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32 モンスターハンター2nd 前編

この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。

 先日見事モンスターを捕食してそのモンスターに変化するという能力に気付いたが、マッドサイエンティストの如く近場のモンスターで色々と実験したところ何個か条件があることが分かった。

 まずモンスターの体の一部だけでは駄目、一体丸ごと一気に食べなければいけないこと。

 尻尾だけとか魔石以外全部とか試したのだが、魔石含めて一体分全て捕食する必要があるようだ。

 他にも時間が経って腐敗したものは駄目、過度に燃えたり水分を含んだものも駄目、推測だが正常な遺伝子の情報を取り込むことが重要なのだろう。

 つまり魔物倒す、遺伝子奪う、俺強くなる……というわけではないな、強くなるわけではなく出来る事が増えるに近い。


 例えばオーク100匹捕食した所でオーク100匹分のパワーや能力を俺が得られるわけではない。

 しかしマーマンを捕食すればシャチやダイオウイカと違い、水中を自由に動きながら人間の手のように武器を使うことができるだろう。

 もちろん力の強いモンスターや素早いモンスターを捕食できればその分野に秀でることはできるけど、最終目標のターゲットの化物に比べれば誤差程度。

 それよりは出来る事が増えることのほうが影響は大きいだろう。

 ただしその特性を発揮するためには完全にそのモンスターにならなければならないのが比較的欠点であるが、知能は意外にも全体的に高いので問題ない。

 では、可能なことを増やすために、俺はモンスターハンターになるぞー!

 まぁただ単にモンスターハント強化期間というだけですが。



 まず出会ったのはイノシシ型モンスター、停止して1、2、3と力を貯めた後ダァーッシュと突撃してくるのが特徴のアントニオイノシシである。

 山であれば獣道で無くても難無く歩く硬い毛と強靭な足腰を持つ。

 イノシシ曰く俺が踏み出した道が、その一歩が新たな道になるとのこと。

 とても勇敢なのでこちらが武器を構えても体格と重量を生かして突撃してくる。

 突撃すればどうなることか、危ぶむなかれ、危ぶめば生は無しとは出会ったアントニオイノシシの遺言である。

 所詮はイノシシなので、うん、小回りが効かないんだ。

 元気があればなんでもできるけど、必ず勝てるわけではないんだ。

 しかし彼を捕食して勇気を得た気がする。

 これから戦ったことのないモンスターと多く出会って危険なこともあるだろうけど、迷わず行くぞ、ありがとう!


 次に出会ったのは探していたモンスター、サンドワームだ、お前のことを見つけたかったんだよ。

 高速で穴を掘り地中を素早く移動する能力は俺の中の動物には存在しない。

 代わりの効き難いタイプのモンスターなので是非俺に貴方の遺伝子を下さい、別に求婚しているわけじゃないよ?

 サンドワームは倒すのはそう難しくないのだが、全長が長いので地中から引っ張り出すのに苦労した。

 まるで大きなカブを引っこ抜いている気分だった。

 捕食後地面に潜ってみたが、地中では眼が全く役に立たないし、地上の音の伝わる速度も違うから現在地や地上までの距離が分かりにくいので要練習。

 これで陸海空に加えて地中も移動可能になったわけだ。


 では目的のモンスターの遺伝子をゲットしたので次は海のモンスターを狙って海のある街に移動しよう。

 現在でも海中を泳ぐことはもちろんできるのだが、手が不自由なので手のある海や湖のモンスターの遺伝子は是非獲得したい。

 とりあえず第一候補はマーマンかな?

 以前行ったことのある港町ガタシンの付近にマーマンのマイホームがあるから探すのがとても楽だし。


 というわけでガタシンの町外れの崖に来たのだが、遠くに何やらサメの群れのような固まりがある。

 サメって群れる動物だったか……?

