第40話 ステラとシエル
俺の名前はハル・アルフィード!
この世界に転生して16年。
偉大なる我が女神様とかなりお近づきになれたが故に、かなりのハイテンションでお送りします!
…………………
浮かれすぎだ、俺。
……いやぁ……本当にこんな事になるとは……
女神様ことアリシアが俺たちとこうして放課後に会うなんて前世では考えられなかったな。
アリシアはアキが描いた設計図を見ながら、どういう仕組みでどんな機構を付けているのかアキの説明に真剣に耳を傾けている。
特に二重関節の仕組みは驚いたようであるが、それは前世の某ロボットプラモデルの仕組みそのまんまだってことは黙っておこう。
「……あ……そ、そういえばハル。ぶぶ、武器の使い心地はどうだった?」
「どうもこうもないぜ。めちゃくちゃ斬れ味がえぐかったよ。……ただ、槍の件はすまん。」
「も、もういいよそれは!仕方なかったしさ。」
槍とは、セルス山にてドラゴンに向けて投げたあの槍だ。
一応探しては見たんだけど、結局見つからず終いだった。
槍投げなんてしたことない上にドラゴンを貫いてるんだから、飛んでいても精々50メートルくらいだと思ったんだけどな……
ただ、投擲武器は悪くない。
普段近接での戦闘ばかりだったが、投擲という選択肢が増えるだけで遠距離攻撃が行える。
しかし、槍だと携行するにしても1本か2本が限界だ。
それ以上はかえって邪魔になる。
なので、トーヤにはクナイを作ってもらってAxelに取り付けた。
俺は再度Axelへとリンクして、遠くに設置してある的へ向かってクナイを投擲する。
クナイが的へと命中したものの、ど真ん中という訳では無い。
今度は連続して3本のクナイを投擲する。
やはりというか、1本の時よりも命中精度が悪い。
練習しないとだな。
一頻り練習した後、そろそろ寮へ戻ろうという事になり、俺はAxelを所定の場所へと移動させてリンクを解除した。
トーヤの家の門ではアリシアの馬車が待機していたが、いつもの豪華な馬車では無かった。
いつもの馬車だと自分がトーヤの家に居ることを周りに知られ、余計な詮索を避けるためだ。
アリシアはトーヤの使用人らにも丁寧に挨拶をして家を後にした。
「それじゃあ、また明日ね。」
「あぁ!また!」
彼女が馬車に乗り込もうとしたその時だった。
「おにいちゃーーーん!!!!」
振り向くと5歳程度の少女が満面の笑みを浮かべて俺たちの所へと駆けて来るのが見えた。
………ん………?
誰かの妹?
俺はトーヤとアキに振り返ってみたものの、2人とも無言で首を振った。
「おにいちゃーーーん!!!!」
………んん!?
あの子、どう見ても俺のほうを見てないか!?
そのまま少女は俺の足へと抱きつき、目をキラキラと輝かせて笑顔を見せている。
……えぇっと………?
ど、どゆこと!?
……ま、まさか……!!
父さんに隠し子がいたとかそういう話か!?
「……え、えぇっと……キミは……?」
「えへへ。やっと会えた!」
……やっと……?
「ハル、アナタ、妹がいたの?」
馬車に乗り込もうとしていたアリシアは足を止めて俺に質問した。
「い、いや……妹なんて居ないハズで………」
「コラコラ、シエル。その方が困ってらっしゃるじゃありませんか。」
戸惑う俺の元へ、純白の髪色をしてとてつもなく妖艶な姿をした女性が少女を諌める。
透き通るような白い肌に白い髪。
それだけじゃない。
着てる服も白でコーディネートされているが、胸を強調するようなワンピースを着用しており、たわわに実ったお胸の谷間を覗かせる。
「……は……え……はい………?」
声にならなかった。
前世で言うところの、童貞殺す系。
あろうことか、その女性は突然俺の手を握った。
「あの時は助けていただいて、とても感謝しております!突然の事でさぞ驚かれた事でしょうが……私の名はステラ。この子はシエルと申します。」
「…………え…………?」
助けた?
俺が?
……いやいや、記憶にないぞ!!
