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『公爵令嬢様、距離感が近すぎます! 〜伯爵子息は今日もツッコミが追いつかない〜』  作者: 伊佐波瑞樹


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第74話 公爵令嬢様、王妃殿下に褒められただけで今夜の幸せを使い切りそうです


 皆さん、こんにちは!!


 アルフレッド・シェルザートです。


 王城の春の親睦夜会。


 第一舞踏が、終わった。


 終わってしまった。


 いや。


 夜会そのものが終わったわけではない。


 むしろ、まだ始まったばかりだ。


 王族への挨拶。


 大広間への入場。


 軽食。


 そして第一舞踏。


 予定表の上では、まだ最初の方。


 この後には、招待客同士の挨拶がある。


 王族や上位貴族との会話がある。


 家族や友人たちと過ごす時間も。


 第二舞踏も。


 休息も。


 庭園を見られる可能性も。


 帰宅まで、まだ何時間もある。


 それなのに。


 俺の胸は、すでに一晩分の感情を使い切ったような状態だった。


 リリスの深い青のドレスを見た。


 言葉を失った。


 綺麗だと伝えた。


 リリスから、俺の礼装も似合っていると言ってもらった。


 王族へ挨拶した。


 大広間へ入った。


 違う飲み物を持ちながら、同じ机で軽食を食べた。


 そして。


 半歩ずつ近づき。


 一曲を踊った。


 少しだけ足を踏まれた。


 でも、痛くなかった。


 世界も終わらなかった。


 リリスは泣いた。


 俺も、危なかった。


 それでも踊り切った。


 大広間から拍手を受けた。


 ガロウ公爵は第一舞踏へ飛び込まず、札を七枚ほど握りしめながら耐えた。


 リリスは、父親から問われた。


『幸せか』


 そして。


『とても、幸せです』


 と答えた。


 俺も。


 今、とても幸せだと思った。


 これ以上、何が必要なのだろう。


 もう帰っても、幸せな記憶は持ち帰れる。


 いや。


 帰らない。


 体調は問題ない。


 足も痛くない。


 リリスも、涙は多いが元気だ。


 せっかく来たから、ではない。


 まだ楽しみたい。


 ここからの時間も。


 今度は、成功するためではなく。


 もう一つ。


 その次の一つ。


 幸せな記憶を増やすために。


 俺たちは、大広間の壁際で水を一口飲んだ。


 水の橋。


 エレナ嬢が渡してくれた。


 リリスは両手でグラスを持つ。


 深い青のドレス。


 肩の力を少し抜く。


 頬には、まだ涙の名残。


 だが、笑っている。


「アマリリス様」


「はい」


「足の状態を聞いても?」


「はい」


 いつもの確認。


 夜会本番。


 第一舞踏直後。


 それでも、言葉は同じ。


「痛みは?」


「ありません」


「違和感は?」


「ありません」


「少し疲れましたか?」


 リリスは、自分の体へ意識を向ける。


 すぐ大丈夫と言わない。


 目を伏せ。


 呼吸。


 足。


 肩。


「呼吸が少し速いです」


「はい」


「足は問題ありません」


「はい」


「胸が、幸せでいっぱいです」


「それは体調確認へ含めてよいのですか?」


「分かりません」


 リリスが泣きながら笑う。


「では、呼吸が落ち着くまで休みましょう」


「はい」


「座りますか?」


「まだ立てます」


「分かりました」


「アルフレッド様は?」


 今度は俺。


 自分の体へ。


 呼吸。


 足。


 胸。


「痛みなし」


「はい」


「違和感なし」


「はい」


「呼吸は少し速いです」


「はい」


「胸が、かなり忙しいです」


「幸せで?」


「主に」


「主に?」


「公爵閣下が第一舞踏へ入ってこないか心配だった分も」


 リリスが口元を押さえる。


 笑う。


 少し離れたところで、ガロウ公爵がこちらを見る。


 札を一枚掲げている。


『舞踏後も飛び込まない』


「新しい札ですね」


 俺が言う。


 リリスが父を見る。


「お父様」


「はい」


「踊り終わりました」


「ああ」


「止まってくださって、ありがとうございます」


 ガロウ公爵の目から。


 再び。


 涙が落ちる。


「リリスが」


「はい」


「自分で踊っていた」


「はい」


「途中で足を」


「少しだけです」


「アルフレッド殿を踏んだ」


「痛くありません」


 俺が答える。


 公爵は俺の靴を見ようと、一歩出かける。


 セレスティア夫人が札。


『本人の返答を受け取る』


 ガロウ公爵が止まる。


「痛くないのだな?」


「はい」


「本当に?」


「一度だけ聞く」


 セレスティア夫人。


「……分かった」


 ガロウ公爵は頷いた。


 受け取った。


 それから。


 リリスを見る。


「幸せか」


 先ほどと同じ質問。


 セレスティア夫人の札。


『二度目は聞かない』


 公爵の口が止まる。


 リリスが笑う。


「今も、幸せです」


 聞かれてはいない。


 自分から。


 ガロウ公爵の顔が崩れる。


「そうか」


 また泣く。


 レオナルド先輩が、父へハンカチを渡す。


「父上」


「ああ」


「二枚目だ」


「まだ二枚か」


「札ではなくハンカチだ」


「分かっている」


「札は?」


「八枚」


「もう八枚?」


 俺の声が出る。


 ガロウ公爵が胸元の札を数える。


「第一控え廊下で三枚」


「はい」


「挨拶列で二枚」


「はい」


「第一舞踏で三枚」


「夜会開始からどれくらいですか!?」


 周囲から笑い。


 近くにいた貴族たちも、ガロウ公爵の札について何となく理解し始めているらしい。


「あれが例の札ですの?」


「ご令嬢を見守るためのものだとか」


「奥方様のご考案?」


「騎士団長閣下が、あれほど大人しく」


 小さな声。


 好意的な驚き。


 ガロウ公爵は、聞こえているのかいないのか。


 札を胸へ戻す。


 セレスティア夫人が夫へ、水を渡す。


「あなたも」


「ああ」


「食べられましたか?」


「まだだ」


「先ほど、食べると」


「リリスを見ていた」


『娘を見ながら食事を忘れない』


 新しい札。


「九枚目です!!」


 俺のツッコミ。


 大広間の壁際へ、また笑いが広がる。


 ガロウ公爵は、少し恥ずかしそうに軽食台へ向かった。


 騎士団長。


 大きな背中。


 その背中を、セレスティア夫人が見送る。


「本当に」


 夫人が小さく笑う。


「ここまでよく待てるようになりました」


 リリスの目が潤む。


「お母様」


「はい」


「お父様も、楽しめていますか?」


 セレスティア夫人は、すぐ答えず。


 軽食を選ぶ夫を見る。


 ガロウ公爵は、小さなパンを一つ。


 肉。


 水。


 隣にいた騎士団関係者へ、声をかけられる。


 一瞬、こちらを見そうになり。


 止まる。


 相手と話す。


 自分の夜会。


「ええ」


 夫人が答えた。


「少しずつ」


「よかったです」


 リリスの涙が一粒。


 今日。


 何度目だろう。


 数えない。


 ライズに任せる。


 今夜の枚数は聞かない。


「アマリリス様」


 声。


 俺たちが振り向く。


 王城の侍女。


 丁寧に礼をしている。


「王妃殿下が、お話をなさりたいとのことです」


 リリスの体が。


 ぴたりと止まった。


「王妃殿下が」


「はい」


 目が。


 俺へ。


 不安。


 驚き。


 さっき、挨拶はした。


 深い青のドレスを褒められた。


 だが、今度は個別の会話。


 しかも。


 第一舞踏直後。


「俺も?」


 王城の侍女へ聞く。


「アルフレッド様も、ご一緒にと」


 胸が鳴る。


 俺たち二人。


 王妃殿下。


 何を。


 褒められる?


 質問?


 婚約?


 距離感?


