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12 先生、そろそろ後進育てましょうよ

 こんにちは皆さん、コレットのバ、コレット先生が体調不良でお休みなので急遽臨時で魔法の授業を行うことになったフィヨルド=ボレオです。

 なんだか知った顔も何人かいるようですが、今日は俺が先生なのでしっかりと授業は聴くように。


 というわけで仕方なく先生代理をすることになってしまった。

 この世界は教員資格など無いので、学校関係のコネや街の重役関係とのコネなどで先生になれるかが決まる。

 そのため補充要員は少ないという問題が有り、逆にこのような機会を生かして先生になるという者もいるのだが、今回は希望もしていない俺がやることになった。

 推測であるが、コレットのババアが自分の後を継ぐものとして軍学校に行かず成績優秀であった俺を勝手に想像していた節があった。

 これをきっかけに俺を教職に就けようとしているのかもしれない。

 何せあのババア俺にはやたら厳しかったからね、冒険者となった今では助かってますが。



 今日は魔法の基礎中の基礎、基本知識を皆さんに学んでもらおうと思います。

 まず魔法を使うためには3つ必要なものがありますが何か分かりますか?

 正面の坊主頭君、まず一つ答えてくれますか?

 そう、魔力ですね。魔法は魔力がないと使うことができません。

 では次にその隣の男の子、他に何が必要ですか?

 うん、詠唱ですね。

 詠唱しなければ魔法は使うことは出来ない、お母さんも魔法使う時必ず詠唱してますね。

 ではさらにその隣の女の子、最後の1つは何か分かりますか?

 杖は違いますね、杖は別になくても魔法は使えますね、あったほうが便利なんですけど。

 正解は精霊です。精霊がいないと魔法は使えないんですよ。

 なので魔法を使うためには、詠唱、精霊、魔力の3つが絶対に必要なのです。


 では何故この3つが絶対に必要なのか説明しましょう。

 そうですね、まずは先生が魔法を使ってみます。


「火よ、我が指し指の先を燃やせ。揺らめく火よここに!ファイラー!」


 はい、先生の指先に火が出てきましたね。

 この火は精霊が先生の魔力を使って出してくれたんですよ。

 さっき言ったように魔法は詠唱しなければ使うことは出来ません。

 しかも正確に詠唱をする必要があります。

 では何故正確な詠唱が絶対に必要なのか……そうですね、そこのランニングシャツの子、ちょっといいですか?

 君は今から精霊になってもらいます。

 先生が今から君にお願いをするので、そのお願いを聞いてくださいね。

 ではいきますよ。


 そう言った後俺はランニングシャツの子を無言でチラチラと見る。

 ランニングシャツの子も他の子も俺がチラチラと見ているのは気づいているが、何もできない。

 次にランニングシャツの子を見て、持ち上げてください、とだけ言った。

 しかし何を持ち上げていいのか分からずおろおろとしている。

 最後に、筆箱を持ち上げてください、と言うと筆箱を持ち上げてくれた。


 はい、ありがとう。これが魔法に正確な詠唱が必要な理由なんです。

 まず最初に、先生がチラチラと見ていたの分かりましたか?

 分かっても先生が何をして欲しいのか、筆箱を持ち上げて欲しいとは分かりませんでしたね。

 どうして分からなかったのですか?

 そう、筆箱を持ち上げて欲しいと言わなかったから分からなかったですよね。

 じゃあ次に持ち上げてくださいと言っても筆箱を持ち上げることはできなかったのは何故ですか?

 何を持ち上げればいいのか分からなかったからですね。

 最後に筆箱を持ち上げてくださいと言ったら筆箱を持ち上げれましたね。

 筆箱を持ち上げてくださいと言わないと通じなかった。

 つまり精霊にも同じように、ここにこんな風に火を点けてくださいとしっかり正確に言わないと通じないんです。


 だから中途半端な詠唱、例えば火よここに!火よここに!と言っても精霊は困っちゃうんですよね。

 精霊がどこに、どれだけの強さで火を点ければいいか分からないからです。

 だから魔法が発動しなかったり、変な風に魔法が発動して危ない目にあってしまうかもしれません。

 だから詠唱はしっかりと覚えて、正しく魔法を使いましょうね。


 では次に何故精霊が必要なのかという話です。

 簡単に言うと魔法はその魔法に必要な精霊が何人も集まって協力することで発動するからです。

 精霊は4種類、火水風土の4種類いますが火の魔法を使おうと思えば火の精霊がいないと駄目です。

 たくさんの水の精霊がいても火の精霊がいなきゃ火の魔法は使えません。

 だから皆がどれだけ頑張っても精霊がいないところでは魔法は使えないんですね。

 

