朝食は依頼と共に
「おはよぉ。
今日もいい天気だにぇ」
こんな晴れ晴れとした天気の日には、日向ぼっこでもしていたい。
「ミィは晴れた日だと余計に元気だな」
「だって猫らもん」
レイヴが起きて来たからやっとのことで食事だ。
海が近くにあり、一階は獲れたてのお魚を出してくれる酒場兼宿。
こんな良いところに泊まれるなんて、私には有難くて仕方ない。
「ねぇねぇ、お魚頼んでいい?」
ニコリと笑みを浮かべたレイヴが注文をしに行ってくれた。
この街に着いて二日が経ち、人にも慣れてきた。
海に近い街だからか、皆が気さくに話かけてきてくれる。
耳と尻尾があるおかげで物珍しそうに寄ってくるが危害を加えようとすることも無く、むしろ優しい言葉すらかけてくれる。
この酒場でもそうだ。
先ほども酔った漁師さんが声をかけてきたが、色々と話すうちにお魚の話で盛り上がり『いっぱい食って成長しろよ』なんて言葉を残し行ってしまった。
こんな人たちばかりなら人間界に留まっていても悪くないと思ってしまう。
「さぁ、ミィ食べようか」
大皿に大き目のお魚が二尾ほど盛られており、更に野菜とミルクを持ってきてきてくれた。
「いいの?
いいの?
こんなに」
「今日は依頼が一件あるんだ。
いっぱい食べておかなきゃな」
この街に着くとすぐにトラブルバスターのことを広めて回った。
何でも屋――簡単に言えばそういうことだ。
世界の闇を知ってしまったレイヴが、立ち向かう為の情報を得られるようにと始めたのが《ネコ耳ばすたーず》なのだ。
そのお手伝いと、私の事情で今も一緒にいる。
「いっただっきまぁ――」
食べようとした矢先、酒場のドアが大きな音と共に激しく開け放たれたせいで、床でお魚が泳いでいる事態となってしまった。
(あぅぅ、おさかにゃ……)
お魚を台無しにさせた女性が辺りを見回し、私と目が合うと駆け寄ってきた。
謝りにでも来る気なのだろうか。
「あの!
ネコ耳バスターズでよろしいんですよね!?
助けてください!」
(……おさかにゃの恨み許すまじ!)
「その前に――これ!
どうしてくれるにゃ!」
「コラ、ミィ!
落ち着け。
唸るな!」
自分では気づかなかったが、どうやら唸り声も上げていたらしい。
それでも目の前の女性は、たじろぐことも無く私たちに訴えかけてきた。
「お礼ならいくらでも差し上げます!
どうか娘を――娘を探して下さい」
(いくらでも!?)
沢山のお魚がお皿に盛られ、これから大口でかぶりつくところを想像していたが、後の言葉で現実に引き戻されてしまった。
「それって、いなくなったの?」
「はい、昨日の夕刻から……」
涙ながらに話す女性の姿が、ママと重なってしまう。
最期まで私のことを心配してくれたママに。
「ねぇ、レイヴ。
この依頼は、私がやったらダメかにゃ?」
「昨日の件はオレがやっておくから良いいけど。
そうだな、オレよりもミィの方が適任かもな。
頼んだよ、ミィ」
少し不安そうな顔をしていたけど、あの時の状況を思い出したのか、私の気持ちを汲んでくれた。
私とママが引き離された数十日前のことを。
一緒に助け出そうとしたが間に合わず、実験動物さながらの扱いを受け、衰弱していたのにも関わらず私の事だけを心配していた親心。
親が子を心配するのは当たり前のことだろうが、親を知らないレイヴにとって、家族愛は特別なものに映っているのかもしれない。
「ありがと。
無理はしないようにするから」
私独りで人間界を行動するのは不安があるけど、この女性から詳しく聞いてみようと思う。




