第12話 散髪
エイジャ「なぁ、おい、待てよ。どこまで行くつもりだよ」
追いかけてくるエイジャを無視して、アイラは 十三年間の殆どを過ごしてきた城の中を闇雲に走った。
城のどこへ行ってもそこは父の手中で、どこにも、自分の心を整理するために 本当に一人きりになれる場所など無かった。
エイジャ「なぁって…」
アイラ「うるさい! 追いかけてこないで!」
エイジャ「それはできねーだろがよ、俺的によぉ」
アイラは足を止めて振り返ると、エイジャを悲しそうに見た。
アイラ「そうよね。あんたも、父さまの犬だものね」
エイジャ「!」
エイジャはガシガシと頭を掻くと、一つため息をついて、ゆっくりとアイラに近付いて行った。
アイラは後ずさりをすると、また駆け出した。
エイジャ「あっ」
アイラは坂を下って古びた裏門まで来ると、城の裏の湖畔に飛び出した。
右へ行くか左へ行くか、アイラは迷った。
右はリワン達の家のある城の敷地内の湖畔で、左は北大路を突っ切ると迷路のような市街地が始まっていた。
草馬が政権を取ってからというもの、貿易の要衝として栄える国際色豊かなこの碧沿の街も 息を潜めたようになり、我が物顔で歩く草馬人の為に、治安は最悪だった。
それでも、アイラは左の 城の敷地の外へ出ようとした。
エイジャ「ダメ」
ガシリと、アイラは後ろから手首を掴まれた。
アイラ「離して!」
アイラは涙でドロドロになった顔でエイジャを睨んだ。
エイジャ「街の状況がどうなってるか、お前だって知ってんだろが!」
アイラ「それでも、こんな所にいるよりかマシよ! リワンまで父さまみたいに…!」
エイジャ「……。」
エイジャはアイラの手首を握ったまま黙ると、手の中に残しておいたリファの柘榴クッキーを、アイラに差し出した。
エイジャ「ちょっと落ち着けって」
アイラ「こんなの…!」
アイラはエイジャの手からクッキーを引ったくると、振りかぶって地面に投げ捨てようとした。
先刻の、散乱したクッキーを拾い上げるリファの動揺した笑顔が目に浮かんだ。
アイラ「…!」
アイラは振りかぶった手を上げたまま、奥歯を噛み締めた。
アイラ (リファ…、まだ本調子じゃないのに、頑張って作ってくれたんだ…)
アイラはその場にペシャンと座り込むと、顔を手で覆った。
アイラ「うわぁああああ!! わぁあああああ!!」
アイラ (何がこんなに悲しいんだろう。あぁそうだ、リワンが私のこと、何もできないって思ってた事だ…! それに…、あんな言い方しなくたっていいじゃない…! 酷い!)
握りしめたクッキーは手の中で潰れ、甘い匂いが余計にアイラの胸を締め付けた。
アイラは掌を開くと、ホロホロになったクッキーを、ヤケクソになって口に放り込んだ。
アイラ「うっ…、ううっ…、リワンのバカ…!」
涙と鼻水で、柘榴の味はさっぱり分からなかった。
エイジャ「ハハ、口の周り、すげーぞ?」
エイジャは、アイラの横にどっこらしょとあぐらをかいた。
棗椰子の木々が、二人に木陰を作ってくれていた。
エイジャはアイラが落ち着くまで、何も言わずに横に座っていた。
前に広がる碧い湖はキラキラと日光を反射させ、ダイヤモンドを散りばめたようだった。
アイラは手の甲で涙を拭き、口の周りを拭き、顔全体が しょっぱいんだか甘いんだか分からなかった。
アイラが泣き止んでくると、エイジャは口を開いた。
エイジャ「あいつさ、さっき すんげー喋っててよぉ」
アイラ「……。」
エイジャ「普段 無口なのに。だから多分、今日 調子悪いんじゃね?」
アイラ「……。」
エイジャ「本心じゃねーって」
アイラ「……。」
エイジャ「あいつはお前の事、良いと思ってるし、大事に思ってる、…と思う。けど、あいつ頭かてーから、仕事への責任感? みたいなのが優先されてっから」
アイラ「…大事なのは、私が王女だからだわ」
エイジャは呆れたように アイラの方へ顔を向けた。
エイジャ「そりゃそーだろ。お前さ、そこ勘違いすんなや。俺らはお前の母ちゃんじゃねーんだぜ?」
アイラは俯いて唇を噛んだ。
アイラ「……。」
エイジャはアイラの顔を横目で見ると、両手を後ろにつき、また前を見て言った。
彼にしては、頑張って慰めようとしていた。
エイジャ「けどそれ以上に、あいつはお前のこと、大事に思ってる、…と思う。あいつ、頭で考えてる理屈と、自分の感情が合ってない事があんだよな。で、正しいと思う理屈の方に合わせようとすんだけど、結局思ってる事の方が強くって、言ってることとやってる事がチグハグっつーか…」
