第51話 公爵令嬢様、周りがいると一曲分さらに赤くなります
皆さん、こんにちは!!
アルフレッド・シェルザートです。
昨日、俺とリリスは一曲踊りきった。
一、二、三。
方向転換。
音。
呼吸。
途中でリリスの目が潤み、俺の心臓も危なくなり、それでも曲の中で戻った。
止まらなかった。
崩れなかった。
最後まで、二人で流れを保てた。
先生からも言われた。
「途中で乱れても戻れました」
それが一番大切だと。
母上にも言われた。
完璧よりも、最後まで共に流れを保つこと。
そうして昨日の夜、フルーラ家から届いた書状には、ガロウ公爵の魂が半歩抜けたと書かれていた。
セレスティア夫人は、それを戻り版で戻すらしい。
もう魂にも戻り版が適用される時代である。
半歩の応用範囲が広すぎる。
そして今日。
ダンス練習は、また一段階上がる。
昨日までは、俺とリリスが教室の中央で一組ずつ練習する形だった。
他の生徒たちは見ている。
順番に練習する。
つまり、空間は広く使えた。
周りにぶつかる心配も少なかった。
だが、王城の夜会は違う。
大広間には複数の組がいる。
音楽に合わせて、何組も同時に踊る。
周囲の視線もある。
他の組との距離もある。
踊りながら場を読む必要がある。
先生が昨日の最後に言った。
「次は、複数組での練習を行います」
つまり今日からは、二人だけで踊れればいい、では済まない。
周りを見ながら、でも相手を見失わず、音を聞きながら、距離を取る。
王城用半歩。
王城用戻り版。
踊りながら半歩。
一曲用半歩。
全部盛りである。
朝、屋敷の食堂でその話をすると、父上は妙に真面目な顔で頷いた。
「複数組での練習か。大事だな」
「はい」
「一組だけで踊れるのと、周囲に人がいる中で踊れるのは違う」
「そうですね」
「夜会では、相手だけを見ていると危ない。かといって周囲だけを見ると、相手を置いていく」
「はい」
「まさに半歩だな」
「本当に何でも半歩ですね」
「便利な言葉だ」
父上は少し笑った。
母上は俺を見て、優しく言った。
「アル、今日はリリス様だけでなく、周囲も見る練習ね」
「はい」
「でも、周囲を見すぎてリリス様を不安にさせないこと」
「難しいですね」
「ええ。けれど、夜会では必要よ」
「はい」
「踊りながら、相手へ『ちゃんとここにいる』と伝えること。視線でも、手の力でも、呼吸でも」
ちゃんとここにいる。
その言葉は、俺の胸に残った。
リリスは不安になると俺に寄る。
恥ずかしくなると遠ざかる。
昨日は曲の中で戻れた。
今日は、周囲がいる中でも戻れるか。
俺も同じだ。
周囲を意識しすぎて、リリスへの呼吸を忘れないようにしなければならない。
ライズは鞄を整えながら言った。
「若様、本日のハンカチは十六枚でございます」
「また増えた」
「複数組ダンス練習日でございますので」
「もう驚かない」
「想定される涙は、昨日の一曲思い出し涙、周囲の視線による緊張涙、他ペアとの接近で王城用半歩発動涙、若様が周囲を見ても戻ってきてくださった安心涙、複数組で踊りきれた達成涙でございます」
「俺が周囲を見ても戻ってくる?」
「はい。アマリリス様は、若様の視線が離れた際に不安になる可能性がございます」
「ありそう」
「そのため、視線を外した後は必ず戻してください」
「分かった」
「本日の心の札は、『戻る視線』でございます」
「戻る視線」
「はい」
良い言葉だ。
周囲を見る。
でも、リリスへ戻る。
遠すぎたら戻り版。
視線にも戻り版。
今日の目標は、それだ。
正門前。
リリスはいつもの場所にいた。
今日も制服姿。
ブルーローズの髪飾り。
ただ、昨日一曲踊りきったからか、少しだけ立ち姿に自信がある。
それでいて、今日の練習を考えているのか、目元はすでに少し潤んでいた。
