第十七話 まけられにゃいたちゃかい!?
(ふははははは!!)
「キャッキャッキャッ」
クルクルクルクル
緊急回避の訓練もそろそろ極まってきたな(本人談ね)この身は赤子になりにけり、なす事が限られてそうろう。その中に思いついたるがこれになりにけり(ふはははは、なんで古文風なの? それに正しいのかな、まあいいや! くるくるくる~!! くるくる回避!!!)
目標はアニメや映画などで倒れている所に攻撃されて、カッコよく回転して避けるアレだ。今日で一ヶ月は訓練しただろうか。今はチノにがんばってもらっている。
「く~る~く~る~」「キャッキャッキャッ」
くるくるくるくる クルクルクルクル
「ティア様、楽しいですか?」
「たのしい!!」
くるくるくるくる
いっしょにくるくる回る。これが思ったより楽しいんだな。最近は床の上での生活が増えてきたので、母さんと訓練するのも多くなった。
それもあって言語習得がおろそかになり、未だに言葉がわからない。発音はけっこうできてきたが、オウム返し作戦は失敗のままだ。自由に動けたり、喋れるようになるのはいつになるやら。
自由とはこうも手に掴めないものなのか!(何、格好つけてるの?)自由とはこうも手に掴めないものなのか!――キリッ!!(なんで、二回も考えてるの!)ノリだ。
……なぜ俺の心の声がいつも聞こえてんだ?(隠す気がないからでしょ?)まあ、問題ないからいいけど。でもさ、チノの心の声とか、ほとんど聞いたことないぞ。ズルくね?
(乙女には秘密がつきものよ。それに、ナシちゃんがホームシックの時は、ぜんぜん聞こえなかった)……無意識だったのかな?(……わたしに聞かれても困るわよ?)
「う゛っ! ディア゛……もう……ム゛リ……ぎも゛ぢ……わ゛る゛!」
「情けないですね~。メア様はぜんぜん平気でいらっしゃいますよ?」
「メアちゃんは……すごい……から、う゛っ!」
口元に両手を当てて気持ち悪そう。メイドさんがどこからか桶を出して背中を摩ってあげている。
母さんはもうダメだ。代わりにメイドさんに付き合ってもらおう。
ハイハイで近寄り、スカートの裾を元気よく引っ張る。
「にゃ~にょ~え~」
「どうかされましたか?」
くるくる回転してはスカートの裾を引っ張る儀式を、三回繰り返す。
「遊んで欲しいのでしょうか?」
相変わらず何言ってるかわからない。が、優秀なメイドさんの事だ、きっと通じてるはず。もう一回スカートを引っ張った。
「にゃ~にょ~え~」
「承りました。ティア様、ご交代いたしましょう」
「…………」
母さんが幽鬼の如く、ゆらゆらしながら椅子へ座り寝た。それを見守ったメイドさんは、笑顔でこちらを見ると、くるくる回転し始めた。母さんよりも速いな。
俺も負ける訳にはいかない!
チノがんばるんだ!(ちょっと待って、今の流れで!? あの流れならナシちゃんが、がんばらなきゃダメでしょ!)チノがんばって♪(イヤよ! わたし、疲れた!! もう裏に回るからね)
……チノお姉ちゃ~ん~、私の代わりにがんばって~♪(もう一回、もっともっと可愛く言って)チノお姉ちゃま♪た~っくちゃんにゃんばっちぇね♪ナシ、お姉ちゃまのにゃんばっちぇうとおおみあいにゃ~♪
(ふぉ゛~゛~゛!! 見ていて、ナシちゃん。チノお姉ちゃんの勇姿を!!!)
チョロ!?
「ん~ん~む~」
グルグルグルグル
「(さすがはラルム様ですね。転生されてもお見事です。私も少しがんばりましょうか)」
ぐるぐるぐるぐる
メイドさんもやるな! 俺達も本気を出さねばならないようだ。
チノ、一気に決めるぞ!(可愛く!!)……チノお姉ちゃま、いっににきめおう!(う゛お゛っしゃ゛ああーー!! まかせてーーッ!!!)
俺達はかなり速く床の上を、回転した。
「み~み~み~」
シュルシュルシュルシュル
「(まだお速くなれるのですか? ではもう少しだけ速く)」
しゅるしゅるしゅるしゅる
メイドさんは俺をニコニコ見つめながら回転している。まだまだ余裕のようだ。――そして速い!
このままでは負けてしまう!?(ナシちゃんまだよ。二人の心を、想いを合わせるの)チノ……ああ、わかったぜ!!
さっきまでとは比べ物にならないほど、速く、鋭く、回転した。
「ふ~ふ~ふ~」
ズザザザザザザ
「(ふふふ、まだまだ甘いですよラルム様?)」
ずざざざざざざ
メイドさんはスカートが捲れ上がるほど速い。しかし、涼しい顔をしながら回転している。その顔に焦りを感じ得ずにはいられない。
げ、限界だぁ。もう無理だぁぁ。勝てる訳がないんだぁぁ~(あきらめちゃうのッ!! 今までの、今までのわたし達の努力は何だったのっ!? 思い出してっ、あの辛かった訓練を!! 思い出して!!!)