 夜会。


 予期せぬ相手ではない。


 だが、予期せぬ呼び出し。


 俺とリリスは顔を見合わせる。


「アマリリス様」


「はい」


「行けますか?」


 リリスは呼吸。


 一拍。


「はい」


「俺も」


「はい」


「一緒に?」


「はい」


 家族へ視線。


 セレスティア夫人が頷く。


 父上。


 母上も。


 ガロウ公爵は、パンを持ったままこちらへ来ようとする。


 レオナルド先輩の札。


『王妃殿下との会話へ同行しない』


 公爵が止まる。


「だが」


 セレスティア夫人が夫へ。


「お二人が招かれたのです」


「はい」


「あなたは?」


「食べる」


「よろしい」


 ガロウ公爵が、パンを一口。


 目は俺たち。


『見続けない』


 レオナルド先輩が二枚目。


 公爵は、無理やり隣の騎士へ顔を向ける。


 かなり不自然。


 だが。


 見守る。


 俺たちは侍女の案内で、大広間の上座側へ。


 歩く。


 一歩。


 二歩。


 深い青と濃紺。


 群衆の間。


 視線。


 声。


「王妃殿下がお呼びに」


「先ほどの舞踏をご覧に?」


「お二人ともお若いのに」


「初々しいわね」


 好意的。


 だが。


 全部は拾わない。


 リリスの手。


 俺の腕へは触れていない。


 今日は、必要な時だけ。


 並んで歩く。


 王妃殿下は。


 王族用の談話席の近く。


 王太子殿下と。


 年若い王女殿下。


 数人の侍女。


 周囲には、一定の空間が保たれている。


 俺たちは。


 案内された位置で止まる。


 礼。


「お呼びいただき、光栄に存じます」


 俺。


 リリスも。


「お声がけいただき、ありがとうございます」


 王妃殿下が微笑む。


「堅くならなくてよい、と申し上げても難しいでしょうね」


「はい」


 リリスが正直に答えた。


 王妃殿下が笑う。


「正直でよろしいわ」


 リリスの目が潤みかける。


 まだ。


 一拍。


「ありがとうございます」


「褒められた後も、会話は続くのでしょう?」


 王妃殿下が。


 言った。


 俺たちが固まる。


 王太子殿下が口元を隠して笑う。


 王女殿下も。


 周囲の侍女たちも、穏やかな表情。


「ご存じなのですか?」


 俺が思わず聞いた。


 王妃殿下の笑みが深くなる。


「学園で、とても丁寧に準備をされていると報告を受けています」


「はい」


「褒められた後も」


「はい」


「泣いた後も」


「はい」


「夜会は続く」


「はい」


「よい言葉ね」


 リリスの目から。


 一粒。


 落ちた。


「ありがとうございます」


「ほら」


 王妃殿下が言う。


「今も泣いたわね」


「はい」


「でも、立っている」


「はい」


「会話も続いている」


「はい」


「それでよいのです」


 リリスの肩が。


 少し緩む。


 王妃殿下は、リリスのドレスを見る。


 深い青。


 髪の青い薔薇。


「改めて」


「はい」


「よく似合っています」


 リリスの目が一気に潤む。


 強い。


 本人も自分で似合うと言えた。


 俺たちも伝えた。


 家族も。


 友人も。


 でも。


 王妃殿下から。


 公の場で。


 皆が見守る中。


「ありがとうございます」


 リリスは。


 一拍置く。


 涙を止めようとしすぎず。


 声を出す。


「私も、自分に似合っていると思うことができました」


 王妃殿下の目が。


 少し大きくなる。


 それから。


 とても優しく細められる。


「そう」


「はい」


「それは何よりです」


 リリスの涙が増える。


「誰かに似合うと言われることも嬉しいでしょう」


「はい」


「けれど、自分でそう思えることは」


「はい」


「もっと長く、あなたの中に残ります」


「はい」


「ご自分で選んだの?」


「はい。家族やアルフレッド様のお言葉をいただきながら」


「最後は?」


「私が決めました」


「素晴らしいわ」


 リリスが。


 完全に泣いた。


 だが。


 姿勢は崩れない。


 ハンカチ。


 ミラは少し離れている。


 王妃殿下の侍女が一枚、差し出そうとする。


 リリスは自分のハンカチを持っている。


 右手。


 自分で。


「ありがとうございます。持っております」


 言えた。


 侍女が一礼して下がる。


 王妃殿下が頷く。


「ご自分で持っていらっしゃるのね」


「はい」


「必要な時は、誰かのものを借りてもよいのですよ」


「はい」


「でも、自分のものを使える時は、自分で」


「はい」


「よろしい」


 また褒められた。


 リリス。


 泣く。


 でも。


 会話。


 続く。


 俺は。


 隣。


 口を挟まない。


 待つ。


 王妃殿下は、今度は俺を見る。


「アルフレッド様」


「はい」


「濃紺の礼装も、よくお似合いです」


