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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第9章 再来
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第77話 魔術

 厳しい冬が終わり、新しい季節が始まろうという今日この頃。


 どうも、ハルです。


 俺たちはセント・クラーク高校の2年生となり、新学期を迎えたばかりだ。


 ナツも無事に特待生として入学出来、兄としても鼻高い存在だ。


 ちなみにだが、今年の新一年生の特待生はハルの他にもう1人の女学生らしい。


 聞くところによると、その女学生はエレノア・ジェニングスという名前でジョブが【剣士(フェンサー)】だとか。


 かなり気の強い女子のようだが、顔立ちは美人だという。


 ま、なんであれ特待生として入学できて良かったよ。



 学校行事についてだけど、こっちは課外学習の部類はしばらく自粛するらしい。


 ……あんな事があったんだからな……仕方ないっちゃ仕方ない。


 高校2年生といえば日本では修学旅行があるわけだけど、こっちの世界ではそういうのは無いらしい。


 ちょっとだけ楽しみではあったんだけどな。



 ……いや、修学旅行なんて楽しいもんじゃないけど、海外に行くことはあると言えばあるな。


 というのも、夏休みを利用してエルミール軍の方々と共に闇ギルドの動向を探るべく、海外へと正式に同行することになったからだ。


 アーサーは案の定やる気満々のようだった。



 それまでの間、俺たちは来たるべく決戦の日に迎えてより高度な訓練へと取り掛かる。


 それは、軍との訓練だ。



 ……これがまあ……キツいのなんのって……



 俺とロータスは初日はゲロ吐いたわ……



 まずはストレッチから始まり、その後走り込みが20キロ相当の荷物を背負っての2時間のランニング。


 ほぼ休む間もなく腕立て伏せやら上体起こしなどの各種筋トレ。


 少し休んだら1時間みっちりと模擬戦。



 ……マジでキツイ……



 それなりに出来るだろ、って思ってたのに全然だったわ……


 そんな中でもアーサーは弱音を吐くことなく食らいついてるの、マジでさすがとしか言えねぇわ……



 そのお陰もあってか、メキメキと力は付いた気はする。


 試しにRex(レックス)を操作してみると、今まで以上に鋭い動きが出来るようになったし。


 多分これなら魔人が複数人相手でもいけそうじゃね?ってくらい。


 ……魔人なんて来ないに越した事はないけどさ。



 あ、それと。


 大きく変わった事がある。



 それは、俺たちのクラスに新しい仲間が1人加わったんだ。


 それはエリオだ。


 闇ギルドによって村を襲撃・拉致された後、俺たちに保護されたあのエルフの少年だ。


 彼を保護するためにも俺たちのクラス内にて保護するのが1番だろうという事で、俺たちの新たなクラスメイトとなったわけだ。


 ……ただ、まだまだ人語は分からないもんで、俺とアリシアが通訳する事になった訳だけど。



『…そういやエリオ。エルフ族って精霊と会話出来るんだろ?』


『会話という訳じゃない。精霊を操るが正しい。』


『……どうやって操ってるんだ?』


『精霊に命令出す。』


『……お、おう。それで?』


『それだけ。』


『………え、えーっと……』



『エリオ、エルフ族は精霊を操って魔術を使用できるのよね?火とか雷とか。』



 会話を見かねたアリシアが横から入った。



『あ、はい!四大元素と言われる地・水・火・風にはそれぞれ精霊が宿ってまして、その精霊の力に呼びかけて魔術を発動するんです!』


『……1度、試してもらってもいいかしら?』


『も、もちろんです!』



 ……なんかさ、俺とアリシアに対する態度が違くね?



 ……そんな事はさておき、エリオは早速手を翳して詠唱し始めた。



『火の精霊よ……我が呼び掛けに応え、灼熱の炎を解き放て!』



 エルフ語でそう言うと、途端にエリオの両手から炎が発生した。



「……うおっ!!……す、すげぇ……!!」


『……これくらいはエルフ族なら誰でも出来る。』


「…………」


『……本当に驚いたわ……凄いわねエリオ。』


『ほ、褒めて下さりありがとうございます!』


「…………………」



 ………やっぱ態度が違うよな。


 ……コイツめ………そんな風に態度変えるんなら翻訳してやらねぇぞ!



 エリオはその後も色んな魔術を行使した。


 訓練すれば、より高度な混合魔術を使えるようだ。


 この混合魔術というのは、例えば水と火を混ぜて霧にしたり、水と風を混ぜて氷にしたりって具合だ。


 この魔術を使用するためには2つ以上の精霊を操れないと当然出来ない。


 エリオはまだ混合魔術は出来ないそうだ。



『……火の精霊よ……我が呼び掛けに応え、灼熱の炎を解き放て!!』



 俺がエリオの見よう見まねで試してみたが、当然ながら何も起こらなかった。



『……人族は精霊操れない。当たり前。』


『……い、いや、ダメだろうなって思ってたし!』


『……これだから人族は……』


『ねえエリオ。どうしてエルフ族だけが精霊を操れるの?』


『…あ、はい!それはですね!』



 ……コイツ……はっ倒すぞ!!


 ……いやいや、怒りを抑えろ。



 エリオの説明によると、エルフ族は他族には無い感知能力が秀でている。


 それは特に聴力が顕著だ。


 おそらくは、そういった感知能力の高さによって精霊を操っているらしい。



 ……ふーむ。


 ということは、だ。


 火や土の精霊は、そこら中に漂ってるって感じなのか。


 で、エルフ族の感知能力の高さによって精霊がそれに応え、魔術を行使している、と。



 ただ、詠唱ありきなのは面倒くさそうだな。



『……人族のジョブのほうが分からない。なぜ人それぞれ違うのかも。』



 考えている俺に向かってエリオが疑問を投げかけた。



 ………確かに。


 言われてみればそうだよな。


 なんでジョブって人それぞれ違うんだ?



