表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第6章 誘拐
56/63

第50話 誕生日会

 天井にはいくつもの小さなシャンデリアがあるが、中央には一際大きな豪華なシャンデリアが吊り下げられており、キラキラと眩い。


 連れられた中央ホールには多数の人が集められ、皆豪華な服を身にまとっては談笑に興じている。


 床には豪華なカーペット。


 そして何より目を引いたのは、真ん中に広げられた巨大なテーブルには沢山の豪華な食事が所狭しと並べられ、中央には巨大なケーキが置かれていた。



「………うわぁ………すげぇ………」


「……見事……という他ありませぬな……」


「……すすす…凄い豪華だね………」



 俺たちはまさに言葉を失っていた。



「やあハル!それにアキとトーヤも!」


「ハル、遅いよー!」



 声がするほうへと目をやるとそこにはロータスとリリーがおり、2人もまた豪華な服……といっても学生にしては頑張っている服を着ていた。



「お二方はずいぶん早くに到着されたようですな。」


「うん!で…でも……想像してたけど………凄すぎだよね……」


「そういやサイラスは?」


「アイツはちょっと遅れるんだってさ。色々と最後の仕上げがあるとかなんとか。」


「……そそ、それにしても……ぼぼ、僕ら本当にここに来て良かったのかな……」


「勿論よ。」



 俺たちの会話の中にアリシアが入ってきた。



「あなた達は私にとって大切な友人。むしろ来てくれて感謝してるわ。」


「そ、そう言われると照れるぜ…」



 ロータスは分かりやすく顔を赤らめた。



「にしてもアリシアめちゃくちゃ綺麗!!さっすが王女様!!」


「ありがとうリリー。リリーのドレスも良く似合ってる。」


「……えへへ……せっかくだしパパに奮発してもらったんだ……」



 俺は最近アリシアと行動することが増えたために忘れていた。


 こんなにも綺麗なドレスに負けないアリシアの美しさを。



 改めてこうして間近でアリシアを見て、俺は再確認した。



 彼女は紛うことなき女神様であると。



「……じゃあ、そろそろ挨拶に行かないとだから……皆も食事、楽しんでね。」


「うん!頑張ってね!」


「有難く頂戴致しましょう。」


「アアア、アリシア……がが、頑張ってね……!」



 過ぎ去ってゆくアリシアを俺はただ黙って見つめていた。



「……おいおいハル。いくらアリシアが綺麗だからって見蕩れすぎだ。」



 とロータスに注意されてようやく我に返った。



 俺たちはグラスを貰い、さっそく飲み物を注いでもらう。


 さすがに体はまだ未成年ということで注がれたのはぶどうジュースとかりんごジュースだ。



 そうこうしていると国王が咳払いし、挨拶が始まった。



「本日は、我が愛しの娘アリシアの誕生日パーティに出席いただき、誠に感謝する。アリシアが生まれすくすくと育っていく内に、若かりしエリザベートによく似て来始め、今ではその姿は若かりし頃のエリザベートそのものといっても良いほどに生き写しである。思えば、私がエリザベートと出会ったのも………」



 ………くっ………!!


 始まった……!!


 相変わらず長い挨拶だ!!



「……そして彼女の美しくもどこか儚いような表情を見た時………」



 ………ってか今、アリシアの誕生日パーティだよな?


 なのになんで国王と王妃の出会いについて語ってるんだ!!


 チラリと王妃を見てみたが、確かに年配の女性にしてはお美しい。


 ……いや、王妃だけでなく、姉妹もだ。


 それでもアリシアの美しさは頭ひとつ分は抜きん出てる気がする。


 うん、間違いない。



「……であるからして、私はエリザベートとこうして結ばれたのである。それから幾年が過ぎ、息子や娘に恵まれ、末子のアリシアがこうして生まれ育って……」



 …………………



 うん。


 これ、まだまだ終わらんやつだ。



 長い!!



 ローガン師匠を見習ってくれ!!



「………であるからして………」


「………アナタ、そろそろ………」



 あまりにも話が長いと感じたのか、王妃様が国王様に促してくれた。



 ………ありがたい………



「……うぉっほん!!……短くではあったが、挨拶はこの辺りにしよう。では皆の者、娘アリシアの誕生を祝い、乾杯としよう!乾杯!!」


「「「「「「乾杯!!」」」」」」



 何度でも言おう。



 短くないけどね!!




 長い挨拶が終わってようやく乾杯が終わり、俺たちはテーブルに並べられた食事へと手を付けた。



 こういう場って初めてなんだよな………



 これってバイキング?それともビュッフェ?