アイラ「……。」
エイジャ「だしよ、ま、仮によ? お前の好きだっつーのをあいつが受け入れたとしたらよ? あいつ、消されんじゃね?」
アイラ「!」
エイジャ「お前がこの ちっちぇー国の、戦略上の生きた切り札である事も、俺らがその従者である事も、身分? こればっかは しゃーねーって。それとも、あいつが消されても、お前 自分の気持ちを押し通したい訳?」
アイラ「……。」
アイラは膝を抱えて、自分の膝に頭を突っ伏した。
暑い乾いた風に吹かれて、頰についたクッキーも涙も、既にカピカピに乾いていた。
アイラ「もし生まれ変われるなら…」
エイジャ「あ?」
アイラ「身分の無い世界に…、生まれたいわ。そしたら私、行きたい所に 自分の足で行きたい」
エイジャ「おー」
エイジャは、カサカサと揺れる棗椰子の木の葉を見上げ、諦めたように笑った。
強い木漏れ日が、二人をチラチラと照らした。
・・・・・・・
ナザル「え? 喧嘩した?!」
リワン「…はい…」
執務室の扉の前で、リワンはナザルに報告をしていた。
扉は薄く開いていた。
リワン「軽率でした」
ナザル「いや、お前が軽率な事は無いだろうが、…理由は?」
リワン「以前から、姫は剣技を身につけたいと仰っていたのですが…。今日は、自分の力で生きていきたいと仰って…、私も売り言葉に買い言葉で その…、酷い言葉で責め立ててしまって…。申し訳…ありません…」
リワンは俯いて、力無く報告した。
ナザル「そうか…。いや、お前の歳で 一歩引いて冷静になれる方が、かえっておかしいって」
リワンは項垂れたまま、ため息をついた。
ナザル (自分の力でねぇ…)
ナザルは眉間に皺を寄せた。
リワン「それと、あの…」
ナザル「?」
リワンは暫く部屋の隅の方を見ていたが、口を開いた。
リワン「姫はその…、私に恋愛感情を抱いているようでして…。私は交代役として、不適任かもしれません」
ナザル「あー」
ナザルが別に驚くでもなく相槌を打った事が、リワンには意外だった。
ナザル「それ、小さい頃からずっとだよな」
リワン「は…ぁ…」
リワンは恥ずかしそうに答えた。
ナザル「でも確かに、そういうお年頃だよなぁ。じゃあ替えるとして、誰が適任なのか…」
リワン「…!」
リワンは、ナザルがサラリと"替える"と言った事に、自分から不適任と言ったくせに、何故か危機感を覚えてナザルを見た。
ナザルはリワンの目を見返すと、何気なく視線を外した。
ナザル「分かった。王様に相談してみる。この件は一旦 預かる」
リワン「は…い…」
リワンは頭を下げて返事をしたが、口の中が乾いて うまく声が出なかった。
ナザル「で、姫は今 どうしてるんだ?」
リワン「すみません、駆けて行かれて…。どこにいるかは分かりませんが、エイジャが付いています」
ナザル「そうか。あいつが付いてれば、城の外には出てねーはずだから、ま、大丈夫だろ」
リワン「はい…」
リワンは一礼してナザルの前を辞そうとすると、薄く開いていた執務室の扉が開いた。
リワン「あっ…」
王が、間が悪い感じでソロソロと出てきた。
王「すまん、立ち聞きしてしまった」
リワン「いえ…。あの…、申し訳ございませんでした」
リワンは王に、深々と頭を下げた。
王「いや、大方あれがまた利かん気で まくし立てたのだろう。剣などと戯言を…」
王は、ジャガイモのような血色の悪い顔で、疲れたように言った。
リワン「……。」
リワンは目を伏せて黙った。
リワン「あ…の…」
王とナザルは、リワンを見た。
リワン「兵舎の見習いが使っている木の棒でしたら、いけませんでしょうか…?」
王・ナザル「?」
二人は驚いてリワンを見た。
ナザル「お前…、どうした?」
リワン「いえあの…、姫は 別に戦う程の力ではなく、自分と身近な人を守るだけの力が欲しいと仰っていて…、私も昔 同じように思ったなと思いまして…」
ナザル「お前は男で、姫は女の子だ」
リワン「そう…なのですよね…。でもあの…、姫は、自分を女の子としてではなく人間として扱って欲しいと仰っていて…。その…、確かに、姫が女であるという理由で、欲しい力を得られないのは…、確かに…その…何というか…」
リワンは言いかけて、ため息と共に 途中で話すのをやめてしまった。
リワン (やはり間違っているのだろうか? 姫を危険な目に合わせるのは駄目だ。が、意思は尊重するべきでは? あぁ、どっちが優先なんだ?)
