第五十四話 教育――お料理変?
「……これは、何の騒ぎかしら?」
後ろからイラ叔母さんが声をかけてきた。
「メア様の慈愛でございます」
ッ何それはエイドさん!?(慈愛の意味がわたしには解らなくなる!)
叔母さんは目頭を押さえ、少しだけ頭を横に振り口を開いた。
「えっと……? 今日はもう中止でよろしくって?」
「チュウ……もうだいじょうぶッチュ! メア様、本当にありがとうございましたッチュウ」
そう言いながら離れるアーディさんの目はまだ少し赤い。
……
「今日から御三方には料理を習ってもらうチュ。まずはこの厨房に入る前に、手洗いに着替えをしてもらッチュウ」
「あたくしはユナちゃんを送りに来ただけですから。あとの事はアーディ、お願いしますわ」
叔母さんの横に居たユナちゃんを一歩前に出して、もう戻ろうとしている。
「あ゛っーー!! あ゛っーー!!」
抱かれていたヒロがいきなり泣き始めてしまった。叔母さんがあやしているが、身を捩らせて降りようとしている。
チノが表に出て?(えっ、別に良いけど?)
「あ゛っーー!! あ゛っーーああ~……――ッチ!」
(ちょっと見た? 今舌打ちしなかった!?)そうかなぁ? ただ唾を飲み込んだだけじゃないか?(そんな事、露ほども思ってないよね! バカにした感情が漏れてきてるのわたし知ってるから!!)まあまあ、落ち着けって。
俺がチノをこの一つの体の中でなだめていると、ヒロが泣き止み、叔母さんへ実につまらなそうに抱かれる。
「あーあーっ……あーあーっ……!」
妙に感情の籠った鳴き声を連れて、叔母さんは戻って行ってしまった。
(納得できないィィィーーー!!!)
……
「それではメア様にティア様。これをお召しになってもらえますか?」
「はーいー!!」「ぐひ~ぃ~!?」
どこからともなくエイドさんは、可愛らしいデザインのエプロンを二着用意していた。ちょっと可愛い過ぎじゃないか? そのサイズが小さい方は薄桃色ベースに水色のクマさんが刺繍され、調理用ではなくおままごと用と言うのが正しい物。
そんな女々しい物など着れぬ!(今更ドレスを着てるメアちゃんが言っても、もう遅いよ? 頭の先から足の先まで、男要素なんて一切ないじゃない!)
いつの間にかエイドさんが姿見をセットしていた。うん! 鏡に映る女の子は優々とエプロンを結んでいきますね!! しくしくしくしく――。
「うまくむすべないよーエイドォ~?」
「ママのむしゅんであげるー!!」
俺が悲しんでいるのを他所に、チノが結び終えていた。そして、母さんのを結び直そうとしている。固結びになっていたのを解き、蝶々結びにしているが、羽の部分は計算され尽くしたようにでかでかだ。これは自分の後ろもこんな感じだろうなー……。
隣ではユナちゃんが、もう三角巾とエプロンを身に着けていた。なぜだろうか、俺と違いどことなくカッコイイ(そりゃあユナちゃんの中身は――)あ~~ユナちゃんは~~女の子~~あーあー(ソーダネーー)
ユナちゃんが自分の服装と俺のを比べている?