俺を見つけると、ふわりと笑う。
歩いてくる。
走らない。
けれど、足取りは一、二、三と拍を刻んでいるようだった。
「アル、ご機嫌よう」
「ご機嫌よう、リリス」
「今日も走りませんでした」
「はい。今日も拍で歩いていましたね」
「分かりましたか?」
「はい」
「昨日の一曲が、まだ残っていて」
「俺も少し残っています」
リリスの目が潤む。
「アルも?」
「はい」
「一緒です」
「はい」
「……小声版です」
「朝一回目ですね」
俺はハンカチを渡した。
リリスは涙を一粒だけ拭き、深呼吸した。
「今日は、周りの方々と一緒に踊るのですよね」
「おそらく」
「私、アルが周囲を見ると、少し不安になるかもしれません」
「ライズにも言われました」
「ライズ様に?」
「はい。視線を外した後は、リリスへ戻るようにと」
リリスの顔が赤くなる。
「戻る視線」
「はい」
「強いです」
「でも、大切だと思います」
「はい」
リリスは胸元で手を重ねた。
「私も、アルを見すぎないように、でも見失わないようにします」
「はい」
「周りを見て、アルへ戻ります」
「それなら大丈夫です」
リリスの目がまた潤む。
「大丈夫、は強いです」
「今日は多いですね」
「昨日一曲踊った翌日なので」
「理由がしっかりしている」
ミラが後ろで静かに言った。
「本日二回目、接近中でございます」
「一回目は?」
「朝、お嬢様が昨日の練習を思い出して」
「泣きましたか」
「はい」
昨日の宝物が朝から効いている。
教室へ向かう途中、ユリウスとエレナ嬢が合流した。
「おはよう。今日は複数組だろうね」
ユリウスが言う。
「やはり」
俺が答える。
エレナ嬢はリリスを見て微笑んだ。
「アマリリス様、昨日の一曲、とても良かったですわ」
「ありがとうございます」
「今日は周囲も見ながら踊る練習ですわね」
「はい。少し怖いです」
「怖さを感じられるなら、丁寧に踊れますわ」
「先生みたいです」
「ふふ。先生ほど厳しくはありませんわ」
ユリウスが軽く言う。
「今日のポイントは、二人だけの世界に入らないことかな」
リリスが真っ赤になる。
「二人だけの世界……」
「いや、入りそうだから」
「ユリウス様」
「だって昨日の後半、ちょっと入ってたよ」
「入っていましたか!?」
俺とリリスの声が重なる。
ユリウスはにやにやしていた。
「少しね」
エレナ嬢も苦笑する。
「でも、悪いことではありませんわ。ただ、王城では周囲もありますから」
「……はい」
リリスは恥ずかしそうに頷いた。
「今日は、二人だけになりすぎないようにします」
「ただし、離れすぎない」
俺が言うと、リリスは小さく笑った。
「半歩ですね」
「はい」
教室に入ると、机は昨日よりさらに大きく端へ寄せられていた。
中央には広い空間。
補助教師も二人いる。
楽器も昨日よりしっかり用意されている。
複数組練習、確定である。
ニールはすでに白くなっていた。
「シェルザート君」
「はい」
「昨日、一曲で精一杯でした」
「俺もです」
「今日、周りに人がいるらしいです」
「はい」
「終わりました」
「終わっていません」
リリスが真剣に言った。
「バートン様、周囲に人がいる時ほど半歩です」
「半歩」
「近づきすぎたら下がる。離れすぎたら戻る。足を踏みそうなら」
「止まる?」
「戻り版です」
「戻り版」
ニールは頷いた。
少し落ち着いたようだ。
クラリス嬢は見学席にいた。
「アマリリス様、今日も応援しております」
「ありがとうございます」
「複数組で踊るのは難しそうですが、きっと大丈夫です」
「クラリス様……」
「小声版ですか?」
「はい」
クラリス嬢も慣れてきている。
一時間目。
礼法。
ベイル先生は教室の前に立ち、黒板へ書いた。
