第19話 公爵令嬢様、昨日の言葉を反芻しすぎです
皆さん、こんにちは!!
アルフレッド・シェルザートです。
三日後に控えたセレスティア・フルーラ公爵夫人とのお茶会。
その準備として、昨日、俺はリリスに少しだけ本心を伝えた。
言った内容は、簡単にまとめるとこうだ。
リリスは俺にとって、大切な婚約者です。
近すぎて大変な時もありますが、その近さごと大切にしたいと思っています。
……。
改めて思い出すと、顔が熱い。
いや、別に嘘は言っていない。
むしろかなり本心だ。
リリスは距離が近い。
泣き虫で、天然で、本や木剣に嫉妬して、心の椅子とか言い出す。
俺は毎日ツッコミが追いつかない。
でも、それでも。
彼女の真っ直ぐさも、一生懸命さも、優しさも、俺を大切にしようとしてくれるところも。
全部ひっくるめて、俺は大切にしたいと思っている。
……思っている。
はい。
思っております。
だからこそ言った。
言ったのだが。
その結果、フルーラ家に報告が飛んだ。
ガロウ公爵は泣いた。
レオナルド先輩は及第点以上と評価した。
セレスティア夫人は、
『三日後のお茶会が、ますます楽しみになりました』
と書いてきた。
期待値が上がった。
どうしてこうなる。
いや、俺が言ったからだ。
分かっている。
だが、面談前に期待値が上がるのは怖い。
テスト前に先生から「期待していますね」と言われるようなものだ。
しかもその先生が、笑顔で逃げ道を塞ぐ公爵夫人。
怖い。
朝、俺は自室で制服に着替えながら、鏡の中の自分を見た。
目の下に隈はない。
たぶん大丈夫。
ただ、顔が少し硬い。
ライズが襟元を整えながら言った。
「若様、本日は昨日より緊張なさっているように見えます」
「分かるか?」
「はい」
「昨日、言ったからな」
「存じております」
「なぜ知っている」
「旦那様より」
「父上……」
もう家の中でも共有済みだ。
いや、俺も父上に言った。
言ったけど、ライズまで把握しているとは。
「若様」
「なんだ」
「昨日の御言葉は、大変よろしかったかと」
「ライズまで評価するな」
「率直で、若様らしく、アマリリス様にも伝わる内容でございました」
「聞いていたみたいに言うな」
「旦那様から概略を」
「概略があるんだ」
「はい」
もう嫌だ。
俺の言葉が報告書みたいになっている。
「そして、本日の対策でございますが」
「また対策?」
「昨日の御言葉により、アマリリス様が本日も感情を揺らされる可能性がございます」
「あるだろうな」
「ハンカチ六枚」
「増えた」
「うち一枚は、昨日のお言葉を思い出して泣かれた場合用」
「用途分けしないでくれ」
「もう一枚は、セレスティア様関連で泣かれた場合用」
「同じハンカチでいいだろ」
「気持ちの整理がしやすいかと」
「ハンカチで整理するな」
ライズは真顔だった。
しかし、言っている内容はおかしい。
最近、俺の周囲ではおかしいことが真顔で進んでいく。
朝食の席に行くと、父上と母上が待っていた。
父上は俺を見るなり、にやりと笑った。
「おはよう、リリス嬢の大切な婚約者」
「父上」
「いい言葉だったそうだな」
「やめてください」
「ガロウが泣くのも分かる」
「公爵様まで泣かせてしまいました」
「気にするな。あいつは泣く」
「断言」
母上は楽しそうに微笑んでいる。
「アル、昨日はよく言えたわね」
「……はい」
「自分の気持ちを言葉にするのは難しいものよ」
「そうですね」
「でも、リリス様にはきっと伝わったわ」
「泣いていました」
「嬉しかったのね」
「はい」
母上は柔らかく頷いた。
「それでいいのよ。セレスティア様にも、同じように言えばいいわ」
「同じように」
「ええ。完璧な答えではなく、あなたの言葉で」
やはり、それが大事なのだろう。
皆が同じことを言う。
取り繕うな。
正直に。
誠実に。
自分の言葉で。
分かっている。
