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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第6章 誘拐
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第55話 主犯

 このトンネルはいつからあったのか。


 というか、城下町の地下にこんなトンネルがあっただなんて。


 リックスが主導して掘らせたにしては、かなり古くからあるようなトンネルだ。



「……ハル様……アリシア様はこの先ですわ。」



 俺の背中でステラが呟く。



 すると前方から蝋燭の明かりとはまた違う光が見え、次第にその光は大きさを増してゆく。



 外か!!



 トンネルを抜け、辺りを確認する。



 ………どこだここ………?



 トンネルの出口付近には木々が生い茂っており、迷彩の役割を果たしていたのだろう。


 しかし、出入口として利用するためか、邪魔な枝葉は最近切り倒されたような傷があった。



 ……って、呆けてる場合じゃない。



 ステラに方向を確認し、再度駆け出す。



 しばらくもすれば街道が現れ、そこでようやく俺は自分の今居る場所を把握した。



 ここはヴァレンティアを囲う壁の外。


 太陽の位置から察するに西側だ。



 この街道の先にあるのは確かアルディアという都市がある。


 アルディアといえば港街。


 もしかするとリックスはそこで船で他国へと渡る算段なのか?



「ハル様、もう大丈夫ですわ。」



 ステラはそう言って俺の背から降りた。



「ここからは私めが………」



 そう言うとステラは全身が光り輝き始める。



 ……ってちょっとぉ!?


 こんなとこで………まさか…………!!



 ステラの体は見る見るうちに白いドラゴンへと変化した。


 突如街道にドラゴンが現れ、近くを通りがかっていた商人や旅人らは驚き、中にはパニックとなっている者までいた。



 ステラはそのまま俺を口で摘んでヒョイと背中に乗せ、翼をはためかせて大空へと舞い上がった。



 ………なるほど。


 確かにここなら空から探した方が早いな。


 ……にしても、後々の報告が大変そうだな……


 ………いや、今は緊急時だ。


 アリシアを助けるためにステラが協力してくれているんだし、国王様も大目に見るだろう。



 アリシアはドラゴン形態のまま鼻をスンスンと鳴らすと、徐々にスピードを上げて西へと飛び出していった。



 眼下にはドラゴンの姿を見て恐怖する者らの姿が見える。



 ややもすればステラが喉をグルルと鳴らして背中にいる俺に目配せをした。


 どうやらリックスの姿を捉えたようだ。


 目を凝らすと、街道からやや逸れた場所を移動している一向が見て取れる。


 どうやらリックスだけでなく、お供も何人か引き連れている。



 ステラはそのまま一度そいつらを追い越し、前を立ち塞がるように着地した。



「……な……なんだっ!!?」


「ド……ドドド…………ドラ…………」


「ドラゴンだぁぁあああああ!!!!」



 目の前に降り立ったドラゴンにお供らは腰を抜かす。



「……な……なんだってこんな時に………!!」



 いつも貼り付けたような笑みを浮かべていたリックスもさすがにドラゴンの登場とあってか驚きと恐怖の表情をしている。


 俺はステラの背から飛び降り、リックスの前へと歩み出た。



「………こ……黒衣の騎士が………ドラゴンを使役しているだって………!!?」



 さてリックス。


 お前には色々と聞きたいところだが、生憎今の俺には会話機能を持ち合わせていない。


 よもやアリシアを攫い、他国へ売り飛ばし、その上で地位を獲得しようなどと。



「……お、おい!!お前たち!!さっさとこの黒衣の騎士とドラゴンを殺せ!!」


「……なっ……!?……無茶言わんでください!!」


「……そ、そもそも!!コイツはライアンが引き止めていたんじゃ……!!?」


「畜生!!あの役立たずめ……碌に足止めも出来ねぇとは……!!」



 はいはい。


 お喋りはそこまでにしましょうや。



 なによりも、もう我慢の限界だ。



 俺が大地を蹴って動き出すや、お供らは焦って両腕でガードの姿勢を取る。


 俺は構わずガードした腕目掛けて蹴りを浴びせると、いとも容易く骨がへし折れて吹き飛んだ。


 そのまま別のお供へ。そしてまた別のお供へ。


 ハッキリ言って相手にならなかった。



 お供が一瞬で無力化されたリックスは驚愕の表情を浮かべながら腰を抜かす。



「……まま……待って!!ぼ、僕はひひ、被害者だ!!」



 あぁ?


 今更何を……



「ここ、コイツらに脅されて仕方なかったんだ!!だから……」



 もう喋るな。



 何を今更被害者ぶってやがる。



 俺が刀をスラリと抜くと、リックスは後退りながらみっともなく小便を垂らす。



「た、たた、頼む……!!……か、金ならいくらでも………!!」



 俺は尚も弁明するリックスを無視して刀を振りかぶる。



「………い………い……………いやだぁぁああああ!!!!」



 振り下ろされた刀を前にリックスは断末魔を上げ、そのままドサリと地に落ちた。



 ……………




 あ、斬ってないけどな。



 俺が振り下ろした刀はリックスの股の間の大地へと突き刺さったが、リックスはあまりの恐怖に気を失っただけ。



 リックスが乗っていた馬の背からアリシアを下ろし、顔に被せられていた布袋を取ってあげた。


 アリシアの顔は酷く疲れたような表情だが、薬を嗅がされた影響か目を覚ますことは無かった。



 ………良かった………



 …………本当に良かった…………!!