「もちかちてこっちがいいの?」
チノが質問した。
「しょんなことないわ。しょれともイヤミのちゅもりっ!!」
イヤミなんて言った?(王子様キャラだもんね。わたしの配慮不足だったわ)チノの言うことぜんっぜんっっわかんねえ!! メアッアッーアッーー……(意味不明な泣き方しないで、おとなしく裏にいときなさい)ユナちゃんはーー、女の子だもんーー……ぶつぶつ……。
「ごめんなしゃい。きじゅかなくて♪」
「あんたはじぇんじぇんきじゅいてない! …………じゃいじゃいおっちゃんのクチェにかわいちゅ――」
「ん?」
(最後の方が小声過ぎて聞こえない!)……子……女の……ぶつぶつ…………(メアちゃんうるさい!!)ユナちゃんは女の子だもん……。
「――っにゃんじぇもにゃい!! フンっ」
(大声を出されて、ユナちゃんにそっぽを向かれてしまった)……もん……だもん……。
……
「着替えは終わったかな~ッチュ~~?」
「「は~い!!」」「ハイ!」
「次は手洗いでチュ。こうやって、ちゃんと爪の先から、指の間もあわあわでゴシゴシするッチュ? 最初はティア様からお願いしまチュウ」
ジェスチャーで分かり易く教えてもらえた。母さんが台の上に乗って手を泡だらけにしてはしゃぐ。
「みてみてチノちゃん! あわあわっ!!」
そう言って、泡まみれの手を見せてくれた。不思議な事に泡の一つ一つの色が違う。なんだかとっても楽しそうだ!
「はやくお済ませください。御二方も控えておいでで、それにメア様もチノ様も交互に代わられて、お目を輝かせていらっしゃいます」
べ、別に目なんて輝かないし!(そ、そうよエイドさんてば、おかしな事言うよねメアちゃん)んだんだ。
「ごめんね? あとはながすだけだから!!」
母さんが降りてきたのでユナちゃんを待たせる訳にもいかないのでさっと台に飛び乗った(けっして楽しそうだからとか、早くやりたいなんて思っていない)いないったらいない。
いざ、手洗いを始めようとしたが――。
「はやる気持ちは大変にわかります。ですが、台をもう一段乗せないとお背が届きになりませんよ?」
こ、こりぇはその違うし!(ふ、不幸な行き違いなだけよ)んだんだ。
エイドさんがもう一段乗せてくれたので、それはもう急がずに、ゆっくりと、優雅に、流れるように、台へ足を掛けていく。
「……ぐ!?」
ユナちゃんのくぐもった声が聞こえたので、後ろを向くとスカートの裾を握り、口をへの字に曲げていた。
「にゃ、にゃんじぇもにゃいち!!」
そう言うとユナちゃんは俺達を背に、近くに置かれていた台の上を、登ったり降りたりをなぜか繰り返し始める?(……筋トレ?)
まあいいや……。あっ、これがハンドソープだな(さっそく泡をシュっシュっと)
「わっ♪ わっ♪」
うわ、スゲースゲーッ!!(泡もすぐに泡立つ!)見ろよチノ。これ絶対ふーって吹いたら楽しいヤツだ!(ふーふー)
「……こども」ボソッ
後ろから冷ややかなユナちゃんの声が聞こえた。
「メアおとなだもん!!」
「メア様は大人ッチュウね。チュチュチュ♪」
「ええ、メア様は大人ですよ。ふふふ♪」
「えっー、メアちゃんはこどもだよ?」
大人達はちゃんと理解してくれている。しかし、子供にはこの溢れ出る大人のオーラが判らないようだな。うん!!!
