第三十一話 発覚?
敬語が乱れています。
ごめんなさい。
最近のラルム様はおかしい!!
風邪をひかれた時は本当の子供のように泣かれて、ティア様にどこかぎこちなく甘えられ。
すっぽんぽん事件では、私も少し動揺し、気がつかなかったのですが。
あのラルム様が、ティア様のお願いを断られるなんて信じられません! スカートを穿いて?とおっしゃれば、すぐに喜んで実行されたはずです。
あのかわいく、気高く、美しく、聡明で、可愛かったラルム様♪
が、今では――、
かわいく、マヌケで、愛らしく、可愛く、少しも品位を感じられません。ティア二号でまるで、
――別人。
………………そんな事ないですよね。
…………ラルム様のはずです。
――はずなんですッ!!!
「エイド~、ふいちぇ~?」
……ハッ!? いけませんいけません! 落ち着くのよエイド。
ラルム様がおまるの上で私をお呼びになっています。
返事をし、すぐにラルム様の元へ馳せ参じ、優しく丁寧に拭かせていただきました。
「エイド? あにょにぇあにょにぇ、メアひちょりじぇでにるにょ! ほにゃ!!」
そうおっしゃられて、一生懸命に一人で拭くフリをされています。可愛いらしいのですが、流れるような身のこなしだった前世とは大違いです。
「そのような拭き方ではダメです!」
「じぇも! じぇも! はずかちい……」
「メア様は女の子なのですよ? 私が良いと申し上げるまではダ~メ~です!」
女の子の単語を聞いた瞬間、今にも泣きそうな表情になられてます。前世と同じ男の体が良かったのでしょうか。違いますね。今のラルム様はとても恥ずかしがり屋ですから。
いそいそと紙おむつを穿かれています。しかし、スカートを穿かれる時に、まるで誰かと話されているように、固まっていました。……転生前はあんなに楽しくお着替えなされていたのに。
……違う!
「おいちょ~、おいちょ~!」
人目をはばからず一心不乱に、拭かれる練習をされています。
「おやめになってください!?」
以前のラルム様ならティア様の前で、このような事をなさるはずが……。
……違う違う!!
「ママ~、えにょんよんにぇ~♪」
ポスン
ティア様に飛びこまれています。
慣れたもので軽く受け止められていますね。が、お互いに顔がゆるゆるのへにゃへにゃになられています。二人共、満面の笑みで実に喜ばしいことです……。
――気づいているのでしょう?
……違う違う違うッ!!
――本当はわかっているのでしょう?
ちがうッ!!!
「エイドどうしたの?」
「エイド~?」
おっと、顔に出ていましたか?
「ご心配にはおよびません。部下の体調不良が最近多くて、そのせいでちょっと疲れているだけですから」
手足をパタパタと騒がしくお動かしの二人に、私は微笑み返しました。
「はやく絵本を読みに行きましょう。そこで私も休憩しますから」
返事を聞いたティア様は、何事もなかったように用意をされていますね。
――何が違うの?
……ラルム様は私を救ってくださった尊き御方。その恩を少しでもお返しするために、今の地位まで昇り詰めました。認めてしまったら……、私が私でいられなくなる。
――私は弱いのね?
……私はずっと、弱いです。あの日から――、
――だから幻に逃げるの?
……幻想に逃げて何が悪いのです。
……悪いのですッ!!!
「エイド~、エイド~?」
心配そうに見上げるラルム様。
……私はいつまで偽りの夢を見て、日々を過ごしているのでしょうか――。
あれだけ落ち込んでいたティアが、立ち直ったというのに――。
メア様がラルム様でないのは信じたくないですが――。
最初はもしや、と思いました――。
しかし、成長するにつれて違いが嫌というほど、目につきます。もう自分の心を偽るのも限界。
前を向かなくてはいけないのでしょうか? ラルム様ぁ……。
「どうかされましたか?」
「エイド~♪わらっちぇ~♪メア~♪かにゃち~♪」
私を励まそうとラルム様が歌っておられます。とてもまだ誕生日を迎えていない赤ちゃんの歌声ではありませんね。
でも、
「私は笑っていますよ?」
「うちょ、わらっちぇにゃい!」
…………え?