分かっているが、緊張はする。
「父上」
「なんだ?」
「セレスティア夫人に会った時、父上は緊張しましたか?」
「した」
即答だった。
「したんですか」
「ああ。ガロウの婚約者として初めて紹介された時だな。あいつの横に立って微笑んでいた」
「はい」
「それはもう、美しくて穏やかで」
「はい」
「一言目に『アスフ様、夫がいつもお世話になっております』と言われた」
「普通ですね」
「二言目に『無茶をさせすぎないでくださいませね』と言われた」
「圧がありますね」
「三言目に『もちろん、止められない時は私に教えてくださいませ』と言われた」
「管理体制ができた」
「学生時代の俺は思った。ああ、ガロウは一生勝てないと」
「なるほど」
納得しかない。
ガロウ公爵が勝てないのも無理はない。
朝食後、俺は学園へ向かった。
馬車の中、昨日の中庭での会話を思い出す。
リリスの涙。
俺の袖をそっと摘んだ指。
近づいてもよいかと尋ねた声。
そして、笑顔。
胸の奥がじわりと温かくなる。
同時に、照れが込み上げる。
今日はどんな顔で会えばいいのか。
いつも通り。
そう思う。
でも、昨日あれだけのことを言った後で、いつも通りにできるのか?
学園の正門前。
フルーラ家の馬車が見えた。
リリスはいつもの場所に立っている。
今日も制服姿。
ブルーローズの髪飾り。
そして、俺を見つけた瞬間。
彼女の顔が真っ赤になった。
え。
早い。
まだ挨拶もしていない。
リリスは一歩踏み出す。
止まる。
深呼吸。
ゆっくり歩いてくる。
ただし、いつもよりぎこちない。
「ア、アル、ご機嫌よう」
「ご機嫌よう、リリス」
俺も少し声が硬くなった。
リリスは両手を胸の前で握っている。
目がすでに潤んでいる。
「今日も走りませんでした」
「はい。よくできていました」
「……昨日の」
「はい」
「昨日の言葉を思い出してしまって」
「はい」
「朝から、泣きそうです……小声版です」
「ですよね」
俺は素直に頷いた。
ミラが後ろで当然のようにハンカチを構えている。
リリスは深呼吸した。
「大丈夫です。正門前なので」
「無理はしなくていいですよ」
「でも、朝から泣くと、お母様に報告されてしまいます」
「もうたぶん報告されます」
「……そうですね」
リリスは少し遠い目をした。
自分の家族の情報網を理解し始めている。
「アル」
「はい」
「昨日の言葉を、何度も思い出してしまいました」
「……はい」
「近すぎて大変な時も、その近さごと大切にしたい、と」
「復唱しないでください」
「ご、ごめんなさい」
「照れます」
「私も照れます」
「ではなぜ復唱したのですか」
「嬉しくて」
直球。
朝から強い。
今度は俺の方が照れる。
リリスは顔を赤くしながら、小さく笑った。
「アルが照れました」
「照れます」
「嬉しいです」
「もう全部嬉しいですね」
「はい」
ミラが静かに言った。
「お嬢様、登校中です」
「はい、ミラ」
ミラ、強い。
リリスは姿勢を整えた。
「行きましょう、アル」
「はい」
廊下を歩く距離は、いつもより少し近い。
だが、今日は仕方ない気がした。
昨日の言葉の余韻。
セレスティア夫人との面談前の緊張。
その両方がある。
リリスは時々俺を見そうになって、前を向く。
俺も時々リリスを見そうになって、前を向く。
何だこれ。
婚約者同士なのに、初々しいにもほどがある。
教室へ向かう途中、ユリウスとエレナ嬢が合流した。
ユリウスは俺たちを見るなり、すぐに察した顔をした。
「おはよう。昨日の余韻がすごいね」
「開口一番それですか」
「だって二人とも顔が赤い」
「……」
否定できない。
エレナ嬢もにこにこしている。
「アマリリス様、おはようございます」
「ご、ご機嫌よう、エレナ様」
「昨日、アルフレッド様から素敵なお言葉をいただいたそうですわね」
「エレナ様まで!」
リリスが真っ赤になる。
