第十八話 魔法使いの部屋
「昨日の続き、魔法少女がかーる☆じるまの三話からで」
「わたしはレセンディ=リプス物語の四巻から、お願いね」
最近は魔法使いの部屋で過ごす時間が増えてきた。なんと、転生前のアニメや漫画を楽しむことができるのだ。
どうやるのかというと、アニメの記憶を等倍で送ってもらい、あたかもアニメを見ているような錯覚を起こさせるのである。漫画も同じようにして楽しめる。
ムニムニと手を握られた。これは次のぺージの記憶を送る合図。そのチノはうつ伏せに寝転がってダラけきっており、白紙の漫画をめくっている。
「ナシちゃん、次のページ!」
ムニムニ
「ごめんごめん」
ちょっと強めに握られ、あどけない手の感触がよく伝わる。……俺の手も赤ちゃんだけどな!! ベッドの上で寝っ転がりながら記憶を送ってあげると、ほどなくしてOPが送られてきた。
{魔法少女がかーる☆じるま はっじまるよー!!}
チャッチャラチャ~♪
OPが始まると、チノがメロディーに乗り、足をパタパタとさせている。
{巡る~刻の~中で~きっとユメ~叶うよ~♪}
「ふ~ふふ~ふっふふ~ふっふふ~ふふふふ~♪」
{キミに~この想いを~届け~~♪}
「ふ~ふふふふ~ふ~ふふ~~♪」
鼻歌交じりに漫画を読み進め、体でもリズムをとりだして、……なんだかこっちまで、リズムに乗りたくなってしまう。
タイトルコールが流れてじるまちゃんが走りだす。その背景にはまだ見ぬ仲間達が。……全話視聴済だから全員知ってるけど。
そんな事を考えていたら、曲もサビにさしかかり、さらにテンションも上がってしまう。
{交わした~約束~忘れないで~♪}
「交わした~約束~忘れないで~♪」
{きっと~こんどは~守るよ~♪}
「きっと~こんどは~守るよ~♪」
{だって~運命は~変えれる~から~♪}
「だって~運命は~変えれる~から~♪」
{{くじけない~もん♪}}
「「くじけない~もん♪」」
やはりOPも本編なので飛ばしてはいけない。いけないのだ! そして、合いの手ありがとうチノ。
この体になって良かった事の一つがこの幼い声だな。……なんだかじるまちゃんの声の雰囲気に似ているような? 地声で歌えばお手軽キャラソンの出来上がりだ。
{魔法少女がかーる☆じるまは、ご覧のスポンサーの提供でお送りします!}
OPが終わった。
「CM入った。飛ばして」
「ハイっと、飛ばしたわよ」
CMはよいのだ。
…………
……
{魔法少女がかーる☆じるまは、ご覧のスポンサーの提供で、お送りしましたー!}
「ふ、ん~~!!」
伸びをする。これはもう癖だな。
いや~面白かった、面白かった。やっぱり、じるまちゃんは可愛いな~。この世界に来てもう三回は見ている。……この世界かあ。
……前の世界から離れて、もう三ヶ月以上は経ったろうか。みんなどうしているかな……。
うん、今では母さん達と遊んだり、この部屋で自分のしたい事ができるおかげで、異世界生活も楽しくなってきたな。うん、そうだな。うん、やはり娯楽は人を豊かにするな。うんうん……。
ムニムニ
また手を握られたので慌てて次のページを送ってあげた。次のページは……サービスカット(健全)があるな。
「ぐへへへ!」
顔がもの凄くだらしない。ちょっ、まっ、ヨダレ垂れてる! そんなの現実で初めて見たぞ。
「……チノって女の子?だよな?」
「……? そうよ」
枕にもたれかかり質問をした。すると、何言ってんだこいつみたいな態度で返答される。女の子が女の子を見て喜ぶなんて、普通はおかしいのではないだろうか? 百合か?
