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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第7章 三大高等学校対抗試合
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第58話 ご馳走

 やあみんな!


 俺の名はハル・アルフィード!


 彼女いない歴についに終止符を打っためでたい男だ!


 しかもお相手はなんとなんとあのアリシアなのだ!!



 …………………



 ………あの時の出来事、本当に夢なんかじゃあ無いよな………?



 ……いや、あの時俺は間違いなく夢かどうかを頬を抓って確かめたんだ。


 あれは夢なんかじゃあ無い!



 ちなみにあの夜に初めて口付けを交わした後の事だが、みんなが期待しているようなムフフな事はしていない。


 あれから花火を堪能した後、そのままアリシアを王城へと送り届けただけ。


 ……ま、まあ、それまでずっと手は繋ぎっぱなしだったけどさ。


 衛兵らに見つかるとややこしくなるかもしれないとアリシアが気を利かせ、送るのは王城手前まで、となったが。



 うーーん!!


 それにしても気持ちのいい朝だ!!



 世界はこんなにも美しかったのだ!!



 ……と、浮かれてるのも程々に、さっとトレーニングを済ませてしまおう!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 昨日は年末ということもあってか人通りも多かったものの、年明けの今日はさすがに人通りが少ない。


 みんな正月は家でゆっくり過ごすって事なのか。もしくは昨夜は遅くまで起きてたから寝坊助なだけか。


 かく言う俺自身も昨日は早々には寝付け無かったけどな。



 にしても、正月早々から図書館行って勉強してんのは俺くらいなもんだろうな……



「あらハル様!おはようございます。本日も頑張ってお勉強致しましょう!」



 ステラには人の文化というか、『正月』という文化が無いのかいつも通りだ。



「やあステラ!おはよう!」


「……ハル様……?本日はご機嫌のようですわね……?」


「……そ、そう……?」



 俺ってそんな分かりやすい?



「……と、とにかく!今日も張り切って勉強だな!」


「やる気があるのは素晴らしい事ですわ!さすがはハル様!」


「……お……おはよう………」



 アリシアも図書館へと現れたが、どこか照れくさそうな表情をしている。



「…あ、アリシア!お、おはよう!」



 かく言う俺自身も同じだな。



「あらアリシア様、お身体の調子はもう良ろしいので?」


「…えぇ。お陰様で。ステラも手伝ってくれたと聞いて、本当にありがとう。」


「いえいえ。当然の事をしたまでですわ!それでは早速ハル様のお勉強と致しましょう!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 この冬休みでのアリシアとステラによるエルフ語と魔人語の集中勉強会のおかげで、俺はかなり上達した。


 エルフ語の読み書きはもちろん、会話もそれなりに出来るようにもなれた。


 魔人語の会話は人間の声帯では発声できないので会話は出来ないが、ヒアリングに関してはそれなりに出来るようにはなれたし、読み書きも少しは理解できるようになれた。


 それはアリシアのほうが顕著に表れ、アリシアはすでにエルフ語はほぼマスターしたと言えるレベルになっているし、魔人語も俺よりも理解できている。


 魔人語は俺と同じタイミングで学び始めたってのにこんなにも差をつけられちゃうなんて、やっぱアリシアは優秀だな……



 それはともかくとして、今日の勉強会はアリシアと俺との距離がかなり近くなり、その変化についてすぐさまステラが察したようだった。


 アリシアの立場上、秘匿したほうがいいのかと思いきや、アリシアはすんなりステラに打ち明けた。



「……わ……私のハル様が………アリシア様と……!?」



 と驚いてたけど、その後に続いた言葉が…



「……まさか……もう交尾をなさったのですか!?」



 と来た。



 おい!!


 物事には順序というものがあってだな!!


 そ、そりゃあ俺だってしたい……いやいや、いきなり何を聞いとる!!



「し、してないよ!!」



 と言ったものの、結局ステラは俺とアリシアにそれぞれクンクンと匂いを嗅いだ。



「……どうやら、お二人の身体からは交尾をした匂いはしておりませんわね……」



 と納得していた。



 ……やれやれ……


 龍族と人族の違いをステラは知らないのだから仕方ないとは思うが……


 付き合ってすぐそういう行為をするもんじゃあ無い。



 …………



 ……ま、まあ、中にはそういうカップルもいるかもしれないけど!


 とにかく俺らはそういうんじゃないから!



 それはさておき、エルフ語・魔人語の勉強会の時間は午前のみとなった。



 午前の勉強会を終え、俺は前にステラに約束していた通り、食事を奢ることとなった。



「それなら、私のほうが世話になったんだから、今回は私に奢らせて。」



 とアリシアが言い、今回はアリシアの奢りとなったが。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……ん〜〜〜!!やっぱりすっごくおいしい!!」


「こらこらシエル。あまりはしゃいではなりませんわよ。」



 俺たちは街中でも有名なレストランへと訪れていた。


 とても高級なレストランであるためか、客層もそれに見合う人達ばかりだ。


 そんな中、たかが学生で、しかもこんな普通の服を着ている俺。


 対照的に、純白の服に身を包んだステラに、子供らしい可愛らしい服のシエル。


 さらにはお隣には女神様ことアリシア。



 俺の場違い感ハンパねぇな……



 そういやシエル、さっき『やっぱり』って言ってなかった?


 前に来たことでもあるのか?



「大丈夫よハル。周りの目なんて気にせずに堂々としてればいいんだから。」



 とアリシアがフォローしてくれるも、それでもやっぱり気が引けてしまうのが我ながらに情けない。



 さらには机の上に並べられたたくさんのフォークやスプーンにナイフ。



 ……ってこれ多くね?