「お兄様から聞きましたか?」
「姉から聞きました」
「お姉様から?」
「上級生の間でも少しだけ」
「上級生にまで!?」
俺の声が出かけた。
廊下なので抑えた。
危ない。
ユリウスが肩を震わせている。
「レオナルド先輩が、昨日すごく真面目な顔で『及第点以上だ』と言っていたらしくて」
「それだけで広まったんですか」
「『何がですか』と聞かれて、『妹の婚約者の発言だ』と」
「言ったのか、先輩」
「そこからね」
「もう嫌だ」
リリスは顔を両手で覆った。
「私のせいで、アルの言葉が」
「リリスのせいではありません」
「でも」
「主にレオナルド先輩のせいです」
「お兄様……」
エレナ嬢が優しく言う。
「でも、皆さま悪く受け取ってはいませんわ。むしろ、誠実な婚約者様だと」
「そうですか?」
「ええ」
ユリウスも頷く。
「少なくとも、アルフレッドの評価は上がっていると思うよ」
「評価」
「フルーラ公爵令嬢の婚約者として、逃げずに向き合っているってね」
「逃げ道がないからです」
「セレスティア様の手紙みたいだ」
「やめてください」
リリスがくすっと笑った。
少し緊張が解ける。
一時間目は魔法基礎だった。
今日は二人一組で、微弱な魔力を同じ速度で増減させる練習をするらしい。
来た。
相手と合わせる訓練。
信頼関係。
嫌な予感しかしない。
教師が組み合わせを発表していく。
俺はユリウスと組むことになった。
リリスはエレナ嬢。
よかった。
いや、少し残念か?
またこれだ。
俺の心も面倒になってきた。
ユリウスが横で笑っている。
「残念だった?」
「何がですか」
「アマリリス様と組めなくて」
「授業の安全面を考えれば適切です」
「答えが硬い」
「察してください」
「察した」
リリスはエレナ嬢と向かい合い、手のひらに魔力の光を灯した。
青白い光。
エレナ嬢の光は淡い緑。
二人は呼吸を合わせる。
リリスの光は最初少し揺れたが、すぐ安定した。
昨日より落ち着いている。
俺もユリウスと練習する。
ユリウスの魔力は軽やかで、風のように変化が早い。
合わせるのが少し難しい。
「ユリウス、速い」
「ごめん。癖で」
「もう少しゆっくり」
「了解」
何度か試すうちに、少しずつ合ってくる。
これは意外と面白い。
相手の呼吸を読む。
魔力の流れを感じる。
剣術の間合いにも似ている。
授業の終盤、教師が言った。
「では、希望者は組み合わせを変えて試しても構いません」
リリスが反応した。
俺も反応した。
目が合う。
空気が止まる。
ユリウスがにやりと笑う。
「行ってきたら?」
「何を」
「アマリリス様と」
「いや、でも」
リリスはエレナ嬢に何か言われ、こちらへ視線を向けた。
頬が赤い。
だが、逃げてはいない。
「アル」
「はい」
「もし、よろしければ」
「……はい」
「一度だけ、ご一緒してもよろしいでしょうか」
教室の何人かが反応した。
教師もこちらを見ている。
俺は息を整えた。
「はい。お願いします」
リリスの顔が明るくなる。
ただし、すぐに真剣な顔になった。
「授業ですので」
「はい」
「落ち着きます」
「俺も落ち着きます」
俺たちは向かい合った。
距離は腕を伸ばせば届く程度。
近い。
だが、授業として必要な距離。
リリスの手のひらに青白い光が灯る。
俺も淡い白の光を灯す。
「では、ゆっくり増やして、ゆっくり戻してください」
教師の声。
俺はリリスの呼吸を見る。
彼女も俺を見ている。
目が合う。
リリスの光が少し強くなる。
「リリス」
「はい」
「深呼吸」
「はい」
彼女は息を吸い、吐く。
光が落ち着く。
俺も自分の光を合わせる。
少しずつ、二つの光の強さが揃っていく。
不思議な感覚だった。
言葉は少ない。
ただ、相手の呼吸と魔力の揺れを感じる。
リリスの緊張。
嬉しさ。
不安。
それが光に少し出る。
俺もたぶん、照れが出ている。