「ありがとうございます」


 胸が熱い。


「アマリリス様の深い青と、よい調和ですね」


「はい。両家で相談し」


 一拍。


「俺も、青の位置について希望を伝えました」


 公的な場。


 俺、と言った。


 少し。


 だが王妃殿下は気にしない。


「ご自分でも?」


「はい」


「胸元の青ね」


「はい」


「大切な目印だと、先ほど伺いました」


「はい」


「今は、使っていますか?」


 胸元。


 戻る合図。


 触れていない。


「いいえ」


「なぜ?」


「今は、戻る必要がないからです」


 言った。


 王妃殿下が。


 静かに微笑む。


「ここにいられるのですね」


「はい」


「ご自分の足で」


「はい」


「そして、婚約者の隣に」


「はい」


 強い。


 リリスの涙がまた落ちる。


 俺の目元も。


 熱い。


 王太子殿下が、少し笑う。


「母上」


「何かしら」


「お二人の涙を増やしておられます」


「そうね」


「夜会はまだ始まったばかりです」


「分かっています」


「ハンカチの備蓄が心配です」


 俺の胸。


 嫌な予感。


 王妃殿下が、俺を見る。


「十分にお持ちなのでは?」


「枚数は、従者へ任せております」


 言えた。


 数えない。


 王妃殿下が満足そうに頷く。


「よい判断ですね」


「ありがとうございます」


「以前なら?」


「全部、自分で確認していました」


「今は?」


「必要な数を用意するのは、ライズの役目です」


「あなたの役目は?」


「必要な時に渡すことです」


「よろしい」


 また褒められた。


 今度は俺の目元。


 危ない。


 だが。


 会話は続く。


 王女殿下が。


 リリスの青い薔薇を見つめている。


「その花」


「はい」


「本物ではないの?」


「はい。夜会用に作っていただいた装飾品です」


「近くで見ても?」


 王女殿下。


 年下。


 純粋な興味。


 リリスは少し驚く。


 王族。


 近づく。


 距離。


「はい」


 リリスが一歩。


 でも。


 王女殿下が先に近づきすぎそうになる。


 侍女が止めるか。


 リリスが。


 自分で言う。


「恐れ入ります。こちらの距離でよろしいでしょうか」


 王女殿下が止まる。


「近すぎた?」


「少しだけ」


 正直。


 周囲が。


 一瞬静かになる。


 王族へ。


 少し近い。


 言えた。


 王妃殿下の表情は穏やか。


 王女殿下は。


 少し驚いて。


 それから笑う。


「ごめんなさい」


「いいえ」


「では、ここから」


「はい」


 王女殿下が青い薔薇を見る。


「綺麗」


「ありがとうございます」


「花弁が一枚だけ、少し外へ」


「私が増やしていただいた花弁です」


「どうして?」


「青い薔薇が、銀より先に見える方が好きだからです」


「あなたが決めたのね」


「はい」


「私も、次の髪飾りは自分で選びたい」


 王妃殿下が娘を見る。


「選んでよいのですよ」


「本当に?」


「周囲の意見を聞いた上で」


「はい」


「最後は、自分で」


 王女殿下が嬉しそうに笑う。


「アマリリス様」


「はい」


「教えてくださってありがとう」


 リリスの涙が。


 また。


「こちらこそ」


「泣いているの?」


「嬉しいので」


「嬉しいと泣くの?」


「はい」


「たくさん?」


 リリスが一拍。


「かなり」


 周囲から。


 笑い。


 王妃殿下も。


 王太子殿下も。


 王女殿下は楽しそう。


「では、今日はたくさん嬉しいのね」


「はい」


 リリスは。


 涙を拭きながら。


「今夜の幸せを、もう使い切りそうです」


 俺は。


 すぐに言う。


「使い切りません」


 全員が俺を見る。


「アルフレッド様?」


 王妃殿下。


 俺は。


 少し顔が熱い。


 だが続ける。


「幸せは、使い切るものではないと思います」


 リリスの目が大きくなる。


「はい」


「一つ受け取ったから、次が減るわけではありません」


「はい」


「王妃殿下に褒めていただいたことも」


「はい」


「第一舞踏も」


「はい」


「これからの会話も」


「はい」


「全部、別々に持ち帰れます」


 リリスの涙が。


 さらに増えた。


「アルフレッド様」


「はい」


「強すぎます」


「必要なので」


 王妃殿下が。


 口元へ手を当てて笑う。


「よいことを仰いますね」


「ありがとうございます」


「褒められた後も?」


 王太子殿下が言う。


「会話は続きます」


 俺が答える。


 大きな笑いではない。


 だが。


 王族の談話席に。


 温かな空気。


 周囲の貴族たちも。


 少し離れた場所から。


 見守る。


 噂。


 好奇心。


 でも。


 今は。


 悪意ではない。


 王妃殿下が言う。


「お二人とも」


「はい」


