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ネコ耳ばすた~ず The Bridge  作者: 七海玲也
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手掛かりの行方

なうほろにぇ(なるほどねぇ)……」


 先ほどのお詫びと承諾してくれたお礼にと、追加してくれたお魚料理を頬張りながら状況を聞いていた。


「では、どうかお願いします」


 と話すと、少しばかりの前金を置いてフラフラと出て行った。

 何でも夜通し探していたらしい。

 探し聞いて回ったけど、それらしい子を見かけた人もおらず、その中で私たちのことを聞きつけ、急いで来たらしい。


 食事を終えたレイヴは女性の話を聞く前に出て行ってしまった為、相談も出来ずにいた。

 それならまずはと、近くの席にいた旅人風な一行に近づいてみた。


 ずっとチラチラ見られてはいたけど、依頼話の途中からというもの、あからさまに聞き耳を立てているのが分かった。

 これは何かあると睨んで間違いはないだろう。


「何か用かにゃ!?」


 テーブルの近くまで腰を屈め近づき、驚かせるように声をかける。

 しかし予想とは違い、好戦的な反応だったのに私が驚いた。

 驚いた男女と魔法銃(マジックガン)を構えた短髪の女、そして腰にある剣に手を伸ばした女。


「なんだ、貴女か」


 剣に手を伸ばした女性が姿勢を戻し、銃を降ろすよう合図した。

 この女性が他の三人をまとめているのか。


なんだ(・・・)ってことは無いんじゃないかにゃ」


 チラチラ見ておいて、それは失礼だと思う。

 リーダーと思しき女性がわたしに対応するような仕草をみせる。


「ごめんなさい。

 こちらの無礼は謝らせてもらうわ」


 多分、聞き耳を立てていたことも含めてだろう。

 それにしても、端整な顔立ちと凛とした口調なのもあって近寄りがたい感じがする。


「それで?」


「先ほどの話なんだけど、私達も同行させて頂けないかしら?」


「別に、手伝ってくれるなら助かるけど。

 信用ならないにゃ?」


 短髪の女性が睨みつけてきたが、私も負けじと低く唸ってみせる。


「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。

 まだ信用ならないのは仕方ないですわ。

 けれど、貴女も話くらいは聞いても損は無いんじゃないのかしら?」


 すると、驚いたあとからずっと笑顔で話を聞いていた金髪の綺麗な女性が、私に椅子を勧めてきた。


「なら話くらいは。

 それでも信用が出来なかったら無かったことにしてもらうにゃ」


 差し出された椅子に座り、リーダーであろう女性と向き合う。


「えぇ、それでいいわ。

 私はアリシア、よろしくね。

 そして、こちらが……」


 一通り自己紹介が終わると、私の素性に対しては特に気にしていたこともなく、私に同行したい理由を話してくれた。


「どうかしら? 

 今までのことも含め分かってもらえたかしら?」


「まだ完全に信用出来た訳ではないけど……。

 そうゆうことなら別にいいかにゃ」


 人としては信用出来るか分からないけど、一緒に行動したい理由は納得出来たから許すことにした。


「ありがと、よろしくお願いするわ。

 では早速だけど、情報収集としましょうか」


 私とアリシアが街の中、短髪女と男は街道を出入りする人に聞き込みをすることになった。

 残った金髪の女性――名前はエマとか言ってたけど、一人ここで待機だそうだ。

 お昼にはまた戻ってくるが、何かあった場合の為ここに残るそうだ。


「それじゃ、行こうにゃ」


 早く日の光も浴びたかったので、そそくさと三人と別れアリシアと共に噴水のある広場に向かった。


「ここでどうするのかにゃ?」


「こうゆう場所でのんびりと過ごしていても、人を目で追っているものなの、無意識にね。

 その中でも変わった人がいたら、記憶に残っているものなのよ」


 アリシアの話に日向ぼっこをしていた記憶を甦らせると――確かにそうだ。

 亜人界でウトウトしていた私の前を、人間が通り過ぎて行ったのを覚えている。

 私が人間界にいることもそうだけど、逆もまた珍しい。


「分かったわ。

 向こうに行くわよ」


 思い返しているうちにアリシアは次々と声をかけていたらしく、すぐに情報を掴んできていた。


「えっ、えっ!?

 もう?」


「昨日の夕刻に、フードを被って心臓の形をした指輪を付けた人を見かけたらしいわ。

 街の奥に行ったそうよ」


「わたし、何もしてないにゃ。

 ごめん……」


「気にすることないわ。

 同行の許可をくれた時点から、私達の依頼なんだから」


 微笑むアリシアを見て、これなら信用しても良いと感じた。

 言葉だけではなく、動物的カンというべきか、なんとなくそんな気がした。


 言われた方へ向かうと、波が崖にぶつかる音が増していき、すれ違う人も漁師さんが増えていた。

 その中で見つけたのが、またしても酒場。

 私の泊まっている酒場とは雰囲気がまるで違い、入るのに躊躇ってしまう。


 そんなことはお構い無しに入っていくアリシアを盾に、隠れながら後ろに続くが案の定、海賊のような者しかおらずジットリとこちらを眺めている。

 それすらも気にせずカウンターまで向かうアリシアを、尊敬しそうになった。


「マスター、少し尋ねたいことがあるわ。

 昨日のことだけど、見慣れない格好とか装飾をした人がいなかったかしら?