でも、だんだん合ってきた。
二つの光が同じように強くなり、同じように弱くなる。
教師が静かに頷いた。
「よろしい。少し感情の揺れはありますが、互いに合わせようとしていますね」
「はい」
リリスの声が小さい。
俺も頷く。
「ここで大切なのは、相手を支配しようとしないことです。自分を消しすぎる必要もありません。互いに調整すること」
その言葉が、妙に胸に残った。
距離感と同じだ。
どちらかが一方的に合わせるのではない。
二人で調整する。
俺とリリスに必要なこと。
授業が終わると、リリスは少し放心していた。
「リリス?」
「はい」
「大丈夫ですか?」
「今の訓練、とても」
「はい」
「嬉しかったです」
「俺も、良い練習になりました」
「アルと、合わせられました」
「はい」
「泣きそうです……小声版です」
「でしょうね」
俺はハンカチを出した。
リリスは受け取り、目元を押さえた。
涙は一粒。
教室はもう慣れた空気だ。
教師も何も言わず、次の準備をしている。
ユリウスが小声で言った。
「今の、かなり良かったね」
「訓練が?」
「二人の空気が」
「やめてください」
「いや、本当に」
エレナ嬢も微笑む。
「アマリリス様、とても落ち着いておられましたわ」
「ありがとうございます」
「アルフレッド様と一緒だったからでしょうか」
「……はい」
リリスは素直に頷いた。
俺は顔を逸らした。
二時間目は歴史。
内容は貴族間の婚姻による同盟関係について。
また刺さる。
今日の授業、狙っているのか。
教師が言う。
「婚約や婚姻は、家同士の結びつきであると同時に、当人同士の信頼がなければ長く続きません」
俺とリリスが反応した。
ユリウスが笑いを堪えた。
エレナ嬢が微笑んだ。
もう完全に見守られている。
昼休み。
食堂では、朝の魔法訓練の話になった。
ユリウスが言う。
「アルフレッドとアマリリス様、魔力合わせが上手かったね」
「最初は揺れました」
リリスが正直に言う。
「でも、アルが深呼吸と言ってくださったので」
「落ち着けましたか?」
「はい」
「それはよかったです」
「アルの声は、落ち着きます」
言った。
食堂で。
俺は少し固まった。
周囲の数人が反応した。
リリスも自分で言ってから赤くなる。
「す、すみません」
「謝らなくていいですが」
「食堂でした」
「はい」
「泣きそうです……小声版です」
「発動理由が複合していますね」
エレナ嬢がハンカチを用意する。
ユリウスが水を差し出す。
俺が深呼吸を促す。
流れるような対応だった。
「もう本当に手順化しているね」
ユリウスが言う。
「手順化したくなかった」
「でも助かるだろう?」
「助かります」
そこは認める。
リリスも落ち着きやすくなっている。
午後の自由研究準備では、リリスが資料を整理していた。
俺も領地経営の本から必要な部分を書き写す。
すると、リリスが小さく言った。
「アル」
「はい」
「自由研究に、今日の魔力合わせのことも少し入れてよいでしょうか」
「礼法の感情表現に?」
「はい。感情が動いた時、相手の声で落ち着くこともあると」
「なるほど」
「ただ、アルの名前は伏せます」
「ぜひ伏せてください」
「婚約者Aにします」
「伏せきれてない」
「では、信頼できる相手」
「それならいいと思います」
リリスは真剣にメモを取った。
研究が少しずつ形になっている。
自分の経験を、ちゃんと学びにしている。
放課後、廊下でレオナルド先輩に会った。
いや、会ったというより、待っていた。
もう自然に待つのをやめてほしい。
「リリス」
「お兄様」
「今日、魔力合わせをしたと聞いた」
「早いですね!」
俺は思わず言った。
レオナルド先輩は涼しい顔だ。
「上級生の耳は早い」
「便利すぎませんか」
「リリス、安定していたかい?」
「はい。アルがいてくださったので」
レオナルド先輩の視線が俺へ向く。
