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—鴉の夜—  作者: こんぺいとう
第4章 家族の証
39/44

解析と嫌悪

EP21


聞こえるのは

自身の呼吸と布ずれの音


一人取り残された部屋

雲の隙間からこぼれたオレンジの光が

部屋を満たす


ブランケットと腕の隙間へ

視線を動かす


サイドテーブルが映る

無くなったマグカップ


持ち去られたそれ


……まだ少し残ってた……


残りのココア

計算される

結果


……龍也、それを見てはだめ……

だめなんだよ……


目をつぶる

ブランケットに押し付ける頭


……見ないで

俺……ずっと………


拳を握りしめた

震える


演算が止まらない……


左耳のピアスに触れる

冷たいそれ


……俺は、みんなとは、普通とは違う……

そんなの、わかってた……


握りしめる

届かない祈り


昏い

重い


「……ごめん……ごめんなさい……」


零れた涙

溶ける声

一定のリズム



……嫌だ



――



「……香太 お前、これ、いつリクにやった?取りに行ったとき、席外したな?」


差し出されたのは

リクのベッドのサイドテーブルにあったマグカップ


「ほんの数分な。準備はしてあったから、すぐに戻った」


「……その時か」


「何が?……まさか」


香太は目を見開く


「……そうだよ。まだあいつが、隠してる何か。……あの波形が綺麗になった理由がな」


龍也の視線が、手元のマグカップへ落ちる

踵を返す


「茘枝《れいし》、春《しゅん》さんに後でちゃんと食べますって伝えてくれ」


「……わかった」



――



実験台に置かれたマグカップ

質量分析計の測定音


「リク……お前はどこにいるんだ……」


青白い光

映し出される


データベースに

一致しないスペクトル


「どこまで一人で抱えて、隠してるんだよ」


握りしめた手

唇を噛む


席を離れ

資料棚に向かう


棚に置かれた

大量の書籍、雑誌、文献


一冊、また一冊

手に取り

照合を重ねる


途中で聞こえたノック音

置かれた優しい香り


響くクリック音と紙の音


見えてきた解《こたえ》

極限の調合


きつく寄せられる眉


「……どうして」


掠れ、震える声

握りしめた拳、掌に感じる痛み


「……クソッ」


冷たくなった夕食

積み上げられた資料


開かれた頁を

力無く殴る



時を刻む音《リズム》が部屋に響いていた






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