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閑話 『紙の音、綿の海』
薄暗い室内
一筋の黄白色
煌めく塵
規則正しく動く毛布
布ずれの音だけが響く
扉の向こう
足音がする
通り過ぎる
静寂が戻る
毛布から覗いた指先
微かに動く
散ったアッシュブロンドの髪
「………」
僅かに持ち上がる睫毛
すぐに下る
引き上げられる毛布
隠れる髪
手だけがシーツの上を彷徨う
一冊の本に指先が当たる
引きずり込まれる本
そして……
穏やかな寝息が部屋に響く
――
白い一筋の光
積み上げられた本を照らす
毛布が動き
本の山の一角が崩れる
「……ん」
毛布から覗いたフォグ・グレーの瞳
ベッドに散らばる本を見る
「……あー……」
ゆるりと体を起こし
乱れた髪を少し掻き上げる
「……あ」
一冊の本に手を伸ばす
「ここにあったのか……」
分厚い物理学書
枕にもたれ掛かり
頁を開く
紙の音だけが響く
――
扉の向こう
騒がしい音
止まる
響くノック音
「リクー、起きてるかー?」
返事はない。
「……おい、開けるぞ」
「起きてる、入ってこないで」
間髪入れずに返事をする
「はじめから答えてればいいだろ」
「……」
「まったく。朝飯ぐらい食べろよー」
扉の前から気配が消えた
視線を戻す
頁を捲る指
止まる
「……お腹すいた」
柔らかい綿の色が包む空間
シーツの上の読みかけの本
乱雑に積み上げられた本の山
閉じた扉の向こう側
漂う甘い香り