 こういう時のマナーとか分かんないんだけど。



 俺は周りを確認すると、皆自分の取り皿に好きな食事を盛り付けては食べていた。


 俺もそれに倣い、取り皿に好きな食事を盛り付けていく。



 基本的に肉料理が多く、次いでパンやらパスタなどの麺料理が多い。


 しかしながらこうも品目が多いと迷うな……



 その時、ふとサラダコーナーを見てみると人集りが出来ていた。



 サラダで人集り?と気になり見に行ってみると、注目を浴びていたサラダの正体が顕になる。



「……こ……これは………!!?」


「ハルの好きだって言ってたラーメンサラダよ。シェフに頼んで作ってもらったの。」



 背後からアリシアが囁く。



 ………いやぁ〜〜………



 好きだって確かに言いましたけども………あれはその………嘘というかなんというか…………



「わ……わざわざ作ってもらったの……?」


「えぇ。さすがにこちらのシェフでも作ったことはないらしいから味の方は保証できないって言ってたけど。」



 マジですか。


 ………で…でも、わざわざアリシアがシェフに無理を言って作ってもらった料理なんだよな……


 ここまでお膳立てしておいてもらいながらラーメンサラダを食わないのは失礼だよな……



 俺はラーメンサラダを取り皿へと盛り付けると、次いでアリシアもラーメンサラダを自分の取り皿へと盛り付けた。



 お互いに準備が整ったところでラーメンサラダを1口。



 ………………




 ……………うん……………




 サラダに麺が合わさってる。



 一応オリーブオイルが掛けられてるけど、あの店で食べた物よりは劣るな。



 不味くは無いけど、美味しくもないって感じ。



 ………でも、わざわざアリシアがシェフに無理言って作ってもらったわけだし………



「……えーーっと……」


「これなら、まだ前のお店で食べた物の方が美味しいわね。」



 アリシアはサラッと言った。



「……まあ……やっぱごまドレッシングが合うかなぁ……」


「今度ジャックに聞いてみようかしら。ごまドレッシングの作り方。」


「え!?い、いやいや!そこまでしなくとも!!」


「さすがに悪いわ。ハルの好きな料理なのに。」


「いいって!……そ、それにあれはなんというかその………」


「………もしかして、もともとあまり好きでもない、とか?」


「……うっ…………まあ……そ、そう……かな………というか……あの日食べたのが初めて……かも……」


「………………」



 ………も……申し訳ない………


 まさか真に受けるとは思ってもみなくってですね………



「………ふっ………ふふっ……!!」



 てっきり怒られるかと思いきや、アリシアは突然笑いだした。



「なによそのくだらない嘘!どうしてそんな嘘なんか…!ふふっ!」


「……い、いやぁ……あの時はその……とりあえず当たり障りのないサラダ食べとこ!的な感じだったもんで……」


「……じゃあ、ハルの本当に好きな食べ物は?」


「……まあ……唐揚げかなぁ……」


「……ふぅん……」


「お嬢様、そろそろ宜しいでしょうか?」



 俺たちの会話にいつもの衛兵が声を掛けた。



「……えぇ。分かった。じゃあハル、また後でね。」


「う、うん。」



 クルリと向きを変えて去ってゆくアリシア。


 美しいドレスに決して負けることのない美貌。


 ピンとした姿勢・スタイル・凛々しくも柔らかい表情・靡く髪。


 そのどれもが素晴らしく、もはや芸術の域に達している。



 ……前まではここまでじゃなかった。



 少なくとも、凛々しい表情をしていてもそこには柔らかさを感じなかったハズだ。



「おーーい、ハル!何見蕩れてんだよ!」



 ロータスが茶化す。



「……仕方ないだろ……あんなの……」


「………まぁ………分かるけどさ………にしても、アリシアって綺麗になったよな………」



 その後も俺たちは色んな料理に舌鼓を打つ。



 やはりというか、宮廷料理なだけはあり味はどれも超がつくほど一流品ばかりだ。



 多少腹が膨れたところで改めて周りを見やる。



 今回招待されているのは誰も彼も高級な服を身にまとっている貴族ばかり。


 なかには子供もいるものの、その子供ですら俺が今着ている服なんかより豪華な服を身にまとっている。


 今更ながらに俺は自分の服をもう少し値段を張って着飾れば良かったと恥ずかしさを覚えた。


 ……まあ、服に関してはトーヤ以外はクラスのみんなそこまで派手では無いけど。




「お集まりの皆様。本日はアリシア姫のお誕生日会にようこそおいで下さいました。」



 食事がひと段落付きそうな所を見計らって司会役が声を掛けた。



「それではアリシア姫より皆様に向けてお言葉を頂戴致しましょう。」



 皆が拍手する中、1人の男が俺の隣に現れた。



「……ふう……どうやら間に合ったようだね…!」


「……サイラス!?……遅いぞ……!」


「失敬。少々花の選定に時間をかけ過ぎてしまったようでね。」



 見るとサイラスの手には沢山のバラの花束が握られていた。



「……皆様、本日はお忙しい中、こうして私の誕生日パーティにお越しいただきありがとうございます。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私は転生者としてこの世に生を受け、セント・クラーク生として勉学に勤しみ、その中でとても大切な友達にも出会いました。」



