第五十二話 もう、色々おかしなあたしの世界!?
あの日以来、あたしの生活は一変した。
奇しくもメアちゃんとの出会いは、あたしにとって好機となるものだった。赤ちゃんのフリは苦痛でしかないから。
おかげで喋るようになったし、走るようにもなった。もちろんトイレも一人でできるようになったわ。
「ユナちゃんーー? 濡れた下着は洗いますから、早く新しいのを穿きましょうね」
「んんんっ……あいー……」
朝の目覚め以外……はね?
「おはようユナ。さあ小さな騎士見習いさんは、これに着替えて」
ラスさんがマント付きのドレスを用意している。そして護身用の剣も。
最初に持った時は、重ぉ!?と思ったけど、今では軽く感じるほどにあたしは成長した。この部屋の一角、トレーニング道具が散乱している場所。そこが剣の訓練場所。
でも、騎士になるための訓練なんて、最初は乗り気ではなかった。でもね……メアちゃんの事を思うと心配で、あたしが守らなくちゃと使命感が湧いてくる。
だって、あの子きっと転生前はあたしよりずっと幼い子だわ。初めてあった時の意味不明な行動の数々、それがすべて説明できるもの。
第一に大人は服を着るのが常識。そんな常識が無いのは子供。それもかなり幼い時に限る。
第二にあの不思議な踊り、あれも不器用な幼い頃の特徴そのもの。
そして第三。無意識にあたし以外の《転生者》が同年代と思っていた先入観。考えればあたしより年下の子がいてもおかしくないもの。
ねえイスナーくん! 聴こえているんでしょう!!
ここ最近の内に、すっかり見慣れた文字が頭に浮かぶ。
『君は少し誤解してないかい?』
そうかしら? なら、あたしの質問に答えて。メアちゃんの中身は何歳なの?
『うっ!? それは……その……質問が悪い……と言うか……その……』
どうして答えられないの? まさかッ!! 小さな子供を言葉巧みに騙して転生させたの、っサイテー!!!
『ちょっと待っておくれ。ヒドイ妄想だよ!! 神様には色々な制限があるんだ。今の君の質問では正確な情報を渡せないと思うんだ』
その書き方だと、情報は渡せるワケよね~?
『んぐぐっ!? いや、正確な情報じゃないと、ぜったいに君は勘違いするはずだよ』
さっさと伝えなさいよ。さもないと今後一切、イスナーくんの事、無視するから。
『……伝えるけど、誤解はしないでおくれよ? メアの中身はね。七歳位とも言えるし言えないとも言える。でも本当は違うんだ! 君よりも大――』
意味わかんない!!! 結局七歳の子供じゃない。言い訳しても無駄よ! この駄紙ッ!!! あたしがメアちゃんを、悪紙の魔の手から救ってあげなきゃ。
『( ;ω;)ドシテコナタ』
外が騒がしいわね。
ここ数日、城内で病が流行りだしているようね。そんな暗い雰囲気を打ち破るためにか、一部の人が騒がしくしているのかしら?
この病、ラスさんが教えてくれるには、症状は二日から三日で治まる軽いもの。解析の結果では、ウイルスによる風邪で、子供には移らず、大事には至らない流行り病だそうだ。
「リボンを一人で結べるかな?」
「できうっ!」
着替えも後はこれで完了。ラスさんから赤いリボンを渡される。
短い指だけど、とても器用に動くので簡単に結べるから――。
「少し右側が、小さいですわ」
イラさんがチョンと結んだリボンを引っ張る。
この世界の人達は、スゴク細かい。本当に細かい。あたしにはまったく違いが理解できないよぉ~。
トントン トントン
「ラス殿下、お食事の準備が整いましたでございます」
執事のオーディさんが朝食を持ってきてくれたみたい。早く食べて体を動かしたいなー。
……
「騎士としての挨拶の方が大事だ!」
「いいえっ! 立派な淑女としての挨拶の方が大事ですわっ!」
「ドウン、君はユナには騎士として育ってほしいと思うよね」
「オーディ、ユナちゃんには淑女に育ってほしいわよね」
挨拶の一つで、激論しなくてもいいのに。それに振られた方は堪ったもんじゃない様子。
「あ、あっしには難しい話でさあ!?」
「わたくしめの意見より、ユナお嬢様のご意見を聞かれてはでございます」
ドウンさんは目を白黒させ、オーディさんはあたしに放り投げた。
「どちらでもぉーよいのではないでしょうかぁー?」
ナリーさんが投げ槍な意見を述べつつ、ベッドメイキングをしている。
「なるほど、どちらも良いか。つまり二通り教えればいい訳だね」
「素晴らしい意見ですわナリー」
「っえぇーー!? お、お褒めに預かり恐縮ですぅー?」
そう捉えるかしら!? ラスさんにイラさん?
