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『公爵令嬢様、距離感が近すぎます! 〜伯爵子息は今日もツッコミが追いつかない〜』  作者: 伊佐波瑞樹


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第45話 公爵令嬢様、半歩を大切にしすぎて遠くなります



 皆さん、こんにちは!!


 アルフレッド・シェルザートです。


 昨日、リリスは半歩が軽く扱われる痛みを知った。


 誰かを黙らせるために使われた半歩。


 便利な流行り言葉のように使われた半歩。


 それを見たリリスは、傷ついた。


 悲しんだ。


 少し怒った。


 でも、逃げなかった。


「半歩は、相手を黙らせるための言葉ではありません」


 震える声で、そう伝えた。


 相手を責めるためではなく、意味を守るために。


 その言葉は、ちゃんと届いた。


 軽くなりかけた半歩は、少しだけ戻った。


 俺はそれを見て、リリスは強くなったのだと思った。


 泣き虫で、天然で、距離感が赤点な公爵令嬢。


 でも、自分の大切な言葉を、自分で守れるようになった。


 すごいことだ。


 ……ただし。


 リリスは、まっすぐすぎる。


 大切にしようとすると、本当に大切にしすぎる。


 守ろうとすると、守りすぎる。


 そして今日。


 その影響が、分かりやすく出た。


 リリスの距離が、遠い。


 そう。


 遠いのである。


 朝、正門前で会った瞬間から、俺は違和感を覚えた。


 リリスはいつもの場所にいた。


 制服姿。


 ブルーローズの髪飾り。


 姿勢は美しい。


 表情も穏やか。


 俺を見つけると、嬉しそうに笑った。


 ここまではいつも通りだ。


 だが。


 歩いてきたリリスは、俺の前でいつもより一歩遠く止まった。


「アル、ご機嫌よう」


「ご機嫌よう、リリス」


「今日も走りませんでした」


「はい」


「……」


「……」


 遠い。


 いや、貴族令嬢としては正しい距離だ。


 むしろ完璧だ。


 完璧なのだが、リリスにしては遠い。


 いつもなら、少し近すぎるくらいの距離に来て、ミラが後ろで静かに控え、俺が内心で「近い近い」と叫ぶ。


 それが日常だった。


 今日は違う。


 半歩どころか、一歩半くらい遠い。


 俺は思わず言った。


「リリス」


「はい」


「今日は、少し遠くないですか?」


 リリスの肩がびくっと揺れた。


 図星らしい。


 彼女は目を泳がせ、それから小さく答えた。


「昨日、半歩を軽く扱われて、私、思ったのです」


「はい」


「私自身が、半歩を大切にしなければいけないと」


「はい」


「だから、近づきすぎてはいけないと」


「はい」


「今日は、ちゃんと距離を取ろうと」


「はい」


「……取りすぎましたか?」


 俺は一拍置いた。


「少し」


 リリスの目が一気に潤んだ。


「小声版です」


「早いですね」


「アルに遠いと言われました」


「遠いとは言いましたが、嫌とは言っていません」


「……はい」


「リリス」


「はい」


「半歩は、近づきすぎた時に下がるだけではありませんよね」


 リリスが顔を上げた。


「遠すぎる時には、半歩近づく」


 自分の発表で言った言葉だ。


 リリス自身が、殿下の前でも、教室の前でも話した言葉。


 彼女はそれを思い出したように、目を丸くした。


「……そうでした」


「はい」


「私、守ろうとして、遠くなりすぎました」


「少しだけ」


「アル」


「はい」


「半歩、近づいてもよろしいでしょうか」


 可愛い。


 丁寧に許可を求めるな。


 心臓に悪い。


「はい。どうぞ」


 リリスは本当に半歩だけ近づいた。


 いつもの距離よりはまだ控えめ。


 だが、さっきよりは自然だ。


「このくらいですか?」


