↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ならば、通していただきましょう!~婚約破棄されたドカ雪領地令嬢は、戦闘狂令息に恋を迫る~  作者: 鈴埜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/13

9.雪解けとともに

 雪に閉ざされた領地が、春になり、馬車が通るようになると、私はすぐに王都に帰ることとなった。その馬車にはスタンゼット家の家紋が記されていた。


「お嬢様、もうすぐのようです」

 小窓から外を見ていたケイリーが、私に告げる。すると、隣に座るライオネルが私の手を握った。


「まずはグレンウィル公爵に挨拶だな」

「まったく漏らすことなく進めておりますから、とんでもない顔が見られますよ、きっと。楽しみです」

 ふふふと笑うとケイリーがこちらを見て目を細めた。

 いけないけない。

 私にはこういった場面を楽しむ悪い癖があった。


 伝達の魔導具を修理し、父に無事領地へ戻ったことを一方的に伝えた。まだ魔導具の調子が良くないのだと言って、再び魔導具をいじって相手の反応を得る前に通話を終えている。その後、何度か直ったように見せかけて直っていないを繰り返し、まともな連絡をとらないようにしていた。


 私の衣装とともにケイリーも無事領地へ着いて、冬はチャドたちも屋敷で過ごした。ついでだと狩りのお供に連れていった。

 やはり騎士の不足は深刻で、冬の間はあちこちに狩りへ出向いた。そのすべてにライオネルがついてきてくれたのだ。

 偽りの婚約者として振る舞うことを了承してくれたライオネルは、その後完璧に私をエスコートしてくれた。騎士たちに冷やかされながら、冬の間は狩りに明け暮れた。

 そう、ずっと狩りをしていた。東の森もかなりすっきりしたと思う。

 あんな風過ごせるのはこれで最後だろう。良い思い出になった。


 今日のドレスは青だ。今までチャールズ殿下の瞳の色、緑色のドレスが多かったのだが、婚約者となってくれたライオネルの瞳の色、青いドレスを身に纏っている。このドレスは冬の間ケイリーが中心となって屋敷の者たちがせっせと作ってくれたのだ。本当に、ケイリーは何でもできる。まさか裁縫まで完璧だとは思ってもみなかった。


 ネックレスやイヤリングは、本邸からライオネルが持ってきてプレゼントしてくれた。すべてが終わったら返さねばならぬので、なくさないよう気をつけねばならない。

 宝飾品まで貸してくれるなんて、勘違いをしてしまいそうになる。

 それくらい、うれしかった。


 馬車が止まり、外から扉が開かれる。先にライオネルが下りて私に手を差し伸べた。その手に自分の手を重ね馬車から降りる。久しぶりのタウンハウスだ。領地にはまだ雪が残っていた。それでも馬車で通れるくらいになってすぐ父から連絡が入り、至急王都に戻るよう命じられた。

 さすがに本気の父の命には従わねばならない。準備はしっかりしていたので、私はすぐ出立した。ライオネルと一緒に。


 馬車から降り、玄関の扉が開かれると、そこには父と継母が立っていた。その表情は、貴族には似つかわしくない、感情を露わにしたものだ。


「ただいま戻りました。お父様、お義母様」

 そういって傍らに立つライオネルへ視線を向ける。


「こちらはライオネル・スタンゼット様です。この冬領地で彼と出会ってしまいました。わたくし、ライオネル様との婚約を認めていただきたいのです」

 にっこり笑って言い切ると、父はあんぐりと口を開けた。

 お行儀が悪いですよ、お父様。




 せっかくタウンハウスに帰ってきたというのに、すぐさま王城に向かうことになった。すでに到着日時は知らされており、それに会わせて謁見の予約を入れていたという。

 それだけ、父たちには余裕がなかったのだ。


 通されたのは謁見の間ではなく、会議室だった。大きく広い長テーブルにずらりと関係者が並んでいる。急遽作られたライオネルの席は私の隣だ。それは譲らなかった。


「パトリシアお姉様!」

 私の姿を見つけて声を上げるアビゲイルを、父が睨み付け黙らせる。私はにこりと笑っておいた。色艶は悪くないし、変に追い込まれた様子もない。この冬はどんな風に過ごしていたのだろう。父たちの顔色の方がよっぽど悪い。チャールズ殿下は多少疲れた様子だった。


 最後に国王陛下と妃殿下がやってきて、扉が閉められる。ライオネルの方を見て、少しだけ目を細めた。


 私の侍女兼諜報係でもあるケイリーが領地にやってきたところで、ライオネルのことを色々と尋ねた。彼の生い立ちや辺境伯の立ち位置、そして元婚約者についても。彼女は驚くほどたくさんの情報を持っていた。

 先の王の妹と、先のスタンゼット辺境伯がかなり無理やりに結婚し、現スタンゼット辺境伯が産まれた。さらに現スタンゼット辺境伯は、王家が進める女性を蹴って現在のスタンゼット伯爵夫人と結婚したのだ。ライオネルの母親だった。

 スタンゼット家は二度、王家に砂をかけていることになる。


 これは迷惑をかけたなと反省していたが、私がこの事実を知ってやはりこの話はなかったことにしようとライオネルへ話をすると、彼は反対してきたのだ。

 狩りを通じて長年の友人のような関係になった私に、彼はひどく同情していた。

 王家にとって目の上のたんこぶになるか、それとも王家の血の入った頼もしい辺境伯となるか、かなり難しい状況にもかかわらず、ライオネルは私の提案を優先しようと言ってくれたのだ。


 今日は必ず望みを勝ち取る。絶対に、だ。

ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。