あのー赤ちゃんに立って近寄られると、影でちょっと怖いと思うわ。
イヤ、しゃがまれるとさらに影が濃く――。
……
ラスさんの中の騎士像は、微妙にズレてないかな? この世界では普通なのかしら?
イラさんはイラさんで、あたし赤ちゃんだよ? そんなに厳しくしなくても。ティア伯母さんには負けたくない? さいですか。
…………
……
今日はあたし達の誕生日会。なぜか最初に、メアちゃん主催のミュージカルが始まってしまった。城内で踊っている人や歌っている人が多いと思ったら、あの子が原因らしい。
まったく子供らしい発想ね。
そう、その時は思ったのだけど――。
ッおかしいわよね!? この完成度は異常でしかなくない!! みんな城で務めている人で、劇団員じゃないわよね? なのに歌手顔負けの歌唱力、寸分の狂いもなく息ぴったりな踊り。そして極めつけは、あたしと同じ日に産まれたはずなのに、あそこまで上達しているメアちゃん。
とんでもない化け物のライバルに、あたしは成らないといけないのかしら。
そう、その時は思ったのだけど――。
あたしへ恋する乙女のように接してくるメアちゃんッ!? 妖精の衣装に身を包み顔を赤らめ笑顔を作るソレ。学園生活で身に覚えのある悪夢が再び起きてしまった!!
あれは色々な人達に顔合わせを済ましたあと、メアちゃんが挨拶をしにきた時の事。その流れるような所作はまさに完璧。その衣装と相まって妖精の女王様みたい。イラさんがなぜ厳しく教えていたのかが、その時に理解できてしまった。
メアちゃんに見劣りするカーテシーをする羽目になり、つい強く当たって距離を置こうとしたのだけど。それが間違いだった。
今にも年相応に大粒の涙を溜め、下を向くもんだから、つい顔を上げさしてしまったのが、致命的な間違いだった。
あたしの顔へ吸い込まれるように見つめる瞳。あれ、今のあたしの状況、読まされていた恋愛小説にこんな場面が。たしかその時の主人公の心境は……。
ええ~、ま、まさかよね~!? あたし女の子だし、ほらほら、こんな風に男みたいな挨拶なんてしないし……?
あああーー!! ラスさんのせいよっ!! 騎士の挨拶なんて紛らわしいもの覚えさせたからーーー!!!
どうしてこうなったのーーー!!!
……
そんな事が全て吹き飛んでしまう出来事が起きてしまった。
――メアちゃんが消えた。
《神々の黄昏》が攻めてきた。予定より遥かに早い襲撃。しかし、みんな落ち着いていた。笑いもしていた。
それが一変してしまう。突如として襲ってくる見知った人達。恐怖に駆られ泣き叫ぶ者達。お前もそうなのか、私は違う。疑心暗鬼が渦巻いていく。
けれどその中でおじいさん。
――この時は違う。
まさしく王はその威厳を皆に示した。その号令は誰もが従う覇気に満ち。次々と的確に対処していくそのさまは歴戦の知将。
あっという間に、場へ落ち着きが戻ろうとした。その時、
「どうしよう。メアちゃんが、まだ、かえってきてないっ!」
ティア伯母さんの一言は王の顔をただの人に戻してしまった。
青ざめる城の人達。すぐにメアちゃんが心配だと。急ぎ向かったあたし達が目にしたのは、
信じたくない光景だった。
血の道筋を描いて倒れるているアーディさん。苦しみ悶え腹部を押さえる異形の者。まるで誰かが居た証拠だと言わんばかりに、見覚えのある妖精のような血のシミ。
異形の者は魔王を名乗り聞いてもいないのに色々喋りだす。まるで目的は達成したと誇らしげに。
……直後、ティア伯母さんが気を失い倒れ、イラさんが受け止める。
あたしを抱いたままの姿勢だった。触れてしまったティア伯母さんの体は、血の気がまったくないほどに冷たく。それはきっと彼女の心の中を表しているよう。
そして、異形の者は本物の魔王を知ることになる。その前では酷く怯えた哀れな存在でしかないのを刻むのだろう。
あたしは……あたしは、この世界を甘く見過ぎていた。
世界を救う使命を軽くみていた。あまりにも平和ボケした人々の中、ぬくぬくと生きてきた。きっと、異界の者達が攻めてくるのを、どこか遠くの国で起こる悲劇のように、まるで当事者意識がなかったのだ。
