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閑話『灰色の残響』
じっとりとした空気
霧雨が降る
灰色の街
小柄な少年が人混みを避けるように進む
パーカーから覗く髪に微粒の水がついていた。
古い本がたくさん置かれた本屋
吸い込まれるように
少年は消える
「いらっしゃい」
店主が声をかける
少年は軽く頭を下げ、
気配を消すかのように店の隅へ移動する
手にしているのは
難解な物理学書
紙の香りに包まれる空間
店主と少年の呼吸音
店主は何も言わずに少年を受け入れる
少年の手は止まらない。
静かに捲られる頁。
その手つきはとても優しい
「お茶でもどうぞ」
手を止め
小さな声で
「あ…ありがとう、ございます」
少し幼さの残る声だった
店主は少し驚く
手にしている本には似合わない
「ごゆっくり」
それから…
時々、その少年は現れた
いつもフードを深く被って
気配を消して
意識しないといることさえ忘れそうになる
それなのに
店主の記憶には残っている
小さな感謝の声