ナザル「確かにそうだが…、輿入れまで姫の身柄をお守りするのが、護衛の役目だ。護衛が居るんだから、姫自身が力を持つ必要は無いだろう。練習で怪我をしたり、武器を持つことで かえって攻撃を受けるリスクの方が高い」
リワン「はぁ…。やっぱり…そうですよね…」
リワンは下を向いた。
王をチラリと見ると黙っていたので、リワンは一礼して、今度こそ二人の前を辞そうと踵を返して歩き出した。
王「分かった」
リワンの背中に、王の小さな声が聞こえた。
王「まぁちょっと…、やらせてみてくれ」
ナザル「王様?!」
リワンは驚いて振り返った。
王「どうせ すぐに飽きるだろう。怪我には気をつけて欲しいが…、まぁ大きな傷にならなければ問題無い。それに、他人に依存するよりも自分で力を持った方が…、場合によっては本当に、あの子の命を守る事になるのやもしれん」
リワンは、アイラの父を驚いて見つめた。
王「リワン、娘の意思を汲んでくれたこと、礼を言う。アイラがお前に好意を持つのも理解できる。だが、その状態で傍に居るのは、互いにとって 確かに難しいのかもしれんな。その件に関しては、追って連絡する」
王はナザルをチラリと見た。
ナザルは小さく頷いた。
リワンは、動揺を隠すために目を伏せた。
リワン「はい…」
さっき斬首台の前に立った時よりも更に 自分の心が落ち込んでいる事に、リワンは気付かなかった。
・・・・・
その夜、アイラは自室の鏡の前に立った。
アイラ (諦めよう…)
アイラは思った。
アイラ (リワンの事は諦める。それに私、女の子じゃなくていい。ううん、そうじゃない方がいい。もう二度と、エイジャにあんな思いをさせないわ…!)
アイラは手に持った短刀で、後ろに一つにまとめたお下げを切っていった。
長いお下げが切れると、アイラは短いざん切りのショートカットになった。
アイラ (なかなか良いじゃない)
アイラは鏡に向かって微笑んでみた。
最後に、アイラは青緑色のジャンパースカートのリボンを解いて脱ぎ、シャツとズボン姿になった。
アイラ (もう、可愛いとか綺麗とか、いらない)
アイラは装身具を外したが、母とお揃いの金色の首飾りと、妹と分けた翡翠の耳飾りの片方だけは、外さなかった。
・・・・・
次の日の朝、アイラの部屋から出てきた少年を見て、エイジャは目をパチパチとさせた。
エイジャ「…?」
よく見ると、顔はアイラだった。
エイジャは、椅子に座ったまま固まった。
アイラは長いお下げをバッサリと切って、ショートカットになっていた。
エイジャ「おまっ…、お前、それ ありなん?! 怒られんじゃねーの? 立場的に。もうちょっと後先考えてからやれや」
アイラ「後先って何よ! どうして私が自分の髪を切るのに、怒られないといけない訳?」
鼻息の荒い主人を、エイジャは口を開けたまま見た。
エイジャ (俺は知らねーぞ…)
・・・
王「何っっっじゃ そりゃあ!?!」
執務室に娘を呼び出した王は、アイラの出立ちを見ると、一瞬 誰だか分からずに固まった後、鶏の断末魔のような声で叫んだ。
執務室には 王の側近とナザルの他に、朝から何か報告があったのか、チェンも来ていた。
三人共 目を見開いて、新生アイラ少年を見た。
父は口を開けたまま、まるで幽霊でも見るかのように 娘の側までヒタヒタと歩いて来ると、短くなった娘の髪を いきなり両手でわし掴みにした。
王「こっ? ここここここれはどういう事かと聞いておる!」