「今夜を、評価の場にしないでください」


 静かになる。


「王城で上手に振る舞えたか」


「はい」


「舞踏を完璧に踊れたか」


「はい」


「何人に褒められたか」


「はい」


「それらだけを数えない」


 俺とリリス。


 頷く。


「何が嬉しかったか」


「はい」


「誰と笑ったか」


「はい」


「どこで安心できたか」


「はい」


「それを持ち帰ってください」


 昨日。


 ベイル先生が言った。


 幸せな記憶。


 同じ。


「はい」


 リリスが答える。


「持ち帰ります」


 俺も。


「はい」


 王妃殿下が微笑む。


「では」


「はい」


「これ以上、こちらで幸せを増やしすぎても、次の方々がお待ちです」


 冗談。


 リリスが笑う。


「失礼いたしました」


「いいえ」


「夜会を楽しんで」


「はい」


「ありがとうございます」


 礼。


 俺たちは下がる。


 王女殿下が、小さく手を振りそうになり。


 侍女を見る。


 公的な場。


 王女殿下は。


 手を振らず。


 微笑んで頷く。


 リリスも。


 頷く。


 呼び方。


 距離。


 皆。


 学んでいる。


 王族席から離れる。


 群衆の間。


 俺とリリス。


 数歩。


 しばらく。


 どちらも話さない。


 言葉が多かった。


 褒められた。


 受け取った。


 少し。


 静かな時間が必要。


 壁際。


 指定された休息席へ。


 椅子。


 リリスが座る。


 俺も隣。


 距離。


 近すぎない。


 でも。


 親しい者だけの位置。


「リリス様」


 公的すぎず。


 少し近い呼び方。


「はい、アルフレッド様」


「どうですか?」


 体調だけではない。


 リリスは。


 少し考える。


「幸せです」


「はい」


「怖いくらい」


「怖い?」


「こんなに嬉しいことが続いて」


「はい」


「後で、全部なくならないかと」


 胸が痛む。


 幸せ。


 続くと怖い。


 使い切る。


 なくなる。


 リリスの中に。


 まだある。


「なくなりません」


 俺が言う。


「でも」


「はい」


「夜会は終わります」


「はい」


「ドレスも脱ぎます」


「はい」


「王城から帰ります」


「はい」


「今日の時間は終わります」


「……はい」


 リリスの目が。


 少し沈む。


 でも。


「それでも」


「はい」


「起きたことは、なくなりません」


「はい」


「王妃殿下に、似合っていると言われたこと」


「はい」


「自分で選んだと答えたこと」


「はい」


「王女殿下が、次は自分で選びたいと言ったこと」


「はい」


「全部」


「はい」


「明日も、覚えています」


 リリスの涙。


 静か。


「アルも?」


「覚えています」


「忘れませんか?」


「全部は、無理かもしれません」


 正直。


 リリスの瞳が揺れる。


「細かな言葉」


「はい」


「誰がどこに立っていたか」


「はい」


「少しずつ薄くなることはあると思います」


「はい」


「でも」


「はい」


「リリスが、自分で似合うと言えたことは」


 一拍。


「忘れません」


 リリスの涙が。


 落ちる。


「アル」


 公的な呼び方が。


 少し外れた。


 周囲。


 親しい家族が近い。


 でも、他家もいる。


 リリスが。


 自分で気づく。


「アルフレッド様」


「はい」


「忘れないでください」


「はい」


「でも、忘れたことがあっても」


「はい」


「嫌いになりません」


 今度は俺。


 胸が熱い。


「俺も」


「はい」


「覚えている量で、幸せを測りません」


「はい」


 リリスが微笑む。


 少し落ち着いた。


「水を飲みますか?」


「はい」


 俺たちは水。


 一口。


 リリスの呼吸。


 落ち着く。


 足。


「痛みは?」


「ありません」


「違和感は?」


「ありません」


「戻れそうですか?」


「どこへ?」


「会話の輪へ」


 リリスは周囲を見る。


 家族。


 友人。


 他の招待客。


 王城。


「はい」


「では」


 立つ。


 俺が手を差し出す。


 リリスは。


 自分で立ち。


 必要な分だけ。


 俺の手を支点にする。


 引っ張らない。


「ありがとうございます」


「はい」


 家族の輪へ。


 戻る。


 ガロウ公爵が。


 すでに待っている。


 だが。


 飛び出さない。


「リリス」


「はい」


「王妃殿下は」


 聞きたい。


 全部。


 だが。


 セレスティア夫人の札。


『本人が話すまで待つ』


 公爵が止まる。


 リリスが。


 自分から。


「お父様」


「はい」


「王妃殿下に」


「はい」


「ドレスが似合っていると、褒めていただきました」


