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三次元に興味のない私が、ゲーム友達のアイドルに恋をした。  作者: 槻 すせり
第四話 知らないふり

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4-1



「あー、それ、前に見せたグループの兄貴分じゃん」


 次の日の昼休み。茉莉乃は私のスマホを覗き込んでニヤニヤしている。

 勝手に覗き込むなってのと悪態をつきながら、そのまま動画を見続ける。画面にはRAY=OUTのメンバー紹介。三次元に興味ないとか言ってたくせに、しっかり調べてガッツリ見てるの、自分でもどうかなのよ。と、思わないでもない。


「兄貴分?」


「LIVERAと同じ事務所の先輩ね。後輩の方が先にどーんと売れちゃった感じ?でもRAY=OUTも普通に人気あるよ。普通にアリーナ埋めてるし」


「アリーナ埋めるって、普通なの?」


「だーかーらー。LIVERAがバグってるだけで、こっちもちゃんと人気あるよ。あんたが知らないだけ」


 茉莉乃の指が、勝手に人の画面をすいすいスクロールしていく。止めようかと思ったけど、LIME以外に見られて困るものは特にないし、好きにさせておく。


「で、誰が気になったの? タカオミ?」


「なんでよ」


「今その人のプロフィール見てたじゃん」


 そうだった。むしろ、どうしてバレていないと思ったの、私。

 誕生日の欄に、九月二十三日って書いてある。私より一か月くらい早い。……って、そんなとこまで覚えそうになって、慌ててスマホを取り返した。


「ちょっと見ただけだし」


「その『ちょっと』が、あやにしてはすごいんだって。ついに来た?」


「来てない」


「いらっしゃい三次元」


「いらっしゃってないってば」


 茉莉乃のニヤニヤ顔がさらにニヤニヤしてる。さっきを超えるニヤケ顔があるのか…幼馴染みの新たな表情を知ってしまった…。否定すればするほど楽しませるだけなのが分かったので諦めた。真面目に取り合うと疲れるだけだ。


 私は軽くため息をつき、心の中で言い訳をした。目の前でしゃべってた人が、たまたまアイドルだった。だからちょっと気になっただけだし。


 スマホの画面を見ながら、そういうことにしておいた。



   ◇◇◇


 

 次のセッションイベントの告知が出たのは、それからすぐだった。

 夜、机で数学のプリントをやっていたら、スマホが三回連続で鳴った。


『来た』


『セッション』


『やる????』


 そのメッセージにシャーペンを持ったまま笑ってしまう。こっちはまだ告知を読み終わってもないのに…この人はどこで待ち構えてたんだろう。


『やる』


『よっしゃ!!!!』


 ふいに、前回の金色のアイテム欄を思い出して、すぐに付け足す。


『今回はお金でぶん殴るスタイルはやめてねw』


『オーケーオーケー、今回は普通に楽しもう』


『本当に?前回すごかったけど』


『ん〜記憶にないっす』


 ろくでもない大人だな。おい。

 笑いながらプリントを一枚片づけて、一息…って、気がついたらRAY=OUTの動画を開いていて、我がことながらビビった。


 画面の中のタカオミは当たり前だけどマスクをしてない。曲に合わせて顔を上げて、その目がまっすぐカメラを向いたら、反射で視線をそらしてしまった。

 何やってんの。動画だよ…気のせいか動悸がする。変な汗も流れている。

 見直すと、タカオミはもう別の立ち位置にいて、七人で踊ってるのに、なぜか一人だけ目で追ってしまう。


「あの長い手足…家ではフィギュアの箱を抱えて、床にあぐらかくのに使われてたんだよね」


 無意識のうちに呟いていたら、画面の上に通知が降りてきた。


『今日22時いける?』


 私は動画を止めて、返事をする。


『いける』


 さっきまで画面の中で踊ってた人からだ。

 なんて思っていたら、たった三文字を送るのにちょっとだけ時間がかかった。

  


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