しかし、悲劇は幕を開けてしまった。
あたしは無力だ。
あたしは守れない。
あたしは強くもない。
あたしは騎士でもない。
あたしは自分の身を守れない。
あたしは庇護される姫でしかなかない。
あたしは今も抱かれ怯える赤ちゃんでしかない。
あたしは、
いつの間にか本物の赤ちゃんのように泣いていた。
……
泣き疲れて寝てしまったのか、途中の記憶がない。
次に意識を取り戻した時、奇妙なことが起きていた。城の中が歓喜でざわめいている。しかし、その原因はすぐに判明した。
“メアちゃんが生きて帰って来た”
みんなが口を揃え奇跡だと称えている。きっと、あたし以外はそう思っているに違いない。
でも、あたしは知っている。あの子があたしと同じ加護の持ち主である事。そして、あたしと違い本物の天才である事を。奇跡ではなく実力なのだと――。
このままじゃあ、あたしはあの子の騎士にもライバルにもなれやしない。
そんな負け犬みたいなのはまっぴらごめんだわ。
あたしは、あの子に負けない! 並びたい!!
…………
……
「あ~~っあ~~」
「きゃああ、かわいいい~~♪」
この可愛いの暴力は何かしら。
あたしの指を弱々しく吸う生き物は何かしらー!!
「もうユナちゃんは立派なお姉様かしら、ねぇラスもそう思いませんこと?」
「フフフ、これでメア姫に仕える騎士が二人、私も含めれば三人。つまり三銃士!? ……これは奇妙な一致、運命の定め――」
あたしの指は美味しい? ちょっと待ってね。また粉ミルク付けるから。
「奇妙なのは、ラスの頭ではなくって?」
「ああ、なるほど確かに帽子は必要不可欠かもしれないね」
まだまだたっぷりあるからね。うふふ――。
「……今に始まったことではありませんでしたね」
「フフフ――」
うふふ――。
「あ~ぅ~あっ~~」
「はあぁぁーー……」
…………
……
今日はメアちゃんがあたしの部屋へ来る日。初めてのお茶会はだいじょうぶかしら? あの子、無理はしていないだろうか?
来たみたい!
姿勢を正しできるだけ平静に努める。
なぜだろう、あの子が近くに居ると心臓がバクバクする。これは未来の女王が……本物の女王としての資質がさせるモノ?
あたしが挨拶を終えると、それは見事なカーテシーをしてみせるメアちゃん。やはり今のあたしとの差は歴然、それは嫉妬してしまうほどに。
少し観察していると、顔を真っ赤にしてティア伯母さんの後ろに隠れた。そして、恋する乙女のようにハートを撒き散らしている。
心外だが、最初の出会いであたしを王子様だと勘違いしているみたい。学園でもあたしの性別が女だと知っているはずなのに、一部でそう呼ばれていたのを不意に想起させてしまう。
ましてやあの子は《転生者》であるのを知っている。大方あたしの中身がおとぎ話の王子様だと思っていそう。
お茶会が始まる。お菓子を食べつつメアちゃんへの今後の対策を考えていく。
食べ終えると、イラさんがメアちゃんと遊ぶように言ってきた。その言葉を聞くや否やまるで子供のようにはしゃぎだしていた。……ってメアちゃんは子供じゃない。いつの間にか忘れそうになっていた。あまりにも佇まいが完璧だったから。
積み木をしている最中、ずっとメアちゃんは顔をニコニコとさせていた。一点の曇りもなく。いっしょに遊べるのがそんなに楽しいのか。しかし、あたしはもうあんな風に笑えない。
あの事件があたしの中で尾を引いている。城の中はもう確実に安全とは言えない。楽観視できるほどの図太さは持ち合わせていない。その事が口から漏れてしまった。
すると、メアちゃんの口から答えが返ってきた。それはきっと恐怖に勝つための方法。あたしができていない事。この世界をどこか認めていないそんなあたしの心の弱さを射貫く言葉。
この子はきっと強くなるのだろうと――。
まあ、背伸びしたいお年頃なのは変わりないようね~。あ~ハイハイ、お姉さんがちゃーんとわかってあげるから。
それに何々ー? 面白い事言うわね~。自分の事をさんじゅうのおとこだなんて……。
――おとこぉぉおお!!!