 公爵の涙。


「そうか」


「はい」


「私は、自分でも似合うと思えたと」


「言ったのか」


「はい」


 ガロウ公爵が。


 口元を押さえる。


「父上」


 レオナルド先輩がハンカチ。


「ありがとう」


「札は?」


「十一枚」


「早い」


 俺のツッコミ。


 周囲が笑う。


 リリスは続ける。


「王女殿下も、次はご自分で髪飾りを選びたいと」


「お前が?」


「はい。選ぶことを、お話ししました」


 セレスティア夫人の目が潤む。


「リリス」


「はい」


「あなたのお選びになった一輪が」


「はい」


「別の方の選ぶ勇気にもなったのね」


 強い。


 リリスが。


 完全に泣く。


「お母様」


「はい」


「幸せが、増えました」


「ええ」


「使い切りません」


「ええ」


「持ち帰ります」


「ええ」


 ガロウ公爵が。


 娘を抱きしめたい。


 顔に出ている。


 札。


『王城では抱き上げない』


 抱きしめる、ではなく抱き上げない。


 危険。


 公爵は。


 両腕を。


 少し上げ。


 止める。


 リリスが父を見る。


「お父様」


「はい」


「手を」


「手?」


「はい」


 リリスが。


 自分から。


 父へ。


 両手を差し出す。


 ガロウ公爵が。


 恐る恐る。


 娘の手を取る。


 抱きしめない。


 手だけ。


 リリスが笑う。


「ありがとうございます」


「何が」


「待ってくださって」


 ガロウ公爵の涙。


 止まらない。


「リリス」


「はい」


「幸せか」


 二度目。


 いや。


 また。


 セレスティア夫人の札が出かける。


 リリスが先に答える。


「はい」


 父の手を握ったまま。


「幸せです」


「そうか」


 ガロウ公爵は。


 娘の手を。


 強く握りすぎない。


 少しだけ。


 そして。


 自分から離す。


 手放す。


 大きな進歩。


 レオナルド先輩の目元が。


 少し揺れる。


 母上も。


 父上も。


 セレスティア夫人も。


 誰も。


 すぐ言葉を足さない。


 沈黙。


 音楽。


 周囲の声。


 夜会の中で。


 家族だけの短い時間。


 やがて。


 ユリウスが来る。


「今、入っていい?」


 軽い。


 でも、聞く。


「はい」


 リリスが答える。


 エレナ嬢も。


 ニールも。


 輪へ。


「王妃殿下と何を?」


 ユリウス。


「聞きすぎない」


 エレナ嬢。


「はい」


「でも、聞きたい」


「本人が話したい範囲で」


「はい」


 リリスが笑う。


「ドレスを褒めていただきました」


「はい」


「自分でも似合うと思えたと」


「言ったの?」


「はい」


 ユリウスが。


 少し黙る。


「すごい」


 いつもの軽い言葉ではなく。


 まっすぐ。


「ありがとうございます」


「王女殿下にも?」


「青い薔薇を」


「泣いた?」


「かなり」


「今も」


「はい」


 皆が笑う。


 エレナ嬢が言う。


「幸せを使い切らないように」


「はい」


 リリスが俺を見る。


「アルフレッド様に、使い切るものではないと」


「よい言葉ですわ」


「褒められました」


「夜会は続きます」


 エレナ嬢が先に言う。


 笑い。


 ニールが。


 少し緊張した顔で。


「僕、まだ誰とも話せていません」


「家族以外?」


 俺が聞く。


「はい」


「話したいですか?」


「はい」


「誰と?」


「同年代の方と」


 周囲。


 知らない若者たち。


 怖い。


 だが。


 夜会。


「一緒に行きますか?」


 俺が言う。


 ニールの表情が明るくなる。


 しかし。


「でも、シェルザート君たちは」


「俺たちも、次の会話へ」


 リリスも頷く。


「はい」


「では」


 エレナ嬢が。


 少し離れた同年代の令嬢と子息の輪を見る。


「私がお知り合いの方々です」


「一緒に?」


「最初だけ」


 昨日までの学び。


 最初だけ隣。


 落ち着いたら、各自。


「行きましょう」


 ユリウスが。


 先へ出そうになる。


 エレナ嬢が見る。


「歩調」


「はい」


 皆で。


 小さな輪へ。


 夜会。


 会話。


 新しい人。


 紹介。


 エレナ嬢が、年長の令嬢へ。


「こちらは、同じ学園で学ぶ友人の皆さまです」


 名前。


 家名。


 簡潔。


 肩書だけではない。


 友人。


 相手の令嬢。


 穏やかな笑み。


「お目にかかれて光栄です」


 俺たちも。


 礼。


 会話。


「先ほどの第一舞踏」


 来た。


 リリスの顔が赤くなる。


「とても美しかったですわ」


「ありがとうございます」


「少し足元が乱れたように見えましたけれど」


 周囲が。


 少し緊張。


 悪意?


 純粋?


