↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第9章 再来
89/91

第81話 胸騒ぎ

 ドォンという鈍い音と共にスナイパーライフルから弾丸が射出される。


 魔人に当てられずともいい。


 外れたとしてもその下にいるドラゴンくらいには当たるだろ。


 それに、ドラゴンに当たらなけりゃそん時はそん時だ。


 こんな世界にこんな武器があるなんてあいつらは知りようも無い。


 すぐに次弾を装填し、もう一度狙えばいい。



 そう思ってた時期がありました。



 時間にして約2秒弱。


 コンペンセイターがあるとはいえ、マズルジャンプにより銃身が跳ね上がる。


 すぐさま銃身を元の位置に下げ、スコープで対象を確認する。



 ……………



 …………あたった…………!?



 ラッキー!!



 撃った弾は魔人に当たったらしく、魔人は後ろへとよろめいた後に崩れ落ちたのが見て取れる。



 この世界初の長距離射撃の成功ってわけだ。


 と言っても誰も見てない訳だけど。



 すぐさま俺は排莢し、次弾を装填する。


 次なるターゲットは隣のドラゴンに乗ってる魔人を………と、そう簡単にはいかないようだ。


 魔人たちは何者かが攻撃してきたと知るやドラゴンを散開させている。


 空中で自在に動き回るドラゴンへと狙いを定め、2発3発と狙撃したが、魔人に当たる事はなかった。


 まあいい。


 5人いた魔人のうち、1人は仕留めた。


 それだけで今は十分だ。



 俺はRex(レックス)を操作して本体へと駆け寄りリンクを切った



「……ふぅ……」


「……ハル!……さっきはありがとう……!お陰で助かったわ。」


「無事で良かったよ。」


「……後ろを取られてたなんて僕もまだまだだな……ところで兄さんは何を?」


「あのドラゴンの背に魔人が乗っててさ。1人はコイツで仕留めたよ。」


「…………え…………?」


「……………何……………」



 ナツとエレノアは信じられないようだ。


 いや、アリシアも同じように驚いてるけど。



「スナイパーライフルって言う武器でさ。まあ詳しい事は後で話すよ。」


「……それでドラゴンが急に散開し始めたのね……にしてもあの距離を当てるなんて………」


「マグレだよマグレ。それより、このまま俺はRexを操作して魔人をやる。ナツは引き続き後方から支援してくれ。後ろには気をつけろよ。」


「……わ、分かった……」


「私はRex(レックス)と行くわ。」


「分かった。ナツ、悪いけど俺本体のお守り、宜しく頼むよ。」


「あぁ。兄さん、くれぐれも気をつけて。」


「あぁ。」


「……ま、待って!!わ、私も……!!」



 エレノアが引き止めた。



「エレノア、キミはナツをサポートしてくれると助かるんだけど……」


「わ、私だって戦えるわ!!」


「サポートも大事な役目だ。それに、ナツは【弓士(アーチャー)】。近接戦ならキミのほうが上手く立ち回れるだろ?」


「……そ……それはそうだけど………!」


「エレノア、サポート組はサポートに徹していると不意打ちを受けやすいの。さっきもそうだったように。だからあなたは、サポート組が徹しやすいように周りの警戒をしていてほしい。お願いできるかしら?」



 食い下がるエレノアをアリシアが説明した。



「………わ……分かりました………」


「ありがとう。じゃあ、ここはお願いするわね。」



 俺はうつ伏せになり、スナイパーライフルを構えた状態でRexへとリンクした。


 これならいざと言う時にすぐに撃てる。



 そしてRex(レックス)にてアリシアと共に前線へと駆け出した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 前線はエルミール軍だけでなく、アーサー、ロータス、エリオ、そしてAxel(アクセル)のお陰で魔物の数もかなり減っていた。


 俺たちが到着するころにはエリオは魔術を撃ちすぎたせいか少し肩で息をしていた。



「遅ぇぞハル!アリシア!」


「住民の避難を優先したのよ。ハルは違うけど。」


「……違うって……何してたんだよ?」


「ハルはスナイパーライフルで魔人を1人倒したのよ。」


「……はぁぁ!!?スナイパーライフル!!!?」


「その話は後よ、ロータス。そろそろ魔人がドラゴンを連れて上陸するわ!」


「……クソッ……」


『エリオは大丈夫?』


『…だ、大丈夫…です…!』


『無理しないで休める時に休んでね。』


『……は、はい……!』



 Rex(レックス)にて魔物を蹴散らしてゆく。


 アーサーのやつ、スタミナって概念が無くなってんのか?


