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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第8章 1年の終わり
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第74話 オーガロード討伐

 あれから1週間が経過した。



 学校はどうやら3月から再開するそうだ。



 弟のナツは、無事に特待生として認められ、4月からの入学が決定した。


 マジでよく頑張ったよ、ナツ。


 これにより、アルフィード家の2人の息子はセント・クラーク高校の特待生になったというわけだ。


 ま、俺は転生者だからだけど。



 それと、『転写』Axel(アクセル)での訓練。



 アーサーはAxel(アクセル)との訓練でメキメキと力を付けてる。


 ホント天才だわ、あいつは。


 俺とロータスもお陰様で徐々に強くなれてはきた。


 如何せん、本体の俺が強くなることで『転写』したAxel(アクセル)も強くなるもんだからあんまり実感が湧かないのが難点だけど。



 変わったことといえば、アーサーの妹のメアリーちゃんと、それから我が愛しの女神様だ。



 メアリーちゃんは俺が黒衣の騎士の操縦者だと知ったあの時から俺への当たりが強くなった……気がする。


 いや、間違いなく当たりがキツい。


 アーサーのいない時を見計らっては「黒衣の騎士だからって調子に乗んじゃねぇぞ!」とか「アタシの兄貴が本気出せばテメェなんて雑魚だかんな!」とか……


 ……もしかするとだけど、メアリーちゃんの中では兄であるアーサーが1番強いって認識なんだろうな。


 自分の推しが誰かに負けてるなんて認められない、的な。


 ……だからといって手を抜いたらアーサーがキレるしな……



 それはそれとして、我が愛しの女神様だ。



 あれからアリシアも混じって訓練することになった。


 アーサーが暴走しないかどうかという不安からでは無く、少しでも力になりたいと。


 俺としてはアリシアと一緒の時間が増えて嬉しい限りなんだけど、アーサーとかロータスとかメアリーちゃんもいるおかげでイチャイチャするとかそんな時間は無いのが残念すぎる……