 と思って良く見てみれば、サメの群れだが中心に別の生物がいる。

 サメの群れにいるのはサメに乗った少年のような容姿をしたモンスター、いや違う、少年が乗っているのはサメじゃない、イルカだ。

 そうか、噂で聞いたことがあるぞ。

 大量のサメが寄ってくるモンスターで、少年に近づこうとサメが頻繁に海面に顔を出すので、海面がサメの顎で満たされているように見える。

 あのモンスターのいる一帯が大量の顎、つまりジョーで満ちていることから付けられた名前はジョーズミチル。

 中心にいるイルカに乗った少年がモンスターだが、周りのサメのほうがある意味モンスターに見えて仕方ない。

 近づくとサメがとても興奮して襲ってくるので水中から近づくのは極めて危険、並の水中モンスターでもアレには近づくことはないと言われている。

 もし戦うなら空から仕掛けたほうがいいんだろうけど、猛禽類では勝てないだろうし、海から仕掛けるにもあのサメの群れは少し荷が重い。

 現状必要な能力でもないので別の場所に行ってマーマンを探そう。

 ぼっちのマーマンを倒して無事にマーマンの遺伝子をゲット、海中のモンスターはコイツを基点にして徐々に使えるモンスターを増やしていこう。


 ガタシンからアズールに帰る道中で、樹に擬態しているトレント型モンスターの中で一番小さいスプラウトレントを発見したので彼の遺伝子を入手。

 樹を消化できるのか心配だったけど、内側は立派な生物だったこともあって無事捕食することが出来た。

 森の中の隠密作業に使える、かなぁ?

 別に野鳥でいい気もするなぁと思っていたら森の中から女性の悲鳴が聞こえた。

 前にもガタシンの道中で似たようなことがあったぞ、この辺りはよく女性が襲われる理由があるのだろうか?

 ……ふぅん、なるほどね。

 一人納得して悲鳴の上がった方向へ向かいましょうか、一応周囲を警戒して悲鳴の方向へ近づいていった。


 そして到着した先ではゴブリン3匹が麗しき外見をした女性を取り囲んでいた。

 ゴブリンは近づいてきた俺を見ると、敵わないと思ったようにすぐさま逃げ出してしまった。

 お金が逃げてしまった、後で倒すからいいけれど。

 まずはこちらのお嬢さんが先だな、大丈夫ですか、と手を貸して立ち上がった女性はありがとうございます、とこちらに笑顔を向けた。

 この女性はとても美人で、手元に花を持っている。

 見た目もまさに絵画の花を持つ少女といったところである。

 女性から溢れるふわりと心地よい香りが鼻腔をくすぐるのが分かる、女性の顔を見るとお互いの目が合った。

 女性は少し顔を赤らめながらはにかむと、素敵なお方、一緒に行動を共にしたいです、と俺にお願いしてきた。

 俺は女性に、I need you(あなたが必要だ)、I want you(あなたが欲しい)と笑顔で返した瞬間、女性は胸を槍で突かれたような感覚があった。



 ゲップ、予定に無い食事ばかりでもうお腹一杯だよ。

 この女性の正体はサキュバス、女性型の立派なモンスターである。

 サキュバスは様々なシチュエーションを使って男を誘惑し、溢れる香りで近づいた男の理性と判断力を失わせ、油断しているところを仕留めるという卑劣な手口を使うモンスターだ。

 今回はピンチに陥った女性を助けるというシチュエーションを使って男に近づくという、なんとも古典的というか、定番のような手口を使ってきた。


 助けた女性と恋に落ちるという物語は前世はもちろん今世でも人気があり、子供の読む御伽噺でも騎士が姫を助けたり、冒険者が襲われた美女を助けて恋が始まるという話は数多くある。

 なのでそのような話を読んで育った少年や、まだその夢を見る青年を狙い撃ちするせいか別名童貞キラーという異名を持っている。


 サキュバスの見分け方としては、外見だけで判別するのは非常に困難なので、まず美女しかいない状況だったら疑ってかかるのが定石だ。

 その理由としてモンスターなので当然街の外にいるわけだが、美女、特に装備もなく仲間もいない美女が一人で街の外に出るような仕事をする機会はほぼ無いからである。

 本来いるはずのない外見をした人間がその場にいるというだけで疑うには十分な理由になる。

 あと話し方、人間の街に住んでいないので慣れていないせいか、しゃべっていればボロが出る。

 例えば街に住んでいれば当然知っていることを知らないとか、一緒に行動を共にしたいです、みたいにどこか違和感のある語り口になったりだ。

 もちろん普通であれば違和感を感じるのだが、麗しい見た目に興奮していたり、香りで判断力が落ちていたり、恋は盲目だったりで見落としてしまえば後はもうサキュバスの餌食になる。

 現実はなかなか小説や御伽噺のように上手くはいかないと教えてくれるモンスターだね。

 あ、逃げたゴブリンはサキュバスとグルなので追いかけてキッチリけじめはつけてもらいました、男優業も命懸けだね。

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