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30 フィヨルドの不可思議なダンジョンと俺の能力 前編

 突然ですがあれから月日が経過して18歳になり、成人しました。

 成人するまでやっていたことは依頼受けたりモンスターしばいたり宝箱(人型)からアイテムを入手したり各地を旅行したりしていた。

 言い方を変えればただ普通に冒険者をしていただけと表現することもできる。

 成人式なんて儀式は無いので成人になった実感はあまりないけれど、冒険者ギルドの偉い人に呼び出されて総合ランクがCに上がったと言われたので一人前になったのだなと感じる。

 今の俺のランクは総合ランクCで依頼のランクは採取、討伐、配達、捜索がCランク、調査、駆除、納品、雑用がDランク、護衛と労働はEランクのままという状況。

 とはいっても総合ランク1個下の依頼は受けることができるので護衛と労働も実質Dランクだ。

 受ける予定はないから関係ないけどね。



 成人した日の夜、数年ぶりに俺をこの世界に転生させた神様が夢に出てきた。

 成人のお祝いの祝辞でも述べにでも来てくれたのだろうか?

 お久しぶりです、なんて月並みの挨拶をしたところで用件はなんでしょうか、と恐る恐る聞いてみる。

 何せターゲットを倒すという主目的に関しては達成度が0%なのはもちろんであるが、そのための準備すらまだロクに出来ていない。

 冒険者になって5年以上経っているのにこの体たらくでは催促に来たと見て間違いないだろう。

 神様は悲しそうに眼を伏せて開口一番に、


「このままではお前はターゲットを殺すことはできない」


 という非情な宣告が俺に下された。

 この宣告に俺は多大な衝撃を受けた、なんてことは無い、おおよそ分かっていたことだ。

 何故なら俺はこの合成獣の能力はターゲットを倒すことに全く向いていない、後方支援型能力であると考えているからだ。


 俺の利点は人間以上の五感や見た目の変化により人間社会での情報収集能力が高い点、そして人間以上の探知能力で敵をいち早く察知することができる点にある。

 問題は如何に有益な情報を入手しようが、敵を察知しようが、象やライオンが人間より強かろうが、ドラゴンなどの化物に勝つなど無理な点である。

 正直な話、神様は俺に与える能力をミスチョイスしたとしか思えない。

 人間社会でのスパイならば最高の性能を発揮するのだが、化物退治には全く向かない能力なのだ。

 せめて同じ境遇の転生者がいれば俺の後方支援能力を活かした戦いができると思うのだが、この世界に転生者は現在俺一人である、これはもうダメかもしれんね。


 神様からの宣告に、はぁ、と分かっていましたけど的な相槌をうったら神様から、


「何故ならお前はその合成獣の能力を半分も使っていないからだ」


 という衝撃の発言が飛び出した。

 えっ、これでまだ半分以下なんですか?

 9割方使いこなしていると思っていたんですが……。

 どういうことですかと神様に質したら、


「このダンジョンに行け、さすれば残りの能力の使い方が分かるだろう」


 と今更お告げみたいに言われて夢から覚めた、どうせなら詳しく教えてくれればいいのに。

 お前に伝えなきゃいけないことがあって来たって言いながら時間が無いから、詳しく話している暇が無いからと言って大した情報を伝えず去るキャラクターのような真似はしなくていいよ。

 忙しいのかしら? 忙しいよね、神様だもんね。



 それにしてもダンジョンか。

 この世界には幾つものダンジョンがあり、主に3種類に分けられる。

 モンスターが造り上げたダンジョン、ダンジョンマスターと呼ばれる存在が管理しているダンジョン、そして今回行く不可思議な魔術で変化するダンジョンである。

 モンスターが造り上げたダンジョンというのは、蟻のモンスターが作った蟻の巣型ダンジョンが代表的であろうか。

 モンスターが自分で掘ったり建設することで出来た魔物の巣の総称である。


 ダンジョンマスターが管理するダンジョンというのは、階層ごとに出るモンスターが違う人工的なダンジョンだ。

 最奥や隠し部屋にいるダンジョンマスターにより管理されており、奥に行けば行くほどモンスターが強くなることが多い。


 そして不可思議なダンジョンはとても不可思議なダンジョンである。

 まず入り口はポータルと呼ばれる魔術道具で出来ていて、このポータルに立つと不可思議なダンジョンの中に飛ばされる。

 ダンジョンの中はまずモンスターが階層により固定のモンスターがランダムで出現する。

 そして何故か広場にはお助け要素なのかアイテムや武器防具が置かれていたり、矢が飛んできたりお湯が降ってきたりする罠が設置されていることがある。

 そして出口が無いが脱出するためにトンズラの巻物が時々置いてあるので、その巻物を使えば不可思議なダンジョンから脱出することが出来る。

 そしてこのダンジョン最大の特徴だが、入るたびに毎回構造が違う、どんな構造してんだ。


 うん、かなり不可思議な点が多い。

 モンスターが出るのはまあいい、お邪魔虫みたいなものと考える。

 毎回構造が変わったり、道端に雑にポーションとか普通の武器とか防具は謎だけど目をつぶるとして、稀に人智を越えたアイテム、マジックアイテムが落ちていることがあるのは本当に謎。