「はい。落ち着きます」


 リリスの目が潤む。


「落ち着きます、は強いです」


「事実です」


「……嬉しいです」


 リリスは深呼吸した。


 涙は出なかった。


 ミラが後ろで静かに言う。


「本日一回目、遠距離調整成功でございます」


「ミラ、遠距離調整って」


「昨日の件を受けた新分類です」


「分類しないでください」


 朝から新分類が増えた。


 半歩の研究、まだ広がるのか。


 教室へ向かう途中、リリスはいつもより少し慎重だった。


 廊下を歩く時も、人との距離をかなり意識している。


 曲がり角では一度止まる。


 すれ違う時は少し下がる。


 礼としては美しい。


 だが、硬い。


 明らかに硬い。


 ユリウスとエレナ嬢が合流すると、ユリウスはすぐに気づいた。


「おはよう。アマリリス様、今日はちょっと遠いね」


「ユリウス様にも分かりますか」


 リリスがしゅんとする。


「分かるよ。いつものリリス様より、半歩どころか一歩遠い」


「やはり」


「昨日のこと?」


「はい」


 リリスは小さく頷いた。


「半歩を大切にしようと思ったら、近づくのが少し怖くなってしまいました」


 エレナ嬢が優しく微笑む。


「アマリリス様、大切にすることと、遠ざけることは違いますわ」


「はい……」


「半歩は、相手を大切にするための距離です。ご自分を罰する距離ではありません」


 リリスの目が潤む。


「エレナ様」


「近づきすぎたら半歩下がる。遠すぎたら半歩近づく。昨日、アマリリス様がご自身で教えてくださいました」


「私が」


「はい」


 リリスは深呼吸した。


「受け取ります」


 ユリウスが軽く言う。


「まあ、アルフレッドにだけは少し近くてもいいんじゃない?」


「ユリウス様」


「だって婚約者だし」


「廊下です」


 俺が止める。


 リリスは真っ赤になった。


「こ、婚約者……」


「今さら?」


 ユリウスが笑う。


 リリスは俺をちらりと見た。


 俺は咳払いした。


「まあ、婚約者ですから」


 リリスの目が潤んだ。


「アルが認めました」


「事実です」


「小声版です」


「今日は多そうですね」


「はい」


 エレナ嬢がくすくす笑った。


 教室に入ると、昨日の男子生徒がリリスへ軽く頭を下げた。


「アマリリス様、おはようございます」


「おはようございます」


「昨日の件、友人ともちゃんと話しました」


「はい」


「半歩、ちゃんと意味考えて使います」


「ありがとうございます」


 リリスは嬉しそうに微笑んだ。


 ただ、彼が去った後、少しだけ肩から力が抜けた。


「アル」


「はい」


「伝えてよかったです」


「はい」


「でも、今日はまだ少し怖いです」


「それでいいと思います」


「怖くても?」


「はい。怖さがあるから、丁寧に扱えるんだと思います」


 リリスは息を吸った。


「それは、先生も仰っていました」


「はい」


「怖さも、半歩で受け取ります」


「はい」


 一時間目は礼法だった。


 ベイル先生は、今日も黒板へ静かに文字を書いた。


『大切にしすぎて遠ざける礼』


 もう驚かない。


 いや、少し驚いた。


 ぴったりすぎる。


「大切なものを守ろうとするあまり、距離を取りすぎることがあります」


 先生の声が教室に響く。


 リリスの背筋が少し伸びる。


「傷ついた後、人は近づくことを怖がります。それは自然です。ですが、遠ざかりすぎれば、今度は声が届かなくなります」


 昨日のガロウ公爵の百歩を思い出した。


 いや、今は真面目な話だ。


「礼とは、近づかないことだけではありません。相手と自分が、どちらも息をできる距離を探すことです」


 リリスの言葉だ。


 先生が、それを授業の中で使っている。


 リリスの目が潤む。


「アマリリスさん」


「はい」


「昨日、言葉を守りましたね」


「はい」


「今日は、その言葉を自分にも向ける日です」


