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ジョブ世界の人形師  作者: かるぱりあん
第5章 クラス対抗祭
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閑話 アーサー・ドラグルス

 俺はアーサー・ドラグルス。



 前世で京極龍成って名前で生活してたところに、御堂とかいうクズに殺されて転生したっつうわけだ。




 ガキの頃から俺は何でも出来た。



 やった事のないスポーツでも、俺はすぐに対応出来たし、エースと呼ばれてチヤホヤされてた連中らをあっという間に追い越した。


 俺は気付いた。


 俺には才能があるってな。



 だからこそ、チームスポーツは性に合わねぇ。



 チームスポーツっつうのは、1人の天才がいた所で試合に勝てるかどうかは別問題だ。


 愚図が足を引っ張りやがるせいで負けるのは我慢ならねぇからな。


 形代っつう奴もそれなりに動けたが、俺からすりゃあ素人に毛が生えた程度の雑魚だ。



 俺は高校からはボクシングに打ち込んだ。



 ボクシングは良いもんだ。


 チームスポーツとは違い、雑魚が俺の足を引っ張ることはない。


 俺の拳1つで雑魚を蹴散らすのは爽快だったぜ。



 高校卒業後にプロテストを受け、俺はプロボクサーになることも出来た。



 人生イージーモードだな。



 プロになってからいくつか試合をしたが、どいつもこいつも雑魚すぎて欠伸が出たぜ。




 ……でも、俺の栄光もそこまでだった。




 ある試合で、俺は1人の男に全く歯が立たたずに負けちまった。



 そいつは有名でも無い最近プロになったばかりの男。


 俺からすりゃあ雑魚のハズだった。



 けど、俺は負けた。




 俺は天才だ。



 天才だと思っていた。



 けど、プロの世界はそんな天才がゴロゴロといる。



 天才だらけの世界でトップになれんのは、天才の中でもさらに天才の奴だけだ。



 それからも何度か試合を組んだが、勝ったり負けたりの繰り返しだ。



 俺は思い知らされた。



 俺は、普通の天才であって、真の天才では無いのだと。




 この世界に転生してから、俺はともかく体を鍛えた。



 普通の天才が真の天才を超えるには、努力するしか無ぇ。



 何より、俺が一番嫌いな雑魚にはなりたくねぇ。



 俺は【闘士(ウォーリアー)】っつうジョブを手に入れ、おかげで前世よりもさらに強くなれた。



 俺も相応に自分の力に自信を持っていた。




 ……けど、俺の前にまたもや真の天才が現れやがった。



 ウェアウルフの集団に襲われた時、黒衣の騎士っつう野郎が現れ、一瞬でねじ伏せやがった。



 ………正直………見惚れちまった。



 無駄のない動き。


 足さばき。


 流れるような剣技。



 そのどれもが完璧だった。




 ………面白くねぇ。



 なんで俺があそこに立ってねぇんだ。




 俺は自分が許せなかった。



 ウェアウルフか何か知らねぇが、あんな魔物相手に四苦八苦する程度の実力しか持ってなかった自分に。




 なんとかあの黒衣の騎士に勝ちてぇ。




 俺の思考はそいつに勝つこと以外考えられなかった。




 それで出たエルミリア選手権で、念願叶って俺はようやく黒衣の騎士と対戦出来た。



 ………それでも、奴は俺を圧倒した。



 奴の蹴りは俺の腕を簡単にへし折り、渾身の蹴りも防がれた挙句、奴の膝蹴りは俺の鍛えぬいた腹筋もろとも打ち砕いた。



 前世でも、俺はここまで完膚なきまでに負けた事なんて無かった。



 俺は悟らされた。



 真の天才の前には、普通の天才も雑魚と同じだと。



 ……いや、もしかすると、俺は天才でもなんでも無いのかもしれねぇな……



 クラスの連中は俺がベスト8になったことを褒めて来やがった。



 クソ面白くも無ぇ。



 ベスト8だろうが、ベスト4だろうが、俺は真の天才じゃあ無ぇ。



 ただの雑魚だ。




 そうしてクラス対抗祭が始まった。




 クラスの連中は「頑張ってる」だの「努力している」だの吐かしてやがるが、そんなのはただの言い訳だ。



 俺は雑魚だと思い知らされたが、それでも負けるのは我慢ならねぇ。



 そん時、アリシアが俺に面と向かって言いやがった。



 『楽しく生きる』とかなんとかってな。



 チーム一丸となって和気藹々とやって、それで負けても楽しいっつうのか。



 意味が分かんねぇ。



 勝たなきゃ何も得られねぇだろ。



 ………勝たなきゃ………




 ………………





 ………いつからだ。




 俺はいつから勝負事を楽しめなくなったんだ?




 いつから俺は、勝つことに拘り始めたんだ?





 結果的に、リレーは形代が2回走ることとなった。



 こんな雑魚………いや、雑魚は俺も同じ、か。




 そんな形代は俺に言った。



 『雑魚なりの意地を見せる』って。



 なんだよ、雑魚なりの意地って。




 でも、形代の走りは見事だった。



 隣のクズの妨害を掻い潜って走り抜いた。



 他の連中の走りも、不器用ながらに頑張ってる。



 ………あぁ………そうか…………



 誰も、負けたくて試合をしてる訳じゃねぇ。



 こいつらも、雑魚なりに意地を見せてやがるんだ。



 あの時の俺みたいに。




 そうしてラス前の形代にバトンが渡った。




 アイツは度重なる妨害行為を巧みに躱して前へと出た。


 クズが最後の足掻きに形代の靴に指を掛けて転倒させようとしたが、アイツは受け身を取って立ち上がってまた走り出す。



 そうして俺へとバトンが渡った。



「………た………頼む……………!!」



 形代はそう言った。



 負けらんねぇ。



 コイツらの意地を見せてもらった。



 形代は、自分を雑魚だと吐かしてた。


 でもそれは、俺が真の天才に勝つために足掻いていた姿と何が違う?



 雑魚なりの意地ってやつ。



 今度は俺が見せる番だ。





 そうしてリレーを終え、俺たちのクラスは逆転優勝となった。




 俺からすりゃあ、こんな対抗祭で優勝したとて何も感じないと思っていた。




 けど違った。




 俺が今まで雑魚だと見下してた連中は、決して雑魚なんかじゃあ無かった。



 ボクシングで勝利した時よりも、今回の大会での勝利のほうが、俺には何より嬉しかった。




「………悪かったな。」



 俺は形代に謝った。


 謝らなきゃならねぇ。


 俺は散々コイツを見下してた。


 でも、俺もコイツも本質は同じだ。



 ……いや、なんならコイツは【人形師(マリオネイター)】なんつうジョブを背負わされた。



 それでもコイツは負けじと足掻いた。



 ……昔はすぐ諦めてたっつうのによ。




 何にせよ、この対抗祭のおかげで、俺の心は少しばかり軽くなった気がする。



 勝つことに囚われていた、つまらねぇ意地。


 そんなチンケなもんに振り回されて、毎日楽しさなんざ感じなかった。



 捨ててちまえばなんてことは無ぇ。



 世界がまた違う色に見えやがった。




 『楽しく生きる』か………



 存外、そういう生き方も悪くねぇかもな。

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