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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第7章 三大高等学校対抗試合
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第62話 鬼神&盗っ人

「ハハッ!どうしたどうしたァァアア!!」



 グランツが始まってから一夜明け、俺とアーサーは今日も偵察班として行動していた。


 俺たち2人は昨日と異なり、前日に回収班が探索していた地点に近い敵拠点の偵察……もとい、襲撃を行っている。



 アーサーは今日も元気よく敵陣に乗り込んでは暴れまくっており、俺はその隙に拠点内に入り込み、宝玉を掻っ攫っていた。


 その際に拠点内にいる敵と戦闘することもあったものの、彼らは外にいる奴らとは違って生産職であり、ハッキリ言って勝負にすらならない。



「おおーいアーサー!宝玉、確保したぜ!」


「……ハッ……終わりってわけか。じゃあな。」



 担当の先生が終了を知らせる煙を上げた。



 ……しかしながら、8人もの敵に囲まれながら無傷で立ち回るなんて相変わらずだな。


 しかも憎いことに、アーサーは戦闘職であってもなるべく女子には攻撃していない様子だ。


 まあ、俺でも女子を攻撃するなんて気が引けるもんな……



 とまあそんな感じで、今日は朝からアーサーと2人で敵拠点を襲撃しまくってる。



 宝玉はすでに2つ。


 昨日のと合わせると、すでに4つ目。


 エリアには合計で18チームあり、そこから味方チームを差し引くと12。


 つまり、俺たちだけで1/3もの敵勢力を削った計算になる。



 途中セント・クラークの4クラスと出会ったものの、アーサーの顔を見るなり距離を取ってそのまま逃げてしまった。


 ……まあ、対抗祭の時にはあれだけ妨害に加担してたわけだからな……



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……ふぅ……荷物も大分増えてきたな……アーサー、これ使うか?」



 そう言って敵から奪った足甲っていうのか、鉄製のブーツを見せた。



「……要らねぇ。殺したら終わりだろ。」



 ……確かに、アーサーがこんなものを履いて攻撃したら下手したら敵が死んじゃうな……



「なら一応俺が履いとくよ。カバンに入れてても嵩張るし。」



 俺たちは落とした敵拠点の近くで腰を落とし、昼飯としてパンと缶詰を食べていた。


 今回の襲撃により武器もある程度手に入ったものの、そのほとんどは未回収のままだ。


 武器は嵩張るからね。


 その分食料だけは大量に確保できた。



「……さて、と…………ん………?」



 食事が終わったその時だ。


 背後の茂みになにやら気配を感じた。



 ………人か………?



 その気配はどうも俺たちの様子を窺っているように思える。


 アーサーはその気配にはまだ気付いていない様子だ。



 さてどうしたものか。


 師匠に鍛えられていた時、よく森の中へと放り込まれては魔物と戦闘していた。


 中にはこうやって息を潜めて様子を窺い、隙を見せた時に飛びかかってくる魔物もいた。


 そのせいか、周囲の気配に敏感になれた。



 このまま向こうの出方を窺うのも面白くない。



 そうだ。



 俺はカバンから人形を取り出し、徐にそれを気配のする茂みの中へと投げる。


 そうしてすぐさま人形へとリンクした。



「……な、なんだ……!?」


「……な……なんだよ……人形かよ………」



 相手は小声ながらも俺が突然投げてきた人形に驚く。


 敵の数は……2人。他に伏兵がいるかもしれないが。



「……おい、見ろよ……『盗っ人』が寝てやがる……」


「……なら今しか無ぇ……!!」



 そう言って男が手を挙げて俺たちへ向けて突撃の合図をした。



「アーサー!!敵だ!!」



 リンクを切り、すぐさま臨戦態勢に入る。


 先程まで寝ていた『盗っ人』こと俺が突然立ち上がり、急接近してきた敵チームらが驚く。



「……なっ……テメェら……いつの間に……!!」



 アーサーも立ち上がって臨戦態勢に入ろうとするが、敵の攻撃のほうが一瞬早く届きそうだ。


 俺は棍棒でアーサーに斬りかかろうとする敵の剣を弾き、勢いそのままに棍棒を振り回した。



「ぐあっ!!」


「……この野郎……!!」



 敵は悪態をつくも、ここまで来たからには引き返すわけにはいかないと思ったのか、攻撃を続行する構えだ。



「……アーサー、無事か!?」


「……あぁ………フザけた真似しやがって……覚悟はいいんだな、テメェら……!!」


「アーサー、俺は左を。」


「うるせぇ!!指図すんじゃねぇ!!」



 不意を突かれたことに腹立てたアーサーはそのまま敵に向かって駆け寄っていく。


 ……も、ちゃんと右側の敵を対処してくれるようだ。



 なら俺は左を!!



「……このっ!!」



 俺が対するのは槍と斧。


 敵は間合いに入られないように槍先を向けて威嚇する。



 ……あぁ、ダメダメ。そんなんじゃ。


 そもそも、数的優位を活かした戦法になってないぞ!


 こういう時は挟み込むように立ち位置を変えないと!