 俺としてはせっかくお付き合い出来たわけだからもっと2人の時間を作りたいって気持ちもあるんだけどな……


 ………いや、今はそんな場合じゃ無いのかもしれないな。


 闇ギルドの1件があってからは王国内でもどこかピリついた空気が漂ってる。



 ちなみにアリシアの護衛は俺たちの模擬戦を見てて驚いてた。


 まだ学生なのにここまでの戦闘が出来るとは……ってね。



 それから、例のエルフのエリオについて。



 彼は今王城内で匿われている。


 彼いた村の長グロリア含め、闇ギルドらが攫った他のエルフ族も目下捜索中ではあるが、一向に見つかる気配が無い様子だ。


 エリオからエルフ族特有の精霊魔法とか聞いてみたかったけど。



 というのがこの一週間での出来事だ。



 訓練のお陰で鈍っていた身体もキレが戻り、より一層強くなれた気はする。



「……いよいよ明日から学校が再開か……」



 ロータスがポツリと呟く。



「……闇ギルドの件でかなりゴタゴタしてたみたいだからな。特に4クラスはさ………」



 4クラスは闇ギルドの襲撃のせいで、30名いた生徒のうち23名もの犠牲者が出てしまったクラスだ。


 残りの7名に関しても心に大きな傷を負った者も多く、噂によるとほとんどが自主退学することになったようだ。


 ……まあ、無理も無いよな……


 この前まで一緒のクラスで仲間だった奴らが突然殺されたんだから。


 それに、闇ギルドが関わった以上、親としても子供の命が何よりも優先事項だ。


 ……それだと、もしかすると俺たちのクラスも何人か自主退学する人もいるのかな……



 ここにいるメンバーとアキとトーヤに関してはそんな気配は無さそうだけど、他のクラスメイトがどうなるか。



「おいハル。放課後はすぐにこっちに来い。」


「ん、ああ。」


「……げ……マ、マジかよ……めっちゃやる気満々じゃん……」


「ロータスは来ないのか?」


「い、いいや!行くって!」


「やる気が無ぇんなら無理に来る必要なんざ無ぇぞ。」


「行くって!!俺だってもっと強くなりたいんだよ!!」


「……アリシアはどうする?」


「私も行くわ。それに……ここの皆になら私のジョブについてもっと知っておいて欲しいし。」


「……【軍師(ストラテジスト)】のスキル、か……確かに知っておいて損は無いもんな。」


「お、お嬢様……!!何を……!!」



 護衛が狼狽えながら間に入った。



「お嬢様のジョブは国家機密でございます!!それをこんな所で……!!」


「エストリア。私はここにいる仲間を信じているの。それに、前回の闇ギルド襲撃時にすでにスキルは使用したわ。」


「……だ、だとしても……!」


「アナタは私の学友が信じられないとでも言いたいの?」


「………いや………ですが……それを国王様にでも知られたら………」


「お父様には私から話しておくわ。」


「………か……かしこまりました……」



 今更だけど……本当に今更だけど、アリシアの護衛の名前はエストリアっていう名前なんだな……



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 学校が再開され、久しぶりに校門をくぐる。


 ……にしても、かなりの厳戒態勢のようであり、校内には多数の衛兵が見回りをしていた。



 自分のクラスに入る前に、俺はどうしても気になったので4クラスの前を通る。


 俺と同じように他の生徒らも気になっていたようでそれなりに人集りが出来ていたが。



 群がる生徒らの頭の隙間から4クラスの中が覗けたが、3人の生徒がポツンと椅子に座っていた。


 その中の1人は俺が助けた生徒だった。


 ただ、3人とも椅子に腰掛けたまま誰と話すでも無く俯いているだけだ。


 ……いや、正確には、話し相手すらもういないんだ。



 それを見てどうしてもいたたまれない気持ちになり、すぐに俺は自分のクラスへと入って行った。



 クラスに入ると皆が一斉に見つめ、表情を明るくさせた。


 ……いや……な、なんすか……?



「ハルっち!おはよ〜!!」


「……あ……ヴィオラさん……お、おはよう。」


「んもう、硬いって!ウチらの仲じゃん?呼び捨てでいいってば!」


「……わ、分かった……けど、変な言い方は止めてくれ……『ウチらの仲』とかさ……」


「あ、そっかそっか。ごめ!……っていうかさ……ハルっち、気をつけたほうがいいよ?」


「……え……何が?」


「……闇ギルドを追っ払えたのってハルっちのお陰じゃん?その噂がさ、学校内でもちょっと広まってるらしくってさ。アリシアっちを悲しませるような事はしないようにね……!」



 ヴィオラはそう耳元で囁いた。


 ……って、え?


 マジで噂になってんの!?



 そう言われて俺は改めて周囲を見回す。


 するとクラスの出入口付近に俺を指さしてヒソヒソと話している生徒らが目に映った。



「……マジでか……」


「まあでもアーサーっちに感謝しときなよ。この前寮近くの公園でケンカしてたっしょ?それでハルっちがボコされたじゃん?あれのお陰で『良いとこ取りしただけの奴』みたいな噂に落ち着いてるっぽいからさ。」


「……ハ……ハハハ………」



 ………嬉しいのやら悲しいのやら………


 ただ、事実を知っているクラスメイトらはそういう目で俺を見つめていないようだった。



 俺はいつものように後ろの席へと腰掛けた。



「……おはようハル……なな、なんか……久しぶりの学校だけど……なんか……お、落ち着かないね……」


「おはようトーヤ。確かに……色々とあり過ぎたもんな……」


「ハル氏とアーサー氏の話が学校中が噂になっておりますな。ハル氏にとってはあまり嬉しくない噂ですが。」


「放っておけばいいのよ。噂なんて。」


「……まぁ……その嬉しくない噂のほうが俺にとってはありがたい……のかも………」



 そうこうしていると鐘が鳴り、ラインハート先生が現れ、グラウンドへと集まるよう指示された。




 グラウンドでは全校生徒が整列しており、壇上ではハミルトン校長が立っていた。


 そこで今回起きた事件についての話があり、今後の学校運営について説明がなされた。


 今後しばらくは校外に出るような授業は自粛するらしい。


 その後、残念ながら亡くなってしまった生徒らに向けて黙祷した。



 そうして改めて授業が再開された。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 長らく休校だったためか授業は結構な駆け足で行われた。