 アリシアは俺たちを見て微笑みながら言った。



「今年はドラゴンや魔人の襲撃といった災難もありましたが、こうして皆様と無事にお会いすることが出来、私は本当に運が良かったと存じております。」



 そう言いながらアリシアの目は真っ直ぐに俺だけを見つめていた………気がする。



「また来年も、そのまた来年も。こうして皆様とお会いできることを心より祈願致しますと共に、皆様の益々の発展を祈願し、私の挨拶と返させて頂きます。」



 アリシアは言葉を締めくくると会場内から盛大な拍手が送られた。



 その後はまずは国王陛下よりアリシアへと誕生日プレゼントが贈られ、続いて爵位の高い順からアリシアへとプレゼントが渡される。



 国王様は特注で作らせたネックレスだが、煌びやかな宝石が多数鏤められておりかなり高価な物だと一目でわかる代物だった。


 渡されるプレゼントは様々で、中には上質な馬を贈る人も現れた。



 ……これ、この流れで俺らのプレゼントって……大丈夫かよ………



 そんな高価なもの、用意してないんだけどなぁ……



「…だだ、大丈夫だハル!プレゼントってのは心だ!……多分!」



 とロータスは俺にそう言いながらも自分に言い聞かせているようだ。


 貴族の人らがプレゼントを渡し終え、ようやく俺たちの番となる。



「ん〜、ではまず私から!ハッピーバースデーだミスアリシア!私からはこのバラの花束と、それとミュージックを献上しよう!」



 サイラスはアリシアへと花束を手渡すと、ジョブを発動させて音楽を奏でる。



 ……この曲は……



 日本でもよく聞いた誕生日の時にみんなが歌うバースデーソングだ。


 最初はトランペットのみの演奏から入ったが、ドラムロールが鳴った直後に一斉に多数の楽器がバースデーソングを奏でる。



 …………………



 …………すげぇ……………




 バースデーソングにはサイラスのアレンジも加わっており、この日のためにと楽曲しているのが伝わる。



 それだけじゃない。



 サイラスの歌声は楽器にも負けない声量で、それでいて胸にスーッと入る美声だった。



 短い曲ながらもフィナーレを迎えた時には、会場内から盛大な拍手が贈られた。



「……凄いわね……サイラス……」


「お気に召して頂けたかな?ミスアリシア。」


「えぇ。もちろん。」



「素晴らしい演奏だ!是非ともウチでも披露してくれまいか!」


「彼は逸材だ!コンサートを開くのなら私が援助する!」



 と、貴族の方々は大層お気に召したようだ。



「…………すげぇ…………すげぇよサイラス!!」



 俺は感動してしまった。


 サイラス、お前本当にすげぇよ!!


 お前が将来コンサート開くんなら、絶対聞きに行く!!



 しかしながら、サイラスの素晴らしいプレゼントをあまりよく思っていない人間もいた。



「……クソッ……サイラスのやつ……あんなの披露されたあとだと余計に出しにくいじゃねぇか……!」



 ロータスだった。



 ……………



 ………まあ、一理あるな。




 ただ、その空気を何とも思っていないのか、アキとトーヤが続いてアリシアへとプレゼントを渡す。



「…た、たた、誕生日おめでとう!」


「お誕生日おめでとうございます、アリシア氏。これは自分とトーヤ氏で作ってみた物ですが、どうぞお受け取りくだされ。」


「ありがとう。」



 2人が渡したプレゼントの包みを開けると、そこから懐中時計が現れた。



「……これは……!?」


「自分が設計し、トーヤ氏が組み立てた物です。」


「ゼゼ、ゼンマイ式になってるから、そこを回してもらうと動くよ!」


「………こんなものを………凄い………」



 会場内にいた国王様や貴族の方々も気になったのか、輪になって懐中時計を見つめる。


 時計が秒針を刻むや、皆感嘆の息を漏らした。



「……これは凄い……是非とも我社にも……!」


「こ、これをいくらで売ってるのかね!?いくらでも言い値で払うぞ!」



 と、これまた貴族の方々がお気に召したようだ。



 ……ってか、あいつら何2人でそんなの作ってんだよ!!


 ずるいぞ!!



 ……と言ったところで、俺が懐中時計作りに加わっても何も出来ないポンコツだな……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