 ここに来たと思うけど」


「あぁん?

 ここはなぁ嬢ちゃんたちの来る所でもなきゃ、人探しを請け負ってる所でもねぇんだ。

 ここは酒場だ酒場!

 それに見慣れない格好なら、あんたの後ろにさっきからいるじゃねぇか」


「これは飾りじゃないんだにゃっ!」


 店主の言葉に店内が笑いに包まれたが、今にも飛び掛りそうな私の姿勢に、場の空気がいっそう悪くなってしまった。


「ならお酒を頼むわ、一番強いやつで。

 それと、この短剣もチップとしてあげるわ」


「話がわかるねぇ。

 そうゆうことなら、話してやってもいいぜ。

 昨日来た見慣れない奴ってぇと、気持ち悪い指輪をした男なら来たなぁ。

 なんだか陰湿そうな奴だったぜ」


「そうそう。

 その男どうしたにゃ?」


「そいつなら船を探してるっていうもんだから、あそこに座ってる奴を紹介したぜ」


 一人テーブルに足をあげ腕組みしながら座っている男のそばへ行こうとすると、店主に腕を引っ張られた。


「お嬢ちゃん、それ飾りじゃねぇのかい?」


「知りたいなら――お魚くらい欲しいにゃ」 


 ウインクまでしたのにも関わらず、お魚一匹出そうとせず、苦笑いで誤魔化されたので、店主を無視し男へ近づいた。


「よろしいかしら。

 昨日の男の話を聞きたいのだけれど?」


 男はゆっくりと顔を上げると、私たちを睨みつけた。

 こういう時はアリシアが聞いてくれるから有難い。


「どういった話だ」


 淡々と話す男に冷たさを感じる。


「その男、船を欲しがって貴方のところへ来たそうね」


「あぁ、あいつか。

 船といっても小舟。

 五人がせいぜいのな」


「それで、貴方が用意したわけね?」


「金さえもらえりゃ何でもやる。

 だから、オレの話もここまでだ」


 私は、もらった前金をテーブルに叩きつけジッと目だけを見つめた。

 冷たい空気を出す相手から目を逸らすと、咬みつかれるのは常識と育ってきたから。


「威勢のいいお嬢ちゃんだ。

 いいだろう、話してやる。

 あいつは夜中に人知れず海へ出たいと言っていた。

 約束通り漕ぎ手と小舟を海岸に用意すると、やけに重そうな袋を抱えてきた。

 中身は食料だと言っていたが、微かに動いていた気がする。

 まだ息のある動物か何かだろうと思うがな」


「それだ!」


 私の閃きにアリシアも頷いてくれた。

 子供を袋に入れ夜中に運んだ――そうすると娘を見なかったか聞いて回っても、誰も見ているはずがない。


「それで、どこへ向かったかは分からないのかしら?」


「あんな小舟で行けるところなんて決まっている。

 近くの無人島、もしくは海岸沿いにあるが誰も寄り付かない忘却の街。

 そこまでが限……度…………」


「どうしたにゃ!」


 話途中でいきなりテーブルに突っ伏してしまった。

 すでに生命力が感じられない。

 アリシアが何かに気づいたかのような表情を私は見逃さなかった。


「まさか!?

