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三次元に興味のない私が、ゲーム友達のアイドルに恋をした。  作者: 槻 すせり
第二話 初めてのセッション

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2-1


「ねえ、今度カフェ巡りしようよ。かわいいとこ」


 昼休み。くっつけた机の向こうで、茉莉乃がお弁当の蓋をパチンと閉めて誘ってきた。茉莉乃は幼稚園から高校までずっと一緒の幼馴染。だから私がオタクなのは知っているし、趣味や嗜好が一ミリもかぶっていなくても、話題には事欠かない。


 高校受験の時、志望校に落ちたら恥ずかしいから、合格するまでお互い高校は内緒にしておこう!約束して、蓋を開けてみたら同じ高校だったのには心底驚いた。ここまでくると腐れ縁とも言えなくもない。私は咀嚼していた卵焼きを飲み込むと、両手を合わせてごちそうさまをする。


「コラボカフェならいいよ。今度のサピリオの」


「普通のカフェは?」


「普通のカフェにめぐりちゃんはいない」


「サピリオにもいないじゃん」


「それはそう」


「あ、でもね、最近インステでさ、ひたすらヒツジのメェメェ推してる男の人が流れてくるの。あれ見てたら、メェメェもかわいいなーって」


「なにそれ。あんた、また変なもの見てる」


「変じゃないよ。萌えの話してるだけだもん」


 配信者の名前は知らないけどフォローはしているし、オススメに上がってくるからめちゃくちゃみている。メェメェについての愛をひしひしと感じ取り、見ているだけでメェメェごと応援したくなる。萌は世界は救わなくとも、オタクは救ってくれる。


「はいはい。じゃあ、こっちも見なって」


 茉莉乃はずいっとスマホ画面を押し付けてくるので、素直にそれに目を向けると顔のいい男の人たちが踊ってた。衣装もライトもギラギラしてるねーくらいの感想しかないけど、曲だけはどこかで聞いたことある気がした。


「LIVERA。今めっちゃ来てるんだって」


「へえ、イケメンだね」


「もう一段階くらい興味持ちなよ」


 そう言われても「顔がいい」の先が出てこない。

 うちは両親が二人ともオタクで、私はいわゆるサラブレッドというやつだ。リビングのテレビに流れてるのは、だいたい誰かが選んだアニメか動画で、特に見るものがなければ消してしまう。なんとなくつけたテレビで流行りを覚える、ってことがほとんどない家なのだ。


 知りたいことは自分で検索するし、似たものはおすすめ欄が勝手に教えてくれる。結果、私のスマホには二次元の顔がずらーっと並ぶ。困ったことは、マジで一回もない。


「あや、顔かわいいんだからさ。もっと青春しなよ。ダブルデートとかしてみたくない?」


「それ、私に彼氏が必要なやつ?」


「そうだよ」


「難易度高くない?」


 茉莉乃が何かぶつぶつ言ってるけど、ダブルデートに興味が全くわかない私の脳内は、次のゲームイベントのことを考えることにシフトした。


 ポンポンラインの『プロデューサーセッション』。それは、他のプロデューサーとペアを組んで、二人分のライブのスコアで順位を競うイベントだ。まだ参加したことはないけど、告知が出るたびに、楽しそうだなー組むならこの衣装かなー、なんて考えている。参加してなくても考えるのは自由でしょ。今回はどんなステージなんだろうなぁ。


「ちょっと、聞いてる?」


「聞いてる。衣装どうしようかなって」


「聞いてないじゃん」


 茉莉乃に曖昧な返事をしつつアプリを開くと、ちょうどチャットに通知が来ていた。


『今回のセッションイベント、一緒にやりません?』


 HONE。あのタカオミさんだ。返事を打ちかけて、親指が止まる。うちには両親との約束がある。『素性の知れない人との協力プレイは禁止。破ったらスマホ没収』。ゲームをしない親が適当に言ったんじゃなくて、ゲーマー二人がガチの真顔で言った約束だから、私もこれまでちゃんと守ってきた。


 でも、タカオミさんは顔を知ってる。連絡先もある。目の前でめぐりちゃんのストーリーを熱く語ってた人だ。

 

 ……知らない人、ではないのでは?


 だいぶ都合のいい解釈なのは、うっすら理解はしている。しているけども。ずっっっとやってみたかったセッションと、あの百人近いキャラの中から同じめぐりちゃんを選んだ相手。再度指を動かした。


『もちろん!』


 送信して、ドキドキと返事を待つ。


「うれしそう」


「セッション誘われた」


「はいはい。よかったね」


 返事はそっけないくせに、私がお弁当箱を机から落としかけたら、茉莉乃は何も言わずに手で押さえてくれた。



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