 もう少し遅れていたら、本当にアリシアはそのまま他国へと売り飛ばされていたかもしれない。


 ステラの協力が無ければ、リックスらを追いようが無かっただろう。


 俺が【人形師(マリオネイター)】というジョブを授から無ければ、あの煙玉のせいで二の足を踏んでいただろう。




 俺はリックスらを縄で縛り、そのままステラの背に乗せて一先ず王城へと帰路に着く事にした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ヴァレンティアの街並みを上空から眺めるのは初めての経験だった。



 最近ではアスタロトの襲撃により被害を被ったものの、それでもこの美しい街並みは守られている。



「………うぅ…………」



 俺の腕の中でアリシアが目を覚ます。


 しかしながらまだ意識はどこか朦朧としている様子だ。



「…………ハ………ル……………?」



 アリシア、もう大丈夫だ。


 悪い奴らなら叩きのめした。


 これもステラの協力あってのことだ。



 アリシアは安心したのか、そのまま再度眠りについた。



 その表情は、先程までどこか苦しそうな表情から一転して、安心したような表情で安らかに眠っていた。




 その後、ステラはドラゴンの姿のままお構い無しに王城の広場へと着地した。


 既に王城ではドラゴンの姿を捉えた者らによって衛兵らが多数押し寄せていたものの、白いドラゴンの姿とあってか少しばかり警戒心が薄まっていた。


 俺はアリシアを抱き抱えたまま着地すると、その姿を見た衛兵が我が目を疑うような表情をしていた。



「……こ、黒衣の騎士……!!?……そ、それにその方は………!!」


「アアア、アリシア様!!!?」



 その中で、衛兵らを掻き分けて俺たちに近づいてくるアルバート隊長の姿が見て取れた。



「黒衣の騎士殿!?……い、一体これは………!?」



 俺はアリシアをアルバート隊長に任せ、さらにステラの背から縄で縛り上げていたリックスらを引きずり下ろした。


 その際、リックスの服の裾を少しだけ破く。



「……ま……まさか……此奴らがアリシア様を……!?」



 俺はコクリと頷き、再度ステラの背に飛び乗った。



「ま、待たれよ!!まだ貴殿には色々と聞かねば……!!」



 悪いけど、まだやる事がある。


 多分だけど、そいつを逃がすとアリシアがまた厄介な事にでも巻き込まれてしまうかもしれない。


 俺はステラの首元をポンポンと叩き、俺の意図を理解したのか再度上空へと飛び出した。


 飛び出したステラに俺は指で方向を伝え、リックスの服の切れ端をステラへと嗅がせる。



 目的は、リックスの父親であるシェーファー元子爵。


 今回の件、流石にこれほどまでに周到に準備をし、金をかけ、誘拐計画を企てたのはリックスだけでは行えない。


 当然、あいつの親も関わっている。



 俺がリックスらを捕らえた場所には親は居なかった。


 とすると、居場所は限られる。


 もしも船で渡航するのなら、奴の親は船で待ち構えているだろう。



 まだリックスが俺たちに捕まえられたという情報が伝わっていないだろうが、あまりにも遅くなれば警戒するだろうし、最悪の場合は子を捨てて国外へと逃亡する(おそれ)がある。



 捕まえるなら、今しかない。



 飛んでいるステラへと伝えるために紙に『リックスの匂いから親を辿ってほしい』と伝え、ステラは残った僅かな匂いを辿るため、西へ西へと向かっていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 やがてステラはアルディアへと向かう街道から大きく逸れた場所へと案内した。


 人目に着きずらく、街道を行く者からすれば森の中を入らなければならず、こんな場所を知らなければ誰も訪れることは無いだろう。



 上空からでは、1隻の船が着岸しており、そこに多数の積荷を運んでいる。



 どうやらその船員の内の1人がステラに気付いたようで、慌てふためく様子が見て取れる。



 俺はステラに船を指差すと、ステラは船の上へと荒々しく着地し、その勢いによりマストが折れた。



 ここでも皆同じようにステラの姿を見て驚愕し、パニックとなっている。


 そんな中、1人だけ明らかに服装の毛色が違う男を見つけた。


 ステラもどうやら匂いによりその男がシェーファーその人だと目で知らせた。


 俺はすぐさまステラの背から飛び降り、そのままシェーファーを気絶させた。


 ………そういや、奥さんはいないのか?


 俺はシェーファーを縄で縛り上げた後に船の中を粗方探してみたものの、そんな人は見かけることは無かった。



 まあ、今はともかくシェーファー元子爵の身柄さえ拘束出来ればいい。



 俺はシェーファーをステラに乗せて再度王城へと飛び出して行った。

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