「前から気になっていたんだが、女の子が好きなのか?」
「当り前じゃない。わたしはナシちゃんの、もう一人の人格だからロリコンよ?」
首を傾げると、同じ様にチノもあざとく首を傾げた。と同時にフードの耳が片方、伏せている。
赤ん坊がロリコン!? 意味がわからん!! いや、俺もロリコンだけど……気にしたら負けかなぁ。
ついでにもう一つ疑問に思っていたことを聞いてみる。
「男が好きとかはないよな?」
「はぁ~!? 野郎ぉ~? 女の子の敵よ!!」
「俺も男だけど女の子の敵?」
チノに対して聞いてみた。すると歩み寄り、いやらしい手つきで触れてきた。
「ひゃう!」
おもわず甲高い声が出てしまう。自分の身にSOSの信号が駆け巡る。
「女の子でしょ」
顔が目と鼻の先ほどの距離まで近くになり、不機嫌に脅してくる。ここは男として負けてはいけない。今が男を見せる時、カタカタ震える体にムチを打って俺は震える声で叫ぶ。
「俺は、おと、ひゃあ!」
「可愛い顔、かわいい声、キャワイイ反応、カワイイ服どこが男なのかしらぁ~?」
チノが芝居がかったポーズでくるくると説明し、最後に身も凍るようなスマイル。このまま主張を続けると色々とヤバイ。わ、話題を変えないと。
「え~あ~……次はにぇ~。何の家具が増えちゃうのかなぁ~。――ね♪お姉ちゃん♪」
自分が思い描く最高の幼女をイメージして、トレース。ほっぺをちょっと膨らまし、人差し指で突いて最後に可愛くポーズした。
「ぐふぅ、なんだろうね~」
気持ち悪くクネクネ、キャーキャー。お尻の丸いしっぽも微妙に上下している。それも感情で動くのか?
難を逃れたが、俺の中の男がめそめそ泣いている。どうしようもないのだ。だってヘタレだから。きっと俺のフード耳はどちらも悲しく伏せているだろう。
チノに対して力の入らない下半身の代わりに上半身だけで距離を取りつつ、新しく増えたクローゼットに目をやる。
「テレビかパソコンが良いかな~。よいしょよいしょ。でもこの部屋では使えないよな? よいしょよいしょ」
ジーっと俺を睨んでいるが気にしない。してはいけない。
「はぁ~あ~、っとわからないわよ? うん、しょっと! あのクローゼットだって普通じゃないから。でも、わたしは絨毯が良いわね。この部屋、真っ白だから目が疲れちゃうもん」
そう言いながらクローゼットの中に消えて服を着替えているみたいだ。とてもイヤな予感がする。
すぐに布団の中に潜り、誰も居ないフリをした。この布団は俺達のサイズ感をまったく無視した大きさなので俺が入ったくらいではわからないはず。しばらくするとチノが近くに居る気配がする。
「そこに居るんでしょう。隠れる所なんてここくらいしかないわよ」
俺はバカなのだ。作戦は失敗に終わったのだ。芋虫のように動いて、布団から頭だけを覗かせる。
チノはレセンディ=リプス物語の主人公、レセンディの恰好をしていた。ウィッグも着けているので完璧だったな。
レセンディは王女だが、少々派手な色合いの姫騎士風衣装にサイズ感を無視した貴金属を身に着けている。そして生足が見えるミニなドレスなのである。本格中世ファンタジーを謳っているのにキャラは今時のセンスなのだ。
だから、今のチノはちびキャラ、SDキャラみたいだったな。しーかーしー、奴の手には凶悪な物が。レセンディなりきりセットだった!?
「着替えない!!」
不機嫌な声で猛獣のように威嚇した。すると、愛玩動物の愛くるしい動きでも見たかのように、鼻息が荒い。シュッと潜り直した。
「わたしの姿を見たわよね? 可愛いでしょ~。だから、これを着てえ~♪」
「イーヤ!!」
「もう! ナシちゃんだけ見れるなんてズルイでしょ? 動いている可愛いレセンディが見たいなぁ~」
恐る恐る布団を持ち上げると、顔をブーっと膨らましていた。レセンディはそんな事しない。と、心の中で突っ込みながらベッドを降りる。
「うんちょっと、とおぉ……動いている姿が見れればいいんだな?」
「ええ、まあ、そうね?」
右目を半分閉じ不思議がっている。俺はその返事を聞けたのですぐにクローゼットに入った。
クローゼットの中は棚が何箇所か在るだけで殺風景。ただし、普通のクローゼットではない。願えばその服が出現する魔法のクローゼット。願った服を棚から持ち出してスキップでベッドへ向かう。
「じゃじゃーん!」
「これで動いている姿も見えるだろ」
ベットの上から特大サイズの銀色マントを広げて見せた。姿見がわりである。
「ッチ!! こんな時だけは知恵が回って、まあいいわ。……それにしても、わたしって可愛い♪」
たぶん一人で楽しんでいるのだろう。俺はマントを広げないといけないので見えない。もし見てしまうと何言われるかわからないしな。とりあえず好きにさせよう。
「よっ」ポン
頭の上に何か乗せられた?
疑問に思っていると白くて長い耳が垂れてきた!!
うさ耳だと!?