「自分にも」


「はい。あなた自身が、半歩を恐れすぎないこと」


 リリスは小さく息を吸った。


「近づきすぎたら下がる。遠すぎたら近づく。それは、あなた自身にも必要です」


「はい」


「では、今日の課題です」


 先生は黒板に書いた。


『自分が遠ざかりすぎた時の合図を考える』


 合図。


 小声版のように、自分が泣きそうな時の合図。


 今度は、自分が遠ざかりすぎた時の合図。


 先生は続ける。


「人は近づきすぎる時だけでなく、遠ざかりすぎる時にも、自分で気づけないことがあります」


 その通りだ。


 今朝のリリスがまさにそうだった。


「その時、どう伝えるか。どう戻るか。考えてみましょう」


 教室全体がノートを開く。


 リリスは真剣に考えていた。


 俺も考える。


 遠ざかりすぎた時。


 距離を取りすぎた時。


 必要な合図。


 リリスは、しばらく悩んだ後、ノートに書いた。


『遠い版?』


 俺は思わず見てしまった。


 リリスが気づく。


「アル」


「はい」


「変でしょうか」


「小声版の仲間みたいですね」


「そうなのです。でも、遠い版は少し寂しい響きです」


「確かに」


「では、戻り版?」


「それだと何かを取り戻す感じですね」


「半歩戻り?」


「半歩の中に戻る?」


 俺たちは小声で悩んだ。


 先生が近づいてくる。


「アマリリスさん、考えていますね」


「はい。遠ざかりすぎた時の合図を考えているのですが」


「候補は?」


「遠い版、戻り版、半歩戻りです」


 先生は少し考えた。


「遠い版は分かりやすいですが、少し寂しさがありますね」


「はい」


「戻り版は、自分の意志が見えます」


「戻り版」


 リリスはその言葉を繰り返した。


「私は、戻りたい時に使いたいです」


「なら、良いかもしれません」


 リリスの顔が明るくなる。


「戻り版」


 新しい言葉が生まれた瞬間だった。


 小声版。


 戻り版。


 半歩。


 増えた。


 また増えた。


 休み時間。


 リリスはさっそく俺の前で小さく言った。


「アル」


「はい」


「戻り版です」


「もう使うんですか」


「はい」


「どういう意味ですか?」


「私が、少し遠ざかりすぎている気がします。けれど戻りたいです、という意味です」


 強い。


 めちゃくちゃ強い。


「リリス」


「はい」


「とても良い言葉だと思います」


 リリスの目が潤む。


「強いです」


「でも本当に」


「戻り版、成功ですか?」


「はい」


「では、半歩近づいても?」


「はい」


 リリスは半歩だけ近づいた。


 今度は朝より自然だった。


「このくらいですか?」


「はい」


「落ち着きますか?」


「落ち着きます」


「……私もです」


 リリスは頬を赤くしながら、嬉しそうに笑った。


 その様子を見ていたユリウスが、にやにやしながら近づいてくる。


「戻り版、いいね」


「聞いていたんですか」


「聞こえた」


「聞こえた、ではなく聞いていたのでは」


「まあまあ」


 エレナ嬢も微笑んだ。


「戻り版、とてもアマリリス様らしいですわ」


「ありがとうございます」


「近づきすぎた時だけでなく、遠ざかりすぎた時にも、自分から伝えられるのは大切です」


「はい」


 クラリス嬢が興味深そうに言う。


「私も使えそうです」


「クラリス様も?」


「はい。気まずくなった時、遠ざかりすぎてしまうことがあるので」


 リリスの目が柔らかくなる。


「では、その時は戻り版です」


「はい」


 ニールも頷いた。


「僕も、弟と喧嘩した後に使えそうです」


「半歩、また広がりますね」


 俺が言うと、リリスは少し驚き、それから笑った。


「でも、今度は怖くありません」


「どうしてですか?」


「意味を一緒に伝えられたので」


 成長している。