『複数組で踊る礼』
「本日は、複数の組が同時に踊る練習をします」
教室がざわつく。
「王城の夜会では、自分たちだけが踊るわけではありません。周囲の組、見ている者、音楽、広間の流れ。そのすべてを感じる必要があります」
先生は淡々と言う。
「ただし、周囲を気にしすぎると、相手への配慮が抜けます」
俺は頷く。
まさに今日の課題だ。
「相手だけを見すぎると、周囲とぶつかります。周囲だけを見ると、相手が不安になります」
リリスが小さく反応した。
「今日は、視線を戻す練習もします」
視線を戻す。
ライズと同じ。
「周囲を見たら、相手へ戻る。相手を見たら、音へ戻る。音を聞いたら、足へ戻る。行きっぱなしにしないこと」
すごい。
全部戻り版だ。
先生は続ける。
「では、まず二組ずつ」
最初は俺たちと、ユリウス・エレナ嬢の組だった。
ユリウスとエレナ嬢は即席ペアだが、どちらも上手い。
特にエレナ嬢は安定している。
俺とリリスは向かい合う。
リリスの手が少し震えている。
「リリス」
「はい」
「周りを見ても、戻ります」
「はい」
「リリスも」
「戻ります」
「では」
手を取る。
右手を添える。
呼吸。
一緒に吸う。
吐く。
音が始まる。
一、二、三。
俺たちは動き出した。
隣では、ユリウスとエレナ嬢が同時に動いている。
視界の端に二人の姿が入る。
近いわけではない。
でも、意識に入る。
リリスの手に少し力が入った。
「音」
俺が小声で言う。
「はい」
一、二、三。
方向転換。
ここで、ユリウスたちの組と少し距離が近くなる。
俺は周囲を見る。
半歩、軌道を調整する。
リリスから視線が離れる。
リリスの呼吸が少し揺れた。
すぐに視線を戻す。
リリスと目が合う。
彼女が小さく頷く。
戻った。
一、二、三。
流れは止まらない。
先生の声が聞こえる。
「よろしい。視線を戻せています」
その言葉で、リリスの目が潤む。
今泣くな。
いや、泣かない。
彼女は拍の中で戻った。
ユリウスが隣で軽やかに回る。
エレナ嬢が美しく合わせる。
俺たちも、少しだけ流れに乗る。
曲の半分。
昨日より周囲への意識が必要で、頭が忙しい。
でも、リリスの手の温かさが、ここにいることを伝えてくれる。
最後の三拍。
一、二、三。
礼。
終わった。
リリスは息を吐いた。
泣いてはいない。
目は潤んでいるが、泣いていない。
すごい。
先生が言った。
「よくできました。シェルザートさん、周囲を見た後、視線を戻せていました」
「ありがとうございます」
「アマリリスさん、視線が離れた時に少し揺れましたが、戻れました」
「ありがとうございます」
「ユリウスさん、軽さを半歩抑えられていました」
「ありがとうございます」
「エレナさん、非常に安定しています」
「ありがとうございます」
ユリウスが小声で言った。
「褒められた」
「珍しく」
「珍しくって言うな」
リリスが少し笑った。
緊張が解ける。
次は、ニールたちの組も加わり、三組で踊る。
空間が一気に難しくなる。
ニールは必死だ。
足元を見すぎて相手を忘れ、先生に注意される。
俺も一度、周囲を見すぎてリリスへの戻りが遅れた。
リリスの手が不安そうに強くなる。
俺はすぐに戻る。
「すみません」
「戻ってくださいました」
「はい」
「大丈夫です」
一、二、三。
踊りながら会話をする余裕は少ない。
でも、短くならできる。
それも練習なのだろう。
先生は何も言わなかった。
曲が終わる。
今度は少し疲れた。
リリスも息が上がっている。
それでも、最後までいけた。
教室から拍手が起こる。
昨日ほどではないが、温かい拍手だ。
リリスは泣きそうになったが、深呼吸で耐えた。
先生が頷く。
「アマリリスさん、よく耐えました」