 相手の表情は。


 心配。


「お怪我は?」


 リリスが答える。


「いいえ。少しだけ靴が触れましたが、痛みもありません」


「それならよかった」


「はい」


「その後も、落ち着いて踊られていて」


「ありがとうございます」


「私なら、恥ずかしくて止まってしまうかもしれません」


 リリスが。


 少し考える。


「私も、止まりそうになりました」


「はい」


「でも、アルフレッド様が」


 一拍。


 俺を見る。


「一曲は続くと、言ってくださいました」


 相手の令嬢が微笑む。


「よいご婚約者ですね」


 リリスの涙。


 一粒。


 俺の胸。


 熱い。


「はい」


 リリスが。


 はっきり。


「とても」


 強い。


 俺の目元。


「アマリリス様」


「はい」


「会話は」


「続きます」


 周囲が笑う。


 初対面の者たちも。


 空気が柔らかくなる。


 別の若者が。


 俺へ。


「お足は、本当に?」


「はい。痛みも違和感もありません」


「それは何より」


「ありがとうございます」


「第一舞踏で足を踏まれて、笑って続けられるとは」


「練習でも、一度似たことが」


「そうなのですか?」


「はい」


「練習の成果ですね」


 俺は。


 一拍。


「練習したこともありますが」


「はい」


「アマリリス様が、すぐ戻ろうとしてくださったからです」


 リリスの涙。


 また。


「アルフレッド様」


「はい」


「幸せが増えます」


「持ち帰ってください」


「はい」


 周囲が笑う。


 新しい輪。


 知らない相手。


 でも。


 話せる。


 ニールは。


 最初。


 少し後ろ。


 エレナ嬢が、同年代の少年へ紹介する。


「こちらは、ニール・バートン様です。同じ学園で学ぶ友人です」


「初めまして」


 ニールが礼。


「ニール・バートンと申します」


「先ほどの舞踏へは?」


「次の曲で、姉と」


「お姉様と?」


「はい」


「楽しみですね」


 ニールの顔。


 少し明るくなる。


「はい」


 言えた。


 会話。


 続く。


 ユリウスは。


 すでに二人と話している。


 軽い。


 でも、相手を押しのけない。


 エレナ嬢が。


 少し離れて見守る。


 皆。


 自分の夜会。


 俺も。


 リリスだけを見続けない。


 相手の話を聞く。


 自分で答える。


 だが。


 視界の端。


 リリスがいる。


 深い青。


 同じ輪。


 安心。


 しばらくして。


 王城の楽団が。


 次の曲へ向け、音を整える。


 第一舞踏以外の参加者たちも。


 中央へ。


 夜会の流れが。


 少し変わる。


 王城係が。


 各所へ声をかける。


「第二舞踏へご参加の方は、ご準備を」


 第二舞踏。


 予定。


 俺たちは。


 第一舞踏を踊った。


 次も?