 本当に、リリスは少しずつ強くなっている。


 二時間目の自由研究整理では、リリスは新しいページを開いた。


『戻り版』


 大きくそう書く。


『遠ざかりすぎた自分に気づいた時、戻りたいと伝える言葉』


『怖くて離れすぎた時にも、半歩近づくことができる』


『大切にすることと、遠ざけることは違う』


 先生がそれを見て、満足そうに頷いた。


「発表後の研究として、とても良いですね」


「ありがとうございます」


「あなたの研究は、発表で完成ではなく、今も育っています」


「育っている」


「はい。昨日は言葉を守る日。今日は言葉を自分にも向ける日です」


 リリスの目が潤む。


「受け取ります」


「よろしい」


 その後、先生はクラス全体へ、


「戻り版という考えも、今後の礼法で扱えそうですね」


 と言った。


 リリスはまた泣きそうになった。


 忙しい。


 昼休み。


 食堂に向かう廊下で、また小さな出来事があった。


 昨日、軽く半歩を使ってしまった男子生徒が、友人と少し気まずそうに歩いていた。


 すると彼が言った。


「昨日は悪かった。俺、ちょっと言い方悪くてさ。戻り版ってやつ、使っていいか?」


 リリスが足を止めた。


 友人は少し笑って言う。


「何だよそれ」


「いや、遠ざかりすぎたから戻りたいって意味……らしい」


「らしいって」


「でも、そういうこと」


 友人は少し照れくさそうにした後、


「じゃあ、戻れよ」


 と言った。


 二人はぎこちなく笑った。


 完全な仲直りではない。


 でも、戻った。


 リリスは泣いた。


 もう当然のように泣いた。


「アル」


「はい」


「戻り版が、すぐに」


「届きましたね」


「強いです」


「でも本当です」


 俺はハンカチを渡した。


 リリスは涙を拭きながら、小さく笑った。


「昨日の痛みが、今日の戻り版になりました」


「はい」


「痛みも、橋になるのですね」


「そうかもしれません」


 食堂では、リリスは少し泣き疲れながらも、ちゃんと食事を取った。


 エレナ嬢が嬉しそうに言う。


「アマリリス様、戻り版はとても良い言葉ですわ」


「ありがとうございます」


「怖くて離れてしまう人は多いですもの」


「私も、そうでした」


「それに気づけたのは大きいですわ」


 ユリウスが頷く。


「半歩の研究、第二段階に入ったね」


「第二段階?」


「うん。最初は近づきすぎた時の半歩。次は遠ざかりすぎた時の戻り版」


「研究みたいですね」


「実際研究だよ」


 リリスは少し照れた。


「発表、終わったのに」


「終わったから育つんだよ」


 ユリウスの言葉に、リリスは静かに頷いた。


 午後の魔法基礎では、リリスの光は朝より安定していた。


 遠ざかりすぎていた心が、戻り版によって少し整ったのだろう。


 教師が言った。


「アマリリスさん、午前より光が柔らかくなりましたね」


「はい。戻り版ができました」


「戻り版?」


「遠ざかりすぎた時に、戻りたいと伝える言葉です」


「なるほど」


 教師は興味深そうに頷いた。


「それは良いですね。魔力も、抑えすぎると流れが悪くなります。暴走を防ぐことと、閉じ込めることは違います」


「はい」


「今のあなたの光は、閉じ込めていません」


「ありがとうございます」


 リリスは受け取った。


 泣かなかった。


 放課後。


 レオナルド先輩が待っていた。


 今日は、いつもより少しだけ穏やかな顔だった。


「リリス」


「お兄様」


「戻り版ができたそうだな」


「もうご存じなのですか?」


「上級生の耳は早い」


「ユリウス様みたいです」


「不本意だ」


 レオナルド先輩は少し咳払いした。


「遠ざかりすぎた時に戻りたいと伝える言葉。悪くない」


「ありがとうございます」


「昨日の痛みを、今日の学びにしたな」


 リリスの目が潤む。


「お兄様」


「よくやった」