 次から次へと魔物を倒し回ってる。


 ……いや、もうじきここへ魔人らが来るんだ。


 その時までにこの鬱陶しい魔物らを出来る限り排除しておかないと……



 ゴブリンにオーク。


 さらにその上位種。


 見たことの無いキモくてでかい虫。


 Rex(レックス)を操作して次々に撫で斬りにしてゆく。



 このRex(レックス)は本当に操作感が素晴らしい。


 アドチウムに金を混ぜた合金、アウラチウム。


 硬い金属と軟らかい金属が混ざりあったことで多少のしなりが追加される。


 このしなりにより動きが格段にスムーズになる。



 さらにゴムだ。


 足底に仕込んだゴムにより踏ん張りが効きやすく、余計な力を入れる必要が無くなった。



 武器も当然ながら切れ味が抜群だ。


 こんなゴツイ魔物でも豆腐を斬ってるかのようにスルリと斬れる。



 ややもすれば数を大きく減らした魔物たちは俺たちの力に恐怖し、脱兎のように逃げてゆく。



 ……が、入れ替わるようにそこへ今度は上空から火球が襲いかかり、皆散り散りになって回避した。



『下等な人間どもめ!!何をしたのか知らぬが、虫ケラの分際でよくも我が同胞を……!!血祭りに上げてやる!!』



 魔人の1人が地上へと降り立ち、怒りの形相で叫んだ。



 ……なんか、悪いな。


 俺が撃った奴、見せ場も何もなく退場だなんてさ。


 でも、元はと言えばお前たちから始めた戦いだ。


 他人を殺すってことは、自分が殺されたって構わないってことだろ。



 その後も次々と魔人が地上へと降り立った。


 ドラゴンはその後も飛翔を続け、上空から炎や風といったブレスを撃ち込んでくる。



 さすがにドラゴンは鬱陶しいな。



 突然皆の体に淡い緑色のオーラが付き纏う。


 対照的に魔人には赤いオーラが付き纏う。


 アリシアがバフ・デバフを掛けてくれたようだな。


 アーサーはいの一番に魔人の1人に向けて駆け出して戦闘をおっぱじめている。


 エルミール軍もアルバート隊長を筆頭に何人かの兵ともう1人の魔人と戦闘を始めた。


 3人目の魔人はロータスはエリオとアリシアと共に戦闘を。


 最後の4人目はAxel(アクセル)。



 ……あれ?



 俺、相手がいないんっすけど?



 ……いや、厳密には空を飛んでいるドラゴンが5匹もいる。


 けど、こうも飛ばれてはどうしようも……



「ハル様!!」



 その時、突然聞き覚えのある声がして振り向くとそこにはステラがいた。



「私も共に戦いますわ!!」



 ありがたい申し出だ。


 ステラが龍形態となり、俺がその背に乗る。


 そうすれば上空のドラゴンとも戦える。



 ……けど、いいのか?


 これだけ衆人環視の中。


 それに、ドラゴンはステラの同族でもあるハズだ。



 そんな俺の心配を他所に、ステラはすぐさま発光して龍形態へと変身した。



 ……うだうだ考えてる場合じゃない、か。



 俺はステラの背に飛び乗り、ステラは翼をはためかせて空へと飛翔する。


 すぐさま敵のドラゴンから火炎が飛んできたものの、ステラは身を翻してヒョイと躱す。


 敵のドラゴンは5匹。


 2匹は火炎、1匹は風。もう1匹は水。最後の1匹は氷のブレスを使用していた。



『ハル様、しっかりと掴まっていてくださいまし!』



 そう言うとステラは攻撃を躱すために縦横無尽に飛び回り始めた。


 掴まってって言ったってどこ掴めばいいだっての!!



 そうこうしているとステラが大きく息を吸い込んだ。


 ブレスか!?


 ……って、ステラは何の属性を……



 ステラの口から放たれたブレスにより、一帯を霧が包み込んだ。



 ……なるほど。


 これがステラのブレスか。


 視界を奪われたドラゴンから闇雲に攻撃が飛んでくる。


 たまに直撃コースに飛んでくることもあったものの、ステラはこの視界の悪い中でも的確に避けている。



『ハル様、ご安心してくださいまし!霧のブレスは攻撃力が無くとも、この霧の中にいる相手のことは手に取るように分かるのですわ!』



 ほほう。


 感知系のブレスってことか。



 ……それなら……



 俺はサッと紙に書いてステラへと見せた。



『ドラゴン1匹の頭上へ。俺が飛び乗って倒す。』


『かしこまりましたわ!』



 ステラは身を翻して急上昇した。



『今ですわ!』



 ステラの合図と共に飛び降り、眼下にいるであろうドラゴンへ向けて落下する。



 ……見えた……!!



