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17 オークよりも醜い 後編

 俺への護衛代金の支払いに関してだが、これはすぐに現金が出てこないことから長くなるのでギルド職員はここで帰ることになった。

 未払いの事実に関する調査はギルド職員の仕事だが、未払いの徴収に関しては業務対象外だからだ。

 ギルド職員を見送ったところで支払いに関する話し合いを3人で行う。

 俺がこの街に住んでいればローンを組んでもいいのだが、この街に滞在する予定もないので即金を希望しているのだが無い袖を振れないのは女側である。

 金が無いなら商品を、とも思ったがこの店の商品で俺に必要な物はないし、他の陳列されている物を見ても質が良くないのが分かるので欲しいとも思わない。


 あーだこーだともめていると奥から痩せた顔色の悪い男が出て来た。

 病に犯されているという女の父親であった。

 本当にいたんだ、完全に嘘っぱちだと思ってたわ。

 女が寝てなきゃ駄目だよ、と言うがこんな状況なら引っ込めないだろう。

 仕方なく俺も家の中に入り父親に楽な姿勢になってもらったところで概要を説明したところ、それなら自分の薬代から出せばいいと言ってくれた。

 しかしそこからそれだとお父さんが死んじゃうじゃない、とか目の前で三文芝居が始まってしまった。

 この公演見ても俺は見物料払わないからね?

 そして三文芝居の締めは、なんだかんだで俺に払う金は無いという理不尽な結論になってしまった。

 なんだこのクソ芝居? 金返せ、払ってないけど。


 何が腹立つって、この女や家族は自分達が可哀想な人達だと思ってる節があるけど、それは違うことをこいつ等は分かっていない。

 他人を働かせておきながら仕事が終わったら約束の金を払わず逃げたから取り立てに来ざるを得ず、無駄な時間を使わされ未だに金払ってもらえない俺のほうがよっぽど可哀想だということを考えてすらいないことが何より腹立たしい。

 そこんとこ分かってる? と聞いたら全員が黙った、本当にどうしよう。

 


 仕方ないので妥協点を探すことにしたが、妥協点見つかるかなぁ。

 店の商品は陳列しているのに売れないのだから俺にも売れないだろうし、家の中に金目のものは無いのは探さなくても分かる。

 金目の物や欲しい物があれば依頼料代わりにコレもらっていくよ、と言いたいところだが欲しい物が無いという絶望。

 女が逃げずに謝罪していれば護衛料金を値下げする目もあったのだが、こんなふざけたことやられて値段下げるとか冗談にもほどがあるし。

 こいつ等に出せそうな物で価値がありそうなものは情報や知識くらいしかない。


 代わりに金になりそうな話とか知らないの?

 城が建てられる予定で今度値上がりする土地とか、大貴族のトクガワさんの埋蔵金とか、伝説の海賊が隠したひとつなぎの財宝とかさ。

 うーん、と女とその家族が考え、女が伝説のエンシェントドラゴンはすごい財宝持ってるらしいよ、と閃いたように言ったが、どこにそのエンシェントドラゴンの財宝があるか知ってるの? と聞くと知らないという。

 せめて場所が分からないと話にならないだろうが馬鹿野郎、御伽噺を聞きたいんじゃないんだ。

 実在するお宝の話をしてくれよ、もしくは儲け話。


 呆れて肘をついて手のひらに頬を乗せ視線を少し上にやると、ボロい棚の上に一枚の絵が飾られていることに気がついた。

 海の上を進む船の絵だ、芸術に詳しくないがそこらの絵描きが書いたものを買ったものだろうか?

 そういえばこの世界に来てから海に行ってないな、前世では海の近くで生まれたこともあってあれだけ海に行ってたのになぁ。

 海まで遠いんだよなぁ、行けないことはないけど、金に余裕ができたら遊びに行ってみるか?


 そんなことを考えていると、父親が俺の見ているものに気付いたのか、あれは船の絵ですね、懐かしいものですと語りだした。

 俺はこの世界に来てから船に乗ったことはない、船に乗ったことが? と聞くとこの父親はこの街に来る前は船乗りをしていたらしい。

 この世界の船の動力は主に人力と風魔法で、船員が交代で櫂で漕いだり風魔法を使って進むのだという。

 世界変われば動力も変わってくる、陸の移動は馬や徒歩で前世と変わらないのに海の移動だと魔法を使うんだなぁ。

 興味がわいたので詳しく話を聞いていると、父親は急にあっ、と大きな声を出した。

 何だろうと皆が父親のほうが見ると、もしかしたら財宝が眠っているかもしれないと言いだした。

 しかし、いや、でもなぁ、さすがに無理だしなぁと父親は一人納得し始めたので、とりあえず出来る出来ないは置いておいて心当たりがあるの? と聞くと父親はええ、と言って話しだした。