メアちゃんの中身が男だなんて考えもしなかった。言われてみれば、あたしに恋をするとなれば普通は男よね。そしてまだ自分は大人だと主張している。が、癇癪を起こした幼児にしかみえないのだけれど。
横にずっと居たメイドさんに、アレ買ってアレ買ってと言わんばかりにお願いをしている。その行動を見て誰が三十歳だと思うだろうか、ぜったいにそんなヤツいない。
しかしそのメイドから放たれた言葉は肯定だった!?
はああぁぁ!? 頭がパーンしてきた。ちょっとイスナーくん! どうせ見てるんでしょう!!
『何だい? もうボクを信用しないのじゃなかったかい?』
いいから答えなさい。メアちゃんの中身は三十歳のおっさんなの?
『メアが言っている通りだね。君は話を聞かないからね。ホラ、もう一度メアも認めたよ』
ア゛アアアアァァァァァーーーー!!!!
あんたぁぁ! あたしの反応見て楽しんでたでしょう!!
『失敬な。ボクは最初から誤解しないようにと伝えたはずだよ。それを君は一方的に――』
もう意味わかんない! 何かが音を立てて崩れていく。一点の曇りのない笑顔が、知能ゼロみたいな笑顔に置き換わっていく。そして、コイツがおっさん!?
そうだと思うとあたしの中で、今までコイツに向けてきた感情が一転。荒れ狂う感情に変わって、もう抑えられそうに――、
「……ふっ……」
――ないわぁぁああアアアアッ!!!
「ふぅ?」
とぼけた風に頭を傾けるコイツへ、
「ふっっっちゃっっっけん――」
脳が意識が感情が集まっていく!!
「――にゃ~~~!!!」
右拳に全身のうねりを込めて、今生の全力全開をぶち込んだストレートが穿った。
遅延した時間は、おっさんが放物線を描き、そのあまりにも軽い体に似つかわしくない衝撃音を放って戻る。
幾つかの悲鳴とともに、
今日のお茶会は無事、
途中終了を迎えた……。
イベントクリア報酬
ゲットスキル
ユナ
【小さな騎士さん】
騎士の道は遠く儚く――誰がコイツに仕えるかバーカー!!
補正 攻撃力+1
【君は人の話を聞かないからね】
ああ、やっぱりダメだったよ。次からは聞いてね?
補正 HP+1
【三銃士】
誰が三銃士よ!
補正 TP+1
ラス
【三銃士】
三銃士ではなくドン・キホーテでは?
補正 TP+1
ヒロ
【三銃士】
「あ~あ~!!」 どうやらやる気たっぷりのようだ
補正 TP+1
創作日記:「申し開き会場!!」
わあードンドンパフパフー!!
前回の投稿で更新途切れるの早くね?と思われた方が居るかもしれません。
そこで申し開きです。
まず第一!!
ヨシ! 四話分ストックが溜まった。さあ更新の再開だーー!!
うわあああぁあぁぁあああ!? アレッ? おかしい!? なぜもうストックが三話分しかないのだ!!!
……作者は小学生かな? こんな単純な事に気づかないとは……まさか幻術ゥ!!!
次に第二!!
一話のボリュ―ムが微増しだから。
そして第三!!
ソシャゲのプレイ時間増!!
運営さん? 量より質を上げてくれませんか? えっ、量は確実に上げれるが質は難しい。創作の永遠の難題ですね。はい。
最期に第四!!
ゲーム欲が暴走しました。違うねん。小説の執筆時間確保の為に、ゲームのプレイ時間をずっと減らしてたのですが。決壊してん。ヒャッハー! 止まんねぇからよぉ……プレイ時間ぅ。この先にオレは居るからよぉ……。
(´д` )ポカーン(´д` )???
だからよぉ、ホントごめんちゃい☆
(´∀`)┳*パパパパパパパーン
何、やってんだよ作者!? 作者ァ!!!
希望の華~♪
裏向きサタデーナイトフィーバー
――く~~♪
次回からの更新は日曜14時!!