 ……って、そんな場合じゃないわ。



 俺は姿勢をグッと下げ、大地を蹴って槍を持つ敵に向かって突進した。



「……なっ!?」



 俺を突き刺そうとするも、俺は棍棒で槍の側面を叩いて逸らす。


 そのままの勢いで敵の鳩尾に棍棒を滑り込ませた。



「……おぅっ!!!!」



 跳ね上がった顎に向けてさらに追撃。


 ガァン!という音と共に敵は吹き飛ばされて失神した。



「……そ、そんな……!!」



 俺の攻撃に斧の敵は驚愕の表情で後退る。


 俺は流れるように斧へと向かって突進する。



「……な、舐めんな!!」



 斧が振り下ろされたものの、俺は体を回転させて横へと躱し、斧は大地へと突き刺さる。


 回転した勢いを今度は棍棒に乗せ、がら空きとなっていた敵の顔面に棍棒が直撃した。


 そのまま敵は糸が切れた人形のように崩れ落ち、戦闘不能へと至った。



「……よし。アーサーは……」



 振り返ると、アーサーの戦闘はほぼ終わっていた。


 アーサーが相手にした3人のうち1人はすでに大地で寝転がっている。


 そしてもう1人はアーサーに片手で首を捕まれ、苦しみもがいていたもののやがて泡を吹いて脱力した。


 その眼下には、アーサーのあまりの強さに腰を抜かして恐怖している女の子が1人いた。



 ……いや、さすがアーサー。


 俺は2人しか相手にしてないのに、女子がいたとは言え同じタイミングで3人を無力化したんだからな。



「……さぁて……残るはテメェだな……」



 アーサーは失神した敵を放り投げ、眼下にいる女の子に睨みを利かす。



「…ひぃ……!!……た、たた……助けて………!!」


「テメェから奇襲かけて来やがったクセに今更助けてだぁ?」


「……ご、ごご、ごめんなさい!!ゆ、許して……」


「ゴメンで済んだらケーサツは要らねぇんだよ……!!」



 ………アーサー。


 この世界に警察はいないよ。衛兵ならいるけど。



「もういいだろアーサー。さっさと襷を取っちゃおうぜ。」



 腰を抜かして泣きじゃくる女の子を見ていたたまれなくなった俺はアーサーの肩に手を置いて制した。


 ……まあ、アーサーだって女子に手をあげるつもりなんて多分無いとは思うけど。



「…………チッ………わぁったよ。死にたくなけりゃあさっさと襷を寄越しやがれ!!」


「……は!!はいぃぃ!!」



 俺たちは奇襲部隊の襷を回収した。


 襷は赤。つまりローズベルか。



 さすがにここまで残ってきただけはあってか、気配の殺し方は上手かったな。



 放り投げた人形も回収し、地図を広げて彼らの拠点の位置を推測する。



 この辺りの拠点はすでに陥落済み。


 となると、彼らは少しばかり遠征してきたってわけか。


 ……いや、待てよ。


 人形でリンクした際、俺のことを『盗っ人』だとか言ってたな。



「……あのさ、1つ確認していい?」


「ひぃぃ!!こ、ころさ…ないで……!」


「……殺さないってば。俺のこと、『盗っ人』って呼んでたの、あれは何?」


「……あ……そ、それは…その………お2人はその……『鬼神&盗っ人』って呼ばれてて………」


「……はい?……『鬼神』と『盗っ人』?」


「……とにかく強い片方が暴れて……その隙に『盗っ人』が宝玉を盗んでいくって……ウワサで……わ、私が言い出したんじゃ無いんです!!信じてください!!」


「ダァーッハッハッハッ!!『盗っ人』とは面白ぇこと言うじゃねぇか!!」



 …………



 そんな腹抱えて笑うなっつうの。



 空気!!空気を読んでそうしてるの!!



 ………………



 ん?待てよ?


 彼らはつまり、俺たちがその『鬼神&盗っ人』だと分かっていてここに来たってことか?


 多少遠征してでも、俺らが邪魔だと、そう判断して?



 ローズベルのチームがそう考えているなら、ソルフレアも同じように考えていてもおかしくない。



「……アーサー。俺ら、1度拠点に戻ったほうがいいかも。」


「あぁ!?普通はコイツらの拠点を潰しに行くだろうが!!」



 俺はアーサーに説明した。



 まず、ローズベルの生徒らの中では俺たち2人の強さが知れ渡っている。


 おそらく、それはソルフレアにも同じ事が言える。


 この場合、敵が取る選択肢は3つ。


 1つ目は会敵しても逃げること。


 2つ目は倒すこと。


 問題なのが3つ目。俺らと戦うよりも俺らの拠点を落としてしまうこと。


 そうすれば俺たちも自動的に敗退扱いとなる。



「……って事。」



 説明を一頻り聞いたアーサーは少しばかり黙り込んだ。



「……リュゼがそんな雑魚どもにやられるタマかよ。んな事はアイツのほうがよく知ってるだろうが。」


「……ま…まあ、そうだけどさ……」


「そんなに気になんならテメェの人形で見に行きゃいいだろうが。」


「…いやいや、そうすると俺の意識がさ……」


「俺たちの役目はアイツらのお守りじゃねぇんだぞ。」



 ………それも、そうか………



 なんだよアーサーのやつ。


 偉そうな口ぶりだけど、それって要は『仲間を信用しろ』って事じゃねぇか。



「……分かった。なら俺たちの役目を果たすか。」


「ククッ。キッチリと落とし前付けさせてもらうとするか。」



 アーサーは卑しく笑って歯を覗かせた。

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