 では精霊のいないところってどんなところか、これは精霊によって異なります。

 これは一例ですが、火の精霊は海の上にはいませんね、逆に水と風の精霊はたくさんいます。

 水の精霊は砂漠、風の精霊は洞窟の奥、土の精霊は人工物の中には少ないですね。

 0ではないですが魔法を発動するくらいの精霊を集めようとすると大変です。

 精霊がいないことで一番身近なのは空間魔法ですかね。

 空間魔法、それと回復魔法は特別で4種類の精霊全てが使えるのですが、空間魔法が使えるのは一部の精霊、精霊の中でもエリートの精霊だけです。

 逆に回復魔法はどの精霊も皆使えます。

 空間魔法で覚えておいてほしいのが、人間が住む街の中にはエリートの精霊が多いので街の中では空間魔法を使えます。

 ですが街の外に行けばエリートな精霊は少ないので、外で空間魔法を使える人はほんの一部だということですね。

 だから街の外で空間魔法を使える人はとても少ないんです。

 使えれば軍はもちろん、貴族や王族の方々からスカウトが来ることもあるらしいですよ。


 さて、精霊に魔法を発動してもらうために必要な物が魔力です。

 魔力と一言で言いますが、正確には魔力の強さは精神力、魔力の量をMPと言いますが、面倒なので全部魔力とごちゃ混ぜにしていることが多いです。


 では何故魔力が必要なのかですが、まず魔法を使うために詠唱をしますね。

 ですがただ詠唱の言葉を言うだけでは魔法は発動しません。

 精霊は私達人間の言葉は本当は聞くことができないからです。

 人間の世界と精霊の世界は……同じ場所だけど違う場所だからです。

 分かりにくいので精霊は人間の言葉は聞こえないとだけ覚えてもいいです。

 詳しく覚えたい人は上級学校で教わってください。


 さて、ここで一つ問題がありますね。

 精霊の力を借りなければ魔法は使えないのに精霊に人間の言葉は聞こえません。

 ではどうするのかというと、詠唱の言葉を唱える際に魔力を込めるのです。

 魔力を込めた言葉は精霊が聞くことができます。

 魔力を込めて詠唱することで、精霊に今からこの魔法を使いたいから協力してくださいと伝えることで魔法が発動する準備が出来ます。

 そして魔法を発動するために魔力、MPを消費して魔法が発動するわけです。

 ですから魔法を使う時は、詠唱するときと魔法を発動するときにMPを消費するわけです。


 ここまでをまとめると、魔法を発動するためにはまずMPを込めて詠唱を唱える。

 するとその詠唱を聞いた精霊が魔法を発動する準備をしてくれる。

 そしてMPを消費することで魔法が発動するのです。

 だから魔法を使うためには詠唱、精霊、魔力の3つが必ず必要なんです。

 ここテストに絶対出るので覚えておいてください。


 さて、じゃあさっき杖の話題がちょっと出ましたけど、杖って何なんでしょう?

 さっき先生が魔法を使いましたけど、杖は使っていませんでしたね。

 魔法を使うのに絶対必要なわけではないんですがあると便利です。

 杖は魔法を使うための補助具であり、拡大器《ブースター》みたいなものです。

 主にMPの消費を抑えるために使用しますが、普通に街中で働いて生活するなら杖が無くてもほとんど問題ないですよ。

 必要なのは魔法をたくさん使って仕事をする人や街の外で魔法を使って働く人、例えば冒険者ですね。

 同じMPならたくさん効率良く魔法を使いたいですからね。

 皆さんはまだ魔力が無いので魔法は使えませんが、魔法はとても楽しいし便利なので魔力が生まれたらすぐに魔法を使えるように今のうちにしっかり勉強しておきましょう。

 では本日の授業はこれまで、お疲れ様でした。



 あー疲れた、休みなのに仕事もって来るとか勘弁してくださいよコレットババア先生。

 もう歳なんだから引退すればいいのに、自分より才能あるやつじゃなきゃ任せられないとか言うからこんな事態になるんだよ。

 魔法大学で首席取れるほどの人材は普通教職なんか就かないからさぁ。

 そんな贅沢言わなきゃ教職は人気あるからすぐに後釜見つかりますよ、認めなくちゃ現実を。


 授業の数日後、ある見知ったババアから苦情が来た。

 何でも誰かが授業を代理で受けたら一気に数回分の範囲をやったせいで先生が迷惑しているらしい。

 その代理の人は一生懸命やっただけだから悪くないと思うよ?

 精霊は外国人労働者みたいなもので、詠唱という名の精霊語じゃなきゃ言葉通じないから詠唱は真面目に覚えろよ、とか一言で済まさなかった分真面目にやったんだぞ。

 そんな苦情言われても困るわ、まったく。

 えっ? 迷惑料の誠意として教職に就け? やだよ。

 こんなことがあったり、昔の友人と飲んだりして休暇は終わった。

 また明日から依頼を探さなければならない。

 そろそろ新しい装備に買い換えたいから真面目にお金貯めないとな。

 まずは交通費の節約のため帰り道も鳥になって飛んでいこう。

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