おかしいですね? アーツ≪感情制御≫は発動しているはずなのに。
よたよたと走られて、ティア様に内緒話をされています。やろうと思えば聞こえるのですが……。
やめておきましょう。
「ママ~? ちあう、あちい! そえそえ!!」
「え~!? コレ? アレ? コッチか~! つぎはおゆをそそいでー」
「ちっあうママ!!」
私のために紅茶を淹れてくださるようですね。ラルム様のご指導の下、ティア様が作業をされています。
が、それでよろしいのですかティア? 零歳の我が子に教えられてよろしいのですか?
――ティアは心の底からあんなに笑っているのに。私は?
……私はティアじゃない!
……ティアみたいに強くない!!
「できたー♪ じゃあメアちゃんがわたしてあげる?」
「あい!!」
ラルム様がふらふらと紅茶を持たれ、お越しになります。
「こえにょんで、げんきだちて」
「ありがとうございます」
紅茶を受け取って飲みましたが、全然ダメダメです。けれども――。
「おいしいですよ」
少々温かい気持ちで満たされました。
「ママ、やっちゃ!」
「メアちゃん、タッチ!」
ペチン!
ラルム様達がジャンプしてハイタッチをされています。
――どうしたの?
……何の事です?
――ふふっ、きっかけは些細な事。私に、一滴ってところかしら。
……?
「エ、エイドがー、ないちゃってるー!!」
「ママー!! やっぱちし、あちゅしゅぎちゃったんにゃお」
そんなはずは!?
自分の顔に手をやると、そこには確かに流れる物が――!!
やだ、止まらない。自分の意志に反して、止め処なく零れ落ちる涙。
――どうして、否定や逃げる必要があったの?
……認めたら、全てを失くしてしまいそうだったから。ラルム様への想いも、永遠に消えてしまいそうだったから。
――私は、ラルム様に愛されたかったの?
……わからない。でも、ティアとラルム様が結婚された時も不思議と悲しくなかった。あんな幸せそうな二人をまじかで見れて、私も本心から祝福できたし嬉しかった。
――何を恐れたの?
……ラルム様の全てが無くなってしまうのを。ラルム様が私から、居なくなるのが耐えられなかった。
……私は、
忘れてしまうのを恐れていたのか…………。
「エイド~!? にゃかないえ~?」
ふと、ピンク色に輝く女神のブローチが目に入りました。そして、その小さな体を一生懸命に伸ばし、私の手を握られます。儚く幼い手から伝わってきます。
ラルム様がその身を犠牲にして守りたかった小さな命が――、
ああ、そうか、ラルム様は受け継がれたのですね。
……ティアはラ、……メア様が産まれ、母親になられたから、立ち直ったと思っていました。それだけではきっとなかったのですね。
メア様のおかげもあります。メア様がお利口でおられたから、メア様が人の気持ちを汲める不思議な子供だったから、育ての苦労も感じずに楽しく過ごせたのです。イラ様の方は最初、苦労していたと聞いておりますからね。
私もメア様がきっかけで、歌の練習をまたするようになりました。そうでしたか、私も知らず知らずのうちに変わっていたのですね。それに、陛下方もメア様に癒されて少々元気が過ぎるようですし。ふふっ――、
もしかしたらメア様は運命を変える為に、この世に生を享けたのかもしれません。
……
決めました!
今日、10月10日、私の二十歳の誕生日に、メア様を生涯の主と決めました!
たとえラルム様でなくても私は城に仕えると、あの日あの時に誓ったのです。いずれ女王になられるメア様にお仕えし、ご恩をお返しするのです。
前を向くのですエイド!!!
「よにゃった~。エイドえにゃお! メアうれちい♪」
不思議な方です。メア様はほんとうに。
…………
……
「今日も~僕達~警備~がんばる~♭」
「あたい達~まじめに~お仕事するぜ~♯」
「アレは~何だトリ~♭! 異常発見トリ~♭!!」
「アレは~通称~レーヌ殿下の息抜き~♭」
ドッカーン!!
「「「「いつもの平和なラブピース王国~♪」」」」
「チュウ達は~従者~お掃除がんばるッチュウ~♯」
「洗濯ぅー窓拭きぃーご案内ぃー♯」
「何でも仰せ付けください~でございます~♭」
「「「みんな愛するラブピース王国~♪」」」
「「「「「「「ラ~~♪ラ~~~♪」」」」」」」
「…………はぁ?」
中庭に絵本を読みに行く途中で、
なぜ、
突然、
ミュージカルが始まっているのですか!!!