 力を強くする、火から守る、精神の混乱を防ぐなどの様々な効力を持った、人が造ることができないアイテムをマジックアイテムと呼ぶ。

 こんな希少物が時折落ちているのだ、不可思議なダンジョンの宝箱ではなく、道端に。


 普通こういうのって伝説の魔物とか倒したらもらえるようなイメージがあるが、何故かこの不可思議なダンジョンでも手に入る。

 この不可思議なダンジョンでマジックアイテムを入手して一攫千金を得たという冒険者も多い。

 なんて夢があるダンジョンなんだー。

 もちろん夢はあるが命を落とす危険も数多く秘められている。

 危ないと思ってもトンズラの巻物を拾っていなければ脱出することは不可能(巻物は持ち帰り不可)。

 武器防具やアイテムは持ち込みし放題だが空間魔法の使用はできないので所持品は制限される。

 パーティーで挑戦できるが仲間とはぐれてしまえば内部では合流が困難だ(俺には関係ないけど)。

 生還率は決して高いとは言えず、ギャンブル要素が強いので俺は挑戦するつもりは全く無かったのだが、神様から俺の能力を100%使いこなすために行けと言うのだから行く以外あるまい。

 というわけで本日の目的地は不可思議なダンジョンのある街、通称ダンジョン街のチュンソトフに出発だ。

 今日は縁起を担いで黄金のコンドルになって飛んでいこう。



 チュンソトフに無事到着、蜘蛛型モンスターにやたら狙われたりしましたが俺は元気です。

 まずは冒険者ギルド近くにあるダンジョンギルドに行ってイディを支払い、不可思議なダンジョンの攻略本を読む権利を購入する。

 攻略本を熟読してから不可思議なダンジョンに行く前に、ポータルの近くにあるアキフジの社に安全祈願のお参りをする。

 このアキフジの社はかつて4000回以上不可思議なダンジョンに潜って生還したとされる伝説の冒険者アキフジを祭ってある社だ。

 無事生還できますようにとお祈りを済ませていざ不可思議なダンジョンへ。


 不可思議なダンジョンの入場は無料だが、入り口手前に街の職員の詰め所がある。

 ここで不可思議なダンジョンに入る前に入場帳に名前を記載しなければならないのだ。

 不可思議なダンジョンで行方不明になったのか、それ以外で行方不明になったのかを判別するためなのだが、致死率の高さがこんな所で伺え恐怖心が増す。

 詰め所で名前を記載して不可思議なダンジョンの中に繋がるポータルに乗る。

 すると目の前が一瞬暗転し、洞窟のような場所に飛ばされていた。

 ここが不可思議なダンジョンか、死んでもカモノハシ型モンスターに救助されることはない、気合入れていかないとな。


 

 まず不可思議なダンジョン1Fだ。

 この階層はゴブリンやホーンラビットといった弱小モンスターしか出て来ないし、武器防具は当然持ち込んでいるのでモンスターに関しては心配する必要はない。

 ただこの不可思議なダンジョンのモンスターは魔石が無く、倒せばすぐ消滅してしまうのでモンスターを倒しても収入にならない。

 収入を得るためにはアイテムや武器防具を拾って持ち帰るしかないのだが、この階に落ちていたアイテムは薬草と混乱草を一束づつ、これはお持ち帰り。

 2Fに行くポータルを発見したのでポータルに乗って2Fへ、次こそいいアイテムが落ちてますように。


 2Fはゴミしかなかった。

 3Fに到着し、モンスターが変わるがまだまだ弱いモンスターだ。

 この不可思議なダンジョンでも合成獣の能力は有効で、モンスターから発見される前に音でモンスターの位置が分かるし、数種類のモンスターしかいないので臭いで種類も判別できる。

 ただ罠に関しては無力に近く、注意して歩くしか対処の方法が無い。

 先程丸太が飛んでくるという罠があり、間一髪回避したが直撃すればHPが5くらい減ってしまうだろう。

 おっ、巻物だ、トンズラ来いトンズラ来いトンズラ来い。

 うーんピカピカの巻物か、効果は装備している武器防具がピカピカに綺麗になるという効果、つまりゴミに近いので使ってしまおう。

 銅の剣と皮の盾が落ちていたが、かさ張るから銅の剣だけリュックに刺して探索続行だ。

 今の俺は行商人のような格好だが、アキフジ氏も同じスタイルだったので伝統的なダンジョン探索者の格好である。


 6Fまで来たが道中パンが皿の上に置いてあったが……食えと?

 他のアイテムと違って地面に直接置かれていないのは助かるが、食べるのはちょっと怖い。

 攻略本に呪われた食糧は無いと書いてあったが、腐っている物はあると書いてあった。

 見た目や臭いからして腐っていないようだがいざ食べるとなれば躊躇してしまう。

 勇気を出してネズミのようにちょびっとかじる。

 これは塩パンだ、街のパン屋で売られているパンより美味しいのはこれが最後の晩餐になるかもしれないからだろうか?

 ありがたく完食した、でも俺はここにパンを食いに来たわけじゃないんだよなぁ。

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