 確か。


 第二舞踏は。


 必ずしも婚約者同士ではない。


 家族。


 友人。


 別の相手。


 練習でも。


 リリスは兄と踊る予定。


 俺は母上。


 だったはず。


 胸が。


 少し。


 不思議な寂しさ。


 だが。


 自分の夜会。


 家族と。


 リリスが俺を見る。


 同じ。


 少し寂しそう。


 でも。


 笑う。


「アルフレッド様」


「はい」


「第二舞踏は」


「レオナルド先輩と?」


「はい」


「楽しんでください」


「アルフレッド様も」


「母上と」


「はい」


「楽しみます」


 リリスの目が潤む。


「離れても」


「同じ大広間です」


「はい」


「同じ曲」


「はい」


「終わったら?」


「また話しましょう」


「はい」


 戻る合図。


 必要ない。


 目が合う。


 頷く。


 レオナルド先輩が。


 こちらへ。


「リリス」


「はい」


「踊れるか」


「はい」


「足は?」


「問題ありません」


「アルフレッド」


「はい」


「借りる」


 妹を。


 借りる。


 所有ではない。


 言葉。


 少し。


 だが。


「はい」


「でも」


「何だ」


「リリス様ご本人へ」


 レオナルド先輩が。


 止まる。


 リリスを見る。


「リリス」


「はい」


「第二舞踏を、共に?」


 兄が。


 正式に。


 手を差し出す。


 リリスの目が。


 一気に潤む。


「はい」


「お兄様」


 公的な場。


 でも家族。


「喜んで」


 手。


 重ねる。


 レオナルド先輩が。


 少しだけ。


 笑う。


「アルフレッド」


「はい」


「今度は」


「はい」


「私が、妹の足を踏まれないように」


「俺が踏んだわけではありません」


「分かっている」


「リリス様が」


「少しだけです」


 リリスが顔を赤くする。


 周囲。


 笑い。


 母上が。


 俺の前へ。


「アル」


「はい」


「私とも、一曲」


「お願いします」


 俺が手を差し出す。


 母上が。


 少し驚く。


 以前なら。


 相手から。


 でも。


 今日は俺から。


「喜んで」


 父上は。


 少し離れたところで笑う。


 セレスティア夫人は。


 ガロウ公爵へ。


「あなた」


「はい」


「私たちも?」


 ガロウ公爵が。


 娘と踊りたい顔。


 だが。


 妻。


 夜会。


 自分の時間。


「もちろん」


 手を。


 差し出す。


 セレスティア夫人が重ねる。


 リリスが。


 その様子を見る。


 嬉しそう。


「お父様とお母様も」


「はい」


「踊ります」


 幸せが。


 また増える。


 使い切らない。


 持ち帰る。


 第二舞踏の位置へ。


 俺と母上。


 リリスとレオナルド先輩。


 ガロウ公爵とセレスティア夫人。


 父上は。


 別の旧友の夫人と一曲後に母上と踊るらしい。


 ユリウスとエレナ嬢。


 ニールと姉。


 皆。


 大広間へ。


 第一舞踏とは違う。


 少し明るい曲。


 緊張も。


 少し減っている。


 母上が俺を見る。


「アル」


「はい」


「リリス様ばかり見ない」


「はい」


「でも」


「はい」


「一度くらいは見てもいいわ」


「はい」


 音楽。


 始まる。


 俺は母上と。


 一歩。


 母上は。


 上手い。


 当然かもしれない。


 動きが自然。


 俺を急かさない。


 支える。


「足元」


「はい」


「呼吸」


「はい」


「楽しんで」


「はい」


 俺は。


 踊る。


 母上と。


 幼い頃。


 手を引かれたこと。


 礼法を教えられたこと。


 夜会へ。


 今日。


「母上」


「何?」


「ありがとうございます」


「何が?」


「ここまで」


 母上の目が潤む。


「今、言うの?」


「今、思ったので」


「強いわね」


「必要なので」


 母上が笑う。


「こちらこそ」


「はい」


「育ってくれて、ありがとう」


 胸が。


 熱い。


 足。


 止めない。


 踊りは続く。


 一度。


 視線。


 リリス。


 兄と。


 踊っている。


