閑話『何もない午後』
何もない午後
事務所のリビングでくつろぐ2つの影
時を刻む時計の秒針
紙を捲る音
「……暇だ」
机に散らばる黒髪
呟きが落ちる
フォグ・グレーの瞳が微かに動く
しかし、すぐに手元の本に戻った
静寂が戻る
光に煌めく塵
リビングの扉が開く
白衣を着た龍也がリビングの二人を見る
「おい、暇人ども。ちょっと医務室に来い」
それだけ言うと、部屋を出て行った。
「……本、読んでたのに」
眉を寄せる
「はは!リク、たぶん頭しか見えてなかったんだろ」
こちらを見る笑顔
「……」
一つ息をつく。
本を静かに閉じる
「さて、龍也の機嫌が悪くならないうちに行こうぜ」
ほぼ同時に立ち上がる
――
「……来たか」
医務室の扉を開ける
龍也の声
「急な呼び出しだったからな。急ぎか?」
室内に漂う珈琲と薬品の香り
白い光
ひらりと翻る白衣の裾
「いや?別に急ぎじゃない。」
ボトルグリーンの瞳がこちらを見る
「急ぎじゃないが……。香太、怪我の具合見せろ」
マグカップを置き
机のノートを開く
「確認がしたかったならそう言えばいいだろ?それに、俺だけでよかったんじゃ…」
隣の相棒をちらりと見る。
静かな瞳
「リクにはこれを渡したくてな」
龍也が手に取ったのは医学雑誌
アッシュブロンドの髪が僅かに揺れる
「読み終わったから、渡そうと思ってな」
差出された雑誌
受け取る手
「……ありがと」
弾む声
握りしめる雑誌
微かに左右に揺れる髪
「読んでいい?」
「そこの椅子でも使え」
「……うん」
静かに移動し
雑誌を読み始める
丁寧に捲られる頁
「本当に本の虫だな」
二人はリクを見る
声は届いていない
フッと肩を揺らす
「いいじゃねぇか。じゃあ、香太、診るぞ」
「おう。よろしく」
――
「よし。終わりだ。ついでに二人ともバイタルログ出してけ」
「あとでもよくないか?」
服を着る
リクを見る
声は届いていない
「来たついでだ。問題ないだろ?お前らの健康管理をしてるんだから、文句言うな」
なんでも無いように言う
龍也はマグカップに手を伸ばし
珈琲を一口含む
「……わかったよ。リク、聞いてるかー?」
雑誌から外れない瞳
紙を触る指先
「……完全に本の中だな」
「あぁ。……当分戻ってこないな」
二人は顔を見合わせて
小さく肩を揺らした




