第四十一話 HAPPY END 目指して……
ラス叔父さんがゆっくりと俺に手を伸ばす(あぁ……)
…………
……
両脇をゆっくり持ち上げられ、目と目が同じ高さとなる。
「――ドレスというより、茶色ですかね? 随分とお汚れになられて、さあ、私のマントを着てください」
「……ふぇぇ、え?」
「申し訳ございませんメア姫。その前に回復でしたね」
緑色のガラス容器に入った液体を口に流された(――甘い!?)
「おや!? ほとんどキズは無かったようですね? 未来の女王たるその御身がご無事でなによりです。ああ、メア姫にはまだご存じでない言葉でしたか? 死なないでいてくれて良かったという意味です」
そんな事ではなくて!(そうよ、そうよ!)
水色のガラス容器を口に突っ込まれ、のどごしのいい液体が入ってくる(疲れが取れてきた!?)
「……ありがちょう?」
「姫に、女王に仕えるは、騎士としての誉れですから」
「はぁ……?」
降ろされ、目の前で敬礼した叔父さんがマントを脱いで差し出してきた。コレをどうしろと?(嘘ぉ!? 刺されたはずのモブが立ち上がってる!!)
「お一人ではまだお着替えになられませんか。後ろを向いていただけませんか?」
「あ……い……?」
「失礼します」
ボロボロのドレスを脱がされて、ローブみたいに体をすっぽりマントで覆われた。女神のブローチを留め具代わりにして、汚れていないドレスの部分を使ってリボンを装飾し脱げないようにしていく。ローブ型マントの出来上りだ。最後に顔をハンカチで拭いてくれた(この叔父さん、デキる!!)
「メーアーーちゃーーーん!!!」
この声は!!!
「ママァ!!!」
母さん!!!(お母さん!!!)
「メアちゃん!!!」
「マーマー!!!」
ポスン
「よかった。ほんとうによかった」
「ママァ、ままぁ~~、ま~ま~~……」
「おかえり、メアちゃん」
「ただいまっ、ママッ!!!」
…………
……
「寝てしまったようだな」
ロワはエイドにお姫様抱っこされているメアの寝顔を一目確認する。
「無理もない事でしょう。なにせ今日で一歳になられる身。それに≪神々の黄昏≫に襲われ、泣きながら逃げていたご様子。もし、あと少しでも遅れていたら――」
ラスは自分の不甲斐なさと苛立ちを含んだ声色を発し、ラブピース城へと先陣を切って歩んでいく。
「父上は何か知っているのですよね?」
振り向きはしない、けれど事態を一番理解しているであろう人物に、質問を投げかける。
「……ああ知っておる。メアちゃんとユナちゃんは《運命の子》。黙っておるつもりはなかったのだがな」
「薄々はそうだと思いましたが、兄上と同じ《運命の子》でしたか。……父上、他に何か隠していないでしょうね?」
「……おっと、すまぬな。ティアが落ちそうになって聞こえなんだ。はっはっはー」
背中でずり落ちそうになった爆睡義娘のせいにして逃げた。その爆睡義娘は放っておくと首をすぐ後ろに垂らしてしまうので仕方がない事。冷たい視線を送る息子に、そう大げさにアピールしている。
「嫌な予感がしますロワ陛下。先の災厄からまだ一年ちょっと。このような事、今までになかったはずです」
エイドがすかさず他の話題でフォローした。
「神々の戦いも……終わりが近いということでしょうか父上?」
ラスの話題が変わり内心安堵する二人。
「……かもしれん。不測の事態が多すぎる。……じゃが、メアちゃん達の代で予言の……、“終焉の刻”がくるわけではなかろう」
「不謹慎なことを言わないでください父上!!」
「冗談でもやめてください!!」
「すまぬ。ただ、これからは気を引き締めねばな。儂等も――」
再び爆睡義娘の位置を戻し、ラブピース城の旗を見つめ歩を進める。
「そして《運命の子》達も」
「ユナ……」「メア様……」
一同の表情が引き締まった。
……
「う~む」
「どうしたのです? そんな難しい顔をして?」
殿を務めるモブのうめき声が気になり、エイドが質問を投げかけた。
「いやな。いつから操られていたのかと疑問に思って」
「それはモブ兄のほうがわかっているのではないですか? お誕生日会の練習時にアーディ姉が休憩中に振る舞ったお菓子。アレが原因です」
どこからか鼠印の袋を取りだし、それを見せる。
「なに!! そうだったのか!?」
大きい声にビクリと反応したメア。それを見て不機嫌を露わにするエイドに小声でモブが謝った。