 ついてくのがやっとだってのにキツイったらありゃしない。


 ただ、エルフ語の授業だけは簡単だった。


 それもこれも冬季休暇にアリシアとステラが教えてくれたからだ。


 それに、エリオとの会話をすんなり出来るほどなのはあそこにいた俺とアリシア、それと多分リュゼくらいなもんだろう。



 授業が終わるとすぐにステラによる魔人語の勉強会だ。


 この勉強会も久しぶりだな。


 魔人語は人間の声帯では話すことが出来ないために、リスニングとライティングのみの勉強会だ。


 それでもリスニングはかなり難しい。



 そんなこんなで一日の授業を全て終えた。



「……あ……あの………」



 帰路に着こうとした矢先、聞き慣れない声で呼び止められて振り返った。


 そこにいたのは、グランツで襲撃された際、俺のクラスが掛けた罠に嵌っていた4クラスの生徒だった。


 そういや助かったんだっけか。



「……キミがハル・アルフィード君……だろ?」


「……ん……そうだよ。」


「俺の名はアレン・セレスティア。覚えてるかな?……俺がその……罠に掛かってさ……」


「あぁ、あん時はヤバかったよな。助かってたみたいで本当に良かったよ。……他のクラスメイトらは残念だったけど……」


「……それは………仕方ないよ。……それに、俺がこうして生きてられるのはアルフィード君のお陰なんだ。」


「……そんな大袈裟な。」


「大袈裟なんかじゃない……!!キミがわざわざジョブで俺を助けてくれたって聞いて……それなのに俺……あの時は……逃げ出して……!!」


「……気にすんなって……俺のジョブなら万が一やられても平気だけどさ……生身とは訳が違うよ。」



 アレンは握った拳を震わせて目に涙を浮かべていた。


 ……いっそこのとだ。


 ちょっと聞きづらい事も聞いてしまおう。



「……4クラスはどうなるんだ?」


「……来年に別のクラスと統合だよ。って言っても2人だけさ。」


「……2人だけ……?」


「……俺は退学するよ。」


「……………」


「他の生き残った子からも俺は責められてさ……『お前が逃げ出したせいでみんな死んだ』って。」


「……そ、そんなの言いがかりじゃないか!」


「……でも、事実だ。俺は怖くなって逃げた……卑怯者だよ。」


「………お前………」


「最後にキミにどうしても例が言いたかったんだ。俺は両親と街を出る。今日が最後の登校だ。」


「………………」


「……あの時は……助けてくれて……ありがとう……!!」



 そう言ってアレンは深々と頭を下げた。



「……それじゃ、俺は行くよ。」



 アレンはとぼとぼと去ってゆく。



 『逃げ出した卑怯者』だと?


 ふざけんな。


 じゃあなんだよ、アレンが無駄死にすりゃあ良かったっていうのかよ。


 そう思うと腹が立って仕方ない。



 ………でも………


 多分、他の生き残りの奴らも分かってたハズだ。


 行き場のない怒りをアレンにぶつけたに過ぎないってだけだ。



 ………なんとかしてアイツが浮かばれる方法は無いもんか?



