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第三十八話 幕開け

 ユナちゃんの誕生の儀を待っている間、暇をしているとアーディさんがいっしょに遊ぼうと言ってきた。




「ちゅう~~」


 尻尾を俺の腰に巻き付けて軽々と持ち上げてくれる。


「みに(みぎ)、みに(みぎ)、あ~、ひにゃり(ひだり)」


 今の俺はUFOキャッチャーのアーム。


「ティア様が動かれると遊びになりませんよ?」


 エイドさんに注意されしぶしぶと景品が元の位置に戻っている。


「ちた(した)!」


 ゆっくりとゆっくりと下降していく。




 ポスン




 手足を使いがっしり抱きついて景品を固定。


「うえ!」


 うおぉーー!(ふも~~!)


 いくら軽いといっても俺の倍ある体を持ち続けるのはたいへん。そして、落ち着きなく動くのでさらにたいへんだ。それに耐え上昇していく。


「イラおばちゃん(いらおばさん)!!!」


 俺の掛け声で、ふたたびゆっくり動きだす。


 持っていた景品の重みが徐々に消えていく。どうやら無事、渡せたようだ。お人形持ちされて、ちょっと不機嫌な感じに対して、イラ叔母さんは上機嫌。まるで本当に景品を手にいれたようにはしゃいでいた。




「次は私! 私を持ち上げてください!!」

「正気ッチュウか?」


 食い気味にエイドさんに頼まれたが。


「おもいきゃら(おもいから)、じぇきにゃい(できない)」


 そんな、べそをかきそうなほどショックを受けなくても(がんばれば、持ち上げられるけど)俺まだ一歳だから!!


「こう見えても、きっと軽いと思いますよ?」


 そう、力説されても。なあ?(ねえ?)さっきのでも疲れたから。


「よく言うチュウ? 嘘はよくないッチュ!」


 お腹を摘まれ、間を空けずにアーディさん自身のお腹を摘まませ、非情な現実がエイドさんに襲い掛かる。


「っえ? どうして? なぜ? そんな? ありえません!?」


 お腹とお腹で視線を往復させて、自分の世界に入ってしまった(乙女にアレは致命傷。その気持ちわかるよ)一歳児がよく言うぜ(だって女の子だもん。女の子!! だもん☆)…………女の子ぉ……。


 スカートをひらひらさせ、俺にも非情な現実を突きつけられる。


 顔を上げると、自分のお腹のお肉の感触を確かめて、完全停止しているエイドさんが風化していた。




「エイドはきゃるいよ(かるいよ)。ぎゃんばるきゃら(がんばるから)じーっとちてて(じーっとしてて)」


 自分が蒔いた種は自分で刈らないとな。ここは漢らしく、少女一人ぐらい持ち上げてみせるさ!(持ち上げるのはアーディさんで、わたし達は固定するだけだよね?)


 しかし、俺の声はまるで届いていない。


「無理は禁物です。エイドは最近、メア姫と遊ぶのに夢中で、訓練をおろそかにした罰が当たったのです」


 お、おう!? すごく演技じみた態度で応対してくれるラス叔父さん。


 エイドさんは思い当たる節があったのか再起動を初めて、思考を巡らせている様子。そしてユナちゃんといっしょに居るジエンさんの方に好戦的な笑みを向けると、反応したジエンさんが悪い笑みを返した(どっちも脳筋?)『脳筋だね~』




「イラっていいにおいがする」


「な、まぁ! と、とうぜんですことよ。あなたと違い、王家として当然の振る舞いをしているまでですわぁ!!」


 ドリルヘアーがビョンビョンなっている(すごく嬉しそう)


 確かに甘ったるい匂いがしたかな(お母さんの匂いのほうが好き)それはきっと本能だ『赤ちゃんとして~、それとも~、ロリコンとして~』もちろん、どっちもだ(当たり前よ!)『お、おう~?』


 アーディさんが尻尾を解(ほど)いてくれたので、床に足を着ける。それを騎士のようにラス叔父さんがサポートしてくれた。ありがとうと微笑むと、騎士として当然の事をしたまでですという態度。