「異界の魔王が聞いてもいないのに、ベラベラ喋って教えてくれました。……ちょっと、立ち止まらないでください。灯りが無いと危険でしょう」
「ああ、すまんな」
灯りを前に向け急ぎ足で追いつく。しかし、説明を聞いてもどこか腑に落ちない様子。
(……本当にそうか? もっと前から綿密に組まれた計画ではないのか? なにか大事な事を見逃してはいないだろうか? もしかして――)
「モブ兄?」
「……なんでもない(考え、すぎか――)」
剣を握る手に力を込め、後ろから襲おうとした≪神々の黄昏≫をモブが切り捨てる。
「それでエイド? 城の方はだいじょうぶなのか?」
「もうそれは解決しましたよ。今のところは死者もでていませんし、最後の残りはモブ兄。あなただけでしたから」
それを聞いて安堵するモブ。
「……あと♪ええ♪フフッ♪メア様をキズつけた、あの、愚か者は――」
地獄からの怨嗟を彷彿とさせる声に、周囲の生き物は逃げ出し、辺り一帯を時が止まったような静けさで包みこむ。
「なんです? みんなして私を見て?」
「「「なんでもない」」」
首をブンブン振る男性陣。
「儂、どんな奴が来ても平気な気がしてきた」
「奇遇ですね父上。私もです」
「そうですね」
うんうんと頷く男どもに対して、ムスッとふくれっ面で立ち止まるエイド。
「もう、なんですか! だいたい、私より陛下の方が化け物みたいに強いではないですか!!!」
「化け物……!?」
ショックで立ち尽くすロワ。
「か、顔が化け物という意味ではないですからね!?」
慌ててフォローするも駄メイド。
「顔……!!」
漫才をしている傍らで、ラスは自分の仕事をこなしていく。この世の者とは思えない化け物を見てしまい、小さくうずくまる哀れな魔物。それにトドメをさしていった。視線の先に居たであろう人物は、地面に指をなぞりいじけている。
「父上ー! 母上にイラが待っています。はやく城に戻りましょう!!」
「ロワ陛下置いていきますよ~?」
「……儂、だって……努力は……ぶつぶつ……ぶつぶつ…………」
「……じ~……ちゃぁ~……」
突然のメアの寝言で我を取り戻した王。
その愛くるしい寝顔と指を咥え寝ている様子を見て完全復活を果たし、俄然やる気をだしてしまう。
「そ、そうじゃな! はやく城に戻ってベッドで寝かせねばな!! どれ、儂が手早く城までの道を確保しよう」
そう言い、手に気を集める。その行動に気づいた時にはもう遅い。周りが止める暇もなく地面に一撃。
「父上ぇ……」「あっ!」「――!?」
その日、一番の被害が生まれた瞬間だった。
…………
……
「……様……メア様! ……メア様!! 起きてください」
「……むにゃあ?」
あれ? いつの間にか寝てしまったのか?(エイドさん?)
「はやくしないと日付が変わってしまいます。ティアー! メア様が起きましたよー!! 眠いでしょうが、さっそく準備をお願いします」
「……ふぁ~~、むにゅむにゃ、は~い~……」
部屋の灯りがとつぜん消失。すると、ロウソクが一本だけのホールケーキがテーブルの上で自己主張を強め、俺を歓迎している。
「今日は一日大変な日でしたからね。それにメア様へは、ちゃんとしたお祝いをできなかったですから」
そう言いながらやさしく抱えてくれて、テーブルまで運んでくれる。
イスに座らされた時には、完全に眠気が吹き飛んでいたようで、
「ケーキ……じゅる……」
母さんはケーキに夢中。お行儀悪くケーキフォークを持ってテーブルを叩いていた。そんな事をしたらとうぜん――。
「ティ~ア~?」
雰囲気が変わったのを察知して、お行儀良く座り直している(でもわたしを見ていたら、イスから飛び降りてこっちに来た)
「ちょっと、じっとしていてね」
くまさんパジャマのフードを取って、魔法石付きリボンを結んでくれる(ちょっと、ボロボロになっちゃったね……)しかたないさ。
母さん達がお祝いの歌を奏で始める。部屋の外からも誰かが口ずさみ始めていた。
た~ん~じょ~び~♪
お~め~で~と~う~♪
う~ま~れ~て~♪
あ~り~が~と~う~♪
た~の~し~い~♪
た~ん~じょ~う~び~♪
イスナー、見てるんだろ?『…………』(わたし達、別に気にしてないわ)『でも、何もできなかった……』(助けようとはしてくれたんでしょう?)『でも――』俺達は生きている。それでいいじゃないか(それに今日はわたし達の初めての誕生日。イスナーちゃんにも祝って欲しいな!)