 どれでも好きなの選んでいいわけ?



「……カトラリーはね、基本的に端から順番に使えばいいのよ。」



 とアリシアが小声で教えてくれる。


 ……が、だ。



 そもそも、カトラリーってなぁに?



 ……た、たぶんフォークとかナイフのことだろう。



 とりあえず、提供される食事を前に、俺は一応アリシアの作法を真似て食べることにした。



「……う……美味い………なんだこりゃ………」


「ここはね、元々から高級レストランだったけど、最近になってからはさらに味が良くなったって評判だったの。まあ、それもこれも……」



 アリシアが何かを言いかけた時、俺たちのテーブルにとある人物が現れた。



「やあアリシア、それにステラ先生とシエルちゃんも。ハルまでいるじゃないか。」


「……ジ……ジャック……!?こ、ここで働いてんの!?」



 驚いたことに、コック用の制服に身を包んだジャックがそこにいた。



「アルバイトでね。キミが来るなんて珍しいね。」


「私が呼んだのよ。せっかくだし驚かそうと思って。」


「……驚いたよ……まさかジャックがここで働いてるなんてさ……」


「これも修行のうちさ。若いうちにやれる事はたくさんやっておきたいからね。」


「ねえジャック!シーね、この前の『ぷりん』ってやつ食べたい!」


「ハハハ。いいよ。シエルちゃんにはデザートに特別にプリンを出してあげるよ。」


「やった!」


「それじゃあごゆっくり。」



 ……驚いた……


 まさかこんな所でジャックに会うとは……



 ん?


 そういや、最近になって味がさらに良くなったって言ってたけど、アレってもしかして……



「アリシア……まさかこの店の味が良くなったのって……」


「確証は無いけど、多分ジャックのおかげね。彼は前世では創作料理の店長だったんだし。」


「……やっぱそうか……みんな色々とやってるんだな……リリーも占いのバイトもしてるし。」


「ハルたちだってそうじゃない。」


「……俺らはほら……変に聞こえるけどゲーム感覚っていうのかな……趣味の延長みたいなところがあるしさ。」


「……ふぅん……趣味が『人助け』ってわけ?」


「や、ち、違う違う!そんなご大層なもんじゃ無いって……」


「…フフッ、冗談よ。早速戴きましょう。冷めちゃうと勿体ないわ。」



 俺は見よう見まねで提供された食事に手を付ける。


 …………



 うん。やっぱクッソ美味ぇ……



 最初こそこの高級レストランの雰囲気に呑まれそうではあったものの、作法をあまり気にせずに嬉しそうに食べるシエルが居てくれたお陰で随分と余裕を持てた気がする。


 食後に提供されたプリンも前世と遜色なく、とても美味しく頂戴した。



 食事が終わり、お会計は「ここは私が」ということでアリシアが負担してくれた。


 てかこんな高級レストランだとお会計がいくらになってたのやら……



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ご馳走様でしたわ、アリシア様。」


「ごちそーさま!」


「いえいえ。これはほんのお礼だから。」


「俺もご馳走になっちゃって申し訳無いな…」


「それならハル様からも後日にご馳走頂ける、といいわけですわね。」


「やったー!ハル兄ちゃんありがとー!」


「まあ約束だからなあ。」


「それは楽しみでございますわ!」


「アリシアもさ、良かったら……」


「…そ、そんなの悪いわよ。今日だってハルへのお礼も兼ねてるのに……」


「…い、いや……無理にとは言わないけどさ……ほら……あの2人だと暴走しかねないからさ……それに変な誤解とかあったら嫌だし……」



 俺はステラたちには聞こえないように小声で話した。



「……まぁ……ハルがそう言うなら……」



 とアリシアも了承してくれた。



 正直良かったと安堵した……


 だって、あの2人……特にステラは2人きりだとやたらと体を密着させてくる。


 シエルも抱きついてはくるけど、ステラとシエルでは周りの印象が変わってくる。


 それでアリシアに変に誤解を与えるのは良しとしない。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 そんなこんなで後日、俺たちはまた4人で食事へと出掛けた。


 と言っても高級レストランというわけにはいかず、ステラとシエルは龍族であるということを鑑みて、『採りたて』ならぬ『狩りたて』フォレストベアーのステーキをご馳走した。


 さすがのアリシアもこんな狩りたてのフォレストベアーのステーキなんて食べることも無いだろう。


 フォレストベアーの肉は程よい脂身と甘みが特徴だ。


 塩コショウをまぶし、焼き上げるだけの簡単な調理だ。



「ぷりんもいいけどお肉もおいしー!!」


「あの時食べたフォレストベアーよりも美味しいですわね!」



 と2人は大満足のようだ。



「……こんな採れたてのフォレストベアーを食べるなんて初めてだけど……そんなに臭みも無いし……むしろ美味しいわね……」



 とアリシアからも絶賛された。



「まだまだ沢山あるからな。それにほら、護衛さんも。」



 アリシアの護衛は少し戸惑っていたが、アリシアから「いいのよ、遠慮しなくて。いただきましょう。」と許可を貰ってからわざわざ俺に対して「……では、いただきます。」と礼を言って肉を頬張った。


 ウンウンと頷き、「……私も初めて食べましたが……とても美味ですな……」と絶賛していた。



 ステラとシエルは久々のフォレストベアーの肉に大満足のようであり、食事会は無事に終了した。

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