「うさナシちゃん、えへへ~」
「馬鹿野郎なんて物、乗せんだ」
にへら顔のチノにそれを投げ捨て、さらにマントも投げつける。
「ちょ、やめて~。でも、怒った顔も、ぐへ、ぐへへ~」
「ふん」
いじめっ子がニタニタ笑っている。
「すぐ赤くなっちゃって、キャー、か・わ・い・いー!!」
「う、うるじゃい!!」
可愛いばっか言いやがって、たしかに今の姿は可愛い以外ないかもしれないけども。つい力んで閉じてしまった目を開くと、不気味に揺れるチノが一歩一歩距離を詰めて来た。
「も~、そんなに怒って、い・い・のかしら~?」
お姉さんぶって指を振り、俺の鼻を強く押す。
「何がだよぉ」
「授乳、入浴」
鼻をさらに押し上げてくる。きっと俺の小さな鼻は圧迫により赤みを帯びていることだろう。
「……脅しか?」
「脅しじゃないわ。お願いよ。だから――」
服を投げつけてきて、両手を合わせおねだりしている。可愛くウィンクしても後ろには鬼が視えた。ぜ、ぜんぜん怖くねえしぃ。
「い、い~や~だ!」
「ケチー! 減るもんじゃないでしょ」
「俺の男が減る」
このままではダメになってしまう。
「わたしへの感謝は?」
「感謝は要求するものじゃない!」
「もう!! こんなに主人格さんに尽くしてあげてるのにな~。薄情な人もいるもんだなぁ~。チラチラ」
うっ、とても痛い所を突かれたぁ……。たしかに頼ってばかりで何もお返しはしていない。でも男としてのプライドが、はやまるなと言っている。しかし、良心は感謝しているんだろ?と言っている。
うるうる目で見上げてくる。
期待と希望と綺麗な眼差しで。
「……わかった。一回だけだからな! 次はやらないからな!!」
「うん♪」
「何か言ったか?」
「な~ん~にも♪」
くまパジャマをそそくさと脱がされていく。だが下を脱がされた時点で固まってしまった。
「な、何で穿いてないの!?」
「女の下着なんて穿けるか!」
チノは下のパジャマからクシャクシャに丸まった青いくまさんパンツを広げて完全に停止。続きは俺一人で進めていく。
「何か言ったか?」
「な~ん~にも♪」
着替え終わるとチノが銀のマントで俺を写す。チノと全く同じ姿のミニレセンディがそこにはいた。泣きそうな顔で――。
「不満なの? わたしへの感謝わ」
「いつもありがとうございます」
深々と頭を下げた。
「へ? あ~こちらこそどうもありがとうございます?」
溢れんばかりに目がパチパチ、視線が宙を舞ってしどろもどろ、ミニスカを両手でギュッと握ってもじもじしてる。しばらくすると何かを思い出したような仕草をして視線を戻してきた。でも耳が真っ赤なままだ。
「せぇー!? せ、せっかく着替えたんだから、レセンディの真似してよ」
手足をバタバタさせながらお願いしてきた。
「ええ~、……チノもやってくれるなら考えてもいいけど」
俺も動いているレセンディがもっと見たいからな。交換条件だ。
「やった~、わかったわ」
ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜んでいる。
急に真似しろと言われてもな~。う~ん、漫画の一押しのシーンがいいかな?
俺はふぅ~と深呼吸を一つすると覚悟を決めて行動に移った。レセンディが戦争を止めるために、敵に通じている大臣の密会場を襲撃する場面だ。
「動くな!!! 私はリプス王国が第三王女レセンディ=リプスです。皆様お覚悟はよろしいですね?」バッバーン!
扉を勢いよく開けるフリをして、自分の中では優雅に気品あるカーテシーをし、ニコリと笑いながら右手をバーンと出して最後に魔法を出すポーズ。
「……え? ナシちゃん演技の勉強なんてしていたの!?」
「そんな記憶一度もないだろ。そんなに良かったのか?」
「良かった! まるでお姫様みたい。本物のレセンディが出てきたのかと思っちゃった。スゴイ! 天才!! かっこいい!!!」
――――“かっこいい”。
――“かっこいい”。
“かっこいい”。
そんなに褒められると照れちゃうなあ~。やる気でてきたあー!!
「見よ! 火炎魔法≪紅蓮の射手≫」
見開き一杯に描かれていたレセンディを演じて見せた。
「きゃあ~“かっこいい”きゃあ~!!」
その後、
調子に乗って色々な動きやセリフをやりまくってしまった。
……反省。
「チノもういいだろ。次は俺が見たい。俺も動くレセンディが見たい」
「え~~もう~。しかたがないな~。それじゃあいくよ~」
チノは真剣な顔になると、演技を始める。
「動くな!!! 私はリプス王国が第三王女レセンディ=リプスです。皆様お覚悟はよろしいでつね?」バッバーン!