「……えぇっと……」
「おにいちゃん、ありがとね。」
シエルという名の少女は目を輝かせて礼を言った。
「い、いや……ひ、人違い…では……?」
「そんなことはございません!私共を救ってくださったあの匂いは、紛うことなき貴方だと!」
………どうゆうこと……?
に、匂い……?
「もし宜しければ、お名前をお聞かせいただいても……?」
ステラは相変わらず俺の手を握りしめており、目をうるうるとさせて懇願した。
こんなの、断れる男がこの世にいるのかね?
「……ハ……ハルです……ハル・アルフィード……」
「ハル様ですね!なんて良きお名前でしょう!」
「あの……ステラさん。ハルがいつどこであなた方を救ったと?」
アリシアが俺に代わって質問をした。
「……あれは1ヶ月ほど前でしょうか?私とシエルが襲われ、殺されそうになったところをハル様に助けていただいたのです……」
ステラはうっとりとした表情でそう答えた。
1ヶ月前?
……………
……いやいや、やっぱ記憶に無い。
こんな綺麗な人を助けたんなら絶対忘れるわけが無い!!
「そればかりか、私めの体をハル様の手で慰めてくだささいました……」
「ちょちょちょ!!ちょい待ち!!」
「……ハル氏!!?なんという……うらやま……」
「ハ、ハハ、ハル!!?」
「えへへ……シーね、ハルおにいちゃんとこうびするの。」
この発言に皆が凍りついた。
「あらあらこの子ったら。まだ早いわよ、シエル。」
「えー!シーだってもうこうびできるもん!」
「うふふ。そうだとしても、あと1年は待ちなさいな。」
「むー。」
………………
………な………
………………な………………
何を言うとるんじゃい!!!!
1年後でもダメだろうが!!!!
「………ハル………あなた…………」
「……これはこれは……ハル氏よ……さすがにそれはアウトですぞ……」
「だだだ、だめだよハル!!犯罪だよ!!」
「いやいや!!勝手に決めつけるなって!!お、俺だってこんな小さい子と……その………」
「えーー!!……ハルおにいちゃん、シーとこうびしてくれないの……?」
そう言ったシエルは今にも泣き出しそうな表情だ。
ってかこの子、こんな年齢で交尾の意味をちゃんと理解してるのか!?
その前に、そもそも母親なら止めろよ!!
1年後ならOK♪じゃねぇから!!
……誰か、助けて欲しい。
こういう時、どう答えるのが正解だ?
1、泣かせるのを覚悟できっぱり断る。
2、大きくなったらね、とはぐらかす。
3、応じる。
……いやいやバカか俺は!!
『応じる』わけ無ぇって!!
俺はロリは趣味じゃない!!
1の選択肢は子供を泣かせてしまう。
こんないたいけな少女の頼みをにべも無く断るというのは大人としてどうなのか。
いや、むしろ大人だからこそ断らなければならない。
2のはぐらかす、は悪手だ。
そんな事を言ってみ?
間違いなくアリシアに軽蔑される。
うん。
ここは大人らしく、毅然と。
「……あの……シエルちゃん……俺はその………交尾はしない……かなぁ……」
どこが毅然と、だ。
笑わせる。
だが、断られたシエルは目から涙を零し、俺から離れて母親に抱きついた。
「ふぇぇえええん!!ハ、ハルおにいぢゃん、シーとこうびじてぐれないっでぇぇええ!!」
「大丈夫よシエル。『今はしない』ってことだからね。交尾はもうちょっと大きくなってからにしなさいね?」
こらそこ!!
勝手に拡大解釈すな!!
「………ハル、今日は楽しかったわ。また学校で。」
「……え……アリシア………?」
アリシアは冷たい表情をしてサッと馬車に乗り込み、そのまま寮へと足早に消えてしまった。
「……あぁ〜、これはハル氏よ、やらかしましたなぁ。」
「アア、アリシアさん、なんか怒ってたよ?」
………これ、俺が悪いのか?
シエルの泣き声が止まず、周囲にも人集りが出来始めてる。
すんげぇ俺が悪者みたいじゃねぇか!!
「ともかくハル氏よ。ここでは目立ちますぞ。」
「う、うん。場所を変えたほうがいいんじゃない?」
「……それも………そうだな…………」
そうは答えたものの、俺はアリシアから冷たい目で見られたことがショックで心ここに在らずの状態だった。