 口封じの魔法か!」


 店主を呼んで来ると、ここに来る荒くれ者どもはいつ誰に殺されてもおかしくはないと言っていた。

 ――別に気にすることはないと。


 人間たちは未だに生命の尊さを学ぼうとしていない。

 だから、亜人たちからは忌み嫌われ、交流を絶たれている。

 ただ、元は私たちと同じ種族なのだから、いずれは一緒に暮らしていけると私は思っている。




 少なからず手掛かりも掴んだので、エマたちと合流することにした。

 それと、気分を晴らす為に、そのまま昼食にでもしようと。


 昼食時になると朝よりも混雑していたが、酒場で独り本を読んでいる場違いな雰囲気の為、すぐに見つけることが出来た。


「エマ、変わったことはなかったかしら?」


 エマもアリシアの声に気づくと、笑顔で何もなかった旨を伝えてきた。

 あとの二人もすぐ来るだろうと、各自飲み物だけ注文することになり、迷わずミルクを頼むと一気に飲み干した。

 私の行動に心中を察したのか、エマが顔を覗き込み訊ねてきた。


「なにか、嫌なことでもありまして?」


「ちょっと……。

 あまり気分のいいことじゃないにゃ」


 誰かの死を目の当たりにし、気分のいいことなんてあるはずもない。


「では皆様揃いましたので、お話くださいますか?」


 のんびり丁寧な口調のエマだが、洞察力はあるらしい。

 二人が人を掻き分け私たちを探している。

 アリシアが手を挙げるとこちらに気づき、間を縫うように向かってきた。


「何か分かったかしら?」


 何人かは見慣れない人もいたとの情報だったけど、特に有力そうなのは無かったそうだ。

 となると、やはりわたしたちの情報が一番怪しい。

 料理を頼みつつ、今度はわたしたちの聞いてきたことをアリシアが話した。


「……それで最後は息絶えたわ」


「口封じの魔法って言ってたけど、どうなのかにゃ」


 誰かが話してくれると思い見回すと、エマが笑顔のまま答えてくれた。


「そうですね、それで合っているかと思いますわ。

 今ではあまり使われておりませんけれど【死禁句(フォビッドワード)】と言われる魔法かと思われます。

 指定なされたお言葉をお話なさますと、お亡くなりになられるのです」


「そんな魔法知らなかったにゃ」


「わたくし達人間が創られた魔法ですので、ご存知ないのかと思われますわ」


 私たち人猫(ワーキャット)も魔法は使えるけど、野蛮なものはとうの昔に禁じられている。

 もし使うとしたら【死禁句】の逆である【呪禁句(ブレイクワード)】と呼ばれる呪いを退けるものなど、癒しに関する魔法を多様する。


「アリシア達はどうするんだにゃ?

 探している人に似てるのかにゃ?」


「そんな魔法を使っているなら彼だと思う。

 私達も最後まで付き合わせてもらうわ」


「じゃあ、この後はどうするにゃ?

 無人島?

 何とかの街ってとこ?」


 この街に来てから少しだけ耳にしたことがる。

 遠い昔、ここから少し離れた海岸沿いにも小さな街があったと。

 神の怒りに触れ滅んだとの伝承らしいが、今では誰も近寄らず詳しいことも分からないらしい。


「状況から考えると忘却の街でしょうね。

 そこからなら街道にも出られるだろうし――。

 エマはどう見る?」


「わたくしの見解ですと、無人島ではないかと。

【死禁句】は発動いたしましても、すぐには効果が出ない仕組みにされてますので」


 そうすることで、どの言葉に掛けられているのか分からなくしているのか。

 人間はそのようなことに頭を使ってばかり。

 邪なる神の心に触れ生まれた人間だから、浄化され進化するにはまだまだ時間が必要なのかも知れないけど。


「だとしたら、無人島にはどうやって行くにゃ?」


「それなら簡単だわ。

 ここは漁師の街だもの。

 夜から明け方にかけて、海に出る船に乗せてもらえばいいわ」


「だったら任せるにゃ!

 ここの漁師さんとは仲良しにゃ」


 張った胸に手を当て、反り返る私には当てがある。

 何人か話したことのあり、尚且つ、大きめの船で漁に出ている漁師さんの姿を確認することが出来たからだ。


「あら、頼もしいですわ。

 では、よろしくお願い致します」


 エマへの応えに喉を鳴らし、漁師さんに聞きに行ってみる。

 すると、なんとあっさり無償で了承を得てしまった。

 無人島のそばを通り道としていること、それに漁師さん曰く『あんなに魚を生き生きと食べるんじゃ、こちとら獲ってくる甲斐があるってもんよ』ってことらしい。

 わたしは普通に食べているつもりなんだけど。


「みんな、乗せてくれるって言ってるにゃ。

 夜半過ぎを目処(めど)に海岸にいてくれたら、港から迎えに行くって。

 しかもタダだにゃ」


 得意げに話すと、みんな目を丸くした。

 期待されてなかったのか。


「それはありがたいけど。

 タダって、何の条件も無し?

 どんな取引をしたの?」


「それは、秘密だにゃ」


 ニンマリ顔のわたしにみんな苦笑い。

 さすがに、食べっぷりが良いからなんて話したら、笑われるのが落ち。

 そういうことは言わないに越したことはない。


「そう。

 では、帰りは私達が交渉するとして、今日はこれで解散にして、夜半に海岸で落ち合いましょう」


 その後、食事と雑談をしてる間に一人また一人と席を立ち、私もテーブルに残されたミルクを飲み干すと席から離れた。

 そろそろお昼寝をしたくもなったが、残されたのが私と短髪女なのが決定打だった。


(まぁ、ゆっくり休んでがんばるにゃ)


 今日のイヤなこと全て忘れるためにも、日向でお昼寝することにする。

 イヤなことを忘れるには落ち着く環境で寝るのが一番なのだ。


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