『……わかった。……わかったよ~』
いつものこどじに戻ったようだ!
さあ、イスナーも一緒に歌おう。な?(ね?)『もう、しかたないな~』
ふっふふ(あはは)『えへへ~』
せーのっ!(せーのっ!)『せ~の~!』
た~ん~じょ~び~♪
お~め~で~と~う~♪
う~ま~れ~て~♪
あ~り~が~と~う~♪
た~の~し~い~♪
た~ん~じょ~う~び~♪
「メアちゃん、ふーふーってやって」
「あい! ふーふー」
イスナーからお誕生日カードが送られてきた。
「「HAPPY BIRTHDAY!!」」
『HAPPY BIRTHDAY!!』
「ありがちょう~!!」
今日で転生して一年。思えば色々な事があったけど、母さん達が一緒ならきっとどんな試練や苦境も乗り越えられる。“母さん達”ちょっと遅くなるけど必ずまた会いに帰るから、待っていてくれ。
Fin
…………
……
月が雲で覆われ夜が深まった頃。
ラブピース城より離れた森の奥地。光が降り注がない小丘にて、二つの影が相まみえようとしていた。
「呑気に物見とは、良いご身分じゃなっ!!」
小さな影が炎を纏った剣を、もう一つの影へ突き立てる。
「おっト、これはイスナー様の《運命の子》ですカナ?」
大きな影は手に持つ刀でそれを軽く受け流し、仮面越しに不敵に笑みを浮かべた。
「今回の件はお主が企んだものじゃな」
剣を構えなおし間合いを開く小さな影。しかし、それを許さない大きな影。
「教えるとお思いですカ?」
刀が空を切るとともに、大きな影の首筋へ反撃の剣が迫った。
「はあっ!! と、無理じゃろな」
不思議な事に、まるで首に骨が無いように折れ曲がり回避。悠々とその場から距離を離され、木々の間でお互い仕切り直し。そして向き合う。
「しかし余に見つかったが最期じゃ――」
剣からドス黒い光が漏れでる。
その形状は小さな影には似つかわしくないほどの、異様な大鎌へと変化した。
「滅び、還ってもらうのじゃ!!」
叫んだと同時に、大きな影は上下二つに断たれた。
「フフフ、残念ですネ。ただの魔王ならバ、今ので倒せたのでしょうガ。そちらに切り札があるようニ、こちらにもあるのですヨ?」
何事もなかったように、元の姿へと戻っていく大きな影。
「はてな、何のことじゃ? 御託はもうよいのじゃ」
大きな影の手足を、漆黒の鎖が捕らえる。小さな影の剣は大鎌から更に形を変え、無数の漆黒の飛槍へとその様相を変化させた。
「消えるのじゃ!!」
何本もの槍が形もわからないほどに穿つ。激しい音が鳴りやんだ後には、ほとんど隙間しかない物体が転がっているだけだった。だがしかし――、
「フヒッ」
「――なん、じゃと!? ……ウソじゃ!! 神格持ちですら屠る余の攻撃を」
動揺を隠せないのをあざ笑うかのように、大きな影は何事もなく立ち上がる。小さな影の頬に一筋の汗が流れ落ちる。
「そうでしタ。“ミャワ様”から伝言を承っておりましタ。最後の最後で油断したな。まぬけな奴らだでス」
人を小馬鹿にした態度で挑発。その安い挑発に乗って小さい影が放たれた矢のごとく飛びかかった。
「――アーハッハッハ!!! ではでは失礼させてもらいますネ「逃がさぬのじゃ!!!」様?」
刀から放たれた迎撃の一閃を剣で受け止める小さな影。
「なぜっ、その名を!!!」
後ろにのけぞり体制を整えた時には、もう大きな影は居ない。
その代わりに折れてしまった剣先が、虚しく地面に刺さっているだけだった。
……
月にかかった雲が晴れていく。
「行ったのじゃ?」
辺りをキョロキョロ警戒する小さい影。さきほどの戦闘で所々に月明かりが射し、その幼すぎる容姿が顕になる。