 イラ叔母さんが扇子で顔を隠して、俺の顔をチラ見した。


「ラスったら……まったくぅ……。それにしてもあなた達、親子というより、どう見ても姉妹ですわね」


 俺もそう思う(わたしもそう思う)『わたしもそう思う~』




 ……ん?(認めたわね)ノーカン、ノーカン! どう見ても姉弟だから『苦しい言い訳はダメだよ~』


「おやこだよ。ねぇメアちゃん~」


 イラ叔母さんから降りた母さんが、同意を求めてきた。


「ママは、メアのママ~ッ!!」


 チノがヘッドダイビングで抱き着くと、太陽のようにまぶしく笑ってくれる。そしてふんす!!顔で母さんが、イラ叔母さんへ向きなおり。呆れた様子でコツンと扇子で小突かれている。


 が、そんなものを無視して殺人ハグをしてきた(体が勝手に……神技を使ってしまうー)『無意識でなんて~、なんて恐ろしい子~!!』


 白目を剥いた幼女姿のイスナーが衝撃を受けている絵がチラリ。




「ヂュヴヴヴゥゥーーッ!?」


 どうやら尻尾が巻き添えになったみたいで、アーディさんが涙目で力なく崩れさった。


「どうしたでござるアーディ!!」


 ジエンさんがユナちゃんを脇に抱えながら走ってくる。しかしみんなを見て頭を掻き、深いため息を吐く。


 ごめんなさいした母さんが、さきほど内緒で貰ったはずの鼠印の袋から、お詫びとしてグミを取り出しアーディさんの口に放り込む。お返しとばかりに、メイド服のポケットから鼠印の袋を取り出し、同じ事を返すアーディさん。


「「あ!」」


 ニコやかにニ人に近寄る影。その姿は魔神、人はなんと、か弱いものか。


 説教回避のために視線を巡らせ、二人はユナちゃんを定めると、大急ぎ。


「誕生の儀は終わったチュか? 早く見たいッチュ。ねぇティア様!!」

「ユナちゃんはどれだけすごいのかな? みせて、みせて」


「さあ見て驚きなさい。あたくしの娘がティアの娘に勝つところを」


 ユナちゃんの周りにみんな集まっている。エイドさんに、ああいう大人にはなってはいけませんよと注意された。頷くと、手を差し伸べられる。


「行きましょうか?」


「あい!」


 手を繋がれ、みんなの所へ。




……




「これがあたちの(あたしの)スチェーチャチュ(ステータス)!!」


 紙が勢いよく広がり、いっせいに注目が集まった。




◆

ステータス

ユナ ラブピース

ラブピース王国暦4771年1月1日生

年齢 一歳  性別 女

種族 王族  職業 なし


HP 122

MP 3830

TP 150


攻撃力 212

防御力 185

魔法力 64<封印中>

抵抗力 45

器用さ 47

素早さ 113




 あれ? 文字がわからない(自分のステータスしか読めないのかな)『そうだよ~』


 しかし俺のステータスより、書かれている量がずいぶんと少ないな。


「ユナちゃん、スキルが書かれていませんよ?」


 頭を傾げながらイラ叔母さんが尋ねている。


「それが、スキルが写される前に、ユナ殿が祭壇から紙をお取りになったでござる」


 ジエンさんが代わりに答えた。


「そんな事をしてはいけないよユナ。なぜ、取ってしまったのか言いなさい」


 ラス叔父さんの声が少し荒(あら)らぐ。


「おかあ、ちゃまが(さまが)、かなちむと(かなしむと)、おもっ、ちゃきゃら(おもったから)」


 俯(うつむ)き肩を震わせ返答している。


「よかれと思っての行動ですわ。そのくらいで許してあげてくださいまし」


「しかし――」


「ちゃんと嘘をつかずに答えたのです。エライわユナちゃん!」


 視線を落としたまま顔を上げないユナちゃん。それに構わず抱き上げたイラ叔母さん。


「あ~ら~、あたくしのユナちゃんはティアの娘より、こーんなに、強いようですわ」


 母さんの周りを歩きながら扇子を扇いでいる。


「ムッキー!! メアちゃんのほうが、エムピーたかいし きようさもたかいし! かわいいし!!! ムッキー!! キー!」


 (……小猿……)


 文字が読めないのでエイドさんにお願いして読んでもらう。




……




 つよい(すごい)


 これは典型的な物理アタッカーのステータス、そして性別は女の子ではないのか(かわいいのに、なんでかな?)