「ありがとうございます」
「ただし、耐えるだけでなく、後で受け取りなさい」
「はい」
先生まで分かっている。
休み時間。
リリスは席に座るなり、ハンカチを握った。
「アル」
「はい」
「周りがいると、難しいです」
「はい」
「アルが周りを見ると、少し不安でした」
「はい。戻りが遅れた時がありました」
「でも、戻ってくださいました」
「はい」
「それが、とても安心しました」
「俺も、リリスが待ってくれて助かりました」
リリスの目が潤む。
「私も待てましたか?」
「はい」
「……小声版です」
「今日はよく耐えましたね」
「先生に、後で受け取りなさいと言われました」
「今ですか」
「今です」
俺はハンカチを渡した。
リリスは涙を拭いた。
「怖かったです。でも、戻れました」
「はい」
「周りがいても、アルが戻ってきてくださいました」
「戻ります」
リリスの涙が増えた。
「それは、強いです」
「今日必要な言葉です」
「はい」
エレナ嬢が近づき、優しく微笑んだ。
「アマリリス様、とても良かったですわ」
「ありがとうございます」
「周囲を見ながらも、最後まで流れを保てていました」
「はい」
「本番ではもっと人が多いですが、今日のように戻れれば大丈夫です」
「……はい」
ユリウスも笑いながら言う。
「二人だけの世界から、ちゃんと戻ってきてたね」
「入っていません」
「少し入ってた」
「ユリウス様」
「でも戻ってた」
それなら良い……のか?
二時間目以降も、教室の空気は少し浮ついていた。
複数組でのダンスは、皆にとってかなり実戦的だったのだ。
ニールは昼休みまで落ち込んでいた。
「僕、相手を見失いました」
「でも戻れましたよね」
リリスが言う。
「はい」
「なら、戻り版です」
「戻り版、本当に便利ですね」
「便利ですが、大切に使いましょう」
「はい」
ニールは真剣に頷いた。
半歩軽視事件以降、皆が少し丁寧に言葉を使うようになっている。
昼休み。
食堂では、リリスはかなり疲れていたが、ちゃんと食べていた。
「今日は食べられていますね」
「はい。お母様に、複数組練習の日ほど食べなさいと言われました」
「本当に全部予測していますね」
「はい」
ユリウスが笑う。
「ガロウ公爵には、今日の練習どう伝えるの?」
リリスは少し遠い目をした。
「お兄様が段階的に」
「またか」
「まず、一曲を再確認」
「はい」
「次に、周りにも人がいた、と」
「そこで崩れそう」
「はい」
「札は?」
「お母様が今朝すでに準備していました」
「何ですか?」
リリスは恥ずかしそうに言った。
「『周囲がいても崩れない』」
「先回り!」
「あと、『娘しか見すぎない』」
「それはガロウ公爵用というより本番用では!?」
リリスが真っ赤になった。
ユリウスは笑い、エレナ嬢も肩を震わせる。
セレスティア夫人、準備が完璧すぎる。
午後の魔法基礎では、今日のダンス練習がそのまま課題になった。
教師が言う。
「アマリリスさん、今日は周囲と自分の光を同時に感じる練習をしましょう」
「はい」
「自分だけを見すぎず、周囲だけに流されず」
「王城用半歩ですね」
「そうです」
教師まで使う。
リリスは少し照れたが、集中した。
自分の光。
周囲の魔力。
その間を流す。
最初は少し揺れた。
でも、戻る。
先生が頷く。
「よろしい。視線だけでなく、魔力も戻れています」
「ありがとうございます」
リリスは受け取った。
泣かなかった。
かなり疲れているが、成長している。
放課後。
レオナルド先輩が待っていた。
今日は腕を組んでいた。
完全に情報待ちの顔である。
「リリス」
「お兄様」
「複数組だったな」
「はい」
「周囲がいた」
「はい」
「戻れたか?」
「はい」