……そうだ。
…………そうだった。
――俺達はあの地獄の訓練を、
――――やり遂げてきたんだ!
こんなところで、
負けるかああああああ!!!
走馬灯のように訓練の日々が流れていく。俺達の回転は過ぎ去った日々の重みだけ、速度に変わるッッ!!!
……
「ひ~ひ~ひ~」
ジュダダダダダ
「(転生前なら、私の敗北なのでしょうね? 残念です。しかし、十年早かったですよ。ラルムさまあぁぁ!!)」
じゅだだだだだ
メイドさんの目付きが少し変わると、俺達と同じ速度に追いついた!?
そんなバカな!?(く、悔しいよナシちゃん。このまま負けるなんて……イヤだよ!)もう負けた気でいるのか?(え?)チノはもう負けたのか? まだ負けてないだろう(でもこのままじゃあ……)
俺を信じろ!!!
(信じる?)そうだ。俺を信じてくれ! 俺達が勝つ未来を、明日を、希望を、信じてくれ!!!(わたし達が勝つ――。ええ、そうっ、そうねっ!!)
(わたし達が勝つ未来を、明日を、希望を――)
(ナシちゃんを、わたし自身を信じる!!!)それでこそ俺の相棒だぜ。いくぜ!!
はあああああ!!!(たあああああ!!!)
俺達は今――!
己の限界を突破した!!!
…………
……
「は~あ~あ~!」
ガドドドドド
「(こ、これほどの力を秘めていらっしゃるとは!? 私も少し本気を出さないといけませんね)」
がどどどどど
メイドさんは口元をニヤリとさせると、俺達を突き放すように加速していく。
――ガハァ!!
体が痛い、自由が効かない、全身が悲鳴を上げている。
このままでは……このままでは……(ゼェ! ハァ! ゼェ! ハァ!)チノも、もう限界か。俺達に残された力は、もうこれだけ。これが正真正銘最後の力。
チノーーー!!!(ナシーーー!!!)
持てるありったけを回転に注いだ。その速度は生前の俺より遥かに速く。
もう誰にも負けねぇ!!!
「ん~~~~~!!」
バギギギギギ
「(甘く見ていたようです。これは失礼のないように本気でいかせてもらいます。ね♪)」
ばぎぎぎぎぎゃ
メイドさんから気迫のようなものを感じると、俺達よりほんの少し速く回転してしまった。俺達の中で何かがポキリと折れてしまった。
……
「はぁはぁ、ひゃあ、うっ、けお、けほ」
口で息をするのがやっとの状態で俺達は倒れ伏している。
……チノ(……ナシちゃん)
負けた。
俺達の戦いはすべて無意味だったんだ(……負けちゃった)しょせん俺達は物語の主人公には成れなかったんだ(う~え~ん~く~や~し~い~!!)
「けう、けほ、ひ~ふ~~~」
「(少々大人げなかったでしょうか?)」
ばばばばばば
メイドさんの無慈悲な追撃が俺達の心をさらに抉る。もうやめて……、
……もうやめてくれ!!
敗北者の俺達に、なんで、こんな酷い事を。
……クソッ! こんなところで終わってしまっていいのか!?(わたし達は負けたのよナシちゃん)本当に負けたのか。クソックソォ!!
勝ちたかった、勝ちたかったのに! こんなところで……こんなところでぇ……!!!(……わたし達に力が在れば、神より優れた力が在れば――)
……?
…………!?
チノ今さっき何て言った?(へ? たしか――)
俺達は逆転の一手をこの手に――。
「けお、こお、けほ、うっ」
「(まだ動かれるのですか? もう勝負は着いたというのに……!? な、何ですかこの神々しい力はまさか)」
…………
……
一陣の風が吹き抜ける。
希望を失った草木が天を見上げる。
明日を諦めた生き物達が顔を上げる。
未来を掴む人々が立ち上がった。
自由を手にした《運命の子》が、未来を、明日を、希望を、
見せてやる。
神技≪絶対回避≫!!!
(神技≪絶対回避≫!!!)
…………
……
「にゃあ~~~」
シュ!シュ!シュ!シュ!
ただ相手は見ているだけしかできなかった。この世界が起こした“奇跡”を前に――。
「……ラル、メア様の勝ちですよ(転生しても加護をお持ちなのですね)」
パチパチパチパチ
メイドさんが拍手をしている。
かて、勝てたーー!!(ヤッターー!)
『コォラーア゛ーー!! 何やってんの~!!!』
ひぃ!(ヒィ!)
