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—鴉の夜—  作者: こんぺいとう
第4章 家族の証
35/43

煙と演算

EP18


響く……

低音


飛び散る防弾硝子

爆風

靡く赤髪


「……いらっしゃい。随分と乱暴なお客様だな」


薄暗い廊下

煌めく白銀


「……えぇ、マナーがなっていないわね」


開け放たれた

執務室の扉

ブロンドの髪と紫煙が揺れる


「……チッ、うっせぇ。依頼なら静かに来いっての……」


机の影

止まらない指



影が動く

抜かれた刃


「悪いがマナーがなってない客はお断りなんだ。」


「?!」


首筋に当たる白銀

衝撃が響く

霞む視界に映る赤い糸

崩れる襲撃者


「お引き取り願おうか」


荷物のように廊下に引きずり出す

影の向こう

息を呑む音


茘枝《れいし》はそのまま廊下を突き進む


『右……』


――タンッ


響く銃声


右足を半歩内側に


「おっと、あぶねぇなぁ……」


回る


――トッ


背後から聞こえる静かな銃声


『当たらないようにね?』


インカムから聞こえる春《しゅん》の声


『……当てないでください』


『急な動きは回避できないわ』


息を一つ吐く

ひらりと手を挙げ

一つ振る


『……まぁ、なんかあったら龍也《たつや》に助けてもらいます』


『……仕事増やすな』


嫌そうな声が落ちた


――トッ


『ふふふ……龍也、文句はダメよ?』


春の愛銃から立ち上る硝煙

天井の排気ダクト

落ちるモノ


『……。茘枝、正面、右二。――行け』


『了解』


踏み込み

地を蹴る


「勝手に部屋の扉を開けるんじゃねぇ」


瞬く金属の光

狙う肩口

突く


「……ぅぁぁぁあ!!」


引き抜きながら

蹴り飛ばす

半回転


「やめろぉぉ!――っ!!」


舞う赤い花弁


呻き

もがく


「うるせぇ……」


――タンッ


切り替わる画面

事務所後方


『 ! ――春さん、裏!』



――



深く被ったフード

隠れるアッシュブロンドの髪


「……香太、いい?」


溶ける声


事務所の一階裏口

階段の陰

二人の姿


背後から聞こえる

銃声


「あぁ。……終わったら、説教だからな」


カシャ……


香太が愛銃のスライドを引く


「……わかった。龍也たちにも怒られちゃうね」


「それは俺も一緒だ」


……ごめんね


一つ瞬きをする

冷え込むフォグ・グレーの瞳


「……来るよ」


「あぁ……」


――パチン


指が鳴る


落下する

ダクトの金属格子


投げられた

『夢誘いの胞子(スポーレ・ダスト)』


落ちる撃鉄

跳ね上がる香太の銃


雪崩込む

侵入者


立ち昇る

白灰の霧


「……!?なん……だ……?」


「前が、見え……!」


身体の力が抜け

落ちる


無力化される

黒ずくめの敵


「……」


リクは端末を開く

映し出された事務所と周辺の地図

赤と緑の点


「……クリア」


「了解……戻るぞ」


香太は重なり合う敵を一瞥し

リクの肩に手を伸ばす


「まだ、終わってないよ」


さっと躱す

そのまま身を翻し

銃声のする方へ

駆け出す


「……待て!リク!」


舌打ちをし

華奢な背を追う



――



『裏、私が行くわ。茘枝、残りいけるわね?』


『あぁ、問題ねぇ』


春は背を向け

一歩踏み出した


『じゃあ、怪我しないように』


その時


『春さん、龍也、そこから動かないで。茘枝、五歩後方へ』


インカムに落ちる静かな声

二つの影が春の横を駆け抜ける

投げられる『夢誘いの胞子(スポーレ・ダスト)』


『――リク?!なんでここにいるの?!』


『香太……三、二……今』


『おう!』


……タンッ


噴き上がる白灰

陰から崩れ現れる影


「……間に合った……」






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