 ジョブについておさらいだけど、人にはそれぞれ魔力が流れている。


 この魔力がジョブによって制御され、それぞれ特有のスキルを得るわけだ。


 けど、じゃあどうして人それぞれジョブが違うんだ?



『……仮説だけど、人にはそれぞれ体格が違うの。当然趣味や嗜好も。もしかすると、心の奥の願望がジョブという形になって現れたんじゃないかしら?』



 とアリシアが言った。



 ……心の奥の願望、ねぇ……



『な、なるほど!さすがアリシア様です!』



 お前、いつからアリシアの太鼓持ちになったんだよ……


 ……まあそれは置いとく。



 面白いのはアリシアの仮説だ。



 人の趣味や嗜好というのは年月を経てもそう簡単には変わらない。


 アキは銃やプラモが好きだし、トーヤは人形を作るのが趣味だった。


 俺はゲームだ。


 多分、俺のゲームってのは、仮想世界の中で他者を操って戦ったりってのが好きってことなんだろう。


 それが【人形師(マリオネイター)】としての才覚だった、と。



 とすると、だ。


 そういう趣味・嗜好がジョブという形で現れた。


 裏を返せば、俺たちは何にでもなれたってわけだ。



 そういやこんな話を聞いたことがある。


 日本特有の血液型とか星座占い。


 例えばA型。


 A型といえば『几帳面』というのが一般的だ。


 幼少期から親や知人から『A型だから几帳面』という言葉を聞かされたことだろう。


 すると、本人も『自分はA型だから几帳面だ』と思い込む。


 血液型や星座占いは、そういう思い込みの部分によって形成されているって聞いたことがある。


 確か、プラシーボ効果って名前だっけ。



 この世界では10歳でジョブ鑑定を受ける。


 おそらくは、10歳時点でどんなジョブが最適なのかを判断する装置なんだろう。


 そうして得られたジョブによって、プラシーボ効果により、自身でもそう決めつける。


 もしかすると、この世界のジョブはそういうものなんじゃないだろうか?



 ……と、すると。


 師匠がジョブを授かれなかったのにも答えがありそうだ。


 ジョブは決して高次元の存在によって与えられたものではなく、自身の趣味・嗜好により体内の魔力が無意識に制御され、それを読み取ってどんなジョブが最適なのかを判断したに過ぎないのかもしれないって。


 つまり師匠は、この世界で最も希少な何にでもなれるお人だってことかも。



『……そういえば、混合魔術についてだけど、例えば4つ全部混ぜたらどうなるのかしら?』


『……エルフ族の伝承では、4つ全ての精霊を混ぜ合わせるのは禁忌だと教えられています……一説によると、全ての精霊が混じり合わさると、詠唱者含めて全てを飲み込む厄災が巻き起こると…そう言われてます。』


『……そうなのね……』


『ただ、複数の精霊を同時に4つ操れる者はいません。族長でも3精霊が限界でしたので………』


『精霊単体でもあれ程の威力だもの。3精霊でも強力なのよね。』


『はい!族長は僕らの村の中で唯一雷魔術を使用できるお方だったんです!………でも…………それでもあいつらには…………』



 雷魔術ねぇ。


 雷ってのは言うまでもなく水蒸気の粒がぶつかり合う事で起こる静電気が蓄積され、放出される現象だ。


 てことは、エリオの族長は火・水・風の3精霊を同時に操ったってことか。



『色々と分かったわ。ありがとうね、エリオ。』


『い、いえ!アリシア様のお役に立てたなら!』


「それじゃあ行きましょうハル。」


「そうだな。アーサー達が待ってるし。」


『…あ、あの!!僕も連れてってもらえませんか!?』


『……ん?訓練に参加したいってことか?』


『そうだ!僕の村を襲撃したアイツらに、僕自身の手で復讐してやる!!』


『訓練はかなり厳しいんだぜ?』


『お、お前が出来るなら僕だって出来る!!』


「………なんか俺、下に見られすぎじゃね?」


『エリオ、言っておくけど、ハルはこの国の誰よりも強いのよ。』


『…………え…………ま、またまた!ご冗談を!』


『冗談じゃないわ。ハルの操る人形の前には、この国の誰も敵わないわ。実際に闇ギルドの1人をもう少しのところで仕留めそうになったのよ。』


『………………』



 女神様に持ち上げられてつい顔がニヤけちゃった。



「……いやいや……俺なんてまだまだだよ……ジョブ使わないとダメだしさ……」


「確かにハル自身は肉体的にはそこまで強くないのかもしれないわ。」



 ……ず、随分とハッキリと……心に来るな……



「それでも、あなたの心は誰よりも強いのよ。絶対に諦めないっていう、その心が。」


「……そ……そうかな……」


『エリオにはある?諦めない根性。』


『………僕は………僕だって……もっと強ければみんなを守れたんだ………だから!今度こそ力をつけてアイツらに復讐してやるんだ……!!』


『それなら構わないわ。ただし、ハルを愚弄したら許さないから。』



 アリシアはエリオに厳しい視線を送った。



『……は、はいぃぃ!!こ、心得ておきます!!』



 そうして俺たちの訓練に新たにエリオも加わることとなった。

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