閑話『わちゃわちゃ、のち甘い静寂』
「リクー!今日は事務所内の片付けの日だぞー!」
片付けの時間になったのにアッシュブロンドの髪だけが見当たらない。
「寝てるのか?」
キッチンを見ながら茘枝は言う
「いや、コップは無くなってたから起きてるはずだ」
すると背後から声がかかる
「……いるよ」
三人の肩が跳ねる
「わぁぁ!!」
「……っ!?」
「!!」
その姿を見て、不満そうな顔をするリク
「……みんな失礼すぎ」
「音もなく来るなって!」
「……?……ちゃんと普通に来たよ?」
「普通が静かすぎるんだよ、お前は」
「リク、流石に心臓に悪い」
不服そうに、少し首を傾け
「……なんか、ごめん?」
――
「香太、この段ボールもってけるか?」
「おう、いけるぞ!」
「茘枝、後でその紐取って」
「これか?……ほら」
「ありがと」
「……ねぇ、俺、いる?」
雑巾を持ったまま
部屋の隅で作業をする三人に声をかける
「そこの雑巾がけは終わったのか?」
「終わった……」
「あっちは?」
「終わった。……段ボールぐらい俺も持てるよ?」
「おい、リク、こっちの紐持て」
「……」
リクには決して力仕事が振られない
これは三人の中の、事務所内の暗黙の了解
朝の顔色があまり良くない
本人は不服そうだが
三人の兄貴分たちは素知らぬ顔
「……そんなに力仕事できなさそうかな…」
「はは!リク、お前は仕事が丁寧だから、力仕事より雑巾がけのほうが向いてんだよ!」
「……香太よりは確かに丁寧かもしれない…」
「……。そういうことにしておいてやる!」
「墓穴掘ってやがる」
「ははは!香太は力仕事のほうが向いてるからな、いいじゃねぇか」
この日、事務所の一角が綺麗になった。
――
「あら、お掃除おわり?ありがとう、お疲れ様」
リビングに戻ると、書類を見ていた春がいた
「春さん、あそこの棚、そろそろ替えないと崩れる」
「だいぶヤバかったよな」
香太と龍也が春に報告を上げていく
「……そう。じゃあ、茘枝、発注しておいて」
「了解。いいもの見繕って、入れ替えておきます」
「お願いね。……時間も丁度いいし、おやつにでもしましょうか?」
「お!丁度、小腹空いてたんだ!やったな!リク」
香太がリクの肩を叩く
「……痛いよ」
「すまん、すまん!」
「じゃあ、俺、お茶淹れる」
「お願いね」
各々、おやつの準備を始める。
「……」
――
甘い香りがリビングを包み込む
「今日はスイートポテト。どうかしら?」
「お!うまそ!」
「……あら?リクは?」
「さっきまでいたけど…?」
「トイレか?」
「春さん、ここにいる」
「……あら。」
「あー…」
「静かにすっか」
ソファーの隅
抱かれたクッション
アッシュブロンドが一定のリズムで揺れていた
――
薄暗いリビングのソファー
アッシュブロンドの髪が動く
「……」
そのまま
また止まる
気配を探る。
一つ。
「リク、起きたの?」
「……ん」
「無理しなくていいわ。……スイートポテトあるけど、食べる?」
「……ん」
「私以外誰もいないわ。大丈夫」
「……」
「動けるようになってからでいいわ。準備するわね」
「……ありがと、春さん」
「ええ。どういたしまして」