「強いです」


「今日は言う日だ」


 レオナルド先輩は俺を見る。


「アルフレッド」


「はい」


「遠すぎる時に半歩近づく。君が思い出させたそうだな」


「はい」


「よく言った」


「ありがとうございます」


「父上にも戻り版を説明した」


「どうなりました?」


「泣いた」


「でしょうね」


「そして母上に『私も戻り版だ』と言って近づこうとした」


「使い方!!」


「母上が札を出した」


「何の札ですか」


「『戻り版は許可制』」


「正しい!!」


 リリスが顔を真っ赤にして笑った。


 ガロウ公爵。


 戻り版を都合よく使ってはいけない。


 正門で別れる時、リリスは朝とは違って、自然な距離にいた。


 近すぎず、遠すぎず。


 今日、一日かけて戻った距離だった。


「アル」


「はい」


「今日は、遠くなりすぎました」


「はい」


「でも、戻れました」


「はい」


「戻り版ができました」


「はい」


「半歩は、また少し育ちました」


「そうですね」


 リリスは静かに微笑んだ。


「今日の宝物名は」


「はい」


「遠ざかりすぎた私が、半歩戻れた日の宝物です」


「良い名前です」


「あと」


「はい」


「戻り版が生まれた日の宝物です」


「とても大切ですね」


「はい」


 リリスは一粒だけ涙を落とした。


 でも、すぐに笑った。


「アル」


「はい」


「明日も、遠くなりすぎたら教えてください」


「はい」


「近すぎたら?」


「半歩」


「遠すぎたら?」


「戻り版」


「はい」


 リリスは嬉しそうに笑った。


「また明日、アル」


「また明日、リリス」


 馬車が遠ざかる。


 俺はそれを見送りながら、今日の一日を思い返した。


 昨日の痛み。


 今日の遠さ。


 戻り版。


 言葉は、本当に育っている。


 その夜。


 屋敷に帰ると、父上が待っていた。


「戻り版ができたらしいな」


「はい」


「良いじゃないか」


「ただ、ガロウ公爵が使い方を間違えました」


「聞きたい」


 父上が身を乗り出す。


「セレスティア夫人へ『私も戻り版だ』と言って近づこうとしたそうです」


 父上は爆笑した。


 母上も口元を押さえている。


「それは止められるな」


「『戻り版は許可制』の札が出たそうです」


「名札だ」


「名札ではありません」


 その後、フルーラ家から書状が届いた。


 一通目、ガロウ公爵。


『戻り版が生まれたと聞いた。泣いた。私が。遠ざかりすぎた時に戻りたいと伝える言葉らしい。素晴らしい。私もセレスティアに戻り版を申し出た。札が出た。「戻り版は許可制」。座った。泣いた。学ぶ。 ガロウ』


 二通目、レオナルド先輩。


『リリスは今日、遠ざかりすぎた自分に気づき、戻り版を作った。良い成長だ。君もよく支えた。父上が戻り版を都合よく使おうとしたため、母上が「戻り版は許可制」の札を出した。効果あり。 レオナルド』


 三通目、セレスティア夫人。


『アルフレッド様。本日、リリスは遠ざかりすぎた自分に気づき、戻り版という新しい言葉を得たようですね。近づきすぎることも、遠ざかりすぎることも、どちらも半歩で整えられる。とても良い学びです。夫が私へ戻り版を申し出ましたので、「戻り版は許可制」の札を出しました。座りました。泣きました。継続が大切です。 セレスティア』


 俺は三通を読み、静かに天井を見上げた。


 戻り版は許可制。


 名言がまた増えた。


 父上は腹を抱えて笑った。


 リーマスは「戻りたい心にも礼が必要でございます」と頷いた。


 ライズは静かに親指を立てた。


 俺は深く息を吸い、今日も心の底から叫んだ。


 公爵令嬢様!!


 遠ざかりすぎた半歩から、ちゃんと戻ってこられました!!


 でも、お父様の戻り版は許可制です!!

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