 レオナルド先輩。


 穏やか。


 リリス。


 笑っている。


 泣いている。


 でも。


 兄の足は踏んでいない。


 ガロウ公爵。


 セレスティア夫人と。


 意外なほど。


 上手い。


 騎士団長。


 動き。


 力強いが、妻に合わせている。


 セレスティア夫人が笑う。


 公爵も。


 娘を見そうになり。


 妻を見る。


 札は。


 使っていない。


 皆。


 自分の夜会。


 俺の胸。


 温かい。


 第二舞踏。


 家族の曲。


 終わる。


 礼。


 母上。


「ありがとう、アル」


「こちらこそ」


「幸せ?」


「はい」


「私も」


 短い。


 でも。


 持ち帰る。


 リリスが。


 兄と戻る。


 目が合う。


 レオナルド先輩が。


 妹へ。


「よく踊った」


「ありがとうございます」


「足を踏まなかった」


「お兄様」


「事実だ」


 リリスが恥ずかしそう。


「アルフレッド様」


「はい」


「母上と?」


「幸せでした」


 リリスの目が潤む。


「よかったです」


「リリス様は?」


「お兄様と踊れて」


 兄を見る。


「幸せでした」


 レオナルド先輩が。


 顔を少し逸らす。


「褒められた後も」


 俺が言う。


 レオナルド先輩が。


「夜会は続く」


 答えた。


 リリスが泣きながら笑う。


 ガロウ公爵とセレスティア夫人も。


 戻る。


「お父様」


「はい」


「お母様と、踊られていました」


「ああ」


「楽しそうでした」


 公爵が。


 妻を見る。


「ああ」


「楽しかった」


 言えた。


 娘だけではない。


 妻と。


 自分の夜会。


 セレスティア夫人の目が潤む。


「あなた」


「はい」


「褒められた後も?」


 ガロウ公爵が。


 少し考える。


「夜会は続く」


 皆が笑う。


 札は。


 出ない。


 自分で。


 受け取った。


 大広間。


 音楽。


 人々。


 次の会話。


 軽食。


 夜会は。


 本当に。


 続いている。


 幸せ。


 一つ。


 また一つ。


 増える。


 使い切らない。


 でも。


 胸はいっぱい。


 俺たちは。


 壁際の席へ。


 少し休む。


 リリス。


 俺。


 家族。


 友人。


 皆。


「アルフレッド様」


「はい」


「今夜」


「はい」


「まだ、どのくらいありますか?」


「時間を数えないでください」


「はい」


「夜会は続きます」


「はい」


「一つずつ」


「はい」


「次は?」


 俺は。


 予定を全部言わない。


 周囲を見る。


 軽食台。


 友人。


 庭園へ続く回廊。


 王城の灯り。


「少し休んだら」


「はい」


「庭園が見える回廊へ行きませんか?」


 リリスの目が。


 大きくなる。


「アルフレッド様から?」


「はい」


「お誘いですか?」


「はい」


「二人だけで?」


「家族と王城係の視界内で」


「正しいです」


「夜会ですから」


「はい」


 リリスの涙。


 また。


「行きたいです」


「では」


「はい」


「休んでから」


「はい」


「急ぎません」


「はい」


 ガロウ公爵が。


 聞いている。


 回廊。


 二人。


 顔。


 札。


 セレスティア夫人が先に。


『庭園回廊は駆け落ちではない』


「公爵閣下」


「何も言っていない」


「顔が」


「はい」


 周囲が笑う。


 リリスも。


 俺も。


 夜会。


 まだ。


 続く。


 俺は。


 心の中で。


 深く息を吸う。


 今日も。


 いや。


 今夜も。


 叫ぶ。


 公爵令嬢様!!


 王妃殿下に褒められても、今夜の幸せは使い切りません!!


 第一舞踏も、第二舞踏も、家族の笑顔も、全部別々に持ち帰りましょう!!


 そして次は――


 俺から、あなたを王城の庭園が見える回廊へお誘いします!!


 あと、お父様!!


 ただ回廊を歩くだけなので、『庭園回廊は駆け落ちではない』の札を、今から胸へ貼らないでください!!


 ものすごく目立っています!!

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