 俺としてはただ助けただけの奴だ。


 でも、アイツはそれにとてつもない恩義を感じ、わざわざ俺に礼を言うためにこうして学校へとやってきた。


 俺にしてみればそれだけで十分だ。


 アイツが感じている罪悪感を取っ払ってやりたい。



 ……………



 なんだ、簡単な事じゃないか。



 そう思うと俺は去りゆくアレンを追いかけて声をかけた。



「アレン!!闇ギルドなら、俺が……俺たちがぶっ倒してやる!!必ずぶっ倒してやる!!だからアレンは死ぬなよ!!絶対に!!」




 その言葉にアレンは少しだけ振り向いた。


 その表情までは窺えなかったが、少しだけ口元を緩めたような気がする。


 そしてそのまま再度去って行った。



 俺の突然の大声で周囲にいた生徒らはザワついていた。



 んなもん関係無い。



 あの状況で逃げたからって後ろ指を指され、自責の念に囚われ……それでもアイツは義理を通した。


 誰だって死ぬのは怖い。


 誰だって逃げる。


 でも、その後が大事だろ。



 アレンは全てから逃げてどこかへと行く事だって出来た。


 なのにアイツはわざわざ礼を言いに来てくれた。


 それが出来るやつが一体どれ程いる。


 人形を操っていたのは誰だったのかと聞いて回っていたに違いない。


 どれだけ後ろ指を指されようとも。


 それが出来るやつが一体どれ程いる。



 闇ギルドを倒さなきゃならない理由が、1つ増えたな。



「……絶対に……死ぬなよ、アレン……」


「……ハルもね。」


「ふぇっ!!?」



 驚いて振り向くと凛とした表情の女神様が後ろに立っていた。



「……また驚かせちゃったわね。」


「……いやぁ……ハハハ………」


「行きましょう。アーサー達が待ってるわ。」


「……あ……うん。そうだな。」



 アーサー達の元へと向かおうと歩き始めた時、不意にアリシアが俺の手を取った。


 細くしなやかなその指で、俺の手をしっかりと握りこんで。



「……ハルも……死んだら許さないからね……」



 そう言ったアリシアを見つめると、鋭い眼差しの奥に優しさを孕んでいるような瞳だった。



「……うん……分かってるよ。」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 それから幾日が過ぎた。



 アーサーとの訓練のお陰で俺もロータスも、そしてアリシアもかなり力を付けた。


 特にロータスは顕著であり、俺とのタイマンでもそれなりに善戦するほどだ。


 戦闘職が故に体内の魔力が最適化されるお陰なんだろうな。



 休日にはギルドでの討伐依頼もこなす。



 アーサーに関しては、本当にこいつは天才だと思い知らされる。


 Axel(アクセル)との模擬戦で日を追う事にメキメキと力を付け、動きにキレが増してゆく。


 さすがにまだAxel(アクセル)に勝つことは叶わなかったものの、何度か攻撃を当てられるようになり始めている。


 それは対魔物戦でも顕著に現れ、アーサーは単騎でB級の魔物の群れですら余裕で倒していた。


 多分アーサーならA級でも余裕だろうな。


 ……とかそんな事を考えていた矢先、ちょうどオーガの群れに遭遇した。


 しかもそれなりの大群だ。



 俺たち4人でオーガの群れを蹴散らしてゆくと、その中から1体、一際大きい個体が現れた。



 オーガロードだ。



 あの日、ディガーのジョブ【調教師(テイマー)】が従えていたあの魔物。



「……ちょうどいいじゃねぇか……!!」



 アーサーはオーガロードを見るなりニヤリと笑う。


 そしてそのまま一直線にオーガロードへ向けて駆け出した。



「……アイツ……!一人でやるつもりかよ……!!」


「いくらなんでも無謀よ!!」



 しかしながらアーサーは忠告を無視してオーガロードの前へと躍り出た。



 すぐさまオーガロードがアーサーへ向けて殺人級のパンチを繰り出したが、アーサーはボクサーの構えからパンチを躱し、強烈な左フックをお見舞いした。


 オーガロードの顔が苦痛で歪む。


 あれ、すっげぇ苦しいんだよな。


 所謂レバーブローってやつ。



 アーサーは手を休める事なく次々に拳を叩き込む。


 どうやら心配は無用のようだ。


 オーガロードから反撃が来るも、アーサーは余裕の表情で躱してはカウンターをお見舞いしている。



 ともかく、俺らは周りのオーガを蹴散らしておくとしよう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……オ、オーガロードを……ですか!!?」



