↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第8章 1年の終わり
84/91

閑話 ヴェリク

「……1人を取り逃したが……まぁ良いだろう。しかしながら、貴様ほどの男が危うく殺される所だと、カミラから聞いているが?」



 薄暗い一室に椅子に腰掛けている男が1人。そして、机を挟んだ先にはジンネマンがいた。



「……弁明の余地もありません。あの時カミラが間に入っていなければ、私はすでに殺されていたでしょう。」


「……ほう……?それほどの敵が現れた、ということか。」


「はい。決して油断はしておりませんでしたが……想像以上の実力を持つ相手でありました。」


「……ふむ……詳しく聞かせてもらおうか。」



 ジンネマンはハルとの戦闘について詳しく語る。



 ディガーが引き連れていたオーガロードの殆どを単騎で一瞬で斬り飛ばしたこと。


 シェルドンを一蹴。


 そして、自身との戦闘。



「……終盤、明らかに相手の動きが変わりました。それまででも反応速度が異常に早い相手ではありましたが……終盤では、その比ではないほどに……」


「……ほう……興味深いな。貴様の見立てでは、そいつはヴェリクと比べてどちらが上だと?」


「……戦闘スタイルが違いますので単純な比較は難しいですが……白兵戦でならば、今回の相手のほうが上でしょう。奴ほど洗練された【人形師】は他に類を見ません。しかしながら……」


「それは聞き捨てならないなぁ…ジンネマン。」



 突如声がしたかと思うと、謎の男が扉を開けて部屋に入ってきた。


 痩せた体に異様なまでの猫背。


 それでいて飛び出したような眼球でジロリとジンネマンを睨みつける。



「……ヴェリク。今報告を行っている。さっさと退室しろ。」


「この俺様がガキの【人形師(マリオネイター)】より弱いなんて言われちゃあ堪んねぇよ、ジンネマン。」


「貴様とは戦闘スタイルが違う。」


「……まあ、ジンネマンをあわやという所まで追い詰めたそのガキには興味が尽きないねぇ。ゲイザー隊長、そのガキとはこの俺様とやらせてくれねぇかい?」


「………ふむ………いいだろう。」


「ゲイザー隊長!」


「ジンネマン。お前がその子供と再戦したい気持ちも分かるが、【人形師(マリオネイター)】というジョブの特性は理解しているだろう。本体が成長すればするほど、人形も格段に強くなる。真っ向からやりあうにはお前のジョブでは不向きだ。」


「……御意。」


「カカカッ!ではそのガキとはこの俺様がお相手するとしよう。」



 ヴェリクは陽気なステップを踏みながら部屋を退出していった。



「……良いのですか?ヴェリクに任せて。」


「構わん。お前が戦ったその子供、おそらく転生者であろう。それならば、ヴェリクなら相手として申し分無い。『転生者殺し』の異名を持つヴェリクならな。それよりもジンネマン、お前はカミラを連れて最近ベルセウス王国を賑わしているディザスター卿を追え。」


「……ディザスター卿……ですか?」


「あぁ。噂の真相を突き止めろ。もしも噂通りの奴ならば、我々の戦力にもなるだろう。」


「……断られた場合は如何様に?」


「ディザスター卿の噂を鵜呑みにするならば、奴が我らの勧誘を蹴る理由が見当たらん。が、それでももし断られたなら、お前の判断に一任する。」


「……それはつまり……殺しても構わない、と?」


「あぁ。もしも奴が我がギルドに無用の混乱を齎すと判断したのならば、殺しても構わん。」


「御意。」



 ベルセウス王国とは、ハルたちのいるエルミリア王国よりも南に位置する王国である。


 最近はディザスター卿と名乗る連続殺人が発生し、騎士団10人を相手に返り討ちにするほどの実力者だ。


 彼の目的は定かではないが、恐ろしいほどの実力を持っているために巷では魔人なのではないかという噂まで立っている。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……ふぅむ……さすがにヴァレンティアから離れたこの地方までエルミリアの監視が強まっている訳ではなさそうだな。」



 ヴェリクの人形がエグトマへと侵入する。


 何人かの住民に見られたものの、ヴェリクにとって些細なことに過ぎなかった。


 何故なら、エグトマへと侵入させたのはヴェリクの人形のみであるからだ。


 いざとなればリンクを切断して廃棄すれば問題は無い。


 しかし、ヴェリクの人形はハルのものとは違って異質である。



「……カカカッ……それじゃあ早速リメイクするとしようかねぇ……!」



 そう言ってヴェリクは忍び込ませた人形3体のうち1体に再度リンクする。


 そして、残る2体の人形を見つめたかと思うと、服を脱がせ、その後は腕や足を掴んでそのまま引きちぎってしまった。


 ……というよりも。



 ヴェリクの人形はハルのような鉄製ではない。



 粘土で出来た人形である。



 ただし、当然ながらその粘土は通常の粘土では無い。


 砂状になったアダマンチウムを粘土の中に練り込んでいるお陰で強度についても申し分はない。



 それよりも、ヴェリクが人形に粘土を利用している最大の利点。


 それは、汎用性の高さにある。



 ヴェリクはリンクしている人形で粘土をこね回し、指先サイズの人形をいくつも作り上げた。


 そしてその内の2体へとリンクして街中へと侵入させてリンクを切断。また別の2体へとリンクして街へ侵入させては切断。


 それらを幾度となく繰り返した。



 ヴェリクは人形への3体同時リンクを切り替えながら街中へと人形を行き渡らせたのだ。



「……とりあえずはこんなもんだな……カカカッ!俺様を差し置いてあのジンネマンに実力が高いと言わせるほどの【人形師(マリオネイター)】とは面白くねぇ。【人形師(マリオネイター)】の本当の使い方……この俺様がとくと味あわせてやるぜぇ……カカカカカッ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。