「メア様の方が、かわいいからです」


 顔に文字でも表示されているのか?(わたし達はイスナーちゃんだった!?)『そんな加護が欲しい~? 一年後なら授けられるよ~』いらんっ!!


 俺の表情を見て、当たったと誇らしげなエイドさん。その横で対抗心を燃やしたアーディさんが、俺の心を読もうと座ってじっと見てくる。そうそう読まれてたまるか。ポーカーフェイス、ポーカーフェイス。




 職業はなしだっけ? なし、ナシ、懐かしいな(ナシちゃん♪)『ナシちゃん~♪』ん~? 今はメアの方がしっくりくるな(わたしの名前、チノからナシに変えようかな。な~んちゃって)ナシ……やっぱりチノの方が女の子らしいからチノでお願いします。




 どこまで考えたっけ?(だいたい終わりじゃない。スキルもないし)どんなスキルを習得していたのか気になるな。


「メア様もスキルが気になりまチュウ?」


 心を見透かされた!? 俺の顔に、やっぱり文字が書かれているのでは?


「文字は書かれていませんッチュ」


「にゃんじぇ(なんで)わきゃるの(わかるの)?」


「それは――」


 エイドさんがアーディさんの口を塞ぐ(秘密があるのね)教えてくれそうにはなさそうだけどな『口も鼻も塞がれちゃって~、あたふた苦しんでるよ~』


 エイドさんにダメダメして止めさせた。




 バァン!




 扉(ドア)が勢いよく開く。


 見覚えのない兵士さんが駆けて来る。歴戦の勇なのか鎧には勲章がたくさん並んでいた。


「総長!! ご報告がございます」


 ラス叔父さんにしか聞こえないように耳打ち。すると表情が段々険しく変化する。


「すでに対処は済ませているな?」


「ハッ!! 聖騎士一小隊(三十人くらい)をただちに村へ派遣させております」


 聖騎士って騎士団の精鋭だっけ?(女神ラヴィの加護を受けたエリートらしいわね)




 優しそうな雰囲気から一変、非常に頼もしい雰囲気を漂わせラス叔父さんがこちらに歩いてきた。


「≪神々の黄昏(ラグナロク)≫が現れたようです」


「チュ!?」「まあぁ!」「ウ……ソ……」


「ラス総長、誤報ではござらんか?」

「……やはりメア様達が居る理由は――」


 ラス叔父さんの一言で場の空気は騒然。


 ≪神々の黄昏(ラグナロク)≫って、異界の魔王の軍勢だったけ?『ありえない!! あと五年は攻められないはず。そんな事をしたら、タダでは済まないのに――』(イスナーちゃん? 文字が今までと違うよ)


「私は現場へ向かいます。それと、コレを――」


 ピンクの宝石が付いた腕輪をはめてくれる。ユナちゃんには赤い宝石の付いた腕輪『ミャワの奴、何考えて――』


「その腕輪には守りの結界が封じ込めていて、離れていてもユナ達の居場所を知る事ができる魔導具。絶対に外さないように。良い子にして待てるね?」


 父親そのものの優しい表情でユナちゃんを抱きしめ、イラ叔母さんの手の甲に口づけ(恋する乙女みたいにうっとりしてる)『ラヴィ、ラヴィ!! どうなっているの――』




「エイド、ジエン!!! 娘達を頼んだぞ!!!」


「承知したでござる!」

「私達が≪神々の黄昏(ラグナロク)≫如(・)き(・)に遅れをとると思いますか?」


 旧友と接するように軽い感じだ。ラス叔父さんも笑いながらその返事に満足している。


「アーディ? 君は≪神々の黄昏(ラグナロク)≫に対抗できる力がない。この短剣を貸そう。それがあればきっと力になるはず」


 女神ラヴィを模った神秘的な短剣を受け取り、メイド服にそれを忍ばせ、尻尾を逆立たせる『わたしに言われてもそんなの知らない――』


「その短剣は、す(・)べ(・)て(・)の(・)障(・)害(・)を(・)取(・)り(・)除(・)く(・)こ(・)と(・)が(・)で(・)き(・)る(・)。きっと君を正しく導いてくれるだろう」