 俺たちは倒したオーガの群れとオーガロードの報酬を貰うためにギルドへと赴いていた。


 オーガは討伐の証として右耳のみを持って来たが、オーガロードは右耳という訳にはいかずにそのまま死体を引きずってここまで来た。


 ……めちゃくちゃ目立ったけど。



 受付のお姉さんは突然担ぎ込まれたオーガロードの死体に目を白黒させている。



「……し、少々お待ちを……!」



 と言い奥へと誰かを呼びに行った。


 しばらくすれば奥からギルドマスターのアレクサンダー・グレン氏が顔を出した。



「……これはこれは……このオーガロードは……君たちが?」


「ったりめーだ。さっさと換金しろ。」


「アーサー、失礼よ。」


「ハッハッハッ。威勢があってよろしい。私はギルドマスターのアレクサンダー・グレンです。すまないが鑑定が済むまでの間、こちらの部屋で待っていてくだされ。」



 そう言われて通されたのは以前にも来たことのあるギルドマスターの部屋だった。


 前に来た時と違い、部屋には大きなキバが飾られている。



「……こんなでっかいキバ……なんのモンスターだと思う?」



 ロータスはその大きなキバを見つめて漏らした。



「……大方、ドラゴンじゃない?」


「……あぁ……魔人と一緒に闘技場を襲ったっていうあのドラゴンか……」


「もしくは、セルス山に襲来したドラゴンかもね。」


「……そ……そういやそれもあったか……こうして間近で見ると……ハル、よくこんなのを倒したよな……」


「……まぁ、Axel(アクセル)だったしさ。生身じゃまだ無理だよ。」


「……………」



 アーサーは無言のままキバを睨み続けていた。



 ややもすれば扉がノックされ、グレン氏が2名の職員を連れて部屋へと現れた。



「此度のオーガロードの討伐、誠にありがとうございます。先程鑑定を終えて、買取と報酬をお持ちさせていただきました。」



 職員が袋から大金貨を取り出し、机へと積み上げてゆく。


 大金貨は数えやすいように10枚ずつ積み重ねられていった。


 その束が……1……2……3………14本。


 日本円で1400万か。


 ……意外に安いけどそんなもんなのか?



 そう思いきや、別の職員が袋から白金貨を積み上げ始めた。


 白金貨も同じように10枚ずつ積み上げられ………その本数が………16本。



 ……えーっと……


 16×10だから160枚で……白金貨1枚が100万相当だから………


 1億6千万円か。


 ドラゴン討伐の時に比べれば安いけど、それでも大金だな。


 大金貨のと合わせて1億7400万の報酬ってことか。



「えぇぇぇぇ!!!!こここ、こんなに!!!?」



 ロータスはあまりの大金に立ち上がって驚いた。


 時間差があったのは頭の中で計算を終え、そこでようやく金額の大きさに気付いたというところか。



「オーガロードはS級の討伐対象ですからな。もしもこのオーガロードが街にでも現れれば、その被害は甚大だったでしょう。」



 グレンさんはその後淡々と今回の報酬の内訳について解説してくれた。


 だが、ロータスはあまりの大金にグレンさんの解説をそっちのけで呆けていた。



「……しかして……此度の討伐には……?」



 そう言ってグレンさんが俺の顔を見つめた。


 おそらく黒衣の騎士による討伐だったのでは?とでも言いたいのだろう。



「……あ、いえ……今回黒衣の騎士は関係無いです。生身での戦闘でしたし……オーガロードはこのアーサーが一人でやってくれたんです。」


「……ほほう……その言い方から察するに、お仲間はハル殿が黒衣の騎士であるということは既知という訳ですな。」


「はい。お気を遣わせたみたいで。」


「いやいや、構いませぬ。では、皆さんのギルドランクも格上げさせていただきましょう。」



 そう言ってアリシア、アーサー、ロータスの3人のギルドランクがA級へと格上げされた。


 俺はすでにA級だもんで、今回の格上げには無関係だった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……そ……それにしてもよう……ここ、こんな大金をさ……どうしようか………?」



 ロータスはいきなり大金を所持したことで無意味に警戒しまくってる。



「……ロータス、そんなビクビクしてたら余計変に思われるぞ。」


「……んなこと言ったってよう……」


「堂々としていればいいのよ。それに、分け前で言えばほとんどがアーサーの物よ。」


「…えぇぇ!!……た、確かにオーガロードを倒したのはアーサーだけどさ……俺たちだってオーガの群れを倒したじゃん!?」


「……あなた、聞いてなかったの?私たちの倒したオーガの群れが大金貨140枚分よ。」



 ……ま、順当だな。


 あのオーガロードをアーサー1人でぶっ倒したのは紛れもない事実だし。



「……うぅ……し、仕方ないか……」


「アーサー、それでいいわね?」


「…………いらねぇ。」


「「「……え?」」」


「それより、トーヤっつったか?アイツに武器を作らせろ。余った分はテメェらにやる。」


「……い、いいのかよアーサー?」


「しつけぇぞ。」



 マジかよアーサー。


 結構な大金だってのに。


 ……ま、いらないってんなら有難く頂戴するかね。



 ……と言っても、俺も金ならまだ余ってるんだよな。



「……それならさ、これを機にみんなの武器もアキに設計してもらってトーヤに作ってもらうか?」


「……え……そ……それも……そうだな………」


「私もそれでいいわ。」

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