「アルフレッド」
「はい」
「妹の魔力を乱したか?」
「最初は少し」
「乱したのか」
「でも落ち着かせました」
「ならよし」
「判断が早い」
リリスが少し慌てる。
「お兄様、アルは悪くありません」
「分かっているよ」
「本当ですか?」
「半分」
「お兄様」
「冗談だ」
レオナルド先輩が少し笑う。
最近、この人も少し砕けてきた気がする。
いや、俺をからかう方向で。
「それと」
レオナルド先輩は声を少し落とした。
「母上との面談まで二日だ」
「はい」
「準備は?」
「一応」
「取り繕うな」
「何度も聞きました」
「それだけ大切だ」
「はい」
「母上は、君の言葉そのものより、言葉を選ぶ時の顔を見る」
「怖い情報を増やさないでください」
「大丈夫だ。リリスが隣にいる」
「それは安心材料です」
リリスが少し嬉しそうにする。
「アル、私がいると安心ですか?」
「はい」
「……小声版です」
「廊下です」
「耐えます」
レオナルド先輩はそれを見て、少し目を細めた。
「小声版、安定運用されているな」
「兄まで」
「よいことだ」
「よいことですか」
「リリスが自分の状態を伝えられるのは、よいことだ」
それは、その通りだ。
俺は頷いた。
「そうですね」
正門で別れる時、リリスは今日も少し名残惜しそうだった。
「アル」
「はい」
「今日は、魔力合わせができて嬉しかったです」
「俺もです」
「また、できるでしょうか」
「授業で機会があれば」
「はい」
「今度はもっと落ち着いてできると思います」
「はい。アルとなら」
「……」
「アル?」
「今のは俺が照れました」
「嬉しいです」
リリスは柔らかく笑った。
「三日後、ではなく、あと二日ですね」
「そうですね」
「お母様のお茶会、私も緊張します」
「一緒ですね」
「はい。一緒です」
リリスはそれを大切そうに繰り返した。
「一緒」
「はい」
「……小声版です」
「今日は何回目ですかね」
「数えないでください」
「はい」
俺はハンカチを渡した。
「今日の宝物名は?」
聞いてしまった。
最近、これも恒例になりつつある。
リリスは少し考えた。
「魔力が合った日の宝物です」
「長い」
「大切です」
「はい」
「また明日、アル」
「また明日、リリス」
馬車を見送る。
今日は、昨日より落ち着いていた。
照れは多かった。
小声版も多かった。
でも、不安だけではない一日だった。
その夜。
屋敷に帰ると、父上が待っていた。
「今日はどうだった?」
「魔力合わせをしました」
「リリス嬢と?」
「少しだけ」
「ほう」
「父上、その顔やめてください」
「青春だな」
「授業です」
「授業でも青春はある」
「やめてください」
そこへ、フルーラ家から書状が届いた。
一通目、ガロウ公爵。
『娘が「アルと魔力を合わせました」と報告した。魔力とは何だ。授業か?授業だな?説明しろ。 ガロウ』
二通目、レオナルド先輩。
『魔力合わせについては授業内の正式訓練と確認済み。父上には説明したが、まだ少し警戒している。母上は微笑んでいた。あと二日だ。 レオナルド』
三通目、セレスティア夫人。
『アルフレッド様。娘が今日はとても穏やかな顔で帰ってまいりました。あなたと魔力を合わせる練習をしたと、少し照れながら話してくれました。二日後のお茶会では、その時のお話も少し伺えるかしら。楽しみにしております。逃げ道は、変わらずございません。 セレスティア』
俺は三通を読み、静かに天井を見上げた。
また期待値が上がった。
魔力合わせまで話題に入った。
逃げ道も、変わらずない。
父上は腹を抱えて笑った。
母上は楽しそうに紅茶を飲んでいた。
リーマスは「話題が豊富でございますね」と頷いた。
ライズは親指を立てた。
俺は深く息を吸い、今日も心の底から叫んだ。
公爵令嬢様!!
魔力合わせまで報告されて!!
面談の話題が増えすぎです!!