 マントをひるがえし俺へ。


「メア姫、どうかくれぐれも御身を大切に」


 跪き、俺の手を持ち上げ、手の甲に口づけをした(そんな事したらイラ叔母さんがまた妬いちゃうよ。ほらーっ!)口を尖らしているな。


 立ち上がると一礼して、母さんの頭をわしゃわしゃして子供扱い。露骨に不機嫌そうにするもがんばってと不安げに母さんが声をかけている『え? まさか本気で?――』




「ラス、お待ちになって」


「女神(めがみ)の祝福(しゅくふく)たる勝利(しょうり)の光(ひかり)よ。汝(なんじ)に宿(やど)りて全(すべ)てを覚(さ)ませ」


「≪女神の抱擁(フィールオブニケ)≫」


 赤き光が集まり、人の形となってラス叔父さんに触れる。どうやらイラ叔母さんの魔法みたいだ。


「オマケ、ですわ!!」


 二人が熱いキスを交わす(リア充行為は死亡フラグ。止めさせよう)そうだな、これは断じて嫉妬ではない!!!『でも、その通りなら――』




「オ、オッホン!!!」


 ジエンさんがあからさまな咳払いをしている。エイドさんとアーディさんが二人の教育に悪いですと、早く行くように促した。


 チッ!(チッ!)ここは矛を収めよう。


 兵士さんと共に廊下の窓から飛び降りて≪神々の黄昏(ラグナロク)≫を倒しに向かった(ココって高いよね?)ここは異世界だ。きっと宇宙から飛来しても、無傷でピンピンしている人が居ても、なにも不思議ではない(それはさすがに……ありえるわ)


 そういえばイスナーさっきからなんにも送ってこないな(口調?文字調?が変わって精神年齢が上がっちゃたから、今は下げてるんじゃない?)変に律儀なところあるからな『え? 何言っているの?』




「メア!」


 ユナちゃんが俺の手を強く握る。


「あたち(あたし)がメアをまもるから、あたちのうちろで(あたしのうしろで)いいこにちゅるのよ(いいこにするのよ)!」


 手を握ってくれるなんて、これはデレ期? 俺の時代が来たーー!(わたしの百合百合生活ーー!)うひょーー!(ふぉーー!)『メアちゃん、聞いて――』


「――きいちぇる(きいてる)? ねぇちゃんときいちぇる(きいてる)?」


「ふぇ? あいあいっ!!」


「はぁ~、ダメだ。こいちゅ(こいつ)」


 ユナちゃんと手を握ると、ものすごく強くなった気がする(気のせいではないわ。ロリコンならば当然、ロリのために強くなれる)そうだな『(第二位神ミャムが――)』




「イラはティアがまもってあげる。いまはおにもつさんだもんねー!」


「ジエン達だけで十分ですわ。ティアは必要ありませんことよ」


「むうっ! べぇー!! べぇっーーだ!!!」


 短時間でよく繰り返される、やり取りが繰り広げられ、みんなの緊張も和らぐ。


「皆様はやく謁見の間に向かうッチュ」


「あそこには防衛装置が何重にも設置しているでござる。メア殿達も怖がる必要はないでござるよ」


 謁見の間に急いで帰ることとなった。




 でも『(え? どうして絵も文字も声も――)』




「あにゃちゃ(あなた)、もちかちて(もしかして)?」


「……イレ」


 さっきからずっと我慢していたのがバレてしまった。そんな目で見んじゃねえ! まだ一歳児だぞ? 漏らさないだけでもスゴイはずなんだぞ!! みんな顔を綻(ほころ)ばせないでくれぇぇ!!!『(おねがい、メアちゃん、チノちゃん、ユナ!!! 届いて!!!)』


 『(届いてぇーー!!!)』




……




 この服、トイレしにくい。女ってバカじゃないか? もっと機能性を上げるべきだ(すっぽんぽんにはなりやすいからいいじゃない。ほらあそこ、はやく服を掛けて、ここまできて漏らすなんてありえないからね)


 しっかし無駄に広いトイレだな。これが俺達専用に新しく作ったなんて、孫に甘々な爺ちゃん達だ(使ってない部屋がいっぱいある、って言っていたから。紙はソコだよ)おう。まあ、どうせ一日も経たずにに作れるんだ(ちゃんと優しく拭いてよね)チノが代わりにやれば?