ユナちゃんの冷ややかな視線を無視し、それはもう急がずに、ゆっくりと、優雅に、流れるように手洗いをしていく。
なぜだろうか? ユナちゃんの方からもの凄い圧を感じるような……。
洗い終わったのでエイドさん達の横で待機。ユナちゃんはやけに慎重に台の上に乗って、自慢げに俺達の方に振り向いた。
「ん?」
どうしてそんなに自慢げなのかと、チノと話したが結論はでない。そのままユナちゃんは口をへの字にして手洗いを再開した。
「ちょっとアーディ姉。あのハンドソープは何所で手に入れたのですか? 城の備品には無かったですよね」
「メア様方の教育を承ったその日の内に、城下で買ってきたッチュ。こういうのは楽しく学ばせるのが基本チュ?」
「昔からこういうのは得意でしたね……」
「おわりまちた」
ユナちゃんも手洗いが終わったようだ。
…………
……
「それではエイド様にはご退出を願うチュウ」
「何故です? 私も手伝いますよ?」
エイドさんが何食わぬ顔で奥へと進もうとすると、足元から炎が吹き上がり行く手を阻んだ。そして厨房中の料理人が殺気立ち、調理を中止してエイドさんへ近寄っていく。
「忘れたとは言わせないッチュ!! エイドは厨房出禁のはずッチュウ!!!」
「私は護衛も兼ねていますから、職務を放棄するなどできません。これはメイド長として譲れない事です」
「ソレをダメだと言ってるッチュ! 料理長として断固反対するッチュウ!! エイドは厨房出禁でチュ!!!」
どうしてそこまでして反対するのだろうか(あの優しいアーディさんがここまで拒否するなんておかしいよね)
……そうだ! ここは子供としての特権をフルに使うべきだな。
「アーディうんとね? エイドもいっちょがいい!」
ちょっとあざといくらいにイヤイヤして、アーディさんを見上げた。
「チュ~ウ~♪ ――ッチュ!? 申し訳ございませんチュが、それだけはダメでチュウ」
「どうちて?」
アーディさんは料理人の一人を呼び、卵を持ってこさせた。
「目玉焼きを作るッチュウよエイド!」
「良いのですか♪ それではお言葉に甘えさせてもらって――」
ははーん。これは俺でも予想できるぞ。グシャるパターンだな。
しかし俺の予想とは裏腹に、卵を小気味良い音を出して片手で割ってみせ、何事もなくフライパンで焼いていく。
(……普通じゃない?)おかしな点はない……よな?
ユナちゃんも何も起きていないとアーディさんの方を向いている。
「もう少しだけお待ちくださいチュウ」
目の前には目玉焼きが在る。
焦がした訳でもなく、殻も入っていない、失敗せずに調理していたはずの目玉焼きが皿の上に乗せられている。
「できました~♪」
そうエイドさんが呟く。
食べるのがもったいないほどの目玉焼きがこの世には存在した。
少し表現がおかしいか――。
「ちょっとあんたのところのメイドなにちたの!?」
「ち、ちらないもんメア」
まるで生きている目玉焼きだ。けっして比喩ではない。なぜか脈打ちを始めてるのだ!?
「エイドが調理をおこなうと、こうなってしまうチュ」
「どうですか? 生きの良い目玉焼きですよ。プルプルですよ!!」
エイドさんは逃げようとしている目玉焼きをフォークで刺した。
「アレ、たべれるにょ?」
困惑しているユナちゃんがアーディさんへ質問をした。
「食べれるチュ。でも負ければ逃げて野生に帰ってしまうチュウ」
負ける?(逃げる?)野生?(帰る?)目玉焼きが?
「エイドのちかくでつくると、ぜんぶああなるんだよ。たのしいよね♪」
そう言った母さんの口へエイドさんが目玉焼きを入れようとしている。
目玉焼きはビンタをして必死の抵抗するも、モグモグと食べられていく。
「生きてる料理なんて、当然ダメッチュ! 論外ヂュウ!! ちゃんと教える事ができないヂュヴ!!!」
「……そうですよね。どんなにがんばってもこうなってしまうんですもの。これではダメですよね……ふふふ――」
負のオーラを放ち、瞳に雫を溜めて立ち去ろうとする。
どうにか力になってあげれないだろうか?(そうよっ! イスナーちゃんに聞けばいいじゃない)
イスナー!!!(イスナーちゃん!!!)