レオナルド先輩の表情が少し緩む。
「よくやった」
リリスの目が潤む。
「ありがとうございます」
レオナルド先輩は俺を見る。
「アルフレッド」
「はい」
「周囲を見て、リリスに戻れたか」
「一度遅れましたが、戻れました」
「正直でよい」
「ありがとうございます」
「本番ではもっと多い。今日の感覚を覚えておけ」
「はい」
そして、恒例の話題。
「父上には、段階的に伝えた」
「どうでしたか?」
「一曲は受け入れた」
「おお」
「周囲がいたと伝えた」
「はい」
「座った」
「はい」
「泣いた」
「はい」
「『周囲がいても崩れない』の札は効いた」
「成長ですね」
「だが、『娘しか見すぎない』の札を見て、私は娘を見る父だ、と言って泣いた」
「どういう感情ですか」
「分からない」
レオナルド先輩でも分からないらしい。
リリスは顔を真っ赤にして笑っていた。
正門で別れる時、リリスは昨日よりさらに疲れていた。
しかし、不安だけではない。
達成感がある顔だった。
「アル」
「はい」
「今日は、周りがいても踊れました」
「はい」
「アルが周囲を見て、戻ってきてくださいました」
「はい」
「私も、待てました」
「はい」
「怖かったです」
「はい」
「でも、戻れました」
「はい」
リリスは深呼吸した。
「今日の宝物名は」
「はい」
「周りがいても、アルと一曲を保てた日の宝物です」
「良い名前です」
「あと」
「はい」
「戻る視線があった日の宝物です」
「……それは、俺も大切にします」
リリスの目が潤む。
「強いです」
「今日は最後なので」
「はい」
俺はハンカチを渡した。
リリスは涙を拭き、笑った。
「また明日、アル」
「また明日、リリス」
馬車が遠ざかる。
俺はそれを見送りながら、今日の感覚を思い出した。
周囲を見る。
戻る。
音を聞く。
戻る。
リリスを見る。
戻る。
夜会は、きっとその繰り返しだ。
その夜。
屋敷に帰ると、父上と母上が待っていた。
「複数組だったか」
「はい」
「どうだった?」
「難しかったです」
「そうだろうな」
「でも、戻れました」
「ならよい」
母上が微笑む。
「戻る視線、できた?」
「はい。たぶん」
「本番でも忘れずに」
「はい」
その後、フルーラ家から書状が届いた。
一通目、ガロウ公爵。
『リリスが周囲に人がいる中でもアルフレッド殿と踊れたと聞いた。泣いた。私が。座った。泣いた。走らなかった。セレスティアに「周囲がいても崩れない」の札を出された。効いた。だが「娘しか見すぎない」の札を見て、私は娘を見る父だと思い泣いた。難しい。 ガロウ』
二通目、レオナルド先輩。
『複数組で踊れたのは良い進歩だ。君もリリスへ視線を戻せたようだな。本番はさらに人数が多い。今日の感覚を覚えておけ。父上は「周囲がいても崩れない」は成功。ただし「娘しか見すぎない」で泣いた。要観察。 レオナルド』
三通目、セレスティア夫人。
『アルフレッド様。本日は複数組での練習だったそうですね。王城では、二人だけでなく周囲との距離も大切になります。周囲を見て、相手へ戻る。その視線の戻り方を忘れないでくださいませ。夫には「周囲がいても崩れない」「娘しか見すぎない」の札を出しました。前者は成功、後者は涙。継続が大切です。 セレスティア』
俺は三通を読み、静かに天井を見上げた。
娘しか見すぎない。
前者は成功、後者は涙。
もう札ごとの効果測定が始まっている。
父上は腹を抱えて笑った。
母上も楽しそうに微笑んでいた。
リーマスは「視線にも礼がございます」と頷いた。
ライズは静かに親指を立てた。
俺は深く息を吸い、今日も心の底から叫んだ。
公爵令嬢様!!
周りがいても、ちゃんと一曲を保てました!!
でも、お父様は娘しか見すぎないでください!!