原因はわかっているのですが……。
「うわ~、まにぇおり、よくにゃってる」
「これでちがうくにのひとたちには、まけないね!!」
他国で同じように、廊下でミュージカルが始まったら驚きでしょう。
「お褒めに預かり大変光栄です。刻が空いた時に練習した甲斐があるというものです。それにしても、メア様もティア様も素晴らしく幼、……可憐で、とても小、……可愛らしく、その、ぐふふ――。
ゴスッ!
変態Oがモブ兄に横腹を殴られています。このロリコン野郎にティア様達を近づけさせるなんて、絶対にありえないのですが。
すっぽんぽん事件の謝罪時に、妙に仲良くなってしまい、今ではよく絡んできます。
なぜこんなことに?
そして、同じようにもう一グループ。
「メアちゃ、様どうでしたかぁー? ナリー達スゴイでしょぉー?」
クルッと横に一回転しました。少々はしたないですよ。下着が見えるか見えないかギリギリのラインですから。変態Oがそれを凝視していますね。
その端正な顔を、もう一度ボコボコにしてあげましょうか?――治癒魔法無しで?
変態Oが私の視線に感づいたようなので、とびきり無害な笑顔を送ってあげました。さきほどのミュージカルの疲れがでたのか膝が笑っていますね。うふふ――。
「メア様に褒めていただきたく、血の滲む努力をしましたッチュから」
変態Aが目線を合わせるためにしゃがみ、両手でメア様の右手を握っています。
「ごめんにゃちゃい。むにぃいっちぇ、でみょありがちょ」
メア様が頭をよしよしと撫でられています。ムダに尻尾でハ-トマークを作らないでください。変態ロリコンのクセにうらやましい!!
そして、当然のように他の奴らも並んでいます。頭おかしいのですか!? おかしいのは私の方ですか?
……
「…………はぁ~」
私は、いったい何を見せられているのでしょうか?
「ん~? エイドもにゃじぇちぇほちいにょ?」
え? それはもちろんお願いしたいのですが、部下の居る前でそのような醜態をさらすわけには――、
「……はい」
自分の意志に反して、肯定してしまいました。……仕える人のお願いは、叶えられないといけませんからね! 従者ですから!! メイドですからっ!!!
撫でやすいように、しゃがみながら近寄ります。
「んんっ! よによに」
がんばって背伸びをされ、足をプルプルと震わせながら、小さな手で撫でてくださりました。これは大変にいけませんね。顔がニヤけてしまいます。いけません、なりません!? ≪感情制御≫≪感情制御≫っと。
「メアちゃん、ママには?」
「んん! よによに」
「えへへ~」
なんて癒される光景でしょうか。素晴らしいですね。可愛らしいですね。尊いですね~♪
「メア様ぁー? 次回は人数も増えて、さらにスゴイ事になりますからぁー。ご期待くださいねぇー♪」
ナリー!? 他の人も巻き込もうとしないでください。そして四馬鹿と三姉妹、あなた達、ちゃんと仕事をしていますか? 私はこの緩んだ三姉妹を叱るため、辺りを隈なく観察しました。
えぇ~完璧にできている……? そんなバカな――、
「お気づきになられましたか。我らは以前の当方達ではございません。メア様により毎日楽しくお仕事をする事を学ばせてもらった、仕事のできる従者三人衆でございます!!」
格好良くお辞儀をしたオーディ。可愛くカーテシーをするナリー。天に拳を突き上げる変態A。
メア様、キラキラした視線を送らないでください? なぜよりにもよって変態Aを見ているのですか!? それにティアもなぜ変態Aを見ているのですかッ!!
オーディが執事服から、鼠印のお菓子袋を一つ一つメア様達に渡しています。
そして三姉妹が私にプレゼントを渡すと、歌って踊りながら仕事に戻っていきました……。
「僕達も歌唱の練習で耳が良くなって、遠方の人を百発百中で、当てれるようになり、女性さ――、
ドスッ!!
「隊長にもよく褒められるようになって、これもティア様達のおかげです」
モブ兄が変態Oにさきほどより鈍い音の一撃を与えて、よくわからない事を言っています。
四馬鹿は私にプレゼントを渡すと、歌いながらムダにアクロバティックして、それぞれの持ち場に戻っていきました。
案外ミュージカルは訓練になるのでしょうか?