「逃がされてよかったのですか?」
木の陰から音もなく男が現れた。
「構わんのじゃ!! 今の余達ではどうちぇ、敵わないのじゃから」
その男にチョコチョコと歩み寄る幼子。
「だが、ちゃいちょの時とは違のじゃ。“ちゅうえんの刻”も近いち、ちょれに奥の手も取ってあるのじゃーっ!!」
「さすがです御父様!! どうされたのですかその手は?」
幼子が両手を大きく広げて男を見上げている。
「抱っこじゃ~。余は赤子じゃ~じょ~!!」
「わかりました御父様。いいえ、愛しい娘「んっちょー!」」
男の首に手を回して抱きつき、嬉しそうに抱っこされる幼子。
「その名は、まだ慣れんのじゃー。もっと優しく抱けんのじゃ?」
「なにぶん初めての子供ですからね」
折れた剣一式を男が回収し終え、その場を後にしようとする。
「ええい、なでなでするでないのじゃ~。そのキモイ笑顔を向けるでなーいーのーじゃー」
じゃれ合う二人が森に消えていく。その前に幼子が森のある方角を向いた。
「(今回は失敗するでないのじゃぞ)」
「(ナシ!!!)」
イベントクリア報酬
ゲットスキル
【言語・幼EX】
お嬢ちゃん何歳? いっちゃい!! そうか、そうか……ん? んん、一歳?
補正 なし
【寝返り・幼EX】 + 【ハイハイ・幼EX】 + 【歩行・幼EX】 + 【トイレ・幼EX】 + 【言語・幼EX】 + 【神童】 ⇒ 【神童+】
一歳とはうごごご……
補正 <new>全能力+1 ステータス成長速度+200%UP
secret
《転生者++》 ⇒ 《転生者SP》
謎多き記憶が蘇る時、運命は大きく動き始める、らしい?
補正 初期ステータス最大化 スキル習得に大きな補正が入る <new>ステータス成長速度+50%UP 全能力+30%UP
エイド
【魔神】 ⇒ 【魔神+】
本物の魔神より魔神らしい
補正 <new>攻撃力+5 攻撃力+25%UP クリティカル時ダメージ20%UP
【駄メイド++】 ⇒ 【駄メイドSP】
駄目駄目メイド。略して駄メイド。誰かが言ってるらしい
補正 抵抗力+1 HP+1 TP+1 <new>攻撃力+30%UP
ラス
【女王の騎士】
姫や女王に仕えるのは騎士としての誉れらしい
補正 防御力+1
チャプタークリア報酬
[刻の欠片]
欠けた思い出
効果 ???
未来日記:第一章の物語の最後に、なんてこと書くの基地外作者です。
はい……。あっ……と思った方はこの先読まないでね。
OK?
作者はよくエッセイランキング見ます。情報収集を兼ねて。
で、思うことが多々あるのですが、どうしても書いておきたいと思い、今、キーボードを叩いています。
“小説家になろう”ってサイトだから小説家になりたい人が多いのは理解できるんやけど、“小説家”を目標にしている人が多いのに、ビックリです。最悪な意味でね。
こいつら、職業系の創作に触れてないのか? 職業系の王道で、俺は警察官になりたかったんじゃない! 俺は人を助けたかったんだ!! ベタですが。
普通はさぁ、小説家を目指すような奴って、心揺さぶられた作品があって、その作品の影響があって目指さね? 僕も私も他の人にこの想いを届けたいみたいな事が出発点ではないの? 自分の好きな事だけやって金儲けしたいんだも~ん!ですか? だから、キモイと思う作品だらけなのかな。
小説家を目標にしている人は、もう一度なぜそれを目指したか思い出してほしい。金でもいいです。褒められたでもいいです。小説が好きでもいいです。それが本当の目標やからな。忘れんなよ。
目標って一番大事やからな。ちゃんとしっかり考えや。未来の俺もやぞ!!