 眼下のドラゴンは俺たちが真上にいることも知らずに明後日の方向へと無闇にブレスを吐いていた。


 抜刀し、そのまま落下。


 刀は着地と同時にドラゴンの身体に深々と刺さった。



『ギャァァアアアアアアア!!!!』



 ドラゴンが痛みのあまり咆哮する。


 突き刺した刀を引き抜くと途端に血が溢れ出す。


 再度柄を握り直し、力を込めて再度深々と突き刺した。



 何度目かの攻撃によりついにドラゴンは力尽き、急降下してゆく。


 落下するドラゴンから飛び降りると、入れ替わるようにステラが俺の足元へと入り込んで受け止めた。



『左にもう1体おりますわ!』



 アリシアの指した方を見やると霧が赤く染まる。


 おそらく火炎ブレスを放ったんだな。



 俺はそれだけ確認するとステラの背を足場にして火炎ブレスの出処目掛けて跳躍し、力を込めて振りかぶる。


 眼前に突然ドラゴンの顔が現れ、ドラゴンは突然現れた俺に驚いて身を翻そうとするも、すでに俺の間合いだ。


 仰け反らせた首へ向けてそのまま刀を振り抜くと、特注の刀の前には鱗など無かったかのようにするりと刃が入り込み、そのままドラゴンの首を両断した。



『お見事ですわ、ハル様!』



 すぐさまアリシアが俺を受け止めた。



 残るドラゴンは残り3匹。


 霧の中で全く見えないが、ステラは3匹のドラゴンの位置を的確に捉えている様子だ。


 ただ、こんな視界の中じゃあ下の様子がどうなっているかが分からないな。


 大丈夫だとは思う……けど少しばかり心配でもある。



『ハル様!そろそろ霧が晴れますわ!急ぎますわよ!』



 おっと、他人の心配をしている場合じゃないな。



 俺がコクリと頷くとステラは翼をはためかせて加速した。


 ステラはその勢いのままある地点へと一直線に飛翔したかと思うと、眼前に突然ドラゴンが現れた。


 ステラは通り過ぎ際に爪でドラゴンを切り裂く。


 激しい血飛沫と共にドラゴンが呻き声をあげた。


 ……が、どうやら致命傷には至らず。



 ステラは身を翻して再度攻撃を仕掛けたが、相手のドラゴンから風のブレスを見舞われた。


 突風と共に真空の刃が襲いかかる。


 いくつかの刃がステラの身体を切り付けるが、ステラは構うことなくそのまま突進し、再度爪による攻撃を仕掛け、その爪はドラゴンの喉元を見事に切り裂いた。


 その傷が致命傷となったようで、ドラゴンはそのまま力無く落下していった。



 そして、そのタイミングでステラの霧のブレスの効果が切れ、視界が開ける。



 残る2匹のドラゴンはかなり距離を取っていたらしく、俺たちのいる場所よりも遥かに上空へと避難していた。


 眼下ではまだ激しい戦闘が繰り広げられており、魔人の操る魔術の影響か、そこかしこで黒煙が立ち上っていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『下等な人間どもが……!!』


「何言ってんのか知らねぇが、どうやらテメェじゃあ俺の相手にゃあならねぇようだな。」



 アーサーは単独で魔人の1人を相手取っていた。


 戦闘が開始されてから幾分か経つが、アーサーは魔人の操る魔術を直撃することはなく、逆に次々と攻撃を叩き込んでいた。



『……死ね……!!』



 魔人が魔力を練り上げてはアーサーへと次々に火魔術を撃ち込む。


 だが、そのどれもが素早く動き回るアーサーを捉える事はなかった。



「遅ぇ!!」



 アーサーは一瞬で相手の懐へと入り込み、渾身の力でもって魔人へとボディブローを叩き込んだ。


 トーヤ特性のガントレットとアーサーの腕力が合わさり、魔人の体にはぽっかりと穴が出来上がった。



『……ガハッ……!……下等な……人間……め………だが………これで……終わらぬ………!!』



 魔人は自身の命の灯火が消えゆく中で、最期の力を振り絞って大地に手を当て、なにやら魔術を行使した。



『……フハハ………我が死のうとも………貴様らも………道ずれだ…………』



 そのまま魔人は大地へとひれ伏し、そのまま絶命した。



「……なんかやってやがったが………何も起きねぇのかよ。」



 アーサーの言う通り、魔人が最期に行使した魔術により何かが巻き起こるという気配は無い。


 肩透かしを食らったアーサーだったが、すぐに切り替えて残る魔人を見やる。



「……ロータスの野郎も終わったか。」



 ロータスはアリシアとエリオとの共闘により、ようやく魔人を1人倒すことに成功した。


 アルバート率いる隊もまた、魔人の1人を撃退していた。


 そして当然、Axel(アクセル)も。



 だが、倒した魔人全てに共通していたのは、彼らが死の間際に皆同じように大地へと手を当て、何かしらの魔術を行使していた、ということだ。



「……彼は一体……最期に何を……?」



 妙な胸騒ぎを覚えたのはアリシアだけでは無かった。



 そしてその不安は、最悪な形で的中する事になったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。