静かなる共鳴(深夜の電子戦)
第二章 EP7
1. 守護者の交代
「香太、リク、ちょっと待て」
出発直前。
伸ばした手が止まる
顔をあげる
「龍也?どうした?」
声の主の方を見る。
「香太、お前、今日は強制休暇だ。リクは俺が預かる」
龍也のダークブラウンの髪が揺れる。
少し気怠そうな瞳。
「……は?いきなりなんだよ」
「春さんからだよ。俺に聞くな。……それにお前、まだ怪我治ってないんだろ?」
左腕に視線を感じる。
「……」
眉をひそめる
所長の指示
――どうしようもできない
隣の相棒に視線を落とす。
静かだった。
ただ、静かに龍也を見ていた。
「リク、異論は?」
フォグ・グレーの瞳が微かに動く。
「……指示ならきく。でも……非効率だよ」
少し不満が滲んだ声。
「非効率、か。……まぁ、いいから来い」
こちらを見る、静かな顔。
瞳の奥に宿る困惑と不満
「リクを頼んだ」
「おう、任せろ。……んじゃ、行ってくる」
2つの背中が扉の向こうへ消えた。
扉を見つめる
「……」
2. 深夜の電子海、二人の「宇宙語」
青緑の光が満ちる空間
明滅する赤と黄
排熱ファンの駆動音
耳に残る不協和音
机の闇に二つの影
瞳に映る
青と赤の数字
優雅に踊る指先
「第三層、完了」
静かに落ちる声
止まらない手
「了解。フィルタリング回避した」
低い声が続く
画面を叩く曇った音
二つのフードから零れる
アッシュブロンドとダークブラウン
影に溶けるように座り込み
二人は次々と情報を捌いていく
「次の階層、突入。……龍也、お願い」
声だけ。
動かない視線。
フォグ・グレーの瞳が青に赤に色を変える。
「あぁ。領域確保、行けるか?」
ボトルグリーンの瞳も画面から動かない。
声と曇った音だけが溶ける
「……うん。いいよ」
赤く染まる画面
滑るように指が動く
瞬時に変わる
青い文字の羅列
僅かに開くフォグ・グレー
「早い……」
漏れた声
「はは、そうか」
微かに揺れる肩
上がる口端
「すごいね。……ゲート、落とすよ」
「バックドアは任せろ」
加速する打鍵
切り開かれる電子の海
静かな呼吸
響く低音
「「チェックメイト」」
同時に叩かれた画面
青緑の海が凪ぐ
――
路地の裏
街灯の白い光
「ほら、これ」
差し出された缶のココア
ボトルグリーンの瞳
「……ありがと」
受け取る
冷えた指先が吸熱する
「茘枝の奴、……まだか」
「……」
缶を開ける
漂う甘い香り
隣からは甘い珈琲
深く吸い
息を吐く
「……疲れたか?」
「大丈夫。……ぁ」
見慣れた車
「来たか。……リク、今日はありがとな」
肩に伝わる優しい熱
視線を上げる
「うん。……こちらこそ」