……噛んだ。まあそれ以外は完璧だ。スカートを手で握ってぷるぷる震えている。
「むふふ~、”かっこいい”よ?」
下から笑いをこらえながら覗いてあげた。すると唇を噛み締め、ちょっとだけ涙目。
「うるちゃい!! 見てなさいよぉー! 火炎魔法≪紅蓮の射手≫」
「お~お~これはすごいな」
「そう?」
顔が少しニヤけている。
その後、
調子に乗って色々な動きやセリフをやりまくってくれた。
……
「ふぁ~、満足した?」
うん♪と大きく頷きサムズアップした。それを見るとチノはゆっくりとベッドに登って、大きな枕を叩いて合図をしてくる。
「はぁ~あ~、もう寝ましょ~よ~?」
けっこう遊んでしまったな。おかげで眠い。
「ん~あ~、わかった。うんしょっと、……寝るか」
ベッドをよじ登ると、チノが布団に俺が入る空間を作ってくれた。そして、ふとんをパタパタさせて早く来るように急かす。睡魔に誘われながら俺はその空間に収まった。
「ナシちゃん、おやすみ……なさあいぃ――」
「ああ……おや……すみ――」
モソモソと動いているみたいだが、睡魔には抗えなかった――。
…………
シュピン
『ふふふ~待たせたな~』
キラーン☆
魔法使いの部屋に一枚の紙切れが突如として現れる。どこか聞き覚えのあるBGMを流しながら。
『あっれ~? 寝てるの~?』
紙切れの音だけは良いビンタと執拗な精神テロ(こどじ爆撃)を受けて、二人はしかめっ面になりながら寝ている。
『え~~、なんで布団の中で手を繋いでいるのよ~。プンプン~!! ……ニヤ~~!』
…………
……
次の日の朝、お取り寄せ爆発札による卑劣な技の悪夢を見たと、神様に怨みのこもった愚痴を言った二人が居たとか居なかったとか――。
イスナーてっめえ昨日の夢は――
(ヒドイヒドイ! イスナーちゃんのいじわ――)
『し、知らないもん~、わたしと遊んでくれ――』
イベントクリア報酬
ゲットスキル
【アタマノナカニデンパガ+】 ⇒ 【アタマノナカニデンパガ++】
日頃の訓練で脳内再生もできる人は居る みんなできるよね?
補正 MP消費-3% <new>器用さ+3
【ヘタレ+】 ⇒ 【ヘタレ++】
S・O・S S・O・S 逆らってはいけない
補正 回避率+5%UP <new>抵抗力+3
【家具】
[願いのクローゼット]が増えました
補正 魔法力+1<封印中>
【馬鹿】
そうだここに隠れれば完璧だ←残念!
補正 攻撃力+1
【演技派】
お姫様の真似をしてるしているお姫様
補正 器用さ+10%UP
【天才】 ⇒ 【天才】
上がると思った? 残念そんなにすぐには上がりません
補正 全能力+100%UP
レセンディ=リプス⇒プリンセスレディ
創作日記:ナシ達を可愛く描こうとしてもがいた回です。
全然出来て無いし、ムズイムズイ。
何時かは出来るようになるかな~?
――を初めて使いました。使い方合ってる?
未来日記:メアとかいうクソ難しい設定
はい、現状では失敗談です。
最初期ではメアの三十歳男性がTS幼女転生へは最高に頭がいい設定だ!と思っていました。
男であり女である。大人であり子供である。つまりどんな無茶苦茶なキャラでもOKだと思っていました。
小説初心者の人は肝に銘じてくださいね。
『設定は呪い』
三十歳男性がTS幼女転生は、男ではなく女ではない。大人でもなく子供でもない。無茶苦茶難しいキャラだったんですね。
なぜか? 中身を完全に男にします。男女です姉御でもいいです。中身を女にします。普通の女ですね。上位互換がいるのです。設定を生かすにはどっちにも揺らさないといけないのです。
同様に大人にします。ロリババアですね。子供にします。ただのロリですね。転生を(ry
設定は違う道を切り開くと同時に違う道を塞ぎます。追加したら最後、無かった事にするかしないと塞がれた道には行けません。
メアは自己矛盾しかないまま進むしかないんです。大人の一面を出しつつ、子供の一面を出しつつ、男の一面を出しつつ、女の一面を出し続けなければいけません。変化を停めた時点でその設定は終了。
最近ジェンダーの人々の苦しみがわかるよ。イタイ! なんだこの石? 三十歳要素どこだぁ~?
……三十歳でも精神年齢が六歳の俺がココにいるから、何もおかしい所はないな。
精神が大人な人はこの世の中に居ないしな。Q.E.D.




