃げることすら困難だっただろう。


 他にもマーマンの場合、同一個体が数日間に渡り追跡してきた報告が多数あったことから睡眠を必要としないと書いてあるが、これも間違いである。

 俺が実際にマーマンになって生活した結果、マーマンは人間と同程度の睡眠時間が必要であった。

 ただし人間と違って寝だめが出来るので最大1週間ほど眠らず活動することが可能なのだ。

 だから逆に数日間に渡り寝だめする瞬間がある。

 そのタイミングは海が嵐により波が高い、いわゆる海が時化ているときに寝だめを行うのだ。


 人間は時化ているとき船を出すことは少ない。

 だから時化ているときはマーマンは現れないというのは船乗りの常識である。

 しかしこれも少し間違いで、獲物である人間がいないからというのも間違っていないが、実はマーマンは波が高いときに海面付近にいると波酔いしてしまうので戦うことが出来ないのだ。

 このため海が時化ているときは海の底付近で寝だめをしている、長時間行動するために熟睡している、つまり隙だらけなわけだ。


 長期間の検証をしていないが、自分がその生物なので数日間あれば基本的な生態は知ることが出来る。

 一度倒して捕食する必要があるとはいえ、この生態の解明は2回目以降の戦闘で大きなアドバンテージになる。

 そしてマーマンの生態を知った俺がやることは一つ。

 今日は嵐で海は大時化、熟睡しているところを寝起きドッキリならぬ寝起きバッサリして数日どころか永眠させてやるぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。