魑魅魍魎を従え、般若が描かれたイスナーの画像がとつぜん入ってきた。さらにその画像に滲みでるように血文字が足されていく。
「あうあう、あ~うっ」
あうあう、あ~うっ(あうあう、あ~うっ)
『もう~、そんな怖がらないでよ~? それに~、この茶番はなに~』
こどじに戻った。
えと、えと、えっと~、勢いでこうなりました?(悪乗りでやっちゃった。てへっ☆)『神気は秘密の力なんだから~。遊びに使っちゃあダメなんだよ~』そうなのか?(知らなかったわ)『伝えてないもん~』ひどっ!(そうよそうよ)
『チノーーーー!! ナシーーーー!! 未来が~♪ 明日が~♪ 希望が~♪ 信じ――』さあ、さっきの事は全部忘れて、水に流そう!(そうね!!! お互い様よねイスナーちゃん♪)『調子がいいな~』
『……ところでね~、どうして普通に神気を使えたの~?』≪神様連絡≫や≪無敵≫を使ってたら、何となく?(こう、頭の中にピピピって感じ?)『え? う~ん~? う~ん~う~ん~? 次からは気をつけてね~?』わかった(OKー!)
「はぁ~ひぃ~はぁ~ひぃ~」
俺達はボロボロで満身創痍でクタクタなのに、メイドさんは息一つ乱していない。やはり、只物ではないなこの人。そして母さんは完全に夢の中。ヨダレを垂らして器用に椅子の上で丸まっている。
そして周りの被害も甚大だな。俺は悪くない、メイドさんがほとんどだからな(何事もありませんでしたよー。オ~ホホホ~みたいなノリで跡片付けしているね)『コレは完全犯罪~!!』
「はぁ~ふぅ~はぁ~ふぅ~」
調子に乗り過ぎた。もう体力の限界だ(回り過ぎて気分が悪いわ)喉が渇いた(眠たい)『いい訓練になったんじゃないの~』その通りだ。日進月歩、俺の成長は(止まらないぜ~!)俺のセリフー!
「はぁ~~はぁ~~」
ぐきゅ~~~
「すぐにご用意いたしますね」
(まあ、動いたらお腹空くよね)
粉ミルクを作ってこちらにメイドさんが持ってきてくれる。途中で母さんに布団を掛けるのを忘れない優秀な人だ。
「ラルム様どうぞお召し上がりください」
粉ミルクうめー!(わたしも飲みたい)感覚は共有しているだろう?(わたちも飲みたいでちゅ♪)『わたちにも感覚共有してほしいでちゅ~♪』…………(無言で代わらないで! まあいいわ)『ナシちゃんのスゴク冷めた感情が~!』
ゴクゴク
チノに飲んでもらっているが、別に変らなくね? 少し飲んだら急激な眠気が、チノに襲いかかっている。しかし、それに負けずに飲んでくれて、代わってよかったー!と思っていたらチノの意識がかなりヤバイ!
チノ、今寝たらダメだ! 俺にも眠気が伝わってきている。がんばるんだ!『ファイト~、一発~!!』(…………)無言で代わろうとするな!
かわいそうなので代わってあげた。
あ……ねむい……これはムリだ。
(ナシちゃん、今寝たらダメよ! がんばるのよ!!)『眠気に翼を授けるのよ~!!』…………(無言で代わろうとしないで! あ……ねむい)
……ムリだ(……ムリね)『……ムリか~』
コテン! スゥ~スゥ~
コンコンコン
「儂だ。粉ミルクの番できた」
ガチャ
「どうぞお入りくださいロワ陛下……メア様はさきほど粉ミルクをお飲みになって眠られましたよ?」
そこには塵一つ落ちていない部屋に、しょんぼりとした男が、ただただ、佇ずんでいた。
「なんじゃとーーー!!!」
イベントクリア報酬
ゲットスキル
【回避技術】
クルグルシュルズザジュダガドバギ
補正 回避率+10%UP
【負けず嫌い】
負けられない戦いが今、ここに、ない!
補正 TP+10%UP
【厨二病】 ⇒ 【厨二病+】
これはお薬が必要ですね~。
補正 MP+10%UP <new>魔法力+3
【寝返り・幼++】
もはや赤ちゃんがするレベルではない
補正 なし
【ハイハイ・幼】
かなり遅いですができます
補正 なし
secret
【絶対回避】
神技≪無敵≫より消費は少ない
補正 神気+1 素早さ+1 素早さ+10%UP
エイド
【大人げない】
零歳児に本気出す……?
補正 攻撃力+1
創作日記:〈あまりにも長いので未来からの干渉により要約〉
よく調べてから小説書いたほうがいいですよ。
小説には視点の人称がある。一人称(自分)と三人称(他人)視点が大体殆どらしいです。ニ人称(あなた)はかなり少ないらしいです。この小説は一人称?なろうでは人称がぐちゃぐちゃな人が多いそうです。小説を書く前には人称なんて気にしていない。たぶん多くのなろうの読者層は気にしてない?
関係ないけどルビ前書き後書きに使えるのね
漢字の閉じ開きで文の堅さを調節できる? 自分の小説の書き方のルール決めよう。俺等人称使い過ぎ。
未来日記:自分の文体はまだまだ定まっていないです。特に漢字の閉じ開きは完全に沼にはまっています。いつか抜けるやろ。完結までの時間は絶望的なほどあるしな!
執筆初心者の人は人称減らそうね。自分でも驚くほど減らせるから『漢字の閉じ開きは止めとけ』自分の頭の中に辞書があるぐらいの人は良いが、初心者が足を踏み入れていい領域ではない。
良い?いい?ほらね