 (もう、女の子はデリケートなのです。ちゃんとお拭きになられないといけませんよ?)エイドさんのマネ? 全然似てない。とっとと済ませて合流しよう。アーディさんも待ってるし。ああ、そこのレバーで水が流れるはず(コレ?)


 (ちゃんと手を洗って~、服を着て――)


「ふふふ~♪」


 リボンが右にズレてる(こう?)あと、フリルに折れ目がついている(ここね。ヨシ! スマイル~)うむ、かわいい! 鏡に写る俺は、実にあどけない笑顔だ……。笑顔の練習でもしようかな(年相応だからいいじゃない)何歳?(もちろん一歳!)絶対に練習してやる!




「ごめんなちゃい(ごめんなさい)。おわっちゃよ(おわったよ)」


 トイレから出ると、アーディさんが待ってくれている。気づいていないのか後ろを向いたまま。


「アーディ? おわっちゃよ(おわったよ)」


「メ……ア……さ」


 息を過剰に吸っては吐き、震えた声を絞りだしている。


「ま……に……げて」


 こちらを向いたアーディさんは、目に涙を浮かべ悲しそうに顔をクシャげていた。




「にげてッチュウ!!!」




 片手でがっちり抱えられ(手に持ってるのって――)


 廊下の隅に急いで移動させられる(ウソ!!――)



 え? あれ!? 胸の辺りがじんわりと生暖かい(短剣!!!)



 廊下の壁に突き飛ばされて……、アーディさんが涙を流し……後退りしてる……?(力が……入らな……)



 頭が……回んない……何で……だろう……?(め……が……かす……んで)




 なん、だか、あーでぃさ……、かお、よご……れ? ふく、も、よ……ごれ、て……るよ?(さ……む……い……)




「ヂュウウウゥゥゥウウウ!!! メア様ァ!!! メ゛ア゛さ゛ま゛ァ゛ッ!!!」


 カランカラン


 虚しく金属音だけが廊下に響く。


「ヂュ! ッヂュ!! ヂュヴ!!!」



「ちゅちゅちゅちゅ!? ちゅっちゅっちゅっちゅ? うふふふ――」




……




「ふひ、ふひひ、アーッハッハッハァ!!!」


 わら……、って、……る?(な……ん……で……)


「ァ――! ガァ!! ァ――!」



 こ…………え…………で――(ど…………うし…………て――)




……




 視線が徐々に下がると、綺麗な赤に染まっていくドレス。


 ああ、そうか。


 ようやく自分が刺されたのを理解した。


 不思議とさきほどまでの頭の回らなさを感じない。


 そのかわりに体から抜けていく温かさが妙に生々しい。


 痛みは麻酔をしたみたいに感じないのは不幸中の幸いか。


 しかし俺に残された時間は少ないようだ。


 自分という存在が黒く塗りつぶされていく。


 結局俺は世界を救うなんて大それた事できやしなかった。


 当り前さ。


 俺はただのおっさん。


 チートや加護を貰ったところでそんな器じゃない。


 きっと俺が死んだほうがこの国のために違いない。


 これで良かったんだ。




 でも、


 また親より先に死ぬ親不孝者になってしまった。


 ……ごめん。母さん。


 そして、ごめんね母さん達。


 やっぱり、もう会えないようだ。


 薄れゆく意識の中、最後に見たのは、


 裂けんばかりに口を広げ、




 真っ赤に染まった短剣を振り下ろす、




 血まみれの鼠、一人だけだった。




 ねむい――。




イベントクリア報しゅう

げっとすき

【――

期待しないでね。

創作日記:あへ~


未来日記:ぼへぇ~

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― 新着の感想 ―
[良い点] ああ~~~~~~(放心) 心構え出来てたし、グサッてから次話への引きが長くて、まだショックが軽くて助かりましたわー(ビクンビクン) [気になる点] >「次は、を持ち上げてください」 忘…
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