『ふぅ~ふぅ~……ちょっと待って~……まだ疲れてるから~……』疲れてる?(わたし達から魔力や神気を吸収すればいいじゃないの?)『イイの~? それじゃあ~お言葉に甘えて~、す~~ぅ~~――』
腹一杯な紙束の絵が送られてきた。うん、デブになってる。
(どうして疲れていたの?)『ふっふっふ~~神様として人々に幸せな奇跡を起こしていたのよ~』ふ~んよくわからんが、まあがんばったんだな。
(ねぇねぇ、エイドさんの料理をどうにかしたいの)『エイドさんの料理か~、ちょっと難しい相談だね~、人には向き不向きがあるんだよ~。う~ん~……』
『君達は過酷な運命に抗う強い意思がありますか?』
急にこどじから綺麗な文字に変わる。
そんな大事ではないだろう?(ただの料理でしょ?)『もう一度訊きます。エイドの運命に抗う強い意思はありますか?』えっと、うん……(はい……)
次にイスナーから送られてきた文字はこどじに戻っていた。
『わかった~。ただあの“料理”を作っている間~、エイドさんに寄り添ってあげればいいだけだよ~』なーんだ。それだけかー(もう脅かさないでよー?)『そうすれば《運命の子》の加護によって~、因果の歪みがメアちゃん達に向かうんだ~』
……えっ因果!?(……歪み?)
『さあ~《運命の子》よ~! その手で未来を切り開くのだ~!!』
エイドさんが諦めた様子で、厨房をあとにしている。
『さあさあ~切り開くのだ~~!!!』
「ま、まっちぇエイドッ!!!」
覚悟を決め、エイドさんを呼び止めた。そしてアーディさんを説得して、もう一度エイドさんに“料理”を作らせてもらう。今度は俺が寄り添いながら。
…………
……
「本当に動かないッチュ? メア様が何かをなさったみたいチュウが。……メア様に免じて、まあ許すッチュウ!」
「ありがとうございます!! これもメア様のおかげです!!!」
「う、うん……」
『その後~、メアちゃん達に不幸が訪れるのは~、神様だけが知っていた~』
不吉なナレーションやめろ!!
イベントクリア報酬
ゲットスキル
【慈愛】 ⇒ 【慈愛+】
それも愛これも愛どんな愛?
補正 全能力+1 <new>魔法力+10%UP
【子供】
大人に大人なんて言葉は掛けないよ? 子供っぽさがある人にしか使わないよ?
補正 ステータス成長速度+10%UP
【因果】
次回メアちゃんに不幸が……乞うご期待!!!
補正 パーティの不幸を肩代わり可能
エイド
【生きてるー!?++】 ⇒ 【生きてるー!?SP】
深く考えてはいけない!
補正 ≪生きてる≫を料理に付与 <new>魔法力+5
ユナ
【負けず嫌いSP】 ⇒ 【負けず嫌いEX】
おっさんに女の子らしさで負けるなんてありえない!!
補正 全能力+2 <new>ステータス成長速度+30%UP
ヒロ
【――ッチ!】
君態度悪くない?
補正 攻撃力+1
スミマセン次回は1月17日(日)に更新です。
創作日記:ボクが『人物』を創るのにはまだはやい
作者のモヤモヤを書くので、内容もモヤモヤしたものになります。
まず、『キャラ』と『人物』の違いについて作者は『キャラ』=反射的反応で、『人物』=思考的反応と考えております。
で、頭の汁が足らん作者は『キャラ』を頑張って創ろうとして、『人物』にまで足を踏み入れてしまったんですね。
物事には段階があります。実力も才も無いのに『キャラ』を一足跳びに『人物』を創ろうとしたのです。あろうことか!!
だから『キャラ』ができてもないし、もち『人物』もできとらん。
うん、地雷原大好きだからね。仕方がない。
とにかく現状の大量の『キャラ』被りをどうするかだよな。その答えを『人物』に求めたらあかん。これは愚とだけ学んだ。
『キャラ』は『キャラ』の時点で差別化するべきだった。『人物』に昇華してからではもう遅いぃぃぃ!!!
……映像系の創作なら、この考えは当てはまらないだろうな。
結論? 文字媒体の蓄積量不足や。映像媒体の過蓄積の弊害や。SSから学ばなっ!




