砂上の楼閣
EP19
薄墨色の光が差し込む廊下
白灰色の煙が漂う
画面の上
動きを止めた赤い点
ボトルグリーンの瞳が細められる
画面から視線を外す
前方
二人と茘枝の姿を捉える
『……リク、香太、お前ら……』
インカム越しに聞こえる
冷え切った龍也の声
『……龍也、香太は……悪くない……それより、茘枝……その煙に近づかないで……ね』
上がった息
足から力が抜ける
「……ぁ」
姿勢が崩れる
「リク!」
『――おい!』
香太の手が伸び
抱き止める
「ははは……急に動いたから……力が、抜けちゃった」
フードの下
眉を寄せ
笑う
「……心配させるんじゃねぇ……」
微かに力がこもる香太の手
感じる
「……ごめん……大丈夫だから」
「……なんでお前らがここにいるんだ……?」
背後から落ちる声
「リク、腕かせ」
腕を取られ、手首に龍也の指が触れる
「……整ってる……だが、これ以上はダメだ。動くんじゃねぇぞ」
その時
『龍也、香太、リク。あなたたち、執務室へ下がりなさい。話はそれからよ』
春の声
『了解』
――
執務室のソファー
凭れる華奢な背
満ちた薄鈍の光
占める静寂
目を閉じる
感じる整ったリズム
ゆっくり息を吸い
吐く
明け放たれたままの扉
揺れるブロンドの髪
自身の机に向かう春
「……さぁ、リク。どうしてあなたはここにいるのかしら?」
机に手をつき
振り返る
ブルーグリーンの瞳がリクを捉えた
「……みんなを、助けたくて……」
静かに落ちる声
見上げるフォグ・グレーの瞳
「……助けたくて、で動いていい身体してねぇんだよ」
龍也の冷徹な声が響く
正面のソファー
「それに、あの煙幕は何だ?あれ、即効性のある麻痺作用があるな?」
「あれは……」
「お前が様々な本を読んでいたのも、その内容を正確に覚えていることも。それから、それを生かして任務の薬を作っていたことも知ってる」
思い出すのは、分厚い専門書を静かに読むリクの姿
「……だが、どんな本にもあんな使い方書いてなかっただろ」
鋭い眼光
静かに受け取る
「……書いてなかったよ。読んだどの本にも。書いてあるのは、“正しい使い方”だけ」
「じゃあ、どこで?!」
ちらりと春を見る
振り返る龍也
「……春さん……?」
「……私は少し助言をしてあげただけよ?何か使えないかって聞かれたから、ね」
「……そう。春さんは“任務でどう使えるか”を少し教えてくれたんだ」
ほんの一瞬。
春と目が合う
僅かに揺れる視界
「……ひとまず、部屋に戻れ。……話はその後だ」