 この父親、昔自分とその父が船乗りをしていたのだが、俺達のいる本島から離島のガドサ島に日用品などを運搬する仕事をしていたらしい。

 ある時ガドサ島から本島に戻ろうとしたら嵐が来たので数日ガドサ島に滞在し、海が治まってから本島に戻ろうとしたのだが、戻る途中無人島の小島で数人の男が助けを求めていた。

 男らを助けて事情を聞いたところ、この男たちはガドサ島で採掘された金を船に積み大陸に持っていく途中で大波が来て船が沈み、命からがらこの島まで泳いだそうな。

 だからもしかしたら今も海の底に金を積んだ船が沈んでいるはずだ、という話であった。


 つまり沈没船のお宝、一攫千金、浪漫の塊のような話である。

 しかし話としては面白いし夢があるが、深い海の底に人間は行くことはできない。

 水中で呼吸が出来る魔法はあるがそこまで持続しないし、生身での潜水には肉体的にも限界がある。

 前世でも近代になって潜水艦や潜水器具の開発により海に潜ることができるようになったが、それでも海の底の沈没船から財宝を手に入れれるようになったのは極めて近代の話である。

 なので沈没船から金銀財宝ゲットなど普通の人間には夢物語でしかない……普通の人間には。


 父親から沈没船の必要な情報を抜き出したのでこんなところに用はない。

 普通に考えれば過去話を詳しく聞いただけで、普通なら大した価値の無い情報なのでこの情報については安く買い叩こう。

 現実問題不可能な話だからね、君が出来るなら沈没船まで潜って金持って帰ってきて。



 で、最終的な結論としては4万イディは今日払ってもらう、でも肝心の払う金は無いので一工夫することにした。

 まず女にあの舐めた態度取られた後じゃ値下げも出来ない、むしろ俺の拘束時間に対して金を請求したいくらいだが沈没船の話が面白かったので当初の予定通りの4万イディで勘弁してやろう。


 で、今お金は無いから後払いにしてもらうんだけど、いつまでに用意できるのか聞いたところ女と家族が相談した結果3ヶ月あれば必ず用意するという。

 本当に3ヶ月で絶対用意できるんだね、と全員に確認したところ絶対大丈夫だと言うので、じゃあ今から金貸しの所に行ってお金借りてこようか、名義は女で。

 でも金貸しだと利子が余計かかるので困る、と女が言うが大丈夫、ちゃんと考えてある。


 まず正規の金貸しで借りると今回の場合では金利は年間20%くらいになるので4万イディを3ヶ月借りるとおおよそ2000イディの利子がかかることになる。

 だからその2000イディは俺はいらない、借りるのは3万8000イディで構わない。

 そして女らは3ヶ月で必ず4万イディを用意する。

 3ヶ月後に借りた3万8000イディの返済額は約4万イディになっているので金貸しに4万イディ返してくれ。

 俺は若干少なくなるが今すぐ金を手に入れることが出来て回収する手間も省ける、女らは3ヵ月後に支払うお金は4万で良いし、早く返せばもう少し安くなる。

 お互いにメリットがある素晴らしい方法だ。


 3ヵ月後に4万イディ用意できるんだから利子が膨らんで返せないってこともないしこれで問題ないでしょ。

 そう3人に確認すると女は、いやーでも色々なところからお金借りていてもう借りれないかもー、と言うのでじゃあ3件の金貸しを回ろうか、全部断られたら可哀想だからこの4万はチャラにしてやるよ。

 断る理由は無いよね、4万の借金を徳政令するビッグチャンスだ。

 じゃあちょっと借りていきますね、と女を金貸しに連行したところ、1件目で満額貸してくれた。



 やれやれ、大変な目にあってしまった、これだから正規じゃない仕事は嫌なんだ。

 女が最初から値下げ交渉するか、逃げずに謝罪すれば半額まで下げたり支払いを待つことも出来たのにそれすら出来なくなったじゃないか。

 冒険者ギルドの被害届は取り下げたけど、正直まだイライラしてるんだよね、あの嘘吐きと態度はないわー。

 このイライラを解消するために酒飲んだりするのでまた金がかかる、やっぱりこの仕事赤字だわ。


 翌日残りのオークを狩り尽くして金に替えてから港がある街ガタシンに移動を開始した。

 ガドサ島で採掘された金はガタシンに運ばれていたのでガタシンとガドサ島の間にお宝を積んだ沈没船がある……可能性がある。

 この世界の海は初めてなので色々楽しみ、まずは新鮮な海鮮物を出す飯屋を探そう。

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