解析と嫌悪
EP21
聞こえるのは
自身の呼吸と布ずれの音
一人取り残された部屋
雲の隙間からこぼれたオレンジの光が
部屋を満たす
ブランケットと腕の隙間へ
視線を動かす
サイドテーブルが映る
無くなったマグカップ
持ち去られたそれ
……まだ少し残ってた……
残りのココア
計算される
結果
……龍也、それを見てはだめ……
だめなんだよ……
目をつぶる
ブランケットに押し付ける頭
……見ないで
俺……ずっと………
拳を握りしめた
震える
演算が止まらない……
左耳のピアスに触れる
冷たいそれ
……俺は、みんなとは、普通とは違う……
そんなの、わかってた……
握りしめる
届かない祈り
昏い
重い
「……ごめん……ごめんなさい……」
零れた涙
溶ける声
一定のリズム
……嫌だ
――
「……香太 お前、これ、いつリクにやった?取りに行ったとき、席外したな?」
差し出されたのは
リクのベッドのサイドテーブルにあったマグカップ
「ほんの数分な。準備はしてあったから、すぐに戻った」
「……その時か」
「何が?……まさか」
香太は目を見開く
「……そうだよ。まだあいつが、隠してる何か。……あの波形が綺麗になった理由がな」
龍也の視線が、手元のマグカップへ落ちる
踵を返す
「茘枝、春さんに後でちゃんと食べますって伝えてくれ」
「……わかった」
――
実験台に置かれたマグカップ
質量分析計の測定音
「リク……お前はどこにいるんだ……」
青白い光
映し出される
データベースに
一致しないスペクトル
「どこまで一人で抱えて、隠してるんだよ」
握りしめた手
唇を噛む
席を離れ
資料棚に向かう
棚に置かれた
大量の書籍、雑誌、文献
一冊、また一冊
手に取り
照合を重ねる
途中で聞こえたノック音
置かれた優しい香り
響くクリック音と紙の音
見えてきた解
極限の調合
きつく寄せられる眉
「……どうして」
掠れ、震える声
握りしめた拳、掌に感じる痛み
「……クソッ」
冷たくなった夕食
積み上げられた資料
開かれた頁を
力無く殴る
時を刻む音が部屋に響いていた