……プレゼントですか。……うふふ♪
…………
……
あの後も、色々な人に絡まれて中庭に着くのが遅くなりました♪
そしてすぐに、ティア様はお手洗いに向かわれました。これはチャンスです。私の気持ちの整理に。
「ふぅ~」
よしっ!
「メア様!!!」
ベンチの上でお座りしているメア様にお声を掛けます。
「にゃに~?」
あどけなく返事をされるメア様。
「メア様は《転生者》なのですか?」
私は穢れなき青い瞳を真剣に見つめます。
「ふぅぇ~!? ちぇ、てんちぇいちゃ、あ~う~」
無茶苦茶な事を言っていると自覚しています。しかし、これは私が前に進むための儀式なのです。
「メア、てんちぇいちゃにゃにょ」
そうですかやはり《転生者》なんて昔話やおとぎ話ですよね。これで私も一歩前に進め……、
――え!?
あれ? 今なんておっしゃいました。
「てんちぇいちゃってにゃんじぇわかっちゃにょ?」
「え~っとですねぇ!? がらがらで遊ばれていた頃からです? も、もしかして前世は男性でしょうか?」
「ちゅにょい、ちょうだよ」
ほ、本当にラルム様なのですか。私の決心はいったい!?
「メアちゃんじゅっちゃいにゃの」
――ええぇぇええ!? 十歳、三十歳どちらですか?
三本の指を使って数字をお作りになっています。三十歳の男性……!? そんな不思議そうに、ご自身の指を数えなくても理解しています。理解できないですが理解できていますからぁぁああ!!
「く、詳しくおっしゃってください!?」
…………
……
意味がわかりません!!!
どういう事ですか!? 三十歳男性、異世界《転生者》で《運命の子》、さらに二重人格? 盛れば良いと思っているのですか!!
俯いてスカートをギュッと握らないでください。頭を下げ過ぎてお辞儀になられていますから!? 三十歳の、私より年上の行動ではないです!!
……異世界では三十歳は子供なのでしょうか?
「ママ、ちゃちには、だまっちぇて……ほちい」
メア様が《運命の子》ならば、私が黙っているわけにはいきません。陛下にご報告しなくては――。
「メ~ア~ちゃ~ん~! エ~イ~ド~!!」
ティア様が大きな声を出されて、赤いリボンの付いた小さな小包みをお持ちになり、こちらに向かわれています。
「メア様、後ほど陛下のお部屋にいきますよ」
「……あい」
メア様は涙を一粒……、流されました。
イベントクリア報酬
ゲットスキル
【努力】 ⇒ 【努力+】
謎の努力はおしまない お母さんはニコニコ見ています
補正 <new>ステータス成長速度+30%UP
【演技派】 ⇒ 【演技派+】
相手の演技を見抜けてこそ演技派を名乗れる 名乗ってない?
補正 器用さ+10%UP <new>クリティカル時、相手の防御力抵抗力30%無視
エイド
【幻想】 ⇒ 【幻想+】
現実には起こらない事象を思うこと
補正 MP+1 <new>MP+10%UP
【未来の女王の懐刀】
メアの知らない間に忠臣が一人増えてる
補正 特定の対象がピンチの時全能力+50%UP
四馬鹿 三姉妹
【ミュージカル】
今日もどこかで歌っている
補正 ステータス成長速度+10%UP
リザルト
ラブピース王国
謎技術が向上しています
国力500,010 ⇒ 500,030
創作日記:この話は最初のプロットもどきでは、2章でやるつもりの話だった。
ていうか。スカスカすぎんねん最初のプロットもどき。
メアの成長スピードも今の半分、普通ぐらいにしていた。
どんどんやりたいストーリーが増えるから、仕方がない。
シーンを書くのが難しい。いや自分の実力に見合ってないからやけど。
未来日記:もうこれで終わってもいい。だから今の己の全てを注げるだけ注いでシーンを書いています。
いつもフルパワーにしないと自分のギリギリ納得するシーンができませんから。初心者は黙って全力出しちまいなよお! 実力もないのに出し渋ってどうするYO!! プロは実力も才能も時間も運も全てを捧げてもまだ足りない修羅なんだろう? THIS WAY!! COME ON!! シーンがクソなら、他の物も全て死ぬぞ? ……みんな自分が納得できるシーンを書けているのかな。プロの実力ほちぃ。




