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第三章 静かなる虚構

EP8

1.調律する「俺」



地下の個人ラボ

白いスポットライト

混じる青白い光

銀灰色に染まるアッシュブロンド


薬品の匂い

微かに響く電子音

冷却ファンの駆動音


電界放射型走査解析装置のモニター

映し出される白黒画像

マッピングの跡


「……」


静寂に染まる瞳

一つ息をつく


机に散らばる数式

難解な記号

小さなカプセル


「……完成」




――



闇が落ちる深夜

事務所の地下(ラボ)

響く曇った打鍵音


電子走査解析装置のモニター

青が混じるフォグ・グレー


手元の端末

画面を滑る白い指先


複雑な波形

乱れが混じる(リズム)


――止まる

瞬きをする


波を見つめ

優しく指を滑らせる


瞬間

――整う波


「……誤差0.01%。……書き換え、完了」


静寂に溶ける声

僅かにあがる口角


袖口から落ちる小さな銀のケース

カプセルを取り出し――

飲み込む


「……、」


刹那の痛み

噛み締める歯

詰まる呼吸

変わらない表情


目を閉じる

持ち上がる睫毛

僅かに上がる息


瞳に映る

健康的な数値



……まだ、大丈夫――



左耳のピアスに触れる

白銀が煌めく


小さな電子音が響いていた




2.不意打ちの温もり


「リクー、入るぞ。……また遅くまで実験か?」


聞き慣れた明るい声

ノックもなく開かれた扉


瞬時に切り替わる画面

測定中の砂嵐

いつもと変わらない姿


「……ノックして、香太」


振り返らずに伝える。

甘い香りが鼻腔をくすぐる。


「わりぃな。……誰かさんが根詰めて、ぶっ倒れていないか確認しに来たんだ」


香太は笑いながら答える。

近づいてくる気配。


「これぐらいじゃ、倒れないよ」


背後から丁寧に置かれるマグカップ


「頭使ってるなら、甘い物とれ。……お前、たまにとんでもなく顔色悪い時あるからな」


「……貧血のときね。最近はサプリ飲んでる」


画面から目を離し、それを見る。

小さく零れた、ありがとう

フォグ・グレーの瞳が和らぐ

 

「おう!ココアには鉄分入ってるらしいぞ」


嬉しそうな声

くしゃくしゃと撫でられる頭


「……知ってる。……ちょっと、ボサボサになる」


眉を寄せ、香太を見る

楽しそうな顔

――眩しい


「はは!つい、な!」


つまりかける息

気づかれないように

少し深く息を吸う


「……」


画面に視線を戻す


狂わせないように

制御する(整える)


――――ハイスペックな「俺」で居るために






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