父はまた、鶏のように言った。
アイラ「いたっ! 痛いって! 見りゃ分かるでしょうが! 切ったのよ!」
アイラも負けじと、父の薄くなった白髪混じりの髪を両手で引っ掴んだ。
王「なぜ切ったかと聞いとるんだ!」
アイラ「要らないからよ!」
王「お、お? お前にとって、見た目より大事なことなどなかろうが! これで一体、どこに嫁ぐ気か! 寺かーっ!」
アイラ「寺?! そうよ! 私、尼さんになってやる! よその国へお嫁になんて行かないから!」
王「こん…の、バカ娘がーーっ!! 嫁に行かずにどうやって生きていくつもりじゃーっ!!」
父は激昂して、娘のざんぎり頭をポカポカと叩いた。
アイラは両手で父のゲンコツを防ぎながら叫んだ。
アイラ「イッタ、何すんのよ! だから、尼さんになるって言ってるでしょ! 私、自立するんだから!」
チェン「クッ…、ククク、フハハハハ」
滅多に表情を変えないチェンが、堪え切れずに笑った。
ナザルも渋い顔をした。
王「な、何を戯けたことを…。は…ぅ…」
王は胃の辺りを押さえ、その場に ゆっくりとしゃがみこんだ。
王「おの…れ、親不孝者めが…。ぐ…ふ…っ」
ナザル「王様…?!」
ナザルは王を支えながら、椅子へ連れて行った。
側近「今 薬湯を…」
側近は部屋の外に駆けて行った。
アイラはまだ肩で息をしながら、机の上にうずくまっている父に向かって、そっぽを向いて不機嫌に聞いた。
アイラ「用って何よ?」
王「何でもない!」
アイラ「は?!」
ナザル「…王様? 剣のことをお話する筈で…」
王「うるさい! 前言撤回だ!」
ナザル「はぁ…」
王は胃に当てていない方の腕を机について身体を支えながら、わなわなとアイラに怒りをぶつけた。
王「全く恥さらしな! 何だその ざん切り頭は! 布でも巻いておけ! それに、何だその格好は! スカートはどうした! 女が男のようななりをしおって、馬にでも乗る気か!」
アイラはハッとした。
アイラ「馬…」
エイジャとナザルは嫌な予感がして、顔をしかめた。
アイラ「馬! 乗るわ!」
王「ごふっ! ゲホッ! ゲホゲホ…」
父は激しく咳き込んだ。
チェン「クッ…、フハハ」
チェンは また吹き出した。
それ以外の者は、また口を開けたままアイラを見た。
王「よ…、良いか! 剣も馬もダメだ! 部屋で大人しくして、爪でも磨いておれ!」
父はやっとの事でそう言うと、また激しく咳き込んで丸まった。
アイラの位置からは、父の背中しか見えなかった。
アイラ「…!」
アイラは唇を噛み、ギュッと拳を握った。
リワン「失礼します」
扉から、リワンが薬湯の器を盆にのせて入って来た。
アイラ (リワン…!)
アイラは、一気に身体がボッと熱くなった。
リワンは場の唯ならぬ空気を感じ、素早く部屋に目を走らせた。
見知らぬ黒髪の少年が、部屋の真ん中に立っていた。
少年は、リワンの声に振り返らなかった。
斜め後ろにエイジャが立っていた。
エイジャは振り返ると、俺はお手上げだと言わんばかりの顔でリワンを見た。
黒髪の少年が振り返った。
アイラだった。
アイラは、ほんの僅かの間リワンを見ると、目を逸らした。
リワン「?!」
リワンは驚きすぎて、持ってきた薬湯を落としてしまった。
器が割れる音が響くと同時に、アイラは足早に執務室の外へ出て行った。
虚ろな目でエイジャが付いて行った。
リワン (な…、な…)
リワンは割れた器の事も忘れて、立ち尽くした。
リワン (何じゃ、ありゃあ?!)
廊下から、草馬の重臣達の笑い声が聞こえてきた。
草馬の重臣『ガハハハ! 見たか?! あの第一王女、王子になってたぞ!』
草馬の重臣2『いやぁ、出来の悪い子供を持つと、親も本当に大変だよなぁ! この国も あと何年もつことやら! グハハハハハ!』
王「……。」
王は椅子に丸まりすぎて、ついに椅子から床に転げ落ちた。
ナザル「王様?! 王様!」
リワンはやっと、持って来た薬湯を落としてしまった事を思い出した。
アイラ (何よ! 笑いたきゃ笑えばいいわ!)
アイラは嘲笑に唇を噛みながら、ずんずん歩いて行った。
ーーーーー
リファ「えっ?! アイちゃんが坊主になってたですって?!」
医務室に戻ってきた兄は、薬湯を二度運びに行っただけなのに、何故か 果たし合いでもしてきたかのように疲れ切っていた。
訳を聞くと、リファとリヤンは目を丸くした。
リワン「坊主とまでは言ってない。かなり短く切っておられたと言ったんだ」
リファ「ど…どうしてそんなこと…?! まさか、エイジャに切られたんじゃ…」
リワン「違うな。あいつも呆れていた」
リファ「そう…」
リヤン「昨日、姫と喧嘩したんだったか?」
リヤンは探るように息子を見た。
リワン「はい…」
リワンは責任を感じて、どっぷりと項垂れた。
リヤン「そう言えば お前、そろそろ交代の時間じゃないのか?」
リワン「…ナザルさんに、別の者を行かせると言われています」
リヤン「そうか…」
父と妹は、椅子に座ったまま立ち上がらない、いつになく元気の無いリワンを見つめた。
ーーーーー
アイラは厩まで歩いて行くと、エイジャを振り返った。
アイラ「あんたの馬、どれ?」
エイジャ「忘れた」
アイラ「?! そんな訳ないじゃない」
エイジャ「今 病気」
アイラ「……。」
アイラは半目になってエイジャを睨んだ。
アイラ「乗り方、教えて」
エイジャは暫く、飛んでいる虫を目で追っていた。
エイジャ「……。俺、そろそろ交代だから」
アイラ「えっ…」
エイジャは 困惑したアイラを横目で見ると、また 飛んでいる虫を目で追い始めた。
エイジャ「リワンなら来ねーよ」
アイラは驚いてエイジャを見た。
エイジャ「あいつ昨日、お前の護衛は不適任じゃないか、ってナザルさんに言ったらしい」
アイラ「!」
アイラ (た、確かに喧嘩したけど…。リワンが辞めるって言うなんて…!)
アイラは 愕然として、その場にしゃがみこんだ。
馬の糞が、 すぐ目の前の視界に入った。
エイジャ「……。」
エイジャは、座り込んだアイラを 上から横目で見た。
ルカ「エイジャ! 居た居た」
近衛隊の見知った顔で、二十二、三の男が小走りに近付いて来た。
こげ茶色の髪を一つに結んだ、気さくでなかなか感じの良い青年だった。
エイジャ「お疲れっす」
エイジャはぴょこりと頭を下げた。
青年はアイラの側まで来ると、少しの間 アイラの頭を珍しそうに見た後、丁重にお辞儀をした。
ルカ「姫様、ご挨拶申し上げます。取り急ぎ、リワンの代わりに交代役を仰せつかりましたルカと申します。どうぞ宜しくお願いいたします」
アイラ (リワンの…代わり…?)
アイラは そろそろと立ち上がると ルカを見て、ぎこちなくお辞儀をした。
アイラ「よ…、宜しく…お願いします…」
頭を上げたアイラの目がうるうるしていたので、ルカはギョッとした。
アイラは目を泳がせると、また歩き出した。
エイジャは、アイラを指差して言った。
エイジャ「先輩のせいじゃないっすよ? いやー、疲れますよー? あいつにくっついて回るの。じゃ、俺は休ませて貰います」
ルカ「あ…、あぁ」
ルカは、急いでアイラを追って行った。
chatGPTに画像を生成して貰いました。ありがとうchatGPT!
ジャンパースカートバージョンは、一部の1話の最後に貼り付けました。




