3-1
次のイベントが始まった。
今回はタカオミからお誘いは来なかった。ゲームにも来てないっぽい。フレンド欄の『最終ログイン』を、何回も確かめてしまっている。さっき見たばっかりなのに、ホームに戻るとまた指が勝手にそこを押してしまう。
仕事だよ、仕事。社会人は忙しいんだって。
そう言い聞かせるたびに、ちょっぴり期待していた自分に呆れてため息がでる。
七月に入って、制服の半袖にもすっかり慣れた。お店で会った日のことがだいぶ昔になりかけていたところへ、LIMEがポンと鳴った。
『やっと家のグッズ整理できた!!』
『遅くなってごめん!!交換候補の写真送ります!』
『お疲れ様です』って打ってる途中で、一枚目が届いた。続けて二枚目。三枚目。画面がどんどん下に押し流されていく。
「ちょ、待って待って!!」
めぐりちゃんのアクスタ、缶バッジに限定セット。写真に映り込むたびに、持ってる、これない、これ欲しかったやつ、と頭の中が大忙し。
で、四枚目を見た時、思わず声が出た。
「それ、後ろの!!」
ロボットアニメのフィギュアが映り込んでいる。そして、その隣には私の好きな魔法少女やバトルヒーローもののグッズまで。
『後ろのフィギュアって、あの最終形態のやつ!?』
気になりすぎて、お宝たちについての話題を振るとそこからは脱線する未来しかない。最終回を何回見たかとか、あのシーンのBGMが神だったとか、途中のあの回だけは納得いかないとか。タカオミの返信も爆速で、しばらく連絡が途切れてたのが嘘みたいに盛り上がった。
『それなら、家来て実物見ます?』
家。男の人の家に、一人で?
読んだ瞬間、親指が止まって、ちょっと考えてたら続けてメッセージが来た。
『あっ』
『天地神明に誓って何もしません!!!!』
『不安だったら断ってください!!』
『あ、写真で決めて、お店で受け渡しでも全然大丈夫だから!』
「天地神明」
吹いた。そんな誓い、生まれて初めて聞いた。
写真でも選べるけど、やっぱり実物が見たい。話もしたい。会うのがイヤなんてカケラも思わなかった。
『大丈夫!行くよ!』
『私たち同志じゃん!!』
送ったら、また立て続けに返ってきた。
『まじで?』
『当日イヤになったらドタキャンしてもいいからね!』
『でも連絡なしはやめて!事故かと思って心配するから!』
何かあったんじゃないかって心配するんだ。気遣いに、胸の中がじんわりあたたかくなる。その文章をもう一回読んでから、返事をした。
『話してて楽しいし、全然イヤじゃないよ』
そのときは、本気でそう思ってた。
数日